バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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今回のハイライト

仁田君頑張る
神通、新型UMA発見


吼えろ、跳ね返せ! 配点¦(いやぁ、キツいッスわ)

「荒谷団長! 何故、若様と客人に刃を?!」

「語ると思うか?」

 

荒谷の刃をライオットシールド受け止めた仁田は叫び、右に構えた短槍を横薙ぎに振るうも、簡単に避けられる。

だが今は兎に角、荒谷から距離を取りたい。

 

荒谷の機動殻は加速性能と格闘性能を重視した機体、自分は安定性能と汎用性を重視した機体、下手に動けば

 

「仁田さん!」

 

自分の背後、護るべき人物に刃が届く。それだけではない。

 

「何がどうなってんのよ、これ!」

「兎に角、今はあの隊士殿が耐えている間に退路の確保であります!」

 

二人の艦娘、仁田の記憶が正しければ確か横須賀所属のあきつ丸と瑞鶴の筈、何故にこの部屋に居るのかは知らないが、主を護る為に協力をしてくれている。

 

神宮の団長からの通信を受けて部屋に飛び込んだ瞬間は、この二人が啓生に害を成そうとしていて、荒谷がそれを処断しようとしていると思ったが、事前情報と荒谷の太刀筋からそれは違うと判断、構えた大楯でその太刀を防いだ。

 

仁田は思う。

やっぱ、団長クラスは頭おかしい、と。

仁田が防いだ太刀は二撃目、一撃目はあきつ丸が寸での所で受け流してくれた。それで出来た隙が無ければ、今頃は斬殺死体が三つ転がる事になり、仁田も直にその仲間入りをしていただろう。

しかし、剣撃が大楯を削る音と衝撃の中、仁田は足元に散らばる破片を見る。あきつ丸が格納空間から咄嗟に引き抜いた刀だったもの、それは荒谷の一撃を〝受け流した〟にも関わらず鞘ごと粉砕され床に散らばっていた。

 

「ふむ、中々の腕だ。一隊士にしておくには惜しいな」

「それは、どうもっとぉ!」

 

艦娘が扱う刀剣、その強度は普通の刀剣の非ではない筈であり、格闘性特化型の機動殻の一撃であっても簡単には砕く事は出来ない。

その筈なのに、荒谷は一太刀でそれを砕いた。

 

ーーイカれてる・・・!ーー

 

軋みを上げひしゃげ始めた大楯を短槍で支えつつ、内心で毒づく。

今、耐えている大楯だってそうだ。要人護衛の為、強度は艦娘の砲撃にも耐えられる設計になっている。

軋みはしても、そう簡単には破損しない。

しかし、荒谷の一撃を受ける度に大楯は軋みひしゃげ、身を守る機動殻ごと弾かれそうになる。

 

[警告 防盾強度が四割を切りました。回避してください]

 

分かってんだよ

 

[警告 腕部負荷が三割を越えています]

 

知ってる。さっきから腕が熱い。

 

[警告 脚部負荷増大、脊柱部負荷増大、回避してください]

 

仁田は回避を選ばなかった。

回避すればどうなるか。それが解らないなんて事はない。回避すれば、自分の背後に居る三人が死ぬ。

回避すれば、大楯が破壊されれば、自分が死ぬ。

埋め難い実力差、一般隊士と団長、人間と化け物、どうにもならない、どうにも出来ない実力差、死という概念が形を持って迫ってくる。

 

横薙ぎ、防御。強度三割

袈裟懸け、防御。防盾が斜めに裂けた

逆袈裟、防御。防盾が半分になった

平突き、防御。貫通、機動殻の装甲を半ばまで

機動殻のパワーアシストが低下する。バイザーにノイズが走る。荒谷が見えない。速すぎる。

腰の後ろに蒼い炎がちらついている。

嗚呼、くそったれ。この狭い部屋で〝跳躍器〟使ってたのか。そりゃ、追い付けねえわ。

嗚呼、畜生め。覚えてろよ、団長はこえぇぞ?

〝死神〟に〝魔王〟だぞ? 護衛を主にする近衛隊士の名前じゃねえぞ?

あれ? 団長の名前って、それだっけ?

 

「終いだ」

「仁田さん!?」

 

くそったれ!

最後の最後くらい、カッコつけさせろっての!

 

仁田は破損した大楯を手放し、横薙ぎの一撃を避ける為に後ろへ倒れ、大楯を蹴り飛ばした。

狙いは長刀を振り下ろそうとする荒谷の腕、盾による損傷は期待していない。

狙いは別にある。

 

「若様と御二人! 窓へ!」

 

言うや否や、あきつ丸は啓生を抱え瑞鶴は弓を構え、窓へと走り出した。

窓は防弾製の素材で出来ているが、〝質量攻撃〟は考慮していない筈、だから仁田は後ろへ倒れ背が床に着く前に背部の跳躍器に点火した。

 

「ぐぬっ!」

 

急激な加速、それはそうだ。普通はしない出力で跳躍器を使っているのだ。

仁田の意識が一瞬途切れそうになるが気合で引き戻し、三人を抱えて窓へと飛ぶ。

 

「やらせると?」

 

蹴り飛ばした大楯を弾いた荒谷が迫る。だが、それが仁田の狙いだ。

気取られぬ様に声に出さず機動殻に指示を出す。大楯は弾かれ荒谷の背後にある。位置的にも丁度荒谷の機動殻、その跳躍器の真後ろ。

 

ーー大楯、爆砕!ーー

 

仁田の指示に大破した大楯に仕込まれた爆砕ボルトが炸裂し、大楯が弾ける。

荒谷の追跡が爆発で緩み、仁田は加速をそのままに窓を破り三人を抱えて外へと飛び出した。

 

「ちっ、油断か」

 

荒谷が急ぎ窓へと駆け寄るも、既に四人の姿は無く播磨の町並と海だけが見えた。

 

「荒谷団長」

「・・・若様が誘拐された。犯人は篁近衛隊士仁田善人と横須賀鎮守府所属のあきつ丸と瑞鶴だ」

「はっ」

 

騒ぎを聞き付けた〝斑鳩〟の隊士に荒谷は指示を出していく。

 

「〝死神〟め、良い部下を持っている。羨ましい限りだ」

「団長、神宮の神通が横須賀鎮守府を連れて式場から去ったと」

「そうか、神宮三笠の確保は?」

「予定した部屋には居なかったと」

「捜せ、捜し出し(しい)しろ」

 

破られた窓、その景色を見ながら荒谷は呟く。

 

「我等の悲願、断たせる訳にはいかぬ」

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「久し振りですね、天龍。〝死神〟がスカウトしてきた時以来ですか?」

 

と神通が言えば天龍は

 

「ああ、あん時は悪かったな」

 

と返す。天龍は神通が少し苦手だった。完璧主義者と言うかなんというか、言ってしまえば主を中心に世界が回っている系、嫌いではないが合わない。

 

「ええ、気にしてはいませんよ。御嬢様の推薦を蹴って横須賀鎮守府に行った事など、気にしていませんとも」

 

ーーめっちゃ、気にしてやがるーー

 

少しは克服出来たかと思ったが、勘違いだった様だ。

やはり天龍は神通が少し苦手だ。

自分や同僚ではなく、主中心世界理論論者。

天龍は神通の主に推薦を貰った覚えは無いのだが、ここで否定すると面倒な事になる。

 

「天龍天龍」

「あ? なんだよ鈴谷」

「なんで私達、神宮の御嬢様に会うのさ?」

 

天龍が見ると鈴谷の言葉に全員が頷くのが確認出来た。

確かに、自分達は一鎮守府に過ぎず、今日は只の招待客だ。

まあ、暗殺防止とか言うとんでも仕事があったりするが、それでも直に会うのは何か違う気がする。

強いて理由を上げるなら、呼ばれたから?

 

「御嬢様は貴殿方に強く興味を抱いておられます」

「お、おう」

 

神通は強く言い切り、天龍は軽く引いた。

天龍が軽く引き、その背後に並ぶ吹雪の背中では鉄腕ちゃんがじっと、神通を見ていた。

 

ーー新型UMA・・・!ーー

 

神通も密かに鉄腕ちゃんを見ていた。




次回

何あれ? ダサい・・・

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