ISコアを破壊せよ   作:日和見鶏

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休日にちまちま書いているだけなので、投下速度は遅いです。


第02話 薄っぺらな覚悟

 短時間ならばISを正面から圧倒できるよう設計された決戦兵器、アーマードコア・ネクスト。対IS兵器を研究する秘密結社<Team R-TYPE>で開発された機体は、そう呼ばれていた。

 弾を通じて<Team R-TYPE>に所属することとなった一夏は、今日も訓練に明け暮れていた。

 

 

 ネクストの性能がISの性能を上回っている、ということは、決してない。むしろ、単純な性能ではネクストが劣っていると言えるだろう。

 お互いの優劣を的確に把握し、絶対に相手の土俵で戦うな。

 敵の情報を集め、有効な武装を選択し、周囲の地形を把握し、相手の心理を誘導し、利用できるものは何でも利用して、ネクストに有利な状況を作り出せ。そうして始めて、ISと互角なのだ。

 

 シミュレータの機動訓練に付き合ってくれた弾は、繰り返しそう言った。

 

「始めて見たのがあれだから、がっかりするかもしれないけどな。実際はそんなもんさ」

 

 苦笑しながら話す弾に、小さく頷く。

 最初に聞かされたときは「そんなはずがない」と反発したが、座学で必要な知識を詰め込み、シミュレータで機動訓練を繰り返した今では、全くの事実であると認識していた。

 同時に、ISがいかにデタラメな兵器であるかも良くわかった。聞けば聞くほど、既存の科学技術を一回り以上先取りしている。

 

 現在、座学で講義をしてくれている児島博士が「PICと絶対防御の2つがISをISたらしめている所以である」と断言し、いかに素晴らしい技術であるか力説していた。

 話の1割も理解できなかったが、とりあえず「ものすごい技術なのですね」と同調してみたところ、「その通りだ織斑君! 実に素晴らしい理解力だね!」とテンションを爆上げしていた。マッドサイエンティストは常に全力である。

 

 児島博士はコジマ粒子という重粒子(重粒子が一体何なのか結局よくわからなかった)を発見し、これを利用することでACをISと戦える兵器、アーマードコア・ネクストへと進化させた、とても凄い人だ。少し……かなり濃いけれど。

 

 ISの素晴らしさを熱弁していた博士が突然静かになり、どかりと椅子に座る。分からないなりにメモをとっていた俺は、驚いて博士を見た。最初からハイテンションで喋り続けていたのに急に真面目な顔をされると、戸惑ってしまう。

 

「コジマ粒子を利用してクイックブーストとプライマルアーマーを搭載したネクストを開発しましたが、搭乗者への負担が非常に大きい。女性しか動かせないということはありませんが、ナノマシン投与と外科手術で身体を強化して、さらにAMS適性がなければ、満足に動かすことができませんでした。幸か不幸か、あなたは高いAMS適性を示した。強化手術の前に、コジマ粒子の有害性は聞きましたね?」

 

「はい。シャルから詳しく聞いています。間違いなく寿命を縮める、とも」

 

 シャルは主にネクストのオペレーターを担当している同年齢の女性で、俺の座学の面倒を見てくれている。頭の悪い俺でもわかるように噛み砕いて説明してくれるので、とても助かっていた。

 顔を合わせた初日に「僕はシャルロット。ラストネームは控えさえて貰うよ。ちょっとややこしい事情があってね。みんなにはシャルって呼ばれてるから、織斑君もそう呼んでほしいな」「それじゃあ俺のことも一夏でいいぞ」と言いながら握手して、それ以来名前で呼びあっている。

 

 そんなシャルの講義で、コジマ粒子の毒性と環境汚染への懸念、人体への影響は詳しく説明されていた。それを理解したうえで、強化手術を受けたのだ。

 頷いた児島博士は、平坦な声色で続ける。

 

「あなたの覚悟を侮辱するので、謝罪はしません。ただ、ネクストの開発者として、<Team R-TYPE>初期メンバーとして、言わせてください。我々は世界中の人々から避難されるでしょう。決して理解されず、必ずや断罪されるでしょう。それでも、私達は決してあなたの覚悟と献身を忘れません」

 

 そう言って、一夏を見つめる。重苦しい雰囲気に包まれる中、一夏は、自分に出来る限りの真摯さをもって答えた。

 

「俺は、俺のできることをやるだけです」

 

 覚悟とか献身とか、そんな難しいことを考えているわけではない。理不尽な暴力に負けないだけの力が欲しいと思った。大切な家族を守る力が欲しいと思った。ただ、それだけだ。そして、博士はその手段を与えてくれた。後は、突き進むだけだ。

 

 沈黙がしばらく続いた後、博士がニカッと笑って両手を軽く2度叩く。空気が弛緩するのを感じた一夏はほっとした。

 

「それでは、コジマライフルやコジマキャノンの詳しい説明をしましょう。シャルロット君に聞いているでしょうが、それぞれの特性に関しては私のほうが詳しいですからね」

 

 来る日も来る日もトレーニングと座学とシミュレーションに明け暮れ、メンバーと真面目に連携の話をしたりくだらない冗談を飛ばしたりして交友を深める。少しづつではあるが、確実に前へ進んでいる実感があった。充実した毎日を過ごしていると言えるのではないだろうか。

 誘拐事件から半年。それだけの時間が流れていた。




話の都合上一夏視点で書きましたが、1話も一夏視点で書いたほうが面白くなることに気がつきました。
予定は未定ですが、気が向いたら改稿するかもしれません。
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