短編集の世界   作:ホワイト・ラム

3 / 3
今回の話はとても胸糞悪くなる話です。
正直、ほぼ確実に気分を害します。
それでも構わないという人のみ自己責任でお願します。


ニンゲン→イヌ→ネコ→ネズミ

時刻はすでに午後10時。二人のサラリーマンが愚痴を零しながら駅前のビル群を歩いていた。

「ああ!!もう!!あの新入りむかつくんだよ!!……仕事は遅いくせに態度だけは人一倍デカくてよ!!」

「落ち着けって。お前も新入りの頃は似たようなモンだったぞ?」

喚き散らす男をもう一人が優しくなだめる。

「けどよー……」

「解ったって。そうだ!ほら、アソコ(・・・)行こうぜ?」

その言葉に喚いていたもう一人が、急に大人しくなる。

「おーいいね!!最近ストレス溜まって来たし、行こうかな……」

「だろ?黒葉の裏にまた新しいの出来たらしいし、行こうや」

そう言って二人は駅の前の路地を曲がった。

 

 

 

「あら、いらっしゃーい。ようこそウチの店へ、当店のシステムは御存じ?」

派手な服装をした女性が二人を迎え入れる。

「いや、はじめてなんだけど……他の店とシステムって違う?」

「いいえ。基本的に同じですよ?」

「なら、良かった。じゃあこの子お願いできる?」

「あー!!俺もこの子が良かったのに……しょうがない他の子にしよ……」

そう言って壁に張られた写真を指さす。

「ハーイ、2名様ごあんなーい」

女性がそう話すと、ボーイが現れ二人はそれぞれ部屋へと連れていかれた。

 

 

 

「あー、この空気久々だなー!結婚してからなかなか来れなかったしな~」

男はウズウズしながら上着を脱いだ。

「そうだ、風呂の様子も見よう!」

そう言って部屋に併設されたやけに大きな風呂を見に行った。

「うん、道具も一式そろっているし、ちゃんときれいに掃除してあるな。これでもうちょっと安ければ最高なんだけどな~」

風呂に有った道具を確認しながら一人話す。

その時部屋のインターホンが鳴る。

そして女性の声が響く。

「おまたせしましたーマロンちゃんでーす」

「わはは~待ってたよ~」

そう言って男は女性の持っていた(・・・・・)カゴを受け取った(・・・・・・・)

 

カチャっと音がして茶色のトイ・プードルが現れる。

クンクンと鼻を鳴らし、尻尾を振り男の手を舐めた。

「おおぅ~キャワイイ!!餌をあげるよ~。食べ終わったらお風呂に行こうね~」

エサを食い終わったマロンを抱いて、男は風呂に入って行った。

 

 

 

このエサがマロンの最期の晩餐に成った。

 

 

 

ガギン!!キャン!!ぎゃん……!!バキッ!!ゴキッ!!

「はぁはぁはぁ……最ッ高だよ!!マロンちゃん!!とってもいい顔になってきた!!」

男はそう言って興奮気に語気を荒げる。

その両手にはトンカチとペンチ、お風呂場に大量の血が飛び散っている事を鑑みると何が有ったのか想像するのは簡単だ。

「ううん!!」

尚も男は様々な道具を、犬だったモノ(・・・・・・)に振り下ろし続けた。

 

 

 

「いや~実にスッキリした!!これで来週からも仕事がんばろうって気になるよ!!」

「俺もさ、あんまりストレス溜めちゃいけないよな?」

そう言って二人は楽しそうに家路についた。

断っておくがこの店は一切の違反を犯してはいない。

周りの住人もこの店がどの様な店かちゃんと知っており、許可も出ている。

 

 

 

 

 

また有る小学校では……

「やーい!!タクミのばーか!!」

一人の少年が小柄な少年を馬鹿にした。

その瞬間教室の先生の纏う空気が変わった。

「博夫君?それはイジメですか?イジメにはとても重い重罰が課せられているのを知っていますね!?クロ助と同じになりたいんですか!?」

鬼のような形相で、博夫と呼ばれた少年に言い寄る!!

「ひぅ!?先生ごめんなさい!!イジメじゃ有りません……!!」

早速半目に成りながら謝りだす少年。

「良いですか?人をいじめては決して成りません!!いじめて良いのは……」

「業者さんが持って来た動物だけ……です」

その言葉に先生はにっこりとし、少年たちの頭をなではじめた。

「よく言えましたね。さ、二人で仲直りのしるしにクロ助をいじめてきなさい?」

「「はーい」」

そう言って二人は仲良く、金属製の棒を持ち、鉄製の檻に入れられた猫を叩き始めた。

もちろんこれもおかしな光景ではない。

この世界の学校にはどこでもこういった動物が常備されている(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

こんな世界がゆるされる背景には一つの法律が有った。

 

 

 

 

『特別動物保護例外法案』通称『特動保外』この法律は一部の政治家によって定められた。

特動保外は簡単に言えば、虐待用の動物を作ってよいという法律だ。

増え続ける殺処理の動物達、さらに学校でのいじめに依る自殺、その両方に待ったをかけるべくこの法律は制定された。

 

切っ掛けは簡単な事だった。

とある子供が猫を残酷な手段で殺したとニュースに成った。

いまどき珍しくもないニュース、しかし少年の一言でこのニュースは一気に世論を変化させる物となった。

 

『僕は……自分で殺した猫に感謝しています……この猫が居なければ……僕は自殺していたでしょう……!!……本当にありがとうと言う気持ちでいっぱいです!!』

 

後の捜査で解ったことだが、この少年はクラスの生徒や先輩、さらには担任にまでいじめを受けていたというのだ。

心と体を傷付いた少年は、さらに自己より弱い生き物をいじめる事で、心の平穏を保ったのだ。

イジメを取り締まる法律は当時から無数にあった、しかしそれでもいじめは止まらなかった。

 

そしてある時、この事件にに注目した男が居た。

その男は政治家で、法的に一部の動物の虐待を特別に許可する運動を開始したのだ。

保健センターには保護された犬や猫などがいるが、その動物達もしばらくしたら処分されてしまう。

そしてこの法案は処分が決定した動物を引き取り、エサを与え見た目を良くし、歯と爪を取り抵抗できなくし、虐待用動物へと加工される(・・・・・)

虐待用動物を作るという性質上。

最初は非人道的手段とののしられもしたが、暫くしてその声は消えたいった。

 

 

何故なら人間には有るのだ、弱者を攻撃する本能が。

いや、人間だけでなくそれは、すべての動物に有るのかもしれない……

何れにせよ人間も己の本能から逃げる事は出来なかった。

 

 

 

切っ掛けはどうでも良かった、要は結果がすべて。

何れにせよこのルールは現在非常に重宝されている。

 

この法案のお陰で学校のイジメはかなり減少した。

当たり前だ、目の前にいじめて良いと言われた動物がいるのだ、リスクを冒してまで人間をいじめる理由は無い。

 

さらに言うと自殺者も減った。

当たり前だ、目の前に日常的に虐殺される動物を見ている、自分も同じ様に死にたいとは思わない。

 

 

 

 

 

所詮捨てられ助からなかった動物の命、それは他者を助けるために消費されている。

ある意味それは食物連鎖の新しい形なのかもしれない。




拝読ありがとうございます。


今回は人の矛盾を突きたくて、この話を作りました。
生き物を大切にする気持ちは分かる、けど動物たちは毎日殺され、人間自身もイジメを繰り返している。
その矛盾が今作の肝です。

もしこの話で何か思い、可哀想だと思う方が要ればその方はとても優しい方なのでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。