バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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はい、あきつ丸ラブストーリーとは何だったのか?
そんなお話になりました。あ、感想返信は暫く待ってください。お話書くのでそこまでのよりょくが・・・


今回のお話の元ネタに気付いた人は、私と握手!




タイトルの意味は、百日草と桔梗の花言葉を繋げて捻ったりした意味で「亡き貴方との再会を願う」とかね。


百日の桔梗

夕石屋¦『緊急事態です』

ヒエー¦『今度は何しました?』

わかば¦『言え』

副長¦『今なら若葉は免れる様に弁護してあげましょう』

夕石屋¦『私達への熱い風評被害!?』

ヒエー¦『そういうのいいから、早く』

夕石屋¦『では、執務室に集まってください』

 

説明しますので。

唐突に開かれた夕石屋の表示枠、これが北海、横須賀鎮守府、両鎮守府を巻き込んだ騒動の幕開けになるとは、今は誰も思わなかった。

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

「あれ? 霧島ちゃん。どうしたの?」

「いえ、夕石屋の二人から執務室に集まる様にと」

「ん~? 何だろね」

 

磯谷が『一通の手紙』を机に置き、首を傾げて菓子を口に放り込み咀嚼し飲み込む。

 

ほなみん¦『ねえねえ、何したの?』

夕石屋¦『あっれ? 私達の扱いが?』

ほなみん¦『ははは、何を今更』

蜻蛉玉¦『おやぁ? 何でありますか?』

紅茶姉¦『ふむン? 何かあったみたいデスネ』

ヒエー¦『お帰りなさいませ。御姉様』

紅茶姉¦『ええ、今帰りマシタ。で、何がありマシタカ?』

副長¦『それは、夕石屋が説明するそうです』

紅茶姉¦『ほほゥ?』

夕石屋¦『えっとぅ・・・』

 

夕石屋が言い淀み、何があったのかと全員が首を傾げる。

この二人がやらかすのは普段通りだが、ここまで言い淀むのは珍しい。

その全員が思案する中、一つの表示枠が開いた。

 

七面鳥¦『あれ? そう言えば先生は?』

ほなみん¦『洋ちゃん? 見てないけど』

焼鳥¦『提督、先生をちゃん付けですか?』

長屋¦『まあまあ、加賀さん』

七面鳥¦『てかさ、私達がこうやって話してたら先生来るよね?』

焼鳥¦『・・・夕石屋?』

長屋¦『・・・・・・夕石屋?』

夕石屋¦『・・・・・・・・・・・・』

七面鳥¦『おい、なんか言えよ』

ほなみん¦『まさか、洋ちゃんに何かあったの?』

副長¦『これは若葉ですね』

わかば¦『・・・・・・』

夕石屋¦『ヴェッ!』

 

夕石屋の若葉が決定し、二人が奇声を発したところで横須賀鎮守府主要メンバーが執務室に揃った。

 

「全員揃って、後は夕石屋の二人だけデスカ?」

「はてさて、何があったのでありましょうな」

「何があったのやら」

 

あきつ丸が軍帽を被り直し、普段と変わらぬ飄々とした態度で金剛の左斜め後ろに立つ。因みに、右斜め後ろは霧島が立っている。

 

「「し、失礼しま~す・・・」」

 

控え目なノックの後、執務室の扉が開かれ夕石屋の二人が入室してきた。

さて、何をしたのかと、全員が二人を見て驚愕に固まった。

 

「は?」

「え?」

「何?」

「おや、これはこれハ」

「え、ちょっ、マジで?」

 

固まった全員の視線はある一点に集中していた。

視線の先には横須賀鎮守府工廠責任者の明石と夕張が縮こまって立っていたが、視線は二人には向けられていない。

全員の視線が向けられている先は夕石屋ではなく、その二人の足元に居る小さな人影であった。

 

「子供、でありますか?」

「これは一体?」

「白状しなさい。何処で拐って来たのです?」

「まさか、家から犯罪者が出るとは・・・」

「「待って! 本当に待ってください!」」

 

さあ、自首しろとか、今なら罪は軽くなるとか言われながらも、必死に無実を訴える夕石屋の二人を横に磯谷と金剛の二人は、きょとんとした表情の子供を見ていた。

 

「ふ、二人とも、まさかとは思うけど・・・」

「「はい、そのまさかです・・・」」

 

この子供は鳳洋様です。

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

鉄桶男¦『それで? 何がどうしたら洋さんが子供になる訳よ』

ほなみん¦『いやぁ、こっちも何がなんだか』

ズーやん¦『鳳様ってさ、時々ビックリどっきり生態かますけど、今回はマジでビックリどっきり生態だよ』

空腹娘¦『洋さんに聞けないのですか?』

副長¦『これが、肉体と共に知能も幼児退行しているらしく』

鉄桶嫁¦『聞けない訳ですか』

 

北海鎮守府の表示枠が向く先、何をする訳でもなく椅子に座り周囲を見ている洋が居た。

 

元ヤン¦『で、戻んのか?』

邪気目¦『どうなんだ?』

船長¦『戻らなかったら、ヤバイぞ』

にゃしぃ¦『これ、何が原因なの?』

 

下手をしたら、自分と吹雪よりも幼い姿となった洋を見ながら、睦月が問うた。

洋は相変わらず、何をする訳でもなく椅子に座ったまま動かない。

 

夕石屋¦『えぇっとですね、高速修復剤あるじゃないですか。それの新型、飲料可能なタイプの実験をしてたんですよ』

 

夕石屋の話はこうだ。

艦娘治療に使われる高速修復剤、これは患部に塗布するか、それに浸かるかの二種類の使用法がある。

しかし、その使用法の浸かるタイプ、所謂入渠は重傷者に使われ修復剤を大量に使用する為、コストが掛かる。

他鎮守府の重傷者の受け入れもやっている横須賀鎮守府としては、そのコストを如何に削るかが問題になっていた。

 

なので、新型の高速修復剤を開発し実験をしていた。

飲料可能な高速修復剤、これが完成した時二人は大いに喜んだ。

喜んだが、それも束の間、飲料用としては致命的な欠点が見付かってしまった。

 

不味い、夕石屋二人が治験した結果出した致命的な不味さ。

不味い兎に角不味い、咳止めシロップを濃縮還元し人工甘味料サッカリンを煮詰めて加えて、蜂蜜とガムシロップで割ったかの様な甘さと謎のミント風の清涼感と爽快感、これ等が口内でタップダンス踊りながらマイムマイムで迫ってくる。

 

この味には流石の夕石屋も参った。しかも、咳止めシロップはキャップ一杯だが、この新型修復剤は夕石屋の度重なる決死のトライにより、一般的な湯飲み一杯分を飲まなければ効果が無いという事が判明した。

 

最悪の結果が判明し、途方に暮れる夕石屋。二人の前には湯飲みやティーカップにコップにショットグラスにワイングラス等々、兎に角味がダメならせめて気分だけでもとあつめて注いだ容器が並んでいた。

 

そこで騒ぎを聞き付けた洋がやって来て、話をした迄は良かったのだが、夕石屋が集めた容器の一つが洋の愛用する湯飲みに酷似しており、喉が乾いた洋が誤って新型修復剤を飲んでしまった。

 

 

夕石屋¦『それで、『一口』飲んだ鳳様が私達が目を離した隙に・・・』

鉄桶男¦『子供になったと』

夕石屋¦『はい』

ズーやん¦『あれ? 二人も飲んだなら何で変化無いのさ』

夕石屋¦『恐らくですが、私達は規定量を時間を置いて飲んだのに対し、鳳様は一口飲んで止められたのと、鳳様自身の体質的な何かが原因かと・・・』

空腹娘¦『ビックリですよ』

元ヤン¦『で、さっきも言ったが戻るのか?』

夕石屋¦『元に戻る事は確実です。先程調べましたが、鳳様の体内で薬効成分が凄まじい勢いで駆逐されてますから、遅くても明日の朝には元に戻る筈です』

船長¦『なあ、天龍』

邪気目¦『言うなよ、木曾』

蜻蛉玉¦『ビックリどっきり生態でありますな』

にゃしぃ¦『言っちゃったよ、この人・・・』

鉄桶嫁¦『あきつ丸さんですから・・・』

 

期限は一日、あの鳳洋の回復力を以てしてもこれだけの時間が掛かるという事に、全員が新型修復剤に不安を覚えるが、夕石屋はこの症状は洋だけのものであり、艦娘という概念に近い洋には少々効き過ぎた為、肉体と精神が幼児退行したのではないかとの見解を示している。

事実、凄まじい勢いで薬効成分が駆逐され、退行した肉体と精神の再構成の準備を進めているらしい。

 

「あれ? 洋ちゃん、どうしたの?」

 

何をする訳でもなく椅子に座った洋が突然首を動かし、扉を見たのに磯谷が気付いた。

じっと扉を見詰め、何をしているのかと全員が洋を見ていると、執務室の扉が開かれた。

 

「はいはーい、呼ばれた瑞鶴ですよ~」

「よく来まシタネ、瑞鶴」

「来たけどさ、総長。この子供って」

「瑞鶴、明日の朝まで洋の面倒を見ナサイ」

 

開かれた扉から現れた瑞鶴、その瑞鶴に初めて反応を示し彼女の足元へと歩み寄り瑞鶴の袖を摘まむ洋、そして瑞鶴に幼児退行した洋の世話を命じた金剛。

 

ーーえ? 何で瑞鶴?ーー

 

全員が思った。

 

「え? 何で私いぃぃぃ?!」

 

何でお前だと。

さあ、瑞鶴の明日、否、今日はどうなる?

 




次回

幼児退行した洋さんの世話を命じられた瑞鶴

「先生、どうする?」
「瑞鶴さん、あれは何ですか?」

しかし、瑞鶴は幼い洋に違和感を覚える。

「瑞鶴さん、私は瑞鶴が好きです。ここの皆が好きです」
「うん」
「だから、瑞鶴さんが望むなら、私はどんな敵だって消してあげます」
「先生、先生は戦うのが好き?」

瑞鶴の言葉は洋に届くのか?


そして



「恋を、したのでありますよ」

だから、せめて

「好きな者に想いを伝えてほしいのであります」

あきつ丸の恋とは?


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