バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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はい、今回は炎龍がどうなったか。洋さんぶちギレ事件とは?
洋さんと首領金剛の年齢が明らかに?

あ、活動報告にネタ置いてます。
もし、洋さんが召喚されたら?


グッバイ!炎龍

「さあ、始めマショウ」

 

見るからに高級感溢れる黒衣に身を包んだ女が笑みと共に告げる。

椅子に腰掛け足を組み、口の端に葉巻を挟むその姿は正に支配者と言えるだろう。

 

「手早く済ませマショウ。私も暇ではアリマセンカラネェ」

 

余裕の笑みと紫煙、議長も他議員すらも禁煙だと不謹慎だと声を荒げ注意する。お得意のそれが出来なかった。

 

「ふむン? どうしましタ? 質問をしないのデスカ?」

 

彼女も先程の恐怖と同格、下手な発言をすれば恐らく次は無いだろう。

それが発言を許さなかった。

 

「ン~、どうシマショウカ。何も無いなら、私達は帰りマスヨ?」

 

灰を灰皿に落とし金剛は席を立とうとしたが、ふと何かを思い出したかの様に背後に控える霧島に言った。

 

「あア、そうでしタ。霧島、夕石屋かラハ?」

「はい、御姉様。編集済みと連絡があります」

「宜しイ。でハ」

 

霧島は一礼すると懐から端末を取り出し、何かの準備を始めた。

それに一人の議員が問う。

 

「あの、一体何を?」

「皆様が知りたいであろう『事件』の映像を再生する準備です。夕石屋、聞こえますか?」

 

夕石屋¦『はいはい、副長。聞こえますよ』

副長¦『映像の準備を』

夕石屋¦『了解です!』

紅茶姉¦『無編集で流しナサイ』

夕石屋¦『良いんですか?』

紅茶姉¦『真実とは得てして苦いものデス。口に甘い真実等ありはしマセン』

 

目の前に置かれた小さな端末から、四つのディスプレイが投影される。

そこには『鳳様ぶちギレ事件』とあった。空間に投影されたディスプレイに議員達は驚くが、金剛は構わず指示を出していく。

 

「では、見せマショウ。貴方達が知りたがっていた真実ヲ」

 

その映像は穏やかな風景から始まった。

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

「いや、なんか済みませんね」

「いやいや、お気になさらず。困った時はお互い様と言いますし」

 

緑色の斑服を着た伊丹と同じく緑色のジャケットを着た五百蔵が作業を続ける。

片手にはフライパン、片手にはお玉を持って二人は炊き出しの最中であった。

 

「叔父貴、肉粥追加入ったぜ!」

「はいはい、その鍋ごと持ってちゃいなさいな」

「あいよ。天龍、そっち持て」

「へいへいっと」

 

木曾と天龍の眼帯コンビが粥が満杯に入った大鍋の取っ手に担ぎ棒を引っ掛け運んでいく。

 

「粥の追加だ!」

「残さず食えよ!」

 

二人の威勢の良い声に人々が集まり列を成していき、人々が持つ皿に並々と粥が盛られていく。

 

「しかし、五百蔵さん。これだけの食材をよく持ってましたね」

「あ~、これは私ではなく義姉さんが」

「義姉さんと言いますと、まさか」

「ええ、彼処で葉巻を吹かしている彼女です」

 

伊丹がチラリとそちらに目をやると、件の金剛が葉巻を吹かしながら、帝国の騎士団の代表者であるピニャ・コ・ラーダと会談をしているのが目に入った。

 

「確か、捕虜の返還でしたか?」

「ええ、私共の方にもあの『門』が開きまして、彼方の彼等が捕縛したのですよ」

 

五百蔵が溜め息混じりに伊丹に告げる。その目線の先には蒼褪めた顔色の軍人達が直立不動の体勢で待機していたが、伊丹が見ている事に気付き全員が敬礼をしてきた。

 

「伊丹さん、貴方何を?」

「いやぁ、何が何だか」

 

さっぱりです。

そう伊丹が言おうとした時、小柄な少女が二人に駆け寄ってきた。

 

「提督! 伊丹さん!」

「どうした? 吹雪君」

「何か大きいものが近付いて来ます!」

 

吹雪が片手でヘッドホンを押さえながら二人に報せる。

五百蔵は即座に野外用の簡易コンロの火を消し、伊丹は周囲に指示を出す。

 

「倉田! 栗林! 何かが近付いて来ている! 避難誘導急げ!」

「了解!」

「吹雪君! 最接近は何時になる!?」

「かなり速いです! このままだと間に合いません!」

 

舌打ちを一つ、最悪の事態を予測しつつも全員が避難誘導を進めていく。

 

ほなみん¦『五百蔵さん! ドラゴン! 真っ赤なドラゴン来てる!』

鉄桶男¦『はぁ?! いくらファンタジーな世界でもそれは無しだろう!』

鉄桶嫁¦『目標視認しました! 到着予想残り三十秒!』

 

間に合わない。壊れた城門の向こうに赤い片腕を失ったドラゴンが迫る。

逃げ遅れた住民をその顎に牙に掛けようと、口を開き下降する。木曾と天龍が腰の刀に手を伸ばし、摩耶と鈴谷が格納空間から砲を展開する。

しかし、照準が抜刀が間に合わない。否、間に合ったところであの質量は止められない。

誰もが目を逸らし、直ぐに自分達に降り掛かるであろう恐怖に身を強張らせる。

 

しかし

 

「無作法ですね」

「「「「「「「は?」」」」」」」

 

自分達の背後から飛来した槍、恐らく槍が何事も無い様な声と共に赤いドラゴンの眉間辺りに激突し快音を発する。

赤いドラゴン、炎龍からしてみれば人間が振るう槍等小枝にも劣るものだろう。しかし、その小枝にも劣る棒きれに自分が止められた。

それは炎龍にとって屈辱以外の何者でも無かった。

怒りを込めた咆哮がイタリカに響き渡る。

 

「伊丹ニ尉、テュカさんを」

「え? あ!」

「洋さん!」

 

咆哮が降り頻る中、鳳洋が駆けた。

背後には錯乱するエルフの少女が居る。その少女を伊丹に任せ、鳳洋は駆け抜けた。

誰しもが無謀だと思った。相手はあの災厄と呼ばれる古代龍。

一度現れれば過ぎ去るを待つしか無い存在、それに向けて和装の女が一人瓦礫に突き立った剣を抜き斬りかかる。

 

「ちっ! 鋼も鍛造も甘い粗製ですか」

 

一歩、抜いた剣は炎龍の頑健な鱗に砕け散る。

ならばと二歩、配下が抜き放った剣を突き放つ。

これも砕け散る。鋼が柄が鍔の飾りが散り眼前を彩る。

三歩、鬱陶し気に振るわれた尾を避け一足飛びに下がる。

 

「御二人共、腰の物を借ります」

「「イエスマム!」」

 

下がった場所に居た天龍と木曾の刀を借り、再度の四歩。

木曾の軍刀は鱗を裂いたが肉を裂けず折れ、追撃の五歩、天龍の刀が肉を裂くが刃が食い込み抜けない。

 

炎龍と鳳洋の居る場は誰も居ない城門の外、炎龍は目の前に居る人間を焼き払おうと火炎を吐いた。

 

「洋さん!」

 

誰が叫んだか、その名の持ち主は炎龍が吐いた火炎に飲まれ見えなくなった。

鉄を焼き、石を焦がす火炎。『ただの人間』がそれに耐えられる訳が無い。

 

「何であの人はあんな事を!?」

 

彼女を知らぬ者が叫ぶ。何故と、無謀を嘆く。

炎龍の勝利の咆哮が響く。

しかし、その中で

 

「あは」

 

愉しげな笑いが聞こえた。

炎龍は見た。己の炎の中に立つ人間を。

肉は焼け焦げ、骨は崩れる。その炎の中には居た。

怪物が。

 

「良い。実に良い」

 

聞こえた。歓喜の声が。

喜びにうち震える声が聞こえた。

 

「何時以来ですか? 焼かれたのは?」

 

生きとし生ける者を焼き殺す炎を纏い、それは居た。

口を三日月に釣り上げ笑う。それが居た。

 

「ソロモン諸島の焼夷弾の雨以来ですか!」

 

鳳洋が虚空から錫杖を抜き放ち炎を祓う。

(かん)の音が響き火の粉が舞い散る。

それは幻想的であった。

火が舞い、鈴に似た音が鳴り響く。

火を祓い龍を鎮める巫女、誰もがそう思っただろう。

その顔に浮かぶ凶悪な笑みを見なければ。

 

「では、往きましょう。そして、生きましょう」

 

戦場でこそと、彼女は駆けた。

満面の笑みで錫杖を振るえば鐶が鳴り、鱗が甲殻が砕け散る。炎龍の爪が牙が尾が鳳の血肉を裂き、華と咲かせる。しかし、その度に鳳は不死を為し、紅を舞わせる。

歓喜にうち震え、鳳洋は戦場を舞う。

歓喜の最中を舞っていた。

 

「は?」

 

その筈だった。

 

「ああ、あれはいけマセンネ」

「義姉さん、一体何が?」

「冬悟、龍という存在は私達にとって闘争を是とし、戦いに散る事を絶対とする者達を言うノデスヨ」

「なら、あれは」

「ええ、その通りデス。アレは洋の逆鱗に触れマシタ。仮にも龍が恐怖で闘争から逃げる等あってはなりマセン」

 

金剛の言葉の通りに鳳は怒りを露にした。

嘗ての戦争、自分達が生きた過去の日々。

龍の名を冠する者達、その者達の生き様。

闘争に生き、戦場での死を絶対とした気高き龍達。

それらを汚す行い、炎龍は目の前の化け物に恐怖し逃げた。

 

炎龍からしてみれば知ったことではないだろう。炎龍は知能が高いとは言え、言ってしまえばただの獣だ。

災厄と呼ばれても、その実態はこの世界に生きる一頭の獣でしかない。獣が恐怖に、自分の命惜しさに逃げるのは当然と言える。

 

だが、それを化け物は赦さなかった。

 

「龍が逃げる? ただの一羽、ただの一羽の鳳から龍が逃げる? ふざけるな!」

 

赦さない。

獣の理等知ったことか。龍の名を汚すな。

鳳は虚空から一張りの和弓を引き出し、矢をつがえる。

弓弦が引き絞られ、空気が震える。持つ両腕に歯形に似た亀裂が掻き毟る様に走る。だが、それに構わず狙うは羽ばたき逃げる彼方の炎龍。

限界まで引き絞られた弓弦が手から離され、鋭い音と共に矢が大気を裂き、両腕が紅い華を咲かせた。

 

炎龍は見た。放たれた矢が背後から自分に向かって真っ直ぐに飛んで来るのを見た。

だが、炎龍はそれを無視した。人間が放つ矢など恐れるに足らず、例えそれが己を恐怖させた化け物の放ったものであろうと、己を絶つには至らぬと。

 

もし、ここで炎龍が回避を選んでいれば、結果は変わっていたかもしれない。

回避を選ばず、無視を決め込んだ炎龍が最期に見た光景は、化け物が放った矢と青い見慣れた空であった。

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

「これが、貴方達が知りたがっていた真実デス」

 

如何でシタカ?

騒然としていた場は静寂に包まれていた。

自分達の知る常識からあまりに外れた光景、いっそ神話の話とでも言ってくれた方がましにも思えた。

 

「まあ、私と洋が現役の頃。百年前の大侵攻では当たり前の事デシタガ」

 

何かサラッとまたとんでもない話が出てきたが、議員も伊丹達も五百蔵もキャパオーバーで固まっている。

 

「ふむン、質問が無いなら、私達は帰りマス」

 

席を立つ金剛に続いていく面々。五百蔵だけは頭を捻りながら榛名に袖を引かれていた。

 

「ああ、そうデシタ」

 

金剛が立ち止まり、振り向いた。

 

「言い忘れてましたが、この国は『蠅』が多いデスネ」

「蠅ですか?」

「ええ、『蠅』デス。『三匹の蠅』が耳元で飛び回り、とても耳障りデス。では、伊丹。私達は先に行ってマスヨ」

 

金剛が去り、残った伊丹達に対する質問も何処か空回りする様な内容に、参考人招致は終わった。

 




炎龍戦後

「洋」
「何だ? 金剛」
「赤城の弓を怒りに任せて使うからそうナリマス」
「・・・」
「まあ、赤城も思うところはあったノデショウ。持っていかれたのが両腕だけで良かったデスネ」
「・・・まったく、情けない」

とか、やり取りがあったりなかったり。
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