バケツ頭のオッサン提督の日常   作:ジト民逆脚屋

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クイズ
〝死神〟はだれだ?!




感謝感激拍手喝采満員御礼!! 配点¦(どうしよう、これ・・・)

ーー新型UMA・・・!ーー

 

吹雪の背中でこちらを見る鉄腕ちゃんを見た神通は、不測の事態に内心で焦っていた。

神宮近衛団長にして神宮三笠中心世界絶対至上主義者の神通でも、日に二度UMAとの邂逅をぶちかますとは予想外以外の何物でもなかった。

 

ーー腕のみのUMA、これは間違いなく新種!ーー

 

目は無い筈なのに、何故か視線をあの腕から感じる。

そして、もう一つ感じる事がある。

 

ーーこの威圧は〝死神〟、否、それ以上・・・!ーー

 

自分が知る限りでの最強、篁近衛師団団長の〝死神〟以上の威圧を、神通は鉄腕ちゃんから感じ取っていた。

あの腕は一体何物なのか?

UMAである事は間違いない。艤装と先程あの吹雪が言っていたが、腕が艤装の駆逐艦娘なぞ聞いた事が無い。

稀に〝妙な駆逐艦娘〟の話を聞くが、そんなものが早々居る筈も無い。常識だ。

常識で考えるなら、腕が艤装はあり得ない。だから、あの腕はUMAだ。

 

「あの、なにか?」

「いえ、なにも」

 

そしてあの威圧感、先程は腕から発されていると思ったが、威圧は腕ではなく〝腕の中〟から感じる。

 

ーー中に何かを納めている?ーー

 

だとすれば、このまま主に会わせるのは危険だ。

正体不明のUMAで、何を納めているか解らないものを簡単に主に会わせる訳にはいかない。だが、主である神宮三笠からは〝全員〟連れてくる事と厳命されている。

 

まあ、途中、〝不測の事態〟があったりしたのだが。

 

あの腕が〝全員〟の内に入るのかどうかは不明だが、吹雪の艤装と言っているのだから全員に入るのだろう。

 

それに何かあったとしても

 

ーー中の何かごと斬れば良いだけの話ですねーー

 

神通は切り替え案内を進める後ろで、摩耶が吹雪に式場での鉄腕ちゃんがとった不可解な行動について問うた。

 

「そういや、なんで鉄腕ちゃんはグラスを叩き割ったんだ?」

「それがさっぱりでして、鉄腕ちゃんに聞いても喋れませんし」

「・・・毒でも入ってた、のか?」

 

摩耶が恐る恐る鉄腕ちゃんに聞くも、鉄腕ちゃんは首、いや手首を傾げるだけで何も分からない。

 

「怖い事言わないでよ、摩耶君」

「そうですよ」

「悪い悪い」

 

五百蔵と榛名の抗議に軽い感じで謝る摩耶、それに鉄腕ちゃんも何か思う事があったのかガチャガチャ抗議する。

 

「なあ、神通」

「なんです? 天龍」

「〝提督〟、知らねえか?」

「〝磯谷提督〟ですか? 見ていませんが」

「そうか」

 

呟き、天龍は静かに艤装の刀の鯉口を切った。

 

「待ちなさい、天龍」

「何を待つんだ? 神通」

「私は知らないと言っただけですよ?」

「ああ、確かに〝磯谷提督〟を見ていないと言ったな」

「ええ、そうです」

「おかしいよな? 俺は〝提督〟知らねえかって聞いただけで、家のとも磯谷とも一言も言ってねえぞ?」

 

天龍の言葉に全員が戦闘体勢に入る。それを見た神通は、失態と感嘆を得た。

失態はあんな鎌かけとも言えぬ雑な問いに引っ掛かった事、感嘆は即座の戦闘体勢にだ。

 

ーー素晴らしいですねーー

 

上から見てしまうのは、自分が上位であると疑っていないからか、それが油断に繋がると知りつつも神通は感嘆を得る。

戦闘体勢の鎮守府組を背後に神通は只歩みを進め、簡素な扉の前で振り向いた。

 

「天龍、皆様。先程の鎌かけ、即座の戦闘体勢、見事です」

「ほなみんをどうした?」

「落ち着きなさい鈴谷。その答えはこの扉の向こうにあります」

 

では皆様。こちらの部屋にて我が主である神宮三笠様が御待ちです。

 

柔らかな笑みと告げられた言葉共に、ゆっくりと扉が開かれた。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

「・・・皆様、御無事で?」

「な、なんとか・・・」

「啓生殿は?」

「はい、僕も」

「それは良かった」

 

荒谷から逃げ出す事に成功した四人は、播磨内部の一室に隠れていた。

状況は最悪の一言に尽きる。

斑鳩近衛師団団長の荒谷芳泉による突然の攻撃、しかも狙いはよりによって篁家の子息である篁啓生。

恐らく、荒谷だけでなく斑鳩近衛師団自体が裏切っていると思って間違いないだろう。

 

「だけど、何故荒谷団長はあんな事を?」

「分からないわ。と言うか、同じ近衛師団のあんたに分かんないんだから、一鎮守府所属の私に分かる訳無いわよ」

「そうですよね~」

 

荒谷達の目的を推測する二人だが、情報が無さすぎて話にならない。

どうしたものかと頭を捻る二人の横では、

 

「け、啓生殿」

「あきつ丸さん」

 

あきつ丸と啓生の二人がなんかモジモジしていた。

二人揃って色白の顔に紅が入り、何と言うか見ている二人が恥ずかしくなる。そんな雰囲気であった。

 

(あの? もしかしてですが)

(そのもしかしてよ)

(おお! お見事です、若様・・・!)

 

小声で話す仁田と瑞鶴、その横では何かを話そうとしては同時に話し出し、互いに譲り合うあきつ丸と啓生の姿があった。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

その答えはこの扉の向こうにある。神通はそう言って扉を開けた。

 

「御嬢様、御客様をお連れ致しました」

 

神通の言葉に返答は無く、無言の質素な部屋が広がっていた。

しかし、妙に仕込み臭いと言うべきか、何処と無く態とらしさが目立つ部屋だ。

言ってしまえばテレビドラマ等で使われるセットが近い、先程の神通の言葉も相俟って異様に胡散臭い。

 

「ねぇ、天龍」

「言うな、鈴谷」

「・・・テレビのコント番組で見た事あるな」

「それな」

 

全員が冷めた目で見る先、一つの舞台があった。

丸い、よくコント番組で見るタイプ。明らかに仕込みがあると部屋の中央部にそれはあった。

 

「おい、神通・・・ っ!」

 

この何処に答えがあるのかと、神通に問おうとした天龍だが、舞台周囲に浮かび上がったものに目を奪われた。

 

「なんで表示枠が?!」

 

五百蔵の叫び通りに、表示枠は横須賀と北海でしか実用されていない情報媒体だ。

その筈なのに、神宮三笠が待っていると言われている部屋でそれが幾重にも重なり舞台を囲っていく。

 

祝賀に似たラッパの音が響き、舞台の中央が四角い穴に開き、白く染まった冷気が漂い出す。

ラッパはホルンと音を重ね、何処からか色とりどりの照明が舞台中央部に照らされる。

 

「なぁ、やっぱりこれって・・・」

「ああ、そうだ。こんなセンスは奴しか居ない」

 

鎮守府組が見る先、ドライアイスの煙とカラーフィルムで色付けされた照明の中に堂々と浮かび上がる拡大された表示枠。

 

「提督、あれ凄くダサいです」

「確かに町内会レベルだけど、言っちゃダメだってさ」

 

七色のグラデーションに文字は金色銀色の二色メタル加工だった。

 

『感謝感激拍手喝采満員御礼!!』

 

神通以外が軽く引いている中、表示枠の下に開かれた穴から、一つの影が上がってきた。

エレベーターから舞台へと現れた一人、白い儀礼用衣装に身を包み長い黒髪をそのままに流した少女。

 

「皆様初めまして。私、神宮三笠と言います」

 

マントと袖を翻しスモークを払いながら、驚愕する皆を見ながら神宮三笠は言う。

 

「反応が薄いですね。では、こう言いましょう!」

 

高いテンション、馴れない場にはしゃぐ子供の様に言葉を続けた。

 

「今回、本日の結婚式と偽ったクーデター、その全ての絵図を描いた者だと!」




次回
何時になるかなぁ・・・?

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