蒼銀の水平線に勝利を刻め   作:KingArthro

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鉄血戦艦に栄光あれ

とある金曜日。海軍カレーを食堂でつついているのは、セイバーのサーヴァントにして提督のアーサー王その人である。

悩み多き身ゆえ、浮かない顔でため息をつきながらの食事中・・・

 

「提督、ご一緒してよろしいですか?」

 

テーブルの反対から、悩んでいるセイバーに声をかけてきたのは戦艦大和。ペルセウス討伐作戦はまだ建造したてで随伴してこなかったが、経験を積んだ今では、セイバー艦隊の切り札とも言えるまでになっている。

 

「ん?ああ、大和か。どうぞ。」

 

「なにか、お悩み事が?随分難しい顔をしていらっしゃいましたけど。」

 

そんなに難しい顔しながらカレーつついてたかな、と苦笑しながら、セイバーは響との距離感で悩んでいることを打ち明けた。その瞬間、ずいっと大和が身を乗り出してきた。

 

「提督も響のことでお悩みですか!」

 

「提督も、って・・・あと、近いよ大和、近い近い。」

 

普段の大和撫子ぶりから想像できない勢いだったため思わず面食らうセイバーにたいし、大和もすぐに自分が勢い余ったことに気がつき、顔を赤く染めながら席に戻る。こほんと咳払いをして、大和が口を開いた。

 

「あのですね・・・実は、私も・・・その、響から、避けられているってほどじゃないと思いたいんですけど・・・必要以上の接触を持ってもらえないんです。」

 

曰く、戦闘時のやりとりは問題なし。冷静な響の報告は大和も重宝してるという。しかし、鎮守府での私的な関わりを持とうとすると、そそくさとどこかに行ってしまうらしい。

 

「なにか私嫌われるような事したんでしょうか・・・」

 

「私は思い切り怖がらせたことがあるから分かるが・・・大和は見当がつかないぞ?」

 

二人してうーん、と唸っていると、意外なところから助け船がでてきた。

 

「あの・・・よろしいですか、2人とも。指令も、大和も。」

 

控えめに声をかけてきたのは、小動物的な雰囲気を醸し出す駆逐艦雪風。カレーの皿の乗ったトレーを持っているあたり、彼女もお昼にやってきて大和とセイバーの会話を聞いていたらしい。

 

「雪風か。何か響の事を知っているのかい?」

 

「はい。私は同じ駆逐艦だから、それなりに気兼ねなく話してくれます。」

 

それだけでなく、雪風は「戦後まで生き残り、賠償艦として他国に貰われていった仲間」であるため、響も心を開きやすかった。

 

「それで、まず大和さん、天一号作戦のことは、覚えていますか?」

 

「忘れるはずもありません・・・雪風、あの時は、無謀な作戦のなか良く・・・あ、そういえば、響・・・」

 

何かが合点がいったという顔の大和に、雪風が頷く。

 

「はい、あの作戦の時、響は触雷してしまい離脱、結果的に坊ノ岬海戦に参加しないで生き延びることになりました。」

 

「ま、まさかそこで生き延びたのを恨んでるとか思われてるんですか、私!?」

 

心外だと思わず大和は立ち上がってしまい、周囲から視線を集め慌てて座り直す。だが、それでもまだ完璧に落ち着いたとは言えなかった。

 

「それで仲間を恨めしく思ってるって、どれだけ心の狭い女と思われてるんです私・・・」

 

「響だってそこまで思ってるわけじゃないですよ!ただ、やっぱりあの中で生き残ってしまった、仲間を犠牲にして自分が安全圏に、という思いはどうしても持ってしまいます。」

 

同じ戦後までの生き残りでも、常に前線に立ちその度に実力、幸運両方で生き延びた雪風に対し、「激戦区そのものを避ける」幸運を発揮した響は、どうしてもそこに劣等感を感じてしまっていた。

 

「そういえば・・・会った初日に、戦後まで生き延びたことをすこし自嘲するような形で言っていたけど・・・そんな風に思っていたのか・・・」

 

ソ連に引き取られた過去を語るときの響の顔を思い出し、セイバーもようやく納得がいった。戦場で生き残った事を名誉に思わないのは不思議だ、と思っていたがそういうことだったのか、と。セイバーも騎士ゆえに、名誉を重んじる風潮はある程度理解できる。万が一敵前逃亡の末に生き延びたとかだったら恥じる気持ちも分かるのだが、流石に「負傷し危険な戦場にでぬまま生き残った」事まで後ろめたく思っていたのは予想外だった。負傷した、というのは、彼女が勇ましく戦った証拠なのだから。

 

「そんな想いを抱いていたところで・・・先日の指令とペルセウスの決戦です。私もそんな風に思ってるわけじゃないんですけど、結果を見ると【ペルセウスに弱点として狙われ負傷し、指令が動けなくなる要因になって、指令がエクスカリバーを抜く引き金になった】って言えるんです。」

 

「いやいやいやいや!?それこそなんでさ!あれは僕が『近くに敵マスターがいるだろう』という甘い前提で動いたせいで響を危険にさらしただけなんだよ?第一相手はギリシャ神話の大英雄。聖剣の開放は必然だよ。」

 

「それでも響は『また自分が他人を盾にして生き残っちゃった』っていう気持ちをどうしても拭えないんです。・・・私だって、似た経験、ありますから。」

 

雪風の顔が少し陰る。彼女も数多の戦場を生き延びた過程で「仲間の運を吸い取った死神」などと揶揄されたことがある。たまたま、大和とセイバーが清廉な意思を持っていただけで、戦場で生き残った者を恨むモノが全く出ない道理など、なかった。

 

「雪風・・・」

 

幼い、といえる姿形のこの少女らは、その実歴戦の古強者である。それ故の悩み、感情を持っているということを、セイバーはここでようやく実感するのだった。

 

「・・・私の失策が、響の武人の誇りを傷つけたのだね・・・騎士として武勲を重んじる気持ちは良くわかる。これは私の彼女への理解不足が招いたことだ、ちゃんと会って、謝らないと。」

 

「私も・・・彼女が生き残ってくれて、嬉しかったこと、ちゃんと伝えていませんでした。当然知ってると思ってたけど、言葉にしないと伝わりませんよね。」

 

ふたりの言葉に、雪風はほっと胸をなでおろした。

 

「お二人が優しい人で良かったです・・・響の居場所、わかりますから、このあと一緒にお話に行きませんか?伝えてあげてください、お二人の優しい気持ち、響はここにいていいって事を。」

 

 

 

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全員がカレーを食べ終わった後、雪風の案内で響が最近よくいる場所・・・鎮守府屋上へと向かう事にした。のだが・・・食堂を出て、屋上への階段に差し掛かったところで、一向は見慣れぬ女性が時雨と問答としてる現場に出くわした。

 

「いいから提督をひっぱってきなさい!私を誰だと思っているの?」

 

「いや・・・今どこに提督がいるかなんて即答できない。第一アナタの事も知らないし言われて呼んでくる謂れもないのだけど・・・」

 

おとなしく見える時雨だが、その実割と頑固だったりする。女性はその様子にいら立っているようだ。

 

「金髪碧眼・・・アングロサクソン系の人間はここでは珍しいな?」

 

「あの・・・金髪碧眼の提督がいうと説得力ありませんよソレ。」

 

大和とノリツッコミをしていると、こちらに気付いたらしき女性が時雨との会話を打ち切りつかつかと近寄ってきた。

 

「聞くけど、その制服、なにより鎮守府に男・・・まさかアンタが第十三艦隊のアドミラールとかいう話はないわよね?」

 

話からして艦娘の様だが、その割には異様なまでに攻撃的な態度だった。駆逐艦の中にはつんけんした少女もいると聞いていたが、大半が照れ隠しと聞く。だが彼女の態度は明らかに、敵意がまじっている。

若干たじろぎつつもセイバーが返答する。

 

「なんというか、十三艦隊、フラットの分艦隊の司令は私であっているが・・・セイバー・ベルベットという・・・」

 

「はぁ!?まさか、イギリスの人間じゃないわよね!?こんな極東の田舎にまできてよりにもよってイギリス人の下につけですて!?」

 

信じられない!と怒りをあらわにする艦娘に対し、こちらも怒気を隠さずに大和が返す。

 

「どこの艦娘かは知りませんが、提督に対する態度とは思えませんね。大体艦娘の本場たるこの日ノ本を田舎とよぶとは、どこの田舎のご出身かしら?」

 

「このビスマルク級1番艦、ビスマルクを知らない時点で田舎でしょう?しかも客将に英国人とは・・・本場が聞いてあきれるわね!」

 

「ビスマルク級といえばドイツの戦艦だろう。そんな艦娘がなんでここにいるのさ。」

 

ビスマルクから遅れてセイバー達のところに近寄ってきた時雨が疑問を口にする。確かに、基本的に艦娘は生まれた国の海を護衛するものだ。ましてや日本には多数の艦娘がいる以上、他国から借り受ける必要はないのだが・・・その疑問に答えたのは本人ではなく、まったく別の声だった。

 

「あら、ビスマルクさん。こちらへの着任は私と加賀さんと揃って、という手はずだったではないですか?」

 

時雨のさらに後方から現れたのは、赤と白の弓道着に身を包んだ艦娘であった。横に立っている艦娘が、彼女の言う「加賀」であろう。加賀のほうは青と白を基調とした服であり、髪もロングとサイドテール、とまさに好対照であった。

 

「フン、あんたらがちんたらしてるから先に来ただけよ。早く私の部屋のありかも知りたいしね!」

 

「ですがセイバー提督はまだ事情をご存じでない筈ですよ。戦艦の移籍なんてありえない事態は、あまりおおっぴらにできない以上内密に進められてたはずですし・・・」

 

赤白のほうの艦娘は、ビスマルクの攻撃的な言葉を受けても柳に風といった様子で笑顔で受け流す。それどころか、ビスマルクのつかれたくない点をピンポイントでついたらしい。

 

「ぐ・・顔合わせも終わったしいいから私の部屋へ案内しなさい!気分も悪いし一人で休むから!」

 

時雨から寄宿舎の場所だけ聞きだし、ビスマルクは来た時と同じよう、つかつかとヒールを鳴らしながら去っていてしまった。

 

「・・・な、なんだったんだ・・・あれ・・・」

 

「ビスマルク級戦艦・・・ドイツを代表する戦艦と思っていましたがあんな礼儀知らずとは・・・それより時雨、災難だったわね・・・」

 

「僕は大丈夫・・・でも、提督や大和たちが来てくれてほっとした、かな。」

 

おなじ戦艦として思うところがあったのか、大和はひどく失望したよな声で言ったが、時雨をなでるころにはすでに元の優しい調子に戻っていた。大和はそのまま、2人の弓道着艦娘の方に顔を向ける。

 

「あなた達は・・・栄光の一航戦、赤城さんと加賀さん、ですね・・・お初にお目にかかります。」

 

「一航戦になったことがあるのはそちらも一緒でしょう?戦艦大和。」

 

加賀の方は、言葉の抑揚が少なく若干感情が読み取りにくい・・・が、すっと手を差し伸べてきたあたり、親愛の情は感じているようだ。

加賀と大和が握手をかわしている横で、赤城はセイバーに敬礼をしつつ話しかける。

 

「航空母艦、赤城、加賀。ドイツより派遣された戦艦ビスマルクと共に、大佐の指揮下に入ります。よろしくお願いいたしますね。」

 

「ああ、もとはフラットが指揮していた航空母艦か・・・鳳翔一人に負担をかけ過ぎていたのは気になっていた、心強いよ。よろしく頼むよ・・・ところで、ビスマルクについてなのだが・・・」

 

「アレが左遷されてきた経緯は面倒よ。提督、長い話になるので、できれば執務室で説明したいのですけど。」

 

加賀の言葉はいろいろと容赦がない。赤城が「加賀さん、もうちょっと選んで」と突っ込みを入れてたが、本人は「間違ったことは言ってません」とすまし顔だ。・・・どうやらここに来る以前に一戦交えているようだ。

 

「まいったね・・・これからちょっと、響と詳しく話をしに行くところだったのだが・・・」

 

セイバーが困ったようにいうが、赤城のほうはそれならば、と顔をぱっと明るくして答えた。

 

「ではその間にお土産で持ってきた間宮の羊羹にあう、緑茶を入れておきますね!提督の執務室でお待ちしていますので!」

 

「赤城さん、それ貴女が食べたいだけじゃ・・・」

 

「提督は英国の方と伺っていますが、これを機会に緑茶もぜひトライしてみては!」

 

「赤城さん・・・いえ、なんでもないわ。」

 

加賀はつっこむのを早々に諦めてしまう。どうやら食べ物関連で火のついた赤城を止めるのは彼女にもできないらしい。

とはいえ、彼女たちの提案をける必要もない。先に執務室で待ってて、と言い残し、セイバー達は再び屋上に向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

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ソヴィエトの空はもっと白かったな・・・と、響は屋上で一人、空を見上げながら思う。

そんなことを考えていること自体が逃避だ、というのは理解していた。していたが、この喪失感は、そうでもしなければやっていられない程の空しさを響にもたらしていた。

 

艦娘としての2度目の生。今回こそはと挑んだ戦場で、響はただ震えることしかできず、伝説の騎士王が己の名を明かす原因にすらなってしまった。

あまつさえ、現在は艦隊に戦艦大和・・・天一号作戦でみすみす見捨てることになってしまった艦娘がいる。「守れないどころか自分が守られている」という、艦娘としては一番プライドを傷つけられる条件が完全にそろってしまっていた。

 

「はぁ・・・」

 

日々の秘書としての仕事はこなしている以上今は問題ない。今は・・・だが・・・ここから先に踏み出す問題が起きたとき、どうだろうか、分かってはいるのだが・・・

その時、ガタンと階段のドアが開き、誰かが屋上へとやってきた。

 

そこに立っていたのは、今響が最も顔を合わせづらい人物。しかも、2人揃って。

 

「大和・・・司令官・・・」

 

出入り口があそこしかない以上、響にここから適当なことを言って立ち去る、という選択肢は選べなかった。

 

「ごめんなさいね、響。あなたが私たちを怖がっているのは分かっている、でも、ちゃんと話さないといけないと思ったから。」

 

大和の表情は穏やかだが、同時に一歩も引かないという意志も垣間見えた。

 

「響、世の中のすべての人が善人でない以上、幸運に恵まれて生き残った貴女をねたむ人間がいない、なんて無責任なことは、私には言えないわ。」

 

いきなり本題、響が一番避けたかった部分に直球で踏み込む大和。思わず、響は目をそらしてしまう。だが、大和は言葉をつづける。

 

「でもね・・・少なくとも私は、貴女が生き残ってくれたことを嬉しく思っているわ。・・・生き残ったことのもどかしさを知っていても、なおね。」

 

大和はそのまま「私の仇名はしっているでしょう?」と響に聞いた。彼女の仇名、それは

 

「大和・・・でも、それは・・・」

 

「加賀さんと赤城さん、飛龍さんに蒼龍さんが沈み、金剛姉妹が沈み、扶桑さんと山城さんが沈んでも尚、私たちは内地で快適な生活を送っていた。数々の仲間を見殺しにするしかなかったのよ、私も。」

 

「違う、大和、それは・・・!」

 

必至になって訴える響。最終的に沈んだ、という一点にのみ目が行っていたため、響が気が付くことができなかったが、大和もまた仲間が手の届かないところで散っていくのを見守ることしかできなかった艦だった。

 

「ええ、そうね。油が足りない、決戦兵器だから温存。さまざまな事情はあるでしょう。でも、響。それなら貴女だって同じでしょう?数々の任務の果てに傷つき、たまたま修理してただけじゃない。」

 

 

 

それとも、貴女の乗員は危ない決戦を予期していたためにわざと手を抜いたとでも言うの?

 

 

「違う!」

 

 

思わず叫んでしまい、はっとして口を抑える響。だが、大和はその様子を満足そうに見て、微笑む。

 

「ええ、ごめんなさいね響。もちろん知っているわ。工藤艦長をはじめとして、立派な乗員に恵まれていた、よく知っている。」

 

そこまで言って、大和は響に近寄り、そのまま抱きしめる。

 

「貴女と、貴女に乗っていた人々は常に自分のできることを必死にやった。貴女達は立派に戦っていた。響、分かっているわ。」

 

大和の言葉にとっさに反駁したことで、響もようやく自分の不安と本心を知った。彼らクルーの戦いを、汚したくない。

必至になって戦った人々を否定したくない。本当に運としか言えない運命の変転で生き残ったけど、散って行った人々に勝るとも劣らない勇敢な人々だった。

 

「天一号作戦に同道してくれた艦の事を、私は誇りに思っているわ。生き残る可能性が低い作戦についてきてくれた勇気ある艦と。

 でも同時に、とても申し訳なくも思っていた。だから、貴女が引き返したと聞いたとき、私たちはとても安心したの。ああ、貴女は生き残ってくれるかもしれない、と。」

 

髪をゆっくりと撫で、響をあやすように言う大和に、響が思わず抱き着いて、声を上げて泣いてしまった。

 

「懸命にあの時代を生き抜いた貴女が、戦後までちゃんと残ってくれたことに・・・私たちの戦いの記憶を未来に運んでくれた貴女に、お礼を言うわ。響。ありがとう、と。」

 

 

 

 

 

 

「大和さん、あれ、私にも言ってますよね・・・やっぱすごいな、戦艦大和って。」

 

扉の裏でこっそり様子をうかがていたのは、雪風と時雨。雪風は天一号作戦に参加しながらも生き残った艦であり、響と似たようなコンプレックスをひそかに抱えていた・・・いや、彼女の場合、艦の時代から「周囲の運気を吸う」などと揶揄されていた分、響より深く傷ついたこともあるかもしれなかった。

 

「扶桑と山城も・・・西村艦隊のみんなも、そんな気持ちで僕を見送ってくれたのかな・・・」

 

スリガヤ沖海戦でただ一人生き残ってしまった時雨にも大和の言葉はしみこんでいた。戦後まで生き残ることこそ敵わなかったが、彼女もまた「託された」ものだった。

 

「時雨・・・」

 

「何かな、雪風。」

 

「今度こそ、守って見せましょう。そして私たちも生き残りましょう。」

 

「そうだね・・・大丈夫だよ、僕らと、あの司令官なら、できるさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとしきりなきおわっって、ようやく響は落ち着いた。泣き腫らして目が真っ赤だが、まだ話すべき相手が一人いる。

だが、大和とこうして話をできた以上、彼女に恐れるものはない。

 

「司令官、その、見苦しいところを・・・というか、ここ数日の態度について、謝罪し・・・」

 

「まってくれ響・・・いや、マスター。先に僕が君に謝りたい。」

 

頭を下げかけた響を制して、先にセイバーのほうが目を伏せた。

 

「すまないマスター。敵にもマスターがいるだろうという安易な発想でマスターを危険にさらし、君の誇りを傷つけた・・・サーヴァントとして選ぶ戦術を間違えた結果だ。」

 

すまない、と頭を下げるセイバーに対し、響は慌てて「頭を上げてよ司令官!」と詰め寄る。

 

「司令官が頭を下げてどうするのさ、その、貴方は私の・・・」

 

「サーヴァントだよ、響。僕はセイバー、君を守るべき剣のサーヴァントだ。」

 

「あうううう・・・」

 

上司にこう言い切られてしまい響としてはどう返すべきか非常に難しいことになってしまった。

 

「マスターとサーヴァントの関係性というのは、非常に難しい。基本的にサーヴァントのほうが圧倒的な力を持ちながら、魔術師のほうが主人を名乗る。非常にアンバランスなものだ。」

 

そしてそれ故にうまく関係を築けず自滅するペアは非常に多い。亜種聖杯戦争においても、サーヴァントに反逆されたり、意思疎通ができず敗退する者たちは後を絶たなかった。

 

「ましてや僕と君では、表の立場というものまである・・・だから、響にはとんでもなく面倒なことを押し付けているのは分かっている・・・それでも、前線で令呪を行使できるサポートはサーヴァント戦では必須なんだ。」

 

不可能を可能にする3回の命令権は、絶対的不利な状況すら覆す。逆に言えばいかな優れたサーヴァントでも、相手のマスターが令呪を使ってきた場合、容易にひっくり返されてしまう可能性がある。

そこからさらにカバーするには、前線で、リアルタイムに令呪を使えるものが必要だ。

 

「それに君は・・・私の真名も明かしてあるしもう言ってしまおう。私にエクスカリバーを託した、泉の貴婦人に瓜二つなんだ。」

 

 

「・・・へ?」

 

 

思わず素っ頓狂な声がでた響を、大和はニコニコしながら見守っていた。

 

「あの、司令官の剣って・・・」

 

「ああ、岩に刺さってた方はマーリンが作った選定の剣だよ。エクスカリバーは泉の貴婦人という妖精から授かった。彼女の加護のおかげで、私は水上を歩けるんだ。

 ・・・響なら、そのような加護を私に与えてくれる、そんな気がして、つい無理を言ってしまっている。」

 

「いや、だって、その、司令官・・・?」

 

何やらとんでもなく恥ずかしい話をさらっとするセイバーのせいで、響の白い肌が紅潮する。

 

「私についてきてくれる艦娘は皆、等しく勇敢な武勲を立てた艦娘だ。誰をマスターとしてもサーヴァントとしては恥ずかしくない言える。だから、誰か一人だけマスターとして選ばねばならぬのなら・・・そのような『運命』を感じられた相手、とフラットと相談していた。」

 

聞き方によっては(いや、むしろどんな聞き方でも)とんでもない告白をするセイバーに、口をパクパクすることしかできない響と、それをほほえましく見守る大和。雪風と時雨もクスクス笑いながら扉の影から見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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赤城と加賀は、もともとフラット艦隊所属の航空母艦であった。栄光の一航戦の2人は、フラットの指揮の下数々の武勲を、この現代の海でもあげていた。

そんな2人が態々転属することになったのは、セイバー達の艦隊がそれだけ危険な海域に出る可能性が高い、と判断されたからだ。

航空母艦鳳翔は世界初の最初から航空母艦として設計された記念すべき艦だが、いかんせん搭載量がすくなく戦力不足は否めない。前線には、大量の航空戦力を保有するヲ級なども確認されている。そんな状況で制空権を守るには彼女らの力が必要と判断された。

 

2人はそれだけ素晴らしい戦力を保有した艦娘なのである。

 

 

 

 

 

たとえ、提督であるセイバーが来る前に羊羹を半分以上食い尽くしていたとしても。

 

 

 

 

 

 

 

響とあらためてマスター・サーヴァントの関係を確認し、ようやく執務室に戻ってきたセイバーをまっていたのは、お茶と羊羹を用意し・・・その羊羹を一人でどんどん食べていた赤城と、困った眼でそれを見ていた加賀だった。

 

「あの・・・司令官、これは・・・」

 

屋上で仲直りし、そのままついてきた響はビスマルクと邂逅したときの事情を知らない。見知らぬ(面識がないだけで名前は知ってるが)艦娘がいきなり自分たちの執務室でお茶をしてれば驚きもするだろう。

 

「ああ、提督、お戻りになるのが多いので先に少し羊羹を戴いていました。」

 

「・・・少し・・・とは言わないんじゃないかなぁこれ。」

 

一緒についてきた大和も目を丸くしているが、赤城の大食っぷりを事前に聞いていたらしき時雨と雪風は「まぁ、赤城だしね」と割とクールに(雪風は多少困ったように)流している。

 

「ごめんなさいね提督。赤城さん、こればかりは目がないので私も止められませんでした。」

 

抑揚のない声でいう加賀。一応、申し訳ないとは思っているのは通じるが・・・

 

「ま、まぁうん。君たちにこちらから話を聞く立場なわけだし、いいんじゃなかな。」

 

セイバーの笑顔も若干ひきつってはいたが、赤城の満足そうな笑顔をみるとなんかどうでもよくなり、軽くため息をついて話を進めることにした。

提督机にすわり、表情を真顔に戻す。

 

「それで、あの戦艦ビスマルクは、どうして我が艦隊に?そもそもなんでドイツ連邦共和国が大戦艦をわざわざ手放すような真似をしたんだ?」

 

「ええ・・・通常ありえない戦艦娘の移譲・・・端的に申し上げてしまえば、彼女をコントロールできずにもてあまし、おしつけてきたのです。」

 

 

 

 

 

 

 

現在艦娘計画を推し進めている国家はどこも、第二次大戦の敗戦国である。

それ故に戦前の政府や軍部は一般的に「悪」の扱いを受けやすく(それぞれの国に事情はあったことは理解されても、である)その時代の産物の付喪神である彼女らは、そのレッテルともうまく付き合ってゆかねばならなかった。

 

「私加賀も、第一次上海事変などで活躍した艦ですから、中華人民共和国からの受けは非常に悪いものです。空母は必要だが加賀は送るな、などと水面下で言われてるようですね。」

 

さらっという加賀ではあるが、その瞳が若干の寂しさを帯びているのセイバーは感じ取る。平和を守っている相手にそのような言葉を向けられれば・・・たとえ、過去のいきさつを分かっていたとしても、さびしいのは当然であろう。

 

「私たち日本の艦娘は、それでも「兵士たちも苦しんだ」という風に現代の皆さんが知ってくれているから、なんとか折り合いをつけてやっていけます。でも、あのビスマルクは・・・」

 

 

 

 

 

 

「総統閣下はヴェルサイユ体勢を打破した、いわば我々の生みの親なのよ!?確かに許されないことはやったかもしれないけど・・・すべてを押し付けて、法律でまで縛って、なんであなたたちは我慢できるのよ!」

 

 

 

 

第一次大戦に敗北したドイツは軍備に制限を駆けられ、新しい戦艦を作るなど夢のまた夢であった。その条約を破棄し、シャルンホルスト級、そしてビスマルク級が建造されるきっかけを作った人物こそ、歴史において最大級の悪名をとどろかせた人物、アドルフ・ヒトラーだ。

現在のドイツ連邦共和国では、ナチスを礼賛するどころかヒトラーの研究すら法令違反という事になっており、「我が闘争」の出版もできない状況にある。それだけホロコーストというのは「触れる事さえ忌々しい」禁忌であり、それを主導した人間は問答無用で悪人にしておかねばならない。

 

が、気性が激しいビスマルクには、それが「自分たちが生まれてきたことそのもの」への否定と取れてしまった。

彼女の感じ方は完全に間違っているわけではない。イギリス・フランスの国民には「ナチに守られるぐらいなら死んだ方がマシだ!」という一部の世代がいないわけではなかった。日本以上に、守っている相手から憎悪を向けられることがあった。

それでもほかの艦娘はなんとか折り合いをつけていたのだが・・・

 

 

「腕章を頑なに鉄十字にせず鍵十字を使おうとする、敬礼の時にナチス式のものを行おうとする。問題行動は上げたらきりがなかったみたいね。」

 

 

 

間違った行動などお互い様だ。そもそもドイツがあそこまで困窮したのはイングランドとフランスが、ドイツの再建を妨害するために法外な賠償金を吹っかけたからではないか。

あれさえなければもっとドイツは平和に発展できたのに、追い込んだ奴らがなぜ被害者ぶっているのか!

そしてこの国の国民は、なんで国の為に立ちあがった人にすべての責任を押し付け、自分たちも被害者であると言わんばかりの態度をとれるのか!

私たちが救おうとしたドイツとはいったいなんだったの!?

 

 

 

それらの感情がないまぜになり、ビスマルクは決して命令に従わなかった。いや、むしろ反発してわざとそういう行動をとっていた。

本来なら即逮捕ものの行動も、艦娘であるという実力と、彼女抜きでは戦闘がおぼつかない実情があり今まではなんとかとりなしてきた、のだが・・・

 

「軍部もかばいきれず、かといって艦娘を拘束、ましてや処分もできず、留学という形で比較的軋轢の少ないアジア地域に左遷した・・・というのが、言葉を選ばず説明した彼女の実情です。」

 

「そしてなんでこの艦隊か、といえば、問題児をおしつけてなんとかフラット提督の足を引っ張りたい一部の海軍のお偉いさんの事情です。」

 

加賀の言葉は若干のトゲを帯びていたが、同時に「そんなもんに屈するとは思っていない」という強気な心境も読み取れた。

 

「祖国に裏切られた艦娘・・・か・・・できれば、助けてあげたいが・・・」

 

自分が英国人である以上、何かきっかけがなければビスマルクへの言葉は決して届かないと、階段でのやり取りよりセイバーは理解していた。

自分が国に必要不可欠な存在であるという最後のプライドまで撃ち砕かれた彼女には、目に映るものすべてが敵なのだろう。

 

「ああいうタイプは案外、提督が実力を見せれば素直に従うと思いますよ?一緒に哨戒にでるとか。」

 

先ほどから話を聞く側であった大和の提案は、思考が「どうすれば怒りをとけるか」に固まっていた場にとって、まさに鶴の一声であった。

 

「彼女は『敬意を表せる』と思った相手には素直に従うと思います。現状、そういう相手がいないから力を持て余してるのであって、舵を預けられる相手に出会えば多分喜んでついていくと思いますよ。」

 

「大和さん、その根拠は?」

 

「え、なんていうか、犬っぽくありません?今は飼い主がいなくて不安がってるけど。威厳を示せる力の持ち主が、彼女の存在を肯定してあげるのが一番だと思いますよ」

 

前半のたとえはひどいが、「存在を否定された」ビスマルクには、確かにそれが効果的というのはうなずける話だった。

 

「幸いにも提督は、ヲ級を両断できる実力の持ち主です。その機会は遠からず来ると思っています。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってるのかな、私は。」

 

数時間後。

割り当てられた部屋のベッドうえで枕をかぶるビスマルク。英国人は気に入らないが、いくらなんでも初対面にあれはない、というのは自分でもわかっているのだが・・・彼女のストレスは、それを我慢することができないほどにたまっていた。

ビスマルクとて、現代の価値観は理解できる。ヒトラーがやったことが正しかったというつもりも、本当はない。ただ、全ての責任を主導者と軍に押し付け、自分たちは被害者だ、という顔をしている国民を見るのが、どうしても耐えられなかった。そうすることでアイデンティティーや賠償問題を乗り越える必要があったと分かっていても、割り切れるほど彼女は器用な人物では、なかった。

その結果がこんな島国への左遷である。彼女の唯一のよりどころ、国を守るという点においてさえも否定されてしまった。存在価値より、アイデンティティーを脅かす厄介さのほうが大きいと判断された。

 

護国の誇りより、今の心の安寧をドイツ国民はとったのだ。それがたまらなく、悲しかった。

 

「分かってるわよ・・・私が苛烈すぎる・・・世の中の人はもっと穏やかに暮らしたい・・・そういう暮らしを守るための艦娘なのは。」

 

だが、分かってはいても納得はできないのだ。

 

 

 

「司令部より緊急入電、当鎮守府よりほど近い海域で所属不明の船舶より救難信号を確認、おそらく密輸船の類と思われるが、助けないわけにはいかない。出撃できる駆逐艦、巡洋艦は直ちに出撃されたし!」

 

 

突如鳴り響く警報はスクランブルの証。緊急性が高いため快速の船にしかかかっていないが、万が一に備えて戦艦空母も臨戦態勢はとっておくようにと続けて通達される。

 

だが

 

 

「・・・いいじゃない、見せてつけてやるわ、このビスマルクの力を!」

 

このイライラを合法的にぶつけられる相手を見つけた戦艦娘は、命令を無視して艤装の倉庫へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ビスマルクさん、あなたの艤装はまだ調整が・・・大体貴女は戦艦では・・・」

 

出撃準備をしていた雪風と鉢合わせた。キャーキャーと抗議するげっ歯類をはねのけて、ビスマルクは艤装を装着しそのまま海へ出撃をする。

 

「ちょっとちょっと!?命令違反ですよビスマルクさん!?」

 

ここに至って彼女の意図を理解した雪風が叫ぶが完全に無視し、通達の有ったポイントへ夜闇を切り裂き、ビスマルクは進撃を開始した。

 

「ギャーギャー煩いわね!私の速力ならそこらの駆逐艦なんか目じゃないスピードでたどり着けるわ!そしたらこの主砲で一気に蹴りをつけてやる!」

 

尚も後ろの方で雪風が言っているが、もう彼女の声は聞こえない。振り返る必要などない。敵を叩きのめせばすっきりするし、結果を出せばそうそう文句も言えまい。

 

 

彼女の自負通り、ものの数分でビスマルクは襲われている不審船と、それを取り囲むように展開している深海棲艦4体を発見した。軽巡洋艦を筆頭に駆逐が3体、斥候だろうか。

 

「なんだろうと関係ないわ!さあ、海の藻屑にしてやるわ、フォイア!」

 

先手必勝、相手が不審船にかかりきりの間に不意打ち気味に主砲を放つ。弾丸は手近にいたの駆逐イ級を夾叉し海に着弾。とらえた。ようやく回避行動にでたイ級であるが、一度囚われてしまえばあとは合わせて動くだけだ。

 

「沈みなさい!」

 

次弾装填、そして砲撃。放たれた弾丸は頭からイ級を完全に貫き、轟沈せしめた。

 

「ハッ!所詮その程度ね!さぁ、次はだれかし・・・」

 

(ズニノルナヨ、戦艦ガ夜戦デワレワニカナウトオモウナ)

 

得意満面になっていたビスマルクの左背後から、ぞっとするほど冷たい声が響き、直後に弾丸が掠める。イ級を盾にしてすぐさま離脱していた軽巡ヘ級は、夜闇にまぎれてビスマルクの背後を完全に取っていたのだ。

 

「クッ・・・だけどこれ以上は・・・?????え・・・」

 

とっさに向きを変えようとして、ビスマルクは気が付いた。「舵がきかない」事に。

 

 

(あ、あの程度の被弾で・・・まさか、まだ調整が・・・?)

 

 

彼女の正式な戦線参加はまだ先といことで、整備を後に廻されていたのだろう。そういえば雪風もまだ調整が、と・・・

 

 

(アラ、戦艦ノ割ニズイブントアッケナイ。水底ヘト沈ムノハナタノヨウネ)

 

こちらの不調を一瞬で把握したヘ級。その顔にパーツといえるものはないものの、もし口が付いているのならニヤァと口角を上げたであろう、そんな気持ちの悪い声だ。

 

「なっ・・・めるなぁ!」

 

必死に砲撃で反撃するビスマルクだが、何せ回避行動ができないため残りのイ級も合わせて集中砲火を浴びてしまう。防御すらままならず、装甲である服がどんどん削られてゆく。

 

「クッ・・・私を誰だと思っているの・・・ビスマルク級1番艦ビスマルク、ドイツ第三帝国最強の護り、それがこの私なのよ!!!」

 

(最強?ワラワセテクレルワネ。アア、アナタ程度ガ最強ヲ名乗レル国ダカラ滅ンデシマッタノネ!)

 

戦意を何とか保とうと叫ぶビスマルクを、ヘ級が嘲笑う。戦況は悲しいほどに厳しく、冷静な思考の一部がビスマルクに冷徹な現実を突きつける。このままでは死ぬ、と。

 

 

(・・・お似合いかもね。プリンツやグラーフと違ってこの時代の人々に合わせられず、極東の地で暴れるだけ暴れて、また水底へ・・・)

 

「それでも・・・せめてお前だけは道連れにして!!」

 

主砲を正面に構え、魚雷でトドメをさしに来たヘ級を討ち取らんと、ビスマルクは咆哮をあげる。

 

 

 

 

「それは困るな。君には僕の艦隊でもっと働いてもらわないと。」

 

 

その涼やかな声は、戦場におおよそ似つかわしくない優しい響きで。

そんな声にはおおよそ似つかわしくない現実は、イ級が左右真っ二つに両断されたという事。

 

 

「・・・はっ・・・?」

 

そんな声しか、出なかった。だって、意味が解らない。自分を追いつめてたはずのヘ級が突如真っ二つになったあげく、そこに立っていたのが・・・

昼間の白い軍服ではなく、中世の鎧兜に身を包んだセイバーだったのだから。

 

「あ・・・アナタ・・・提督・・・!?ちょっと、なんでこんな・・・大体ここ海の上よ!?それになんでその軽巡が・・・」

 

だが彼はビスマルクの問いに答える事なく、大きく踏み込んで彼女の後ろに回り込み、不可視の「何か」を振るって駆逐艦の砲撃「跳ね返した」

 

「後でゆっくり答えてあげるよ。まずはこの場を離脱するんだ、ビスマルク。 響、時雨、ビスマルクの護衛を!神通と摩耶は私について来い、敵を殲滅する!」

 

「了解!」「おっしゃ!やってやるぜ!」「分かったよ提督、御武運を!」

 

セイバーの着た方向から、やや遅れて響・時雨・神通と摩耶の4名もやってきた。この場の安全は確保されたといっても差し支えはないだろう。

 

「たく、夜なんだから軽めの船でもあぶねーんはしってんだろ、油断大敵だぜドイツ艦。」

 

ぽんぽんとビスマルクの肩をたたく摩耶だったが、「ま、今回は運がなかったな、次につなげるためにもアタシの後ろにまわんな!」と、にかっと笑って見せた。

 

「・・・なんで・・・」

 

「動けるかい?ビスマルク、つらいなら肩を貸して曳航するけど。」

 

呆けているビスマルクに声をかけたのは、昼間にも会った駆逐艦、響。

 

「・・・舵がきかない・・・方向転換だけ手伝ってほしい。機関は大丈夫よ・・・」

 

「そうか、良かった。提督達に任せておけば、あんな敵はあっという間だよ。さぁ、帰ろう。」

 

響の信頼しきっている言葉は、今までのビスマルクの常識で測れば異常としかいえないものだったが、今はすんなり信じられた。あんなものを、見せつけられれば。

 

 

 

「そうだビスマルク、来る途中、提督から伝言を頼まれてる。」

 

 

 

私もかつて自分の国を護れなかった者、残されたせいで苦しみを味わった君へ言葉をかける資格はないのかもしれない。

それでも、私はこの時代の日本で出会った縁を、大切にしたい。共に戦ってくれないか、ビスマルク。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局おとがめなしですか・・・甘すぎやしませんか?提督。」

 

翌日の提督執務室。昨日の報告書を作成するセイバーに向かって、加賀(スクランブルの結果現在休憩中の響の代理)がジト目でいう。この辺、割とシビアなのが彼女なのだが、セイバーとしては「敵に負けてプライドまで砕かれたところに追い打ちは掛けたくない」という判断を下した。

そのせいで資材の消費のごまかしだの状況説明のでっちあげだのに苦心して報告書が一向に進まないのだが。

 

「でもまぁ、響からの報告を聞く限り昨夜の一件で一応コミュニケーションはとれるようになったみたいだし・・・」

 

「そこできっちり罰して上下関係をはっきりさせることも必要です。」

 

「ぐっ・・・反論できない。」

 

かつて信賞必罰は前提ということでグィネビアすら処刑しかけた(ランスロットが乱入する事は予想してたとはいえ)彼として本当に甘い采配である。やはり「滅んでしまった体制に翻弄されている」という点で微妙に同情してしまっているようだ。

 

などと話していると、コンコン、と控えめなノックの音が響く。どうぞ、とセイバーが返事をすると、入ってきたのは話題の人物、ビスマルクであった。ところどころの包帯や絆創膏が痛々しいが行動に支障はないらしい。

ビスマルクは・・・昨日と違い、セイバーに向けてぴんと背筋を伸ばして、引き締まった表情で近づいてくる。やがて、彼の机の前に・・・跪いた。

 

 

「陛下・・・存じ上げなかったとはいえ、数々の無礼な態度、お許しください。」

 

 

「・・・はっ・・・?」

 

目が点になったのは加賀である。なんだ、この目の前にいる艦娘は。これが昨日までははねっかえりとして名をはせてたビスマルクなのか?

だが、ある一つの知識を思い出したことで、彼女の中で連鎖的に謎が解けていった。

 

「そういえば聞いたことがある・・・第三帝国の総統は・・・大層な円卓マニアで、聖杯探索をしでかしたり円卓をモチーフにした勲章を作ったことがあると・・・」

 

「ええ、金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章のことね。空の魔王ルーデル大佐しか受賞した人物がいなかったけど。」

 

加賀の言葉に、ビスマルクはゆっくりと頷いて見せた。ここだけでも本当に昨日と態度がまるっきり違う。

 

「ああ、そうか。響達から僕の真名を聞いたんだね、ビスマルク。」

 

「はい・・・マインフューラーも尊敬した、騎士の中の騎士、まさかこの身が陛下にお仕え出来る光栄に預かるとは、思ってもいませんでした・・・」

 

言葉を紡ぎながら、彼女は昨日セイバーにとった態度を一つ一つ思いだし、心の底から後悔しているという苦々し表情になった。

 

「全く、大げさだなビスマルク。今のこの体は、小聖杯で受肉してるとはいえサーヴァント、使い魔の一種だ。そこまで固くならなくても・・・」

 

「しかし・・・」

 

「・・・ならば、顔を上げてくれ、ビスマルク。」

 

 

セイバーは立ち上がると、聖剣を実体化させ、ビスマルクの両肩をかるくたたく。騎士の叙任の儀式である。

 

「謙虚であれ。誠実であれ。礼儀を守れ。裏切ることなく、欺くことなく。弱者には常に優しく、強者には常に勇ましく。己の品位を高め、堂々と振る舞い、民を守る盾となれ。主の敵を討つ矛となれ。士である身を忘れるな」

 

セイバーの言葉一つ一つを、ビスマルクはかみしめるように聞く。騎士としての誓いは、艦娘としてビスマルクが最初に志したものでもあった。

 

 

ああ・・・私はこの人の下で、一番最初に夢見た志を、実現できる。

 

 

 

「『サー・ビスマルク』 当代の円卓の騎士として、仲間たちと共に私を助けてくれ。・・・不思議と、君を見ているとガウェイン卿を思い出すよ。」

 

「ガウェイン卿・・・アーサー王の右腕にして太陽の聖剣の騎士・・・もったいなきお言葉です、陛下!」

 

 

完全に騎士モードのスイッチが入って感極まっているビスマルクを、加賀は圧倒されながら見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「閣下、大変です!日本に送ったビスマルクが・・・!」

 

「早速問題行動を起こしたか。まぁ、あっちのお偉いさんが足を引っ張りたい部隊がいるという話だったから想定の・・・」

 

「どういうわけだかあちらの提督に心酔して大戦果を上げ始めたあげく日本に帰化申請を出すなどと言い出したとか!」

 

「チクショウメー!!!!!!!!?????」

 

 

 

 

 




両親の入院だの、モンハンに誘われただの年末年始で仕事が死にかけただのありましたがようやく落ち着いてきたのと、せっかく改も出たので、プロットそのものは完結してるしまたまったりと再開していきます。響サルベージとビスマルク・赤城・加賀加入。

 
響 時雨 雪風 神通 木曾 羽黒 摩耶 鳳翔 赤城 加賀 ビスマルク 大和 の12人で円卓完成。これ以上はフラットの艦隊要因としてゲスト出演する程度の予定。
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