それはもう、イタリカからいきなり帝都行ったり現代日本に行ったりします。
ご了承ください。お願い致します!
「青い空!」
「白い雲!」
「「「「「異世界だあ!」」」」」
「落ち着きなさいって」
五百蔵の運転するトラックの中、吹雪&睦月With横須賀悪ガキ隊は絶好調にハイテンションであった。
全員がどちらかと言えば町育ちであり、艦娘という生い立ちから海に親しみはあっても、目の前に広がる雄大な大自然と触れ合う事が無かった。
「叔父貴! ありゃなんだ? 鹿か?!」
「鹿、かな?」
助手席の木曾が五百蔵に問う。
木曾が指差す先、街道沿いの森に鹿によく似た動物が居た。
「鹿、だよな?」
「鹿、だよね?」
「鹿でした」
角が鹿よりはトナカイに似た鹿似た動物を見て、更にテンションを上げていく五人。
その中で、五百蔵が欠伸を一つ吐き、首を鳴らした。
「叔父貴、疲れたのか?」
「ん? まあ、運転しっぱなしだしねぇ」
「オヤジ、代わるか?」
「それは次の休憩にしよう。君らは、はしゃいでなさいな」
何故、彼らが異世界に居るのか?
それは北海の町に開いた『門』から侵略に来たらしい軍勢を、向こう側に返そうと洋が金剛に車輌を幾つか依頼し、それを磯谷が聞き付け
『異世界とか超行きたい!』
とか言い出した。本来なら、洋とその軍勢のみで返還に赴く筈だったが、磯谷が駄々をこねだし、何だかんだで磯谷に甘い金剛がそれを許可し、悪ガキ隊を始めとした横須賀スタメン達と五百蔵達北海組も行く事になってしまったのだ。
鉄桶嫁¦『冬悟さん、次の曲がり角で休憩にしましょう』
鉄桶男¦『あれ? もうそんなになる?』
鉄桶嫁¦『はい、もう間も無く最初の街の『イタリカ』という街に着きます』
席を決めるくじ引きの結果、榛名は五百蔵が運転する二号車の前を行く一号車のガイド役になった。
その際に、木曾は喜び庭駆け回り榛名は拗ねて丸くなった。
もしこの時、嫉妬等を糧とするモノが居たら、狂喜乱舞していただろう。
ほなみん¦『そう言えばさ、異世界なんだしさ』
邪気目¦『あ? 何だよ穂波』
ほなみん¦『エロいエルフとか居るかな?』
ズーやん¦『流石過ぎるよ・・・』
ほなみん¦『ダークエルフとかさ、獣人とかと一晩中前後上下左右自由自在に・・・』
船長¦『ア穂波はどうでもいいとして、この地図凄いな』
元ヤン¦『鳳様の配下の方達のお手製だしな。目の前の森に生えてる木の数まで書いてるぜ』
摩耶が広げる地図、それには非常に事細かに周辺の森に自生する樹木、生物の分布図に食用可能か不可かに至るまで、必要とされる情報が記載されていた。
「イタリカか。どういう街なんだっけか?」
「大規模な穀倉地帯で、フォルマル家って言う家が治めているらしいぜ。叔父貴」
「そっか」
木曾が地図を広げ、五百蔵に嬉々として説明する。
それを見た他の四人は、表示枠で盛り上がっていた。
ズーやん¦『うわーい、キソーったら、もう』
元ヤン¦『榛名の目が届いてないと思ってんのか? あれ』
邪気目¦『もう、自棄になってねぇか?』
空腹娘¦『睦月ちゃん睦月ちゃん、これが昼ドラの修羅場ってやつかな?』
にゃしぃ¦『う~ん、少し違うんじゃないかな?』
事実、木曾は自棄になっていた。榛名が乗車する前を行く一号車から目に見えて凄まじいナニカが発されているのが解るからだ。
ーーこうなりゃ、行くとこまでいっちまえ!ーー
木曾は『ジュウコンカッコカリ』を決めてやろうと覚悟を決めるが、肝心の五百蔵にとって木曾は、どう逆立ちして見ても新しく手に入れた知識を披露してきた『よく懐いてくる近所の子供』でしかない。
「言葉は・・・ 大丈夫か」
「鳳様の配下の方達の調査を元にした翻訳機があるからな」
「夕石屋様様ってやつだな」
鳳洋の配下による調査を元にした翻訳機、今回は『門』周辺待機組となっている夕石屋が表示枠に登載した新機能である。
おおよそ、人間に発音出来る言語であれば問題無く理解する事が出来るらしいが、仕組みはとんと解らぬ物であった。
夕石屋¦『私も行きたかった・・・!』
ほなみん¦『まあまあ、何があるか解らないしさ、二人がそこに居てくれたらある程度の無茶が効くだろうし、お願いね』
夕石屋¦『キィィィィ! こんな時ばっか頼って! 解りましたよ! スーパーな拠点建ててやりますからね!』
鉄桶男¦『常識の範囲内でな』
表示枠から届く二人独特の二重音声をバックに、トラックの列はイタリカへ着々と近付いていたが、吹雪、洋、金剛の三人が何かに気づいた。
空腹娘¦『あれ?』
おかみ¦『あら』
紅茶姉¦『ふむン』
ほなみん¦『何々? どったの?』
紅茶姉¦『成る程、そういう事デスカ』
おかみ¦『あらあら、皆さんったら』
空腹娘¦『うわぁ・・・ 何て言うか、うわぁ・・・』
気付いた三人は、其々に様々な反応を見せた。金剛は納得し葉巻に火を着け紫煙を吐き、洋は恥ずかしそうに頬に手を当て微笑み、吹雪は軽く引きながら菓子を食べ頬袋を作った。
「おいおい、どうしたよ?」
「もうふぁんのふんえいああっふふひぃれまう」
「吹雪君、口の中のモノが無くなってから喋ろうね」
「んぐ・・・ 洋さんの軍勢がハッスルしてます」
「「「ホワイ?」」」
ほなみん¦『吹雪ちゃん、集音出来る?』
空腹娘¦『その必要は無いですよ。ほら』
吹雪の言葉に、洋と金剛と吹雪以外が耳を澄ますと、微かに戦いの音が聞こえてきた。
その音は近付くにつれ次第に大きくなり、はっきりと全員の耳に届く。
『洋様万歳! 洋様ニ勝利ヲ!』
鳳洋を讃える声が異世界に響き、異郷の軍勢を圧倒していた。
その様子に、金剛と洋以外は
約全員¦『うわぁ・・・』
はっきりと引いた。見事にドン引きである。
異郷の軍勢を蒼褪めた軍勢が圧倒しつつ、誰一人殺害する事無く拘束していく。
その様子を見た全員がドン引きしていた。
タテセタ¦『洋、ハシャギ過ギジャナイカ?』
おかみ¦『あら、港さん。この程度、まだまだですよ』
タテセタ¦『ソウカ』
約全員¦『納得?!』
紅茶姉¦『港、拠点の敷設は終わりマシタカ?』
タテセタ¦『アア、陸地ノ真ン中ニ艤装ヲ展開スルノハ初メテダッタガ上手クイッタヨ』
おかみ¦『それは良かったです。引き続き、拠点の確保をお願い致します』
タテセタ¦『分カッタ』
蜻蛉玉¦『総長殿、向こうから誰か来ているであります』
金剛の専属運転手であるあきつ丸が、何者かの接近に気付いた。
軍服に身を包んだ蒼褪めた軍勢の一人が、軍馬に跨がり五百蔵達へと向かって来ていた。
到着した兵士は、軍馬から降りると即座に敬礼で全員を出迎えた。
『洋様、金剛様、皆様、御迎エニ上ガリマシタ』
「皆さん、大事無いですか?」
『ハッ! 我ラ総員健在ニテ意気高揚デアリマス!』
「それは良かった。では、案内していただけますか?」
『ハッ! デハ、此方ヘ』
蒼褪めた兵士は再度敬礼をすると、軍馬に跨がり案内を始める。
イタリカの城壁では、緑の斑の服を着た者達と磯谷が見れば大喜びする事間違い無しな派手な女性達が呆然と、先導されてイタリカに近付いて来る車列を見ていた。
その頃の『門』周辺
タテセタ¦『フム、大体ハ終ワッタカ』
夕石屋¦『いやはや、流石は港湾棲姫様。この範囲を一人でとは、御見逸れ致しました』
タテセタ¦『ナニ、オ前達ノ支援アッテコソダ』
夕石屋¦『泊地型姫クラスには敵いませんよ』
タテセタ¦『泊地型ト言ッテモ、私ハ港湾。言ワバ港ダ。陸地ニオイテハ力ハ大キク制限サレル』
ポポポ¦『ネーチャ! アカイトカゲトンデル!』
ヲヲヲ¦『アカイトカゲトンデル!』
タテセタ¦『放ッテオケ。洋カ金剛ニ任セル』