蒼銀の水平線に勝利を刻め   作:KingArthro

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横須賀の地

「やぁ!お待ちしていましたよ、セイバー、ベルフェバン先教授も!」

 

横須賀鎮守府応接間。通されたセイバー(海軍服)とベルフェバンを待っていたのは、満面の笑みを浮かべた金髪碧眼の、見た目「は」麗しい少年、であった。

彼の名はフラット・エスカルドス。地中海に本拠地を置く魔族一族において、たぐいまれなる才能と、それを御するに全くそぐわない気性を持って生まれた問題児。はっきり言えば「とびっきりの才能のあるバカ」である。

そもそも彼がこんな所で提督をしてること自体「魔術と科学のハイブリットたる艦娘と友達になりたい!」という、他の魔術師がきいたら卒倒しそうな理由で「勝手に」鎮守府に潜入、才能だけは有ったのでめきめきと功績をあげて「しまった」から。一応、対外的には「日本の鎮守府が必要以上に神秘の漏えいをしないよう前線で監視すべく、彼の師匠たるロード・エルメロイ二世が送り込んだ」ということになっているが。(ベルフェバンはフラットの前の師匠なので当然わかっている)

 

 

あまりの気さくな挨拶に、セイバーは若干面喰い、ベルフェバンはやれやれといった面持で頭を抱える。

 

「・・・相変わらず・・・本当に相変わらずのようだな・・・」

 

「はい!今日は本物のサーヴァントにも会えるって聞いてすごく元気です!というか今モーレツに感動しています!」

 

両手を握ってぶんぶんを握手をしてくるフラットに若干引き気味のセイバーであったが、これからは一応彼をマスターとする以上、無下にもできない。

 

軍人でもなく、時計塔での仕事もあるベルフェバンは鎮守府に居続けることはできない。だが、それではいざと言う時・・・セイバーが変な気を起こすことなどありえないだろうが、援護が必要なとき、令呪を使える人間が遠くにいるということを意味する。それは戦略上よろしくない。そこで、アーチボルト家にあった記述とベルフェバンの技術、解析された令呪システムの研究結果を応用し、フラットに令呪を移植することが決定した。

人格面に不安ありとは言えど現在艦娘たちに慕われている以上破綻者ではなく、魔力量でいえば随一の彼である。マスターとしては問題ない・・・・・・・・・・・・・・・・・はずである。

 

「ではフラット、さっそく儀式に取り掛かろう。右手を・・・」

 

「あ、ちょっと待ってくださいね教授。」

 

いうなりフラットは今までセイバーの手を握っていた両手をベルフェバンに持ち帰ると、一瞬目をつむり、そして。

 

「はい、できました。」

 

いうなり、ベルフェバンの右手の甲が一瞬輝いたかと思うと聖痕が失われ、逆にフラットの右手にその文様が出現した。

 

「な・・・貴様、今いったい何を!?」

 

「え、令呪の移植ですよ?教授はそのためにいらしたんですよね?」

 

「そうだ!それほどの儀式のためにこちらがどれだけ準備を・・・!!!」

 

顔面蒼白になったベルフェバンと対照的にフラットは至って落ち着いて

 

「んー・・・でも出回ってる情報を読んだ限りそう難しいものじゃないですし。亜種聖杯戦争の結果ほぼ受肉してるセイバーさんとパスつなぐだけですから、綾取りみたいなもんですよ?」

 

いわれてセイバーも、己に流れ込む魔力がフラットのものに確かに切り替わったのに気が付く。恐ろしいことに、魔力量が圧倒的に多く、一部ステータスすら更新されている。

改めて、この前線指揮官の才能というものを見せつけられた。

わなわなとふるえていたベルフェバンだったが、やがて気にするだけ無駄、と悟り、深くため息をついた。

 

 

「・・・よかろう、フラット、くれぐれも陛下に失礼の内容にな。こちらはこれでお暇させてもらおう。」

 

今はこの少年が頼みの綱なのだ。性格は問題あれど、セイバーとの関係性を破壊する類ではない。魔術師として問題ある性格は、マスターとしては問題ではない・・・というのは、数多く行われた亜種聖杯戦争で証明されていた。

 

「はい!でも教授、いいんですか?せっかく日本にいらしたならアキバに行けばよろしいのに、マジシャン先生なら確実に丸二日は帰ってきませんよ?」

 

アキバでジャンクパーツから自作PC組んでゲームにはまるロード。何を言ってるかわからないと思うが(ry

 

「よい、あの魔境がわかるのはロードエルメロイだけだ。では陛下・・・フラット・・・世界を、頼みますぞ。」

 

一礼して、ベルフェバンは部屋を後にした。それと入れ替わる形で、一人の少女が入ってくる。

 

「司令官、おじいさんのほうが出たら入っていいって聞いてたけど、あの人は帰していいのね?」

 

黒い髪に帽子をかぶり、セーラー服を着た少女。中学生ぐらい、なのだろうが、西洋人であるセイバーら2人からみれば小学生程度にも見える。

人懐っこいその表情が、よけいに少女を幼く感じさせた。

 

「うん、暁、紹介するよ、こちらが今度うちの分艦隊を指揮をすることになったセイバーさんだ。」

 

フラットが少女にセイバーを紹介すると、セイバーも頭を軽く下げて会釈する。

 

「セイバー・・・ベルベット、です。階級は、大佐ということになっていますが・・・僕の素性はフラットから聞いているかな?」

 

ここにわたる際便宜を図ってくれたロードの、表世界での苗字を借り受けて名乗る。戸籍上、彼の家の養子ということになっている。

 

「ええ、ロンドンから送られてきた、えーと、騎士・・・?ともかく、本当に心配性ね、イギリスの人って!」

 

艦娘達の神秘を必要以上に広げるな、と時計塔は日本、ドイツ、イタリアにさんざん圧力をかけている。フラットも最初はそのための監視員と思われて、軍内部では疎まれていたらしい。(もちろん彼にそんな頭はない)

疎まれていたのに短期間にここまで、時計塔の工作があったとはいえ、セイバーを部下として勝手に登用できてしまうほどに、出世してしまうあたりに挙げた功績の大きさがわかる。

 

「セイバー、紹介するよ。我が艦隊の秘書も務める、駆逐艦暁だ。小さく見えるが、我が艦隊において欠かすことのできない優秀な艦娘だよ。」

 

「暁よ!一人前のレディとして扱ってよね!」

 

ふふんと、胸を張って言う暁に対し、セイバーは「こんな幼い少女が前線に・・・」と一瞬罪悪感を感じる。しかし、そもそも深海棲艦との戦争がなければ彼女は生まれなかったのだ、と自分を納得させた。そういえば、日本にくる間に護衛してくれた吹雪型駆逐艦、も女学生のように見受けられた。

 

「よろしく、暁。」

 

「さて、それじゃ、早速あなたの秘書官を迎えに行きましょ!もうセイバーさんの執務室に待たせてあるわ!」

 

「え、僕の?」

 

間の抜けた声で問うセイバーに対し、暁はぐっと彼の手を引く。

 

「そうよ!私の妹なんだから、レディを待たせるものじゃないわよ!」

 

ぐいぐい引っ張る暁に対し、セイバーは困惑した顔でフラットを見るが

 

「え、なに困ってるんです?分艦隊の「司令」なんですから秘書がつくのは当たり前でしょ・・・あ、まさかお飾り着任でさぼるつもりだったんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

暁とフラットに案内され、セイバーはこれから自分が執務室とする部屋のドアの前についた。何やら、中からは歌声が聞こえてくるが・・・

 

「じゃ、あとは新司令官と新秘書艦で打ち合わせしてね。終わったら工廠にくるように!ですよね、司令官?」

 

「うん、セイバーさん、工廠で待ってますので、後程。」

 

いうだけ言って2人はさっさとその「工廠」とやらに行ってしまった。

ふう、とため息とつくセイバーだが、よく考えればこれから付き合いの長くなる相手なのだ。変に緊張しても意味がない。意を決して、扉を開ける。

 

 

 

その時一瞬セイバーは、かつて自分が選定の剣を折った時のことを思い出した。

だって、そこにいたのは、今の自分の剣を授けてくれた・・・

 

 

 

 

「~~♪・・・!・・・失礼、そろそろ時間だとは思っていたが、恥ずかしいところを見せたね・・・特III型駆逐艦二番艦、響、これより貴方の指揮に入る。貴方が、私の司令官のセイバー・ベルベット大佐だろう?」

 

歌など歌っていたところを見られ一瞬同様するも、その駆逐艦、響はすぐさまクールな表情にもどり、セイバーに挨拶して見せた。

対するセイバーは・・・

 

「・・・・・・」

 

「あの・・・すまない、もしかしたら人違いで、セイバー大佐では、なかったのか?」

 

「・・・え、ああ、済まない、いや、私がセイバーであっている。その、君の姿が」

 

 

湖の貴婦人にそっくりだった、言いかけてセイバーは、そんな物言いは不審がられると考え言葉を改めた。

 

 

「君の姿が、私の古い知人の女性にそっくりだったんだ。」

 

 

セイバーに剣を授けた、水の妖精。透き通る銀の髪をもつその姿と、目の前の響の姿はとてもよく似ていた。

 

 

「知人・・・司令官は英国出身と聞いていたが、ロシア人の知人でもいたのかい?」

 

「ロシア人?いや、彼女は・・・生粋のブリテンのものだよ。それより、なぜロシアなんだい?そういえば歌っていたのもロシア民謡みたいだったけど。」

 

何せ土着の妖精ですから、という話は置いておく。

 

「ああ、モスクワの夜はふけて、という。私に乗っていた兵士がよく歌っていた。」

 

「モスクワの兵士?」

 

ああ、と響は頷いて、目を伏せ、静かに語り始めた。

 

「私は、戦後まで生き残ってしまった唯一の特型駆逐艦だ。賠償艦としてソ連に引き渡され、そこで生涯を終えた。この日本人らしくない容姿も、そのせいだろう。」

 

自分の髪を手に取り、すこしだけ自嘲気味に響は笑う。激戦時に限って修理中で生き延びた、と揶揄されることもあった彼女にとって「生き残ってソ連に引き渡された結果、日本人離れした容姿になった」のは一つのスティグマであった。

 

「どんな形であれ、生き残れたというのはそれだけで素晴らしいことだ。響、君は自信を持っていい。それに、君を見て私が思い出したご婦人は、私にとってかけがえのない恩人であり、気品に満ちた女性だ。」

 

だから、君にもそんな女性になってほしい・・・とまではさすがに口にしなかった。それは褒めてるつもりでも、ともすれば生き方の強制である。

 

「ありがとう、司令官。まぁ、そんな風に運はある艦と自負している。これから、よろしく頼むよ。・・・おかしいね、ソ連帰りの女と、英国から派遣された殿方が、日本の防衛につくって。」

 

「いわれてみれば面白いかもしれない。が、今は生まれや育ちの国に拘る時代ではないという事なのかもね。よろしく、響。」

 

二人はしっかりと握手を交わす。ここに、新しい司令官が鎮守府に着任した。

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り執務室の案内を響にしてもらったセイバーは、今度フラットと暁に呼ばれていた工廠へと足を運んだ。もちろん、響も一緒である。

 

「工廠、というけど魔力の気配が強いな。」

 

「なるほど、ロンドン時計塔からの派遣と聞いていたけど流石だね司令官。我々艦娘は、建造も、武器の製造も、修理も、全部魔術がらみで行うからね。」

 

 

たとえば艦娘の修理たる「入渠」は、自己再生力を増強するポーションで満たした風呂に入浴してもらうことを指す。時間が惜しい場合、さらにエーテルを凝縮した「高速修復剤」をぶっかけることで瞬時に修理できる(もっともゆっくりできないので嫌がる艦娘も多い)

 

 

「そして、武装の新開発や新艦娘の建造はここ・・・工廠で行うんだ。」

 

 

一見すると船を造るためのドック、しかし、そんな近代的な響と裏腹に、ここは魔術師の工房に近い。セイバー自身は魔術には疎いが、サーヴァントとしての能力と、マーリンに仕込まれた知識がそう告げている。

そんな、「現代」と「神代」の混ざった異質な空間の前に立ち・・・セイバーは、足元に何かいることに気が付いた。

 

「って・・・なんだ、これ、妖精?」

 

「ああ、作業妖精だよ。この工廠において欠かせない大切な職人だ。」

 

驚くセイバーをよそに、響はしゃがんで妖精を手の上に載せて見せた。妖精のほうも喜んでとびのり、そのまま響の帽子の上まで這い上がる。

 

「私たちの向かう建造ドックまで乗っけていってほしいそうだ。全くちゃっかりしてる。」

 

「・・・妖精に見えるが、これ、式神かい?」

 

魔術師にとって妖精とは自然の脅威であり、神隠しすら行う敵対者ともいえる。ないし、魔術師の使い魔が「そういう形」を取るということもあるが。この場合は後者に近いだろう。

 

「そうだよ、魔力補給は食事で行ってくれるし、とても勤勉で働き者、我が鎮守府の縁の下の力持ちだ。」

 

頭上に上った妖精をなでてやりながら響が我が事のように説明する。事前に入力した行動しかとらない、とはいえ、自律行動をとる式神に作業を任せるとは。それだけ人が足りていないのかあるいは

 

(女の子ばかりだから、男性作業員とかが入りにくいっていうのもあるんだろうなぁ)

 

その女の子ばかりの職場で自分がやっていけるのか若干不安だが、あのフラットもなんだかんだで艦娘からの評判は良いようだし、そう悲観する事もないだろう、と納得。

5分ほど歩いたところで、「新造艦ドック」と書かれた扉の前に待っていたフラット達に合流したセイバーと響。暁は「レディを待たせるものじゃないわ!」なんて言っていたが、そんなに遅くない、はずである。

 

「響とは無事に仲良くなれたみたいだね、セイバー。じゃあ、あと3人ほど建造して早速艦隊行動にとりかかろうか」

 

「・・・はい?」

 

「だって、響一人で出撃させるわけにいかないでしょ!」

 

そういう問題ではない。まずいきなり出撃だの言われてもなにも準備していないし、第一どうやって新しい艦娘を建造するかも自分は知らない。一気に湧き上がるつっこみを、セイバーは自分を抑えながら、一つ一つ伝える。

 

「もう、司令官、いつも言ってるでしょ、ちゃんとものごとは整理して順番に話さなきゃって!」

 

ああ、「なんで他人が理解できないのか理解できない」タイプの天才か・・・暁の口ぶりからして、平素から説明すっとばして結論に行きついているらしい。苦笑いを浮かべるしかできないセイバー。

 

「うーん、ごめんよ暁、セイバー。」

 

 

 

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艦娘の建造は、「建造ドック」の概念が施された部屋に、素体となる覚醒前のホムンクルス(通称開発資材)と、媒介となる少量の鉄・弾丸・オイル・ボーキサイトを供え、妖精たちに作業を行わせることで「降りて」きて、はれて完了と

 

なる。司令のすべきことは、資材を用意したうえで妖精たちに、媒介の配分を伝えることだ。

 

「その資材と媒介はどこから入手するんだ?」

 

「大本営からの指示をこなしたり、あるいは民間船の護衛任務などをこなした報酬として、かな。資源は戦闘後消耗した艦娘にも少量補給は必要なので、最低限は大本営から支給されるけど」

 

全く消費なく補修する事はできない。魔術とは基本、等価交換である。それでも必要な鉄や油の量は、実際の船舶の補修と比べれば天と地ほど開きがあるという。

 

「支給された資源や資材はまとめて保管庫に入れてあるわ!各自で使える分量は帳簿で管理してるわ。その分量から、どれだけ資源を出すかを妖精さんに伝えればいいのよ。」

 

その帳簿を管理してるのがこの暁よ、と胸を張る。

 

「その、着任したての私にも割り振りはあるのか?」

 

至極まっとうなセイバーの質問である。

 

「あるにはあるけど、まだ最低限かな。ここは俺の資源をお貸しします。分艦隊ですしこれくらいの融通は良いだろうし。」

 

こともなげにさらりと言い切るフラットだが、通常の艦娘の司令官は資源確保に躍起になっており、他人の建造に資源を貸すなど正気の沙汰ではない。

この辺のやりくりの効率化において、フラットの右に出る者はいなかった。なにせ、もとは効率を貴ぶ魔術師である。帳簿にまとめるとかそういう細かい作業は嫌いだが、本能でベストの効率を探し出す能力は、そのまま彼の艦隊の継戦能力に直結し、彼が戦果を挙げる要因になっていた。

 

「そんなわけで、1号ドックにこれだけ、2号ドックはこれだけ、3号ドックはこれだけの配分にする、俺の手持ちから資材を出すって、妖精さんに伝えてあげて。」

 

フラットから渡らされたメモには、資源の配分の比率が記してあった。・・・一体全体どういう理由でこの配分なのかさっぱり説明がないが。

 

「ああ、艦娘の建造って、運任せなんだ。でも触媒の配合を変えることである程度艦種を選べる。とりあえず軽巡洋艦1:響を含めて駆逐艦3になる・・・確率の高い組み合わせだよ。」

 

「運任せ・・・おろしたい船の縁の品などを使って意図的に呼び寄せるということはできないのか?」

 

「試したんだけど、『聖遺物』になるほどは古くなく、またいろんな兵士の想念も混ざってしまってて、しかもその兵士が転属してたりするから。」

 

だから、艦娘の狙い撃った召喚は無理という事。サーヴァント召喚と、似て非なる点である。

なるほど、と納得してセイバーはしゃがみこみ、フラットのメモを妖精に手渡した。合点承知!といった具合のジェスチャーをすると、妖精はドック部屋の中に侵入し・・・中から金属音が響きだす。

 

「・・・あれ?降霊術とか、召喚とか、そちらの儀式と思っていたのだけど・・・」

 

「そうなんだけど、妖精さんの仕事につっこみを入れるなんて野暮な事しちゃだめだよ。さて、建造完了までは暇になるし、散歩でもしていようか。」

 

曰く、妖精さんは職人気質の為、機嫌を損ねると仕事の質が下がるらしい。式神のくせになんでそんな無駄な機能を取り入れたのかは不明だが、逆に機嫌がいいととんでもなく上物な装備を作ったりもするという。

 

 

 

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新しい艦娘の建造まで、鎮守府内部を案内してくれるとフラットから申し出があった。セイバーとしても断る理由はなく、響と共にある気ながら各施設を説明つきでまわる。

 

食堂、金曜日は必ずカレーらしい。日本のカレーはインドカレー、およびそこから分化吸収したブリテンのドライカレーと違いシチューに近いが、食べ物にうるさい日本人を満足させる逸品、とのこと。実は取り仕切っているのも艦娘という。

 

入渠ドック、艦娘用お風呂。セキュリティは万全である。損壊に応じて半日以上つかることもあり得るため中での暇つぶし道具も豊富・・・らしい。

 

艦娘寮、艦種、所属艦隊ごとに建物が分かれており、内部で共同生活している。もちろん男子禁制。

 

その他、運動場や多少のゲームなんかもそなえたレクリエーション施設、購買部、等々、この中で生活するに最低限必要なものがそろっている、いわば一つの街、ともいえる。

 

(そうか、艦娘って、陸上ではここから出ることがないのか・・・)

 

神秘の塊である彼女らが、街中に堂々と出ていくのは現状難しく、第一非番でもいつ緊急招集が掛かるかわからない仕事だ。おいそれと遊びに行けたものでもないのだろう。

 

(もし、世界が平和になった時、彼女らはどうするのだろう・・・?)

 

それは自分が考えても・・・聖杯の探索完了の暁には消えるであろう…仕方のない事と思いつつも、どうしても気になってしまう。もっと響や暁が兵器然とした性格ならここまで思わなかったろうが、2人とも年相応の感受性をもった少女のように見受けられる。だから・・・

 

 

その時であった。

 

 

『フラット司令、緊急事態です、お近くの内線から大淀までご連絡を!』

 

各所に設置されているスピーカーから、緊迫した声が流れてきた。すぐさま反応したフラットが手近な受話器をとり、内線で状況を確認する。うん、うん、了解、こちらで対処可能だ、と返事をいれ、受話器を置いたフラットは、どうしたものか困っているセイバーや響相手に、状況を説明する。

 

「予定にない・・・はっきり言えば密輸船か密航船の類が、はぐれ深海棲艦に追われて救難信号を出してきたようで。もともとこちらの警戒網をくぐるように航行している為、最寄りの警備部隊でも現場到着に十分。ただ、この鎮守府から出撃すれば、5分の距離。」

 

本当はもっと沖合を航行していたらしいが、深海棲艦に追われているうちに鎮守府を目指して一直線に逃げてきたようだ。

つまり、フラットが言いたい事とは

 

「駆逐艦暁、ならびに分艦隊の駆逐艦響、この船の救援、向かえるか?敵は駆逐6匹とのことだけど。」

 

「了解、本当は建造を待ちたいところだけど、そうも言っていられないね。」

 

「いくら犯罪者でも見捨てるわけにはいかないものね!ちゃんと捕まえて裁判を受けさせないと!」

 

暁型の二人が頷くのを確認し、今度はフラットはセイバーに顔を向ける。

 

「・・・あとセイバー、あなたも2人に同行し、深海棲艦とはどういうものか、どのくらいの強さか、実感してみてほしい。」

 

フラットの言葉に、響と暁はセイバーより先に反論した。

 

「ちょっと司令官!?ただの魔術師?騎士?ともかく艦娘じゃなきゃあいつらには対抗できないわよ!?」

 

「水上歩行の魔術でもあるのかもしれないが、それで戦闘ができるわけじゃない、フラット司令、何を考えている?」

 

だが、フラットは大きく首を振った。

 

「いや、この人は勝てるよ、深海棲艦に。だからここに送り込まれてきたんだ。ですよね?セイバー。」

 

この振りにセイバーは返答に窮した。彼としてはギリギリまでは一司令官に甘んじるつもりだったのだが、この現地マスターは積極的に彼がサーヴァントであることを公開するつもりらしい。

 

「理由や、正体の詮索についてはあとで。一応人命もかかわってますし、セイバー、日本には百聞は意見に敷かずという言葉があるんだ。だから、まずはあなたの実力を見せたほうがいいと思う。」

 

「・・・了解した、マスターの判断を信じよう。私はこのまま出陣できるが、二人は?」

 

「大佐、正気!?」「何を言っている司令官、思い直せ!」

 

暁と響がそろって抗議するが、既に決意したセイバーは意志を曲げない。

 

「大丈夫だよ二人とも。少なくとも足を引っ張るつもりはない。最悪援軍が到着するまで船を守ればいいのだろう?それより、急ごう。」

 

ここまで言われてしまってはどうしようもない。一度だけセイバーの方を振り返り、2人の駆逐艦は出撃用ドックへと走っていった。

 

 

 

 

 

 

出撃用ドック、といっても往年のロボットアニメの様に特別な発進口があるわけでない。ただ、各自の艤装を保管している武器庫に立ち寄り、装備が終わったら武器庫が面している堤防から水面にでるだけだ。

艦娘の艤装は彼女らが建造された時同時にこの世に出現する。別の艦娘の艤装は使うことのできない、各自の一点ものだ。故に盗難の心配などないのだが、一応「武器」として登録されている為、厳重に警備された場所に保管されている。

 

「全く、響の初実戦だというのに、司令官の面倒を見なきゃいけないってとんだハプニングね。」

 

艤装を装備しながら、暁が不平をもらす。彼女はフラットの言葉を信じ切れていなく、セイバーが戦力足りえると考えていなかった。それは響も同じである。

 

「戦いそのものは艦娘の本能で理解できる。しかし、大佐と不審船の護衛、そのうえで2対6、若干きついな・・・増援がくるまで防戦、も視野に入れよう。」

 

12cm連装砲、九三式魚雷の接続を確認し、タン、と軽く堤防から飛び降り、駆逐艦、響は初めての戦闘への航海に出る。すぐさま暁も追いついてきた。

 

「さて、ああいっていた以上セイバー大佐も来ているはずだが・・・」

 

「よかった、待たせはしなかったようだな。」

 

堤防の上からの声。声の主も飛び降り、響と暁の前に「着水」する。水面の上に、優雅に立つのは先ほどの海軍の白い制服、ではなく

 

「・・・驚いた、本当に『騎士』なんだ・・・」

 

暁は、フラットがいっていた「騎士」の意味を一代限りの貴族姓と考えていた。しかし実際に目の前に立ているのは、白銀の鎧に身を包んだ正真正銘の「騎士」である。

 

「それ・・・魔術礼装というやつなのか?しかしなんでまた海上で戦うのに騎士なんだ。」

 

どうせなら海賊とかのほうがいいんじゃないか、と首をかしげる響。

 

2人とも思うまい。彼が「特殊な装備で水上を歩けている」訳ではなく、精霊の加護で水上を歩いている、などとは。

 

「それも帰ってから説明する。さあ、行こう!」

 

「行くのはいいけど、ついれ来れるのかしら?駆逐艦暁、抜びょうするわよ!」

 

暁がまるでスケートのように水面をける。それが出航の合図。彼女の駆逐艦としての概念が起動し、エンジンで加速してるのと同じ速度で水面を滑り出す。響も続き、2人の艦娘はあっという間に沖合へと出ていく。

 

「なるほど、うかうかはしていられぬ・・・か!」

 

言うなり、騎士は水面を思い切り「蹴っ」て「飛んだ」。ただ地面、この場合水面だが、をけっただけでここまでの跳躍はできまい。その一歩一歩に、ジェットエンジンに例えられるほどの魔力をこめているのだ。その爆発力により、あっという間に2人の艦娘においつく。一方追いつかれた方はただ目を丸くするだけであった。

 

「え!?嘘!?人間の脚力じゃないわよあれ!?」

 

「水面を・・・爆発させてる?それに私たちですら感じる魔力の奔流・・・なるほど、伊達じゃないか。」

 

水面を滑りながら思い思いの感想を述べる。驚くばかりの暁にたいし、響はすこし、この戦闘が楽になると考えた。これだけの瞬発力があるなら、最悪敵を引き付けるおとりを頼めるはずだ。自分たちはそこを撃破すれば良い。

 

 

そう、そんな見当はずれな予想を、立てていた。

 

 

 

 

 

 

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海原をひたすら逃げ回る一艘の木端船。その後ろには、生あるものを滅ぼさんと追い掛け回す6匹の深海棲艦。

 

「船長、艦娘の援護はまだ来ないんですか!?」

 

「ばきゃろう、あいつらを避けて通ってたんだ、そうそうくるわけねぇだろう!?」

 

彼らは、フラットの予想通り「ご禁制の品」を運ぶ密輸業者であった。艦娘を付けずに、規制をかいくぐった品を運ぶアウトローの仕事は、確かに大金を稼げる。しかし一たび深海棲艦に見つかれば、艦娘に助けられてお縄を頂戴するか、海の藻屑となるかという非常にハイリスクなモノ。そして現在、彼らは後者になるのを避けるべく、お縄を頂戴してもいいから助けてほしいと懇願しているわけで。

 

「ああ、くそ、なんで今日に限ってあんなところに『ハグレ』が・・畜生!」

 

「予想もつかないところにいるからはぐれなんだよ!面舵、よけろ!」

 

深海棲艦の行動は基本、非常に組織だった軍事行動である。しかし駆逐艦の中でも下級のものは、野良犬のようにそういった統率をはずれ、まったくランダムに人を攻撃していた。艦娘のパトロールは、このようなはぐれを掃討づるのが基本任務となる。

そんなパトロールの合間を縫ったのだから、助けがすぐ来ないのも自業自得である。それでもやはり命はあきらめられない。

 

「くそ、死にたくない!死にたくない!」

 

「ならしっかり舵を握られ、馬鹿野郎!」

 

船長格の男が叱り飛ばすが、部下の男は完全にパニックを起こし正常な判断ができていない。

 

「ああ、ああああああ!!」

 

「こ、この馬鹿!」

 

でたらめに舵をきって反転コースを取ってしまう船体、待ち構えるのは海の悪魔6匹。その咢が大きく開かれ、黒光りする5inch連装砲が船をとらえる。あと少しで、この人間の船は太平洋に消える。そう、この引き金を引き絞れば。

そしてここに、運命が決まった。

 

 

 

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「イチバチだったけど当たって助かったわ・・・」

 

今まさに船を襲おうとした駆逐艦イ級は、しかし暁の長距離砲撃で船体を貫かれそのまま爆散した。残りの5匹のイ級はすぐに暁と響に気が付き、その矛先を密輸船から2人へと切り替える。

 

「来るよ、暁、セイバー司令官も戦闘準備を・・・」

 

セイバーがずっと手ぶらなことに、響一抹の不安を覚えるも、もう戦闘は開始している。ほんとに逃げ回るだけか、と一瞬考えた、が

 

「先ほどの射撃、見事だった、暁。今度は私が先陣を切る、2人とも、援護を頼む!」

 

「って司令官!?」「ちょっと、ステゴロ!?」

 

2人に追いついたときのスピードすら本気でなかったといわんばかりに、セイバーはさらに大きく跳躍し敵陣のど真ん中に突っ込んでいった。もちろん「手に何も持っているようには見えないのに」

 

「お、囮を買ってでてくれたのよ!響、いくわよ!」

 

こんな状況でもすぐ切り替えられるのが艦娘が戦闘用ホムンクルスを素体にしてる証だろうか。

 

「あ、ああ。司令官!魚雷を放つ、敵をうまく引き付けて退避してくれ!」

 

九三式魚雷を解放し、セイバーが突撃した敵陣へ向けて放つ響。セイバーのかく乱と魚雷、これで敵の陣形はバラバラになる。あとは各個撃破でどうにかなる。それが普通の艦隊戦ならば。

 

 

「はあああああっ!!!」

 

 

咆哮、そして一閃。セイバーがなにかを振るうような「ジェスチャーをみせた」かと思った瞬間に、1匹のイ級が、割れた。

 

 

「・・・え・・・」「な、なに・・・あれ」

 

 

目の前の異常事態に、暁も響もただ固まることしかできない。攻撃していないはずなのに、魔術師が、斬った?

呆けているという戦場で最も危険な行為。だが、それは暁たちだけではなかった。

 

深海棲艦側もまた、何が起こったかを飲み込めず、ただ立ちすくむだけだったのだ。そんな隙を見逃すセイバーではない。

 

「遅い!」

 

再び腕を振るうだけで、2匹目の駆逐艦が屠られる。真っ二つになった僚艦をみて、ここにいては危険とだけは理解できた残りの駆逐艦は、とっさに距離をとった。

 

「暁、響、船のほうにいった2匹を頼む!残りは私がやる!」

 

密輸船と反対の方に離脱した駆逐艦を追って、セイバーが飛ぶ。ここで響達はようやく我に返った。聞きたいことはたくさんあるが、まずは船を守らねば。

 

「司令官を問いただすためにもまずは無事に帰らないとよ、響!」

 

連装砲を両手で構え、水面を滑りながらの射撃。通常第一射など早々当たらないが、パニックを起こしていたイ級は回避もロクにできず、直撃。撃ち抜かれてそのまま水底へ消えていった。

 

「わかっている。」

 

負けじと響も砲撃を仕掛ける。こちらは初弾こそ外してしまったが

 

「Ура!」

 

狙いはついた。あとは追い込むように射撃をするだけだ。かわすことに必死になったイ級は反撃もできないまま、やがて

 

「・・・無駄な動きだったね。」

 

そこには、響は放っていた魚雷が待ち構えていた。

 

 

 

 

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(ハグレ、と言っていたから下級の斥候程度とは思っていたが・・・戦艦級の装甲もこのように貫ければいいのだが)

 

剣に抉られ活動を停止し、目の前の海に沈んでいくイ級をみながら、セイバーは静かに思う。聖杯奪還のために深海棲艦の本拠地を強襲すれば、このイ級など比べ物にならぬほど強力な個体が必ず出てくるだろう。生前彼が戦った相手には、金属より固い鱗をもつ竜、大木より重い一撃を放つ巨人など、様々な怪物がいた。それを考えれば後れを取るつもりなどさらさらない、が、用心に越したことはない。

 

「さて・・・まずは・・・私の事の説明かな。」

 

後ろの方でも戦闘は終了したようだ。響と暁がこちらに向かってくる気配を感じ、セイバーは一人つぶやく。

 

 

 

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密輸船は、フラットが派遣してきた警備部隊に引き渡され無事に保護、そのまま逮捕された。セイバーの姿を見た船員はいなかったらしく、(みたとしてもなんか変わった艦娘としか思わなかったろうが)そのまま警察に引き渡されることになる。当分豚箱暮らし、ではあるが、それでも彼らは生き残った。

 

戦闘を終えたセイバー一向を、フラットは港でいの一番に迎えた。そのまま暁を連れ

 

「暁への説明は俺からします。セイバーはまず自分の秘書に、自分の言葉で伝えて。」

 

と言い残し自分の執務室にさっさと戻ってしまったが。しかし、言っていることは間違っていない。後にセイバーも気が付くが、フラットは確かに破天荒、そして効率追求を忘れないが、同時に艦娘に常に誠実であった。魔術師のことでも、必要とあれば彼女たちに話していた(ベルフェバンが知れば怒るのを越して脱力するだろうが)。

 

無言のまま、響とセイバーは自分たちの執務室に戻る。

既に鎧は解除し、軍服姿に戻っている。ここなら問題なく話せるだろう。そう思って口を開こうとしたセイバーより先に、響が言葉を発した。

 

「司令官、貴方は何者なんだ・・・!」

 

手をぐっと握りしめ、精一杯の虚勢をはって。

 

 

響の心を支配していたのは、驚きよりも、未知への恐怖だ。もしセイバーの剣が見えていれば、まだ「そういう魔術礼装」と自分を納得させて動揺を抑えることはできたかもしれない。・・・いや、それも大きいが、だけではない。艦娘よりも高速で水面を「跳ぶ」人間など、魔術師でもほぼありえない。仮にいたとしてもリソースをすべてそこに注がねばあの動きはできないだろうし、そうしてしまえば・・・あのイ級たちを葬り去るなどできるはずがない。それこそが、深海棲艦がここまで蔓延り、対処に艦娘が必要になった理由なのだ。・・・場合によっては、彼女らのアイデンティティすら、侵しかねない存在。

 

「魔術師では、あの機動力と火力を同時に保持するのは不可能だ・・・第一なんなんだ、貴方は腕を振るっただけでイ級を両断した、見えない剣とでもいうのか・・・答えてくれ・・・!」

 

絞り出す様に紡がれた言葉は、後半はすでに涙声になっていた。怖い、でも聞かねばならない。でもやはり、怖い。

 

「・・・すまない、怖がらせるつもりはなかった。」

 

だから、セイバーの口から最初に出たのは謝罪の言葉。怖がらせてごめん、まずはそのことを謝罪しなければ、どんな事実も受け入れてもらえなさそうな気がしたから。

 

「そんなことはいい、それより教えてほしい、どういうことなのか。」

 

口ではこういっても、響は内心安堵していた。とりあえず敵ではない、害意を持っていないということが確認できたから。

 

「先に一つだけ断っておきたい。私の、本当の名前、真名を明かすことは戦略上好ましくないので、セイバーのままで通したい。その代り、どういう存在か、何故ここに来たか、これはちゃんと話すよ、響。」

 

「セイバー・・・サーベル、軍刀なんて名前、魔術師の二つ名かなとも思ってたけど。」

 

「二つ名・・・というより、私の役割だ。私は、剣士、セイバーのサーヴァントだからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昔の偉い人を使い魔に・・・そんなことが可能なの!?」

 

フラットの口からセイバーの正体を聞いた暁が叫ぶ。・・・いってしまえば彼女らも似たようなものなのだが「歴史が浅い」故に神秘としての格が高くないため召喚できていう、というのは自身で理解していた。だからこそ、英霊として祭り上げられた人物の降霊、使い魔化など不可能というところまですぐに理解が追い付いたのだ。

 

「うん。普通なら無理なんだ。だけど、『聖杯』という魔術礼装を使えばそれも可能になる。」

 

 

 

 

 

 

「聖杯・・・アドルフ・ヒトラーすら求めたという願いをかなえる杯か。」

 

「もちろん本物ではないよ。実際には別の目的で作られた魔術礼装らしいけど、起動できる段階になれば『過程を無視して使用者の願いを実現させる』事が出来る。私は、イギリスで行われた聖杯の奪い合い、聖杯戦争の末に、ロッコ・ベルフェバンという魔術師によって受肉した形で召喚されたんだ。」

 

今のセイバーは、サーヴァントでありながらエーテル製ではない肉体を持っている。劣化品とはいえ聖杯。この世への依り代たるマスター、今はフラット、さえいれば現界できる存在として。もちろん、戦闘の際消費する魔力は、彼のバックアップが必要になるが。

 

「そこまでして・・・魔術師たちは何を貴方にさせたいんだ?こんな、日本の鎮守府まで来て・・・」

 

「私の目的・・・それは、深海棲艦に奪われた『オリジナルの聖杯』の奪還だ。」

 

 

 

 

 

 

 

「え?セイバー大佐は聖杯のおかげで召喚されて・・・その目的が聖杯・・・?うー、どういうことなのよ!っていうか大佐の召喚してないで聖杯が欲しいって聖杯に言えばいいじゃない!」

 

暁がうなり声をあげて抗議する。確かに「聖杯を探すために聖杯戦争をする」という二度手間ともいえるステップだ。

 

「いや、セイバーを召喚した聖杯は、奪われた冬木の聖杯のコピーに過ぎない。どうも深海棲艦が魔力の濃い場所、龍脈っていうんだけど、それに接続してるらしくて、劣化聖杯のアクセスを受け付けないんだ。」

 

「だから、せめて探索者に最高の能力をもったセイバー大佐を召喚した?」

 

「そして彼女らの情報が最も集まるここに潜り込ませた、ってね。俺がいるのをいいこと幸いに計画を進めたらしいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね・・・聖杯探索の為に、過去の英霊を送り込んでくる・・・普段なら寝言は寝ていってくれと一蹴するとこだ。」

 

全てを聞き終えた響は、ははは、という渇いた笑いを浮かべながら、ふらふらとソファーに座りこんでしまった。内容は理解した。しかし、心の理解が追い付かない。

深海棲艦をという化け物を一周する、正真正銘の怪物のような強さを持つ上司。それが追う、万能の願望器。なんで自分はこんな壮大な話に巻き込まれてしまったのだ。

 

「すまない響・・・私としてはギリギリまで黙っているつもりだったが・・・」

 

「いや、むしろそちらのほうが不審がってしまうよ。大丈夫・・・ちょっと驚いてるだけだから。」

 

いいながら響が顔を上げると、そこには困ったように頭をかくセイバーの姿があった。先ほどイ級を屠った人物とは思えないほど、穏やかで優しそうな人物。そのしぐさを見て、響は急激にばからしくなってしまった。何を恐れていたのだろう、と。

 

確かに、戦闘面に関しては恐るべき一面もあるかもしれない。だが、自分一人を怖がらせた、と、この人はこんなにも困惑している。ならば

 

「司令官、アナタもこちらに座ったほうがいいよ。立ちっぱなしは疲れるだろう?」

 

ぽんぽん、とソファーの隣の席をたたく。セイバーは一瞬響が怖がってないかと躊躇したが、下手に距離を取る方がまずいだろうと思い直して素直に隣に座った。すると、セイバーの手の上に響が自身の手を重ねる。驚いたセイバーだったが、そのままもう片方の手をさらに、響の手の上に重ねた。

 

「・・・温かい手だな。ロシアでは重宝されるよ。」

 

「ブリテンもどちらかと言えば寒かったからね。」

 

この手が、先ほどイ級を両断したものと同じなどとは、信じられない。それほどに穏やかで、ぬくもりのある手だった。

 

「なあ司令官、もしかして、貴方の剣は『見えない剣』なのか?」

 

「うん、私の剣は、手前味噌で恐縮なんだけど世界的に有名らしくてね。名前を隠すにあたって、剣も正体を伏せないとまずいんだ。」

 

若干恥ずかしそうにセイバーが笑った。つられて響もくすりとほほ笑む。最後の謎が解けて、セイバーを怖がる理由は、なくなった。

 

「有名な剣か・・・日本ならアマノムラクモや正宗があるけど、スラヴ神話は文字に残っていなかったせいでそういうものがないな・・・人狼なんかの話は多いんだけど。」

 

「どっちかというとそれは退治した相手だなぁ。あの時代のブリテンにはまだいたからね。」

 

「・・・え、いたの?」

 

「いたよ、竜とか、巨人とかも。」

 

彼の生きた時代は、神秘こそが世の中を支配していた時代である。響も神秘の側の存在ではあるが・・・やはり、想像しにくい。

 

「竜か、そんなものを相手にしていたら、深海棲艦ごとき、敵ではない?」

 

「確かに竜種は恐ろしい敵だったし、直接戦闘だけなら、少なくともあの駆逐艦に遅れはとらないだろう。」

 

けどね、とセイバーは続ける。

 

「私には敵を探知する力も、船として人を助ける力もない。今回の聖杯探索に、君たちの協力は欠かせないんだ・・・頼めるかい、響。」

 

いたく真剣なセイバーの顔をみて、響は、ほほ笑む。

 

「頼めるも何も、貴方は私の司令官だよ。聖杯探索の任務、確かに受領した。共に行こう、司令官。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦・艦娘とサーヴァントの戦力差

 

今作のセイバーやインドのカルナといったAクラスサーヴァントを100としたとき、駆逐イ級が1。姫クラスや鬼クラスになると10前後。ちなみに某良妻狐は9と、出力だけだとサーヴァントの癖にまけている。もっとも、サーヴァントは「神代の神秘」や「信仰を集めた伝説」を持っている為単純な出力比では勝負ができない。大体においてExtraでは9が100に勝っている。スペック自慢は死亡フラグである。

 

 

 

建造や開発の描写、艤装について

 

建造については小説「一航戦でます」での描写をベースにしてタイプムーン世界の魔術と融合させる形。陽炎の方だと生々しい生体兵器感があったので、ゲームっぽくても「魔術」で済ませられる方を取った。青セイバーが食事で魔力を補っていたように、妖精さんも食事で魔力を補う。体がちっこいのと役割と行動を限定することでそれで補える消費量になっている。

艤装については、特に機関部なではサーヴァントで例えると宝具といえる扱いの為、各自専用になっている。空母の航空機なんかは使い回しがきく(転属扱いらしいが)

 

 

 

 

誤字脱字

そうおもって読むとそうみえるんでちよ!(by菌糸類

 

21:05 一旦修正。推敲は事前にやろう(戒め

 




今回のお話で建造された3人も出して「艦隊の質問に答える」形にしようかと思っていましたが、メインヒロインの出番を多くとりたいので登場は次回からにしてもらおう事に。
メインヒロインは響です。アニメでは不思議ちゃんでしたが今作では「生き残ったことが少しコンプレックス」な湖の精に似た少女という形。湖の精については筆者の完全な捏造設定ですのであしからず。

フラットはバーサーカー相手でも為口なので、今回も為口にしています。

追記 落ち着いて読んでようやく気づく誤字。随時訂正します
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