バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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最近、全ての生命に殺意を抱く花粉症の季節となり、更新速度が落ち、感想も返せず、頭が回らぬチクショーメ!

もうこうなったら、人類悪となり人理を焼却するしかない!


オッサン 最近、腹が出てきたかなとランニングを始める
吹雪 食欲全開
榛名 ダイエットメニューに挑戦
睦月 にゃしぃとか言わない
悪ガキ隊 いつも通り
鉄腕ちゃん 鉄腕ちゃん


オッサン、挑戦

町の服飾店前、摩耶と天龍は来るべき二人を待っていた。

 

「オヤジと榛名、遅いな」

「歩きだからな、仕方ねえよ」

 

吹雪と睦月の服を買いに会計を済ませようとしたまでは良かったのだが、その時になって持ち合わせが不足している事が分かり、恥を忍んで五百蔵と榛名に救援を求め、今は摩耶と天龍の二人が店の外で五百蔵達を待ち、他の面子が店内でという具合になっている。

 

ズーやん¦『ねえねえ、オジサンと榛にゃんまだ?』

元ヤン¦『いいから、中で待ってろ』

船長¦『叔父貴はまだか?』

邪気目¦『座ってろ』

空腹娘¦『お腹が空きました』

にゃしぃ¦『吹雪ちゃん、店内は飲食禁止だからね』

 

表示枠内では二人を待つ声と空腹を訴え、それを止める声が騒がしく響いていた。

まだかと待ちわびて、目の前を行き過ぎる雑踏を見てみるが、二人らしき人影は見当たらない。

五百蔵も榛名もかなりの高身長なので、人混みでも直ぐに見付かる。

しかし、それが見当たらないという事は、まだ近くには居ないという事だ。

 

鉄桶男¦『皆何処に居るのかね?』

元ヤン¦『オヤジ、何処に居る?』

鉄桶男¦『え? 言われた服屋に来たけど』

鉄桶嫁¦『冬悟さん、ここ本館って書いてます』

邪気目¦『あぁ、そっか。オッサン、俺らは別館だ』

鉄桶男¦『うわ、マジか』

元ヤン¦『その店の横道入ったら直ぐだから』

鉄桶嫁¦『横道というと、ああ今看板が見えました』

 

五百蔵と榛名からメッセージが届くが、どうやら二人は本館の方に行っていた様だが、行き先を聞き直して直ぐに合流し、足りない会計分占めて16294円の支払いを済ませて、五百蔵の財布は大打撃を被った。

 

「次からは財布の中身確認してね」

 

五百蔵のオッサンがかなり軽くなった財布を片手に悲し気に呟いた言葉である。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「さて、皆。準備は良いかな?」

「良いけどよ、オッサン」

「何かな? 天龍君」

「なんでスーパーなんだ?」

 

支払いを終えた五百蔵達が来たのは町にあるスーパー、所謂主婦の戦場である。

天龍が言う様に、何故スーパーに来たのか?

それは

 

「本日の夕飯、肉じゃがの肉を買います」

「いいですか、天龍さん。ここで肉が買えなければ、本日は肉じゃがではなく、ただの『じゃが』になります」

「マジか」

 

天龍の言葉に頷く五百蔵と榛名。事実、北海鎮守府には肉の備蓄は無い。

なので、このスーパーで肉を手に入れなければ、肉とジャガイモの煮物である肉じゃがは、ジャガイモと人参の煮物の『じゃが』になってしまう。

天龍達も艦娘であるから、人よりかは食べる。なら、肉の入ってない『じゃが』より肉が入っている『肉じゃが』の方が良いに決まっている。

 

そう、そっちの方が良いに決まっている。

天龍達でさえそうなのだ。

そこで彼女が反応しない訳が無い。

 

「それはダメです!」

 

空腹索敵棲姫のダイナミックエントリーである。

 

「吹雪君?」

「いいですか、提督。肉じゃがというのは元々ビーフシチューを真似て作られたと言われています。シチューは多種多様な具材を煮込んだ料理ですが、肉じゃがとはその名の通りに、肉とジャガイモに人参等を醤油で味付けした日本の家庭料理なのです。なら、そこに肉が無ければ肉じゃがではなく、それはジャガイモの煮物です。肉じゃがではありません!」

「ア、ハイ」

「そして、肉じゃがが家庭料理として幅広く浸透したのは、戦後出稼ぎ等から帰ってきた家族が買ってきた牛肉を使って作り、それが連綿と受け継がれ各家庭の味を築き上げ確立された料理、それが肉じゃがなのです!」

「吹雪ちゃんストップストップ」

「ふぶっちふぶっち、待って待って、ペースを落とそう」

 

睦月と鈴谷が止めようとするが、ヒートアップした空腹索敵棲姫は止まらず、家庭料理の起源にまで遡り始めたが、これ以上はマズイと榛名が菓子を与えて停止、語りを止めて菓子を口いっぱいに詰め込み食べ始める。

 

「これでよし」

「榛名も中々に吹雪の扱いに慣れてきたな」

「も? も~もも~も~もももも」

「鈴谷は吹雪と睦月見ててくれ」

「買い物は俺達と叔父貴で行ってくる」

 

木曾が言い、鈴谷吹雪睦月の三人を残した六人で店内へと入っていった。

 

「んじゃ、私達はあのベンチで休もっか」

 

鈴谷達が五百蔵達を見送り、スーパーの出入り口横にあるベンチに腰掛け、買い物の終わりを待っていると

 

「ぬわー!」

「木曾!?」

 

店の自動ドアが開き、木曾が転がり出てきた。見れば艤装の装甲繊維製のマントと軍刀を格納空間から取り出し装備している。

買い物とは思えぬ状態に、一体何があったのかと鈴谷が木曾に問う。

 

「木曾、一体何があったのさ?」

「うぉおぅ・・・効いたぁ・・・」

「ん、おう、鈴谷か」

 

問われた木曾が頭を振りながら鈴谷へと向くと、小破まではいかないが僅かな損傷がマントにある。

何故、スーパーで艦娘が損傷を負うのか?

頭を捻る鈴谷だが、その答えは直ぐに分かった。

 

『さあさあ始まりましたタイムセール! 本日二品目はこちら! 国産鯖一尾五十円五十円! 現品限りの早い者勝ちです!』

 

タイムセール、生きる糧を求めて狩猟者が血肉を賭けて争う現代の戦場、現代に生きる神話生物『シュ=フ』達の縄張り、そこから弾き出されたのだろう。

さっきマイク放送をしていた店員が『シュ=フ』の一人のタックルではねられ床に叩き付けられていた。

 

「うわぁ・・・」

「にゃしぃ・・・」

「何をどうしたらこうなるかなぁ?」

 

上から吹雪、睦月、鈴谷の順の感想である。

木曾はマントを整え軍刀を持って再度突撃していった。

いつの間にか、鉄腕ちゃんまで吹雪の格納空間から出てサバトに参戦していた。

 

『さあ本日のメインイベント! 鳥股肉! 鳥股肉一枚がなんと十円! 十円の赤字確定御奉仕特価!』

 

メインイベントの始まりを告げる鐘が鳴り、守るべき者達の為の戦いが今幕を開けた。

まず最初に群れから飛び出したのは木曾、店内から弾き出されてからの急速な加速で目当ての鳥股肉へと走る。

しかし、木曾の伸ばした手は届かず横からのシュ=フによるタックルで弾かれバウンド、鳥股肉四パックがシュ=フの手に渡る。

 

続くは摩耶、拳を鳴らし低い体勢から突撃。

シュ=フを一人、二人と弾き飛ばす。だが、シュ=フは尽きない。二人分の穴から更なるシュ=フが現れ、摩耶を飲み込む。

 

「天龍! オヤジ!」

 

しかしそれが二人の狙い、自分達が犠牲となり突破口を開く。

艦娘である自分達も圧倒的膂力を持つ五百蔵でも、そうでもしなければこのシュ=フを突破出来ない。

木曾と摩耶の犠牲を踏み、天龍と五百蔵は鳥股肉へと・・・

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

『ありがとうございました~』

 

「あ、榛にゃん。買い物終わった?」

「はい、足りなかった人参等を買ってきましたが・・・」

 

『刀折れたーっ!』

『船殻に罅入ったぞ!?』

『おうわー!』

『叔父貴ー!』

 

矢尽き刀折れ、それでも望みを手に入れようとする者達の戦いが、店内で繰り広げられていた。

 

「私も行った方が良いのでしょうか?」

「いやいや榛にゃん、あれに参加したら色々終わりだと思うよ?」

「あれ? 鉄腕ちゃんだ」

 

阿鼻叫喚のサバトを横に、鉄腕ちゃんが大きめのビニール袋を掲げてガシャガシャ這って戻って来た。

榛名が袋の中身を確認すると、鳥股肉二枚入パックが十パック、合計二十枚の鳥股肉を手に入れていた。

 

「流石、鉄腕ちゃん!」

 

吹雪に袋を渡しサムズアップして、格納空間へと戻っていく鉄腕ちゃん。

肉じゃがの肉を得る為の戦いが終わった瞬間である。

 

「冬悟さん、私達は先に帰って下拵えしてますね」

『『『あ、はーい』』』

 

肉じゃが戦線ここに終結。




次回予告?


あきつ丸ラブストーリー本格始動?

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