自己解釈や勝手な設定などが
出てくると思いますが
生暖かい目でお願いします!
八幡サイド
「なあ、八幡。父さん、再婚をしようと思うんだ」
父の一言に八幡は唖然とした。離婚して三か月がたった日のことだった。両親は離婚した後、父と八幡が家を出ていき、父の仕事場の近くのアパートに引っ越した。八幡は学校へ通うのをやめ、今は病院に通いながら自宅学習をしている。声が出せないため、意思疎通のために買ってもらったスマートフォンで急いで伝えたいことを打つ。
『再婚って誰と?』
聞きたいことはいろいろあったが、とりあえず一番に思い浮かんだことを聞いた。
「父さんの同級生でな、彼女……泉さんも二か月前に離婚して、お前と同い年の娘さんがいるんだが、お金に困って、この間、父さんの会社の派遣になったんだ。そこで再開してから、意気投合してな、今回の再婚の話になったんだ。」
説明を聞いている間も八幡は唖然としていた。いつかは再婚という単語を父からくるときが来るだろうとは思っていたのだが、こんなに早いとは思わなかった。
『もし、再婚したら家はどうするの?このアパートは狭いし無理だよね?』
次の質問は住居についてだった。相手に自分と同い年の異性がいるならこんな狭いアパートは無理だろう。
「それは、泉さんが今住んでいる家に行こうと思う。職場からは遠くなるが、このアパートを借りっぱなしにしといて父さんと泉さんの帰りが遅いときは、ここに泊まろうと思う。お前と順ちゃん…泉さんの娘さんを残すのは心配だが、休日には帰るし、平日も家政婦さんを呼ぶから平気だろう。」
……そんな無茶苦茶な、と八幡は思ったが、この話をしている父の顔が真剣だったので本当のことなのだと思った。そして、一番聞きたいことを聞く
『その人は俺の失声症のこと、知ってる?』
これが、一番聞きたいこと、そして再婚にあたって自分という存在が邪魔にならないか、という心配事でもあった。
「あぁ、知ってるよ。そして、それでも再婚したいと言ってくれている。」
……そうか、なら自分には止めることは出来ない。父さんにとっても最後のチャンスかも知れないんだ。
『なら、俺も再婚に賛成だよ。』
父さんは安心したようにため息をつき、ありがとう。と言った。引っ越しの日程などを聞き終わり、作業に入ろうかと思ったとき、父は思い出したように俺に、この再婚で一番重要なことを言い、俺は目を見開いた。
その日の夜、父さんに言われたことが頭から離れず、眠れずにいた。自分と同じ年で同じような症状の、成瀬順という少女、彼女はなぜ、どうして、様々な考えが浮かぶ、離婚だけでなるとは考えづらい、ならなぜか。
八幡はいつの間にか眠りに落ちていた。
順サイド
その日、順は家の異変に気付いた。
(ママがいる……)
玄関に母の靴があった。それは順にとって久しぶりに見るものだった。朝は順が起きるより早く仕事に行き、夜は順が寝た後に帰ってくる。そんな母の靴が玄関にあるということは、今日は母が家にいるということだ。順は内心うれしさと気まずさが半々くらいの気分だった。
「あら、順おはよう。」
ドキっ心臓が大きく跳ねた。
「あ、えと、おは……っつぅ」
お腹が痛くなる。これが玉子の呪い、お喋りするとお腹が痛くなる。急いでトイレに駆け込む。
「ちょっと、順?大丈夫なの?」
とんとんとトイレのドアを叩いてくれるママ。そういえば、結局挨拶を返せてなかったなと、持っていたガラケーで急いで文字を打ち込み、ドアを少しだけ開けて携帯を渡す。
『おはよう、ママ。順は大丈夫だよ!ママは今日お仕事お休みなんだね!』
母は少しだけ小さく息を吐く、母がため息をつくことは最近多くなった、私が原因とわかるだけ、ため息を聞くと少しだけ泣きたくなる。
「えぇ、今日は休みなの。朝食の時に大事な話があるから早めに来て頂戴。」
それだけ言い切ると母はリビングに向かって歩いて行った。
大事な話って何だろう……。もしかして、順は施設に連れていかれるのかも……。いや、もしかしたら、玉子さんの言うとおり海に沈められるのかも……!
(どうしよう!どうしよう!順どうしたら!?)
色々と考え、悩んだが何も思いつかない、ぐぐぅ~~…
(お腹減った)
考えるのを放棄し、リビングへ向かう。母がフレンチトーストを焼いていた。懐かしい匂いがする。チンをしないご飯は久しぶりだった。
「順、お皿だしてくれる?」
頷くだけの反応をして、私はお皿を運ぶ。二人分の食器を準備するのはいつぶりだろう。
「いただきます」
(いただきます)
心で挨拶をし食べ始める。フレンチトーストはしっかり味がついてて、優い味がした。ママと食べているというだけで、順は泣きそうだった。ある程度片ついた後、お母さんはさっきの大事な話をする、と前置きして言った。
「あのね、順、お母さんね再婚しようと思うの。」
…………!!!???
「さ、さ、再婚!!??」
思わず叫ぶ、ママがびっくりした顔をしてる。自分でも顔が青くなるのがわかる。
(あ……痛い…………)
トイレに駆け込む、五分ほど経ってからお腹が落ち着いてきた。リビングに戻ると、ママがお茶を淹れてくれていた。心なしか少しだけ笑顔だった。
「順、とりあえず、話しだけ聞いて?」
先ほどの椅子に座り直し、話を聞く。相手のこと、住居のこと、息子さんがいること、学校へ順と同様行っていないこと、そして、失声症のことも、順は幸せそうに話す母のことを見て、反対する気なんてさらさらなかった。しかし、納得できないこともあった。
『なんで順とその……息子さんとは一緒の部屋なの?』
そう、なぜ八幡と順は同じ部屋なのか……だ
「そ、それはね、さっき話した通りたぶんお母さんはほとんど帰ってこれないの。だから一緒のほうが寂しくないし、それに掃除も楽だし……ね?」
明らかに後者が本音であるが、寂しいというのはあっていたので、否定はできない。
『あとね……なんで息子さんは失声症?になったの?』
ママは読み終わると少しだけ暗い顔をして、すぐ笑顔になって言う。
「それは、八幡君から聞きなさい、これから一緒にすむんだから。」
きっと深い理由があるんだと思った。
『そっか…それもそうだよね。』
「さ!おうちのお掃除しましょ!そんなに日もないことだし!」
ママの掛け声で掃除が始まった。これからどんなことが起きるのか、順は期待に胸を躍らせながら、鼻歌を歌いながら部屋の掃除に取り掛かるのだった。
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