「さて諸君、集まってもらったのはほかでもない、『我々の聖杯戦争』の推進を邪魔するものが現れた件だ。」
大仰に、黒い貴族服を着た男性が口を開く。
ここは、深海棲艦に制圧されている南方海域の孤島。住民などとうにいなくなった廃墟街のその教会に、先ほどの男性を含む4人の男女が集まっていた。
同じく貴族のようなドレスに身を包んだ白髪の女性、中世風の豪華な衣装に身を包んだひげを蓄えた男性、緑のフードをかぶった男性・・・人間がいるはずない島で集まった彼らは、当然、普通の人間ではない。
「生き残ったヲ級の艦載機からの情報によれば、艦娘を超える速度で水上を動き、見えない何かでヲ級の装甲を一突きにしたそうだ。魔術師にも、艦娘にもこんな芸当は不可能。となれば当然・・・」
「敵もサーヴァントを召喚した、ということでしょうね、ランサー?」
ドレスの女性の言葉に、貴族服・・・ランサーのサーヴァントは大きく頷く。
「そういうことだ、アサシン。得物が見えなかったので完全にクラスの特定はできぬが、肉薄しての一突き、という報告からしてランサー、あってセイバーだろう。」
「ん?おいおい、ランサーはアンタがいるだろう。セイバーで確定じゃないのかい?」
緑のフードの男性が疑問を口にする。
「アーチャー、あのサーヴァントはこちらの聖杯の令呪で召喚された存在ではない。冬木より奪った霊基盤に反応がなかった。おそらく模造品の聖杯で召喚されたのだろうよ。」
「はぁ・・・ならその模造品をかけて互いにつぶしあってくれませんかね?こっちも仕事増やしたくないんだけどなんで態々ちょっかいかけてくるんだよ。」
緑のフード、アーチャーのサーヴァントはいかにも面倒だ、という口調でため息をつく。
「その辺はおいおい明らかになるだろう。我らとてこのように同じ旗のもとに集まっているではないか。」
ランサーの言うとおり、この状況は明らかにおかしい。2騎程度なら一時的に同盟を組むことはあるだろうが、4人も同じ場所に集う等、本来ありえない。
「聖杯大戦のシステムの応用、でしたわね・・・では敵も似たようなシステムを?」
「可能性はある。が、まだ何とも言えんよ。それよりアサシン、ライダーの足取りはつかめたかな?」
ランサーが問いかけると、アサシンは静かに首を横に振る。
「いいえ、何せ騎兵ですもの・・・すでにこちらの制海権を抜けて、『狩り』をしに出ている可能性があるわ。・・・こちらに被害が出なくてよかったと考えるべきね、アイツ、見境なしの様子だったし。」
「やれやれ、マスターが死んだのならおとなしく捕虜か、最悪深海棲艦達と契約すればいいものを・・・何をあの死にぞこないに肩入れしていたのだろうな、彼は。」
肩をすくめて嘲笑うランサーに対し、アサシンもおかしさをこらえきれない様子で答えた。
「だって、彼、純粋な英雄ですもの。きっと耐えられなかったのよ。」
「ま、少なくとも俺とかみたいに自分の欲望に忠実ってタイプじゃあ無いわな。なんせ神話の大英雄だ。」
嘯くアーチャーだが、フードを深くかぶりその表情は周囲からはうかがい知れない。
「ともあれ、これ以上の情報漏えい、戦力低下は避けたい。アーチャー、できれば追撃をしてほしい。偵察の為に深海棲艦の助力を乞うと良い。キャスター、君はバーサーカーの監視はマスターともどもしっかり行うように。・・・聞いているかね?」
「『静かにしてくれ 静かにな カーテンを引いてくれ そうだ夜飯は朝になったら食うことにしよう。』吾輩は今忙しいのでね、もちろん最低限の仕事はしておりますよ、ええ。」
大げさに、というよりもはや陶酔してるような口調で、キャスターのサーヴァントはランサーの言葉に答える。その台詞の前半は、とある有名な戯曲の台詞だ。
「また自作からの引用?此度の戦いのシナリオを描くのは自由ですが、ランサーからの指示は的確にこなすことね。」
「マスターはできるだけ頑丈で、かつ金で動くやつにするがよい。その方が却って信用できる。」
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「敵はすでにサーヴァントの存在を、どういうモノかまで理解している・・・うん、やつらの側に味方するサーヴァントがいるとみて間違いないね。」
横須賀鎮守府、フラットの執務室。部屋の中には報告に来たセイバー、響、暁・・・そして、セイバーが来るなら是非紅茶を、と半ば押しかけてきた金剛の5人しかいない。
セイバーと響、フラットと暁がテーブルを挟んで椅子に腰かけ、金剛は紅茶を配り終えた後、もう片方のフラットの隣に腰掛ける。
「でも司令官、サーヴァントって、セイバー大佐みたいに過去の偉い人なんでしょ?そんな人がなんで深海棲艦の味方をしているのよ!」
ぷんすか、とでも擬音が出そうな勢いで暁が文句をいう。確かに、人類史に貢献した英雄が彼女らに協力するのは通常では考えにくいが・・・
「暁、英雄と呼ばれる人間でも、利己的な行為が結果的に人類史に貢献したなんて例はいくらでもあるネ。そういう人なら『あっちについたほうが得』って考えたら、人類と戦うことを選ぶんじゃないかナー。」
「ううー・・・そんなの英雄っていわないわよー!」
「ないし、聖杯になんか小細工をして、反英雄・・・魔物とか、悪鬼とか異常者を召喚した可能性も否定できないね、これだとあちら側についた理由もわかりやすい。」
この場合は今度、あいつらが指揮下に置くのが難しくなるけどね。とフラットが付け加える。そして、さて、と一言間をおいてセイバーと響のほうを見る。
「セイバー、これからは、対サーヴァント戦を意識する必要がある。」
「間違いなく、激突することになるな。」
セイバーは大きく頷く。その瞳には一切の迷いも恐怖もない。むしろ、こういう事態に対応できるこの場にいられてよかった、とさえ思っているだろう。
「で、だ。令呪なんだけど、やはり前線で共に行動できる艦娘に移植したほうがピンチの時に使えると思うんだ。魔力供給は引き続き俺がするけど。」
「ああ・・・ああ?!」
あまりにも当たり前のように言うのでサラっと流しそうになったが・・・この男はいったい何を言っているのか。
「いや、だって、艦娘から魔力供給してもらったら今度艦娘が艤装を装備できなくなるんだよ。セイバーの魔力食いってそれだけ重いし。」
「自分が重いサーヴァントなのは理解しているが・・・問題はそこじゃない、魔力供給と令呪の分割など・・・」
「え?割と簡単ですよ?」
んなわけあるか!と突っ込もうとしたセイバーだが、無駄だと理解してやめた。目の前の天才にとって魔術の仕組みなど、カンでわかるものなのだ。なら、素直に恩恵だけ受けておこう・・・生前の宮廷魔術師といい、しょっちゅうこういうつかれる会話をさせられるセイバーには、一種の耐性ができているのかもしれない。
「なわけで、ピンチの時にすぐ離脱できる逃げ足が速い駆逐艦の響を・・・あが!?」
暁と金剛の鉄拳がフラットを直撃する。殴られた方は「だって艦娘じゃ勝負にならないんだから機動性重要でしょ!?」と何が悪いかわからず抗議する。
「テートク、わかりますケド、言い方ってものがあるデショ?」
「本当プライバシーがないわね!彼女できないわよそんなんじゃ!」
それはデリカシーでは、というツッコミはあえてしないセイバーと響であった。
「しかし、駆逐艦というなら、それこそ呉の雪風佐世保の時雨という2人の武勲艦がいるじゃないか、私はその、光栄ではあるのだけど、良いのかい?」
「そこは私からフラットにいったんだ。初日にいったろ?君は、私の旧知の人物に似ていると。それに、響も不死鳥という二つ名の武勲艦だ。だから、危険だが、やってくれないだろうか?」
セイバーが響を見る目は真剣だった。セイバーとしては「むしろ危険を押し付けるのに自分のノスタルジーを押し付けてよいものか」という考えが付きまとうのだ。だが、武勲は艦娘の誉れ、それをどうして響が断ろうか。
「了解した。微力ながら全力を尽くすよ、司令官。」
令呪の移植の儀式そのものは、セイバーの予想通りフラットが「なんとなく」であっさりとやってのけた。もう何も考えない程度にはセイバー側も耐性ができてしまっている。
儀式が完了し、響の右手の甲に、剣と鞘の装飾がモチーフと思しき聖痕が出現する。しげしげと見つめる響。
「それが、令呪、サーヴァントに対する3回限りの絶対命令権。不可能を可能にする奇跡の魔力の塊だ。」
その力は、本来人などたやすく振り切れるサーヴァントへの戒めであり、同時に逆転のためにサーヴァントを強化する切り札でもある。
特殊な事情で召喚されたセイバーにも、このシステムは有効であった。
セイバーが人類に反旗を翻すなど考えられないが、対サーヴァントで窮地に陥った時の逆転のカギ、それの発動を、響は任されたのだ。
「なんかこう、実物が自分の体に現れると、重みを実感するな・・・」
「響ならその力、正しく使えるさ。」
柔和に、全幅の信頼を置いたような笑みを浮かべるセイバーに、何か気恥ずかしくなった響は視線をそらす。
「し、しかし、司令官がサーヴァント(仕えるもの)で私たちがマスター(主人)というのもおかしい話だ。なんというか、慣れない。」
なんとなく話題をそらすが、その感覚は実際響の中でちょっとした違和感ではあった。
「ああ、それはあれだよ。召喚時のあのやり取りをすればきっと違和感がなくなるって!」
「「やりとり?」」
セイバーと響がオウム返しに聞くとフラットが笑っていった。
「そうそう、サーヴァントは召喚されるとかならず、こういうんだよ。」
「問おう、君が僕のマスターか」
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南方海域、W島付近
未だ深海棲艦を駆逐できていないこの海域は、しかしながら資源輸送、西方とのやりとりに大いに重要な航路である。敵方もそれを理解している為か、艦娘の苛烈な攻撃にたいし、徹底抗戦の構えを見せている。駆逐艦娘、如月は、そんな海域での船団護衛としての任務に就いていた。
見かけは幼いながらその態度は妙に色っぽく、彼女の提督は本気とも遊びとも、背伸びともつかないアプローチに日々苦笑している。彼女自身、そんな提督を見るのが好きだった。
(帰ったら、提督と一緒に飲みに行きましょう。間宮さんのところのボトル、あけちゃおっかな)
考えながらも、決して油断などしているわけではない。定期的に僚艦と更新しつつ、電探での索敵も忘れない。特に「この海域はいろいろと嫌な思い出が多い」ので、人一倍索敵に気を使っている。
そのはずだった
「あ、やだ、髪が傷んじゃう・・・」
突然吹いた風に、如月が髪をおさえながら視線を動かした先に・・・
「え・・・?」
ソレは確かに、如月のほうに向かってきている。 そう思った時に、すでに彼女の体は宙を待っていた。高速で移動する何かに「跳ね飛ばされた」
(ナニ・・・なんなの!?)
混乱する頭で、しかし「敵襲」であることだけは本能的に理解する。こんな敵、聞いたことないが、確実に害意をもった相手だ!
「ふぐ・・・!く・・・!」
着水し水面を転がった如月が苦悶の声を上げるが、それでも素早く立ち上がって、あたりを見回そうとすると
そこに、ソレは確かに立っていた。しかも、彼女の目の前に。
(深海棲艦・・・違う・・・!じゃあ、なんで・・・!)
立っているの、という思考は、胸の鈍痛で遮られた
「いあ、あああああああああああ!?」
刺された。何か、鋭利な刃物で・・・!?ありえない、だって、艦娘として艤装をまとっている今の服は、鋼鉄と同じ概念をもった装甲なのに!?その装甲を、破った、刃物!?
信じられない、そんな思いで視線を下げる。だが、そこには確かに、自分の胸に突き立てられた異形の短剣があった。
「ああ、いやあああああああああ!!!!」
絶叫する如月を、それはいとも簡単に持ち上げた。そして傷口から流れ出る血液を、その身に浴びて・・・嗤った、そう如月には見えた。
(なんなの!?なんで、こんな!?)
痛い、苦しい、なのになんでこいつは嗤っているのか、そもそも深海棲艦でもないのになんでこんなことを!?
必至に抜け出そうと暴れる如月だが、艦娘である彼女の力すら、ソレは気に掛ける必要がないといわんばかりに、彼女の血をその身に浴び続ける。
(ダメ…!これ以上やられたら・・・私は・・・)
こんなところで、何もわからないまま・・・死ぬ?
ヒュン
唐突に、ソレは如月を投げ飛ばした。その直後、彼女の体の近くを、何かが掠めたような・・・そこで、如月の意識はブラックアウトしはじめる。「何があったクマー!」と彼女の部隊の旗艦がかけるつける声に(こっちにきてはいけない・・・)と言おうとしたが、それも叶わず・・・
「チッ・・・追っ手の上に仲間まで・・・今回はここまでだ・・・」
「あーあ。さすがに神話の大英雄だわ。あのタイミングで狙撃気づきますかねぇ普通。ま、あとは日本のサーヴァントがやってくれんでしょ。あの駆逐艦さえ情報を持ちかえればね。」
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横須賀鎮守府、艦娘工廠
フラットとセイバーが、令呪委譲前に建造依頼を出した艦娘を迎えに来ていた。
事の発端は、フラットが建造ドックを「無断で」改造していたこと。なんでも艦娘の建造は、既存のドックでは排水量に限界があるらしく、一部の大型戦艦、空母は建造することが不可能なのだという。
「そこで俺が改造して、触媒の量を通常の10倍しこめるドックにしたんですよ!」
勝手に部隊の備品を改造してなんら罪悪感を示さないこの男を一度はぶっ飛ばしたほうがいいと思うのだが、いかんせん技術は本当に役に立ち功績も上げるため誰も何も言えない。
「で、その実験第一回をセイバーにやってもらいたいんですよ!ほら、セイバー幸運高いし。」
ラッキーな人に、スマホゲームのガチャを回すのを手伝てもらう、そんな軽い要領でセイバーを呼び出すあたり本当にいい神経しているが、なんとなく反論もできず。セイバー艦隊の一員となる艦娘を、フラットの実験で一人迎えることこととなった。
「さーて、ランダムだし、最初はやっぱ陸奥とかがくるかな?その場合また調整をして・・・」
ぶつぶつつぶやいているフラットのよこで、セイバーは建造完了したドックの扉に手をかけた。どうやら、戦艦を下しやすい配合だったらしい。どんな艦娘でも、現在戦艦のいないセイバー艦隊には非常に心強い戦力になるのは確かだ。
「よし、あけるぞ。」
そこに立っていたのは。白を基調とし赤いラインの入った衣装を着込んだ、すこし明るい色の髪をポニーテールにした、大和撫子、というにふさわしい女性。
「戦艦大和・・・抜錨します!」
「大和・・・旧帝国海軍の決戦兵器だった大戦艦、日本の古き名を持った切り札、か・・・頼もしい限りだ、私はセイバー、よろしく頼む。こっちはフラット・・・」
と、紹介しようとフラットのほうを向いたセイバーは、珍しく彼が口をパクパクしている
「あ、あの、フラット?」「や・・・や・・・」
「大和キタァァァァァ!!!!!!!やっぱ俺は間違てなかったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「あ、あの・・・セイバー提督・・・そちらの方は・・・」
「うん、すぐ慣れるよ。ちょっといろいろ突き抜けてるだけだから。」
自我に目覚めて早々にこれというのは大和にとって可哀そうな話だが慣れてもらうしかない。所属はセイバー艦隊だが、フラットとは長い付き合いになるのだから。
可哀そうになぁ、と思っていたセイバーの思考とフラットの狂乱は、突然のアラートにかき消された。
『提督、セイバー大佐、至急執務室にお戻りください!ご報告しなければならない事態が!』
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セイバーの執務室。艦隊全員・・・建造したての大和は、一度ならしの為にフラット艦隊に預けられた・・・が提督机の前に整列している。
全員の準備が整ったことを確認すると、セイバーが、重苦しい声で話し始めた。
「先ほど、南方海域で船団護衛にあたっていた駆逐艦、如月が何者かに襲撃され、本体にまでダメージを負ったことが報告された。」
一瞬、ざわざわという空気が艦娘達に広がるが、そこは軍人、なのか、すぐに静まる。
「幸いにも旗艦、球磨が迅速に救護したおかげで命に別状はない。・・・が、彼女の傷は通常ではありえなものだということだ。」
それは「刺し傷」。砲撃と雷撃しかしてこない深海棲艦との戦いでは決してつけられない筈の傷。まさか、という声は、誰のものだろうか。しかし、セイバーは話と続ける。
「ああ、君たちの気持ちは分かる・・・だが、君たちや深海棲艦に「刺し傷」を作れる存在が・・・目の前にもひとり、いるだろう?」
「では提督・・・敵も、提督と同じサーヴァントということでしょうか?」
神通の声は、不安を必死に押し殺して平静を保っているように聞こえた。ヲ級との戦闘は直接は見ていないはずだが、瞬く間に剣1本で無力化したことは知っているのだから、それと同種の敵が出現したとなれば張りつめもするだろう。
「ああ、フラットと、病床の如月から事情をきいたよ。睦月という同僚の駆逐艦には嫌な顔をされちゃったけど、情報は命だからね。その結果・・・」
二つのキーワードが浮かび上がったという。
一つ、突撃を受けたとき、如月の目は「羽の生えた馬」を確かにとらえていたこと。
二つ、胸に突き立てられた、異形の短剣の事
「羽の生えた馬・・・通常なら馬鹿らしい、って一蹴するところだけど・・・」
考え込む時雨。その通常でない事態故に、知識をフル動員しているようだ。
「そちらもですが、如月ちゃんの装甲を貫いたという短剣も気になります。・・・通常のナイフが、艦娘として戦っているときの服を貫通しえるハズがありません。」
「そうだ羽黒。その短剣はサーヴァントの宝具・・・彼らが生前に築き上げた伝説の象徴だ。それだけの神秘なら、君たちの装甲を貫けても不思議はないだろう?」
艦娘の装甲は、信仰を集めた神秘と、現代技術の複合によって構成されている。だからこそ単純な魔術ではやぶれないのだが・・・神代の神秘となれば話が変わる。
「如月の証言によれば・・・その短剣は、ショテルのように曲がりくねった刀身をしていながら、内側に刃が付いた鎌の様な剣だった、と・・・」
「鎌剣・・・神代・・・羽の生えた馬・・・ペガサス・・・ま、まさか提督、ソイツの正体って!?」
敵の真名に見当のついた木曾の顔が、さっと青くなる。神話に詳しい彼女は、これから敵に回す英雄がいかなものかを悟ってしまった。
「ああ、ギリシャ神話の大英雄、かのヘラクレスの先祖、不死殺し、ペルセウス。恐らくこれが如月を襲った敵の正体だ。」
ペルセウス、数々の神の寵愛を受け、いくつもの魔術武具を身に着け、形無き島でゴルゴンの怪物、メドゥーサを屠った勇者。
メドゥーサの血より生まれたペガサスを愛馬とし、アンドロメダと結婚する前には彼女を海の怪物からも救っている。父にゼウスも持ち、その子孫にはギリシャ神話最強の英雄、ヘラクレスまで存在する、まさに英雄の血統。
「そ、そんな大英雄が、なんで・・・!」
雪風が信じられない、といった面持で、絞り出すように言う。
「目的は・・・おそらく、魂食いだろう、というのがフラットの判断だ。」
「なんだ、それ。」
摩耶が疑問を呈するが、言葉の響きで、半分は理解しているようにも見えた。
魂食いとは、零体であるサーヴァントに「生物の魂」を食わせることで強化する、聖杯戦争における一種の戦術である。通常、魔術の秘匿との両立が難しく行うマスターは多くない。しかし
「今度の戦いはあたし等がもともと敵だし気にする必要はないってか!?クソが、あたし等は食料じゃねーんだぞ!」
「おちついて摩耶、悔しいのは提督も同じよ。」
必至に神通がなだめるが、彼女も若干顔を青くしている。やはりショックは、でかい。
「ペルセウスなら、一撃で如月を葬り去ることもできたはずだ。それをせず、援軍を見るや否や撤退してるあたり、『魔力補充をし、効率が悪くなりそうになったら退散した』とみていいだろう。」
「だがよ提督・・・アンドロメダを放っておけなかったような英雄が、そんな汚い真似をするか?戦力強化のためとはいえ・・・」
「そこは僕も疑問ではあるんだ、木曾。だが可能性がないわけじゃない。一つは、聖杯の異常でなんらかの精神性のトラブルが発生している場合。もう一つは・・・」
「・・・令呪」
響のはっとした呟きに、セイバーは大きく頷いた。それをみて、響はつい、自分の手の甲を触ってしまう。この聖痕は・・・誇り高き英霊に、そこまでの事も強要できてしまうのか・・・と
「彼のマスターが何を思ってるかはわからない。だが『艦娘相手に魂食いをして強化せよ』という命令があれば・・・拒否はできない、それが令呪の力だ。」
それを聞いて、全員の表情が暗くなったのが見て取れた。何かの間違い、はなく、確実に「英雄ペルセウス」が敵になっていると説明できてしまった。
だが、落ち込んでいるわけにはいかない。この事態に対処できるのは自分、そしてそのサポートを頼めるのは彼女らだけなのだ。
だから、セイバーは力強い声で、宣言した。
「・・・これ以上、手をこまねいて見れることはできない。我らの艦隊は、これより、サーヴァント同士の戦い、『聖杯戦争』へと突入する!」
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ステータス
ランサー:保有スキル
無辜の怪物:生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられてしまう。本来、このランサーは捻じ曲げられたイメージを非常に嫌っているのだが、後述のスキルによりむしろ肯定的になっている。
狂化:通常、バーサーカークラスの理性を奪う代わりにパワーアップさせるスキルだが、聖杯のエラーか召喚者がなにか細工をしたのか、ランサーに付与されてしまっている。生前の善悪判断、価値判断が「反転」するほどの狂い方。理性を奪うのでなかく、ベクトルを逆にして暴君たらしめるスキル。なので、普通に会話や戦略を練ることも可能である。
アサシン:保有スキル
二重召喚:ダブルサモン。二つのクラスの特性を持つ稀有なスキル。「誰にも咎められることなくこっそり大量殺人を犯した」人物であるが、その実貴族社会という歴史の闇が「罪を罪たらしめなかった」という部分に依るところが大きく、また永遠の美貌のために黒魔術のようなものに傾倒した結果、キャスターとしての能力を獲得している。キャスターがご覧のありさま状態なので、アサシンでありながら仕事は本職のキャスターに近い。
陣地作成:魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。“工房”の形成が可能。 彼女の場合、工房はそのまま居城の一室を再現することになる。
入渠ではないのか?
入渠は、あくまで艦娘としての艤装を修理するための施設。今回はそれを超えて体に深刻なダメージがいったため、まずは人間としての治療が優先された。睦月ちゃんはお見舞いに来ていました。
令呪と魔力供給は別
このお話はヒロイン響なので魔術工房()みたくなりません。ランサーもいませんし。
如月を助けた人物
コブラではない。その真意は、後の物語で。
フラットが改造したドック
勝手に改造して大型建造を実装しました。
ハルパーでどうやって突き刺したんだよ!
抉りこむように。FFXIではハルパーも刺突武器だしいけるいける。
本当はライダー・ペルセウスとの決戦まで入れようと思ったのですが長くなると思い一度ここで区切りました。
あと、艦娘を轟沈させるつもりはない事は先に明言しておこうとおもいます。モブ魔術師には厳しい可能性がありますが