あと1話出せればと思ってたので
ではどうぞ
学生時代で何が1番の思い出と聞かれたら様々意見は出るだろうが、その中に必ず出てくるであろうと断言できるものはいくつかある。その1つが修学旅行であろう。この椚ヶ丘中学校にも当然あり、これに関してはE組にもある。
「風見君、どの班に入るか決まった?」
クラス委員長の片岡は登校してきた雄二に問いかける。
「もう少しだけ待ってくれ今日中には出す」
「随分真剣に考えるんだね。なるべく早くね」
本来なら、すぐに答えを出したいがそうもできない理由がある。
先日、烏間の訓練が終了後に全員が集まるようにいわれた。
「知っての通り来週から京都2泊3日の修学旅行だ。君らの楽しみを邪魔したくはないが、これも任務だ」
広く、複雑な京都で殺せんせーは各班ごとに決めた観光コースを時間を分けて全てに付き添う。ならばそれを狙うためスナイパーを政府は雇ったとのこと。いうなれば、暗殺修学旅行である。
(しかし、スナイパーか……一応どんな奴か確認と、承認されるかわからんが保険を付けておくか。それと、それが活かせる最大のポイントと班決めも必要だな)
*side雄二
「で、こいつが今回依頼を受けたスナイパーか?」
「えぇ、そうよ」
簡単な経歴をみると 中々のスナイパーであることがわかる。中東の砂嵐の中、2㎞先の標的に命中させた実績もあり、間違いなく一流だろうな。だが、
「で、第2候補からは?」
「いないわ。理由は難易度の高さゆえ。むしろ、1人いるだけでも奇跡と言いたいわ」
淡々と語るJBは俺の目から見ても、期待してない顔をしているのはわかる。まぁ、正直俺も成功するとは思ってない。というより、できるなら俺が
「殺れるの?」
「俺の心を読むな」
とは言え確かに俺では無理だろうな。色々な意味で
「ごめんなさい」
「いや、謝られると困るんだが……それより、俺が頼んでいた方はどうだ?」
「承認されたわ」
「意外だな」
正直、通るとは思わなかった。市ヶ谷もサムおじさんも何より
「正直に言うとね、今回の暗殺計画は期待値がゼロに等しいのよ。まぁ、やらないよりは良いかっていう感じなの」
焼け石に水なのがわかっていても、水を掛ける努力くらいは続けようということか。
「それと、本人も断っていたけど、あなたのご指名ということでどうにかなったわ。でも、これは非公式。故に第2候補にもないし、知っている人間もわずかよ」
「構わない。後はポイントと、それを実現できる班決めだな」
「ところで、作戦成功の有無はともかくとして、終了後は会わないの?」
「……良いかもしれないが、修学旅行中に会ったら変だろ?クラスから抜けるのも、学生をしてる俺が会うのも」
まぁ、直接は会えないが一言くらい伝言はしておこう。
*sideフリー
「よし、計画はこんなところか」
「雄二君。まだ班決めてないって聞いたんだけど、よかったら私達の班に入らない?」
「あ、矢田ちゃん抜け駆け禁止!ねぇねぇ雄二君、私の班に入ってよ」
(俺をダシにしてなんの勝負してるんだ)
(((((とか思っているんだろうな)))))
もはやE組全員、雄二の鈍感さは既にわかりきっているのでだいたい予想ができていた。
「ねぇ雄二君、雄二君はどっちがいいの?」
莉桜の質問に対し雄二は
「いや、2人には悪いがどちらも俺は入らない」
「「え!」」
まさか断られるとは思わなかったのかガーンというBGMが聞こえてきそうな感じでショックを受けていた。
「というか、お前たちの班はどっちも定員オーバーだろ」
班の決め方は6~7人班であり、桃花の1班も莉桜の2班も既に7人。雄二のいう通り定員オーバーである。雄二がどこに決めるのかギリギリまで言わなかったのもあり、ならばと躍起になった恋する乙女は大事なことが頭から抜けていた。そうなってくるとあとは3班と4班なのだがどちらかを雄二が言う前に
「俺らの班だとよ」
答えたのは3班の寺坂だった 。
「昼休みに俺のところに来て、俺の班に入れてくれって言われたんだよ。まぁ、あのタコを殺す算段があるっていうならこっちとしては大助かりだからな」
「そういうわけだ。渚も誘ってくれたんだが…」
「いいよ。でも雄二、今回は仕方ないけど、もう少しだけ2人にはちゃんとしてあげてね」
「?」
ちゃんと接しているぞと顔にでているが渚は苦笑するしかなかった。
こうして雄二も班を決めた。ちなみに他のメンバーも含めて3班はこうなっている。
寺坂 竜馬、吉田 大成、村松 拓哉、竹林 孝太郎、狭間 綺羅々、原 寿美鈴、風見 雄二。
「んで、改めて聞くがよ。なんでこの班なんだ」
「だから言っただろ」
旅先でどこを見るかを決めている最中に寺坂が聞いてくる。
「この班が、もっとも成功確率が高いからだ」
はっきりと、そう言われ全員困惑した。理由はここにいるメンバーは言葉を悪くすれば現状あまり暗殺向けでないグループの集まりだからだ。もちろん、殺す気はあるしそのための作戦も既に立てている。雄二はその作戦を聞き、少しだけ変更するが充分だと褒めてきた。だが雄二なら渚達がいる班でもよかったはずなぜわざわざこの班なのか、そこが疑問なのだ。
「おまえ、それ本気で言ってんのか?」
「本気以外何がある。詳しい作戦は後で話すが、理由をしっかりいうならこの班が3班だからだ」
「「「「「「???」」」」」」
あまり伝わらなかったのか、首をかしげる。
「まず1班だが、殺せんせーのことだ、暗殺が行われることなど百も承知だろう。故に最初は余裕を持ちながらも集中して暗殺をはねのけるだろう。次に2班、先程のことがあった後ならもはや先生は相手が視界に入ってなくとも狙われていると確信してしまう。故に狙い難い行動をしてくるはずだ。そして4班だが、最後というのもある。1番最後だからこそ、警戒度は上がってもおかしくない。だが3班は先の1班、2班最後の4班の間だ。先の2回の暗殺を回避したのならこんなものかとなり、なおかつ俺以外は警戒心が薄い。だが、今回はスナイパーの射撃なら警戒してもそれほどじゃない。仮に警戒するのでも、その方が意識が分散される。必死に頼み込んで聞いたが、今回はスナイパーが3班から
ほんの少し早口で説明が終わった後は開いた口が塞がらなかった。成功率が高いからと雄二は言ったがこれを聞くと思う。仮に最初の1班に入っていてもこいつなら可能性を他の班より高くできると
「殺る気なのか?」
「出来るかどうかは問題じゃない。今回失敗してもまだチャンスはある。ただ、やる気と言うのは少し違う」
「はぁ?じゃあ何だってんだ。殺る気は当たり前ってか?」
「違うな。やってたらやる気になる。ただ、行動が本気かどうかだ」
本気。それは確かにそうだった。3班のメンバーは先の暗殺向きでないことがどこか本気にさせていない部分があった。殺る気はあっても本気ではなかったのだ。
故に確信した。こいつはこのクラスで間違いなく最高の暗殺者であると
それが、最大の間違いだったと気付くのは、先になる。
そして、修学旅行当日。いつもより早く日課を終えて現地に行く前にバイト先に来ていた。
「じゃ、向こうについても定期連絡はすること。それと、あんまり無茶苦茶なことはしないこと」
「子供あつかいはやめろ」
「あなたがそう言われるようなことしてきたからでしょ!修学旅行の手続きだけで大変なのに」
「その件に関しては感謝してる。正直にいうが、俺が普通に修学旅行ができるとは思ってなかった」
「……こんな形だけどね」
JBも手続きが上手くいったことは驚きだが、それでも暗殺という環境に雄二を置いてる時点でこれは普通と言えない。雄二もそのことは充分理解していた。
「それじゃ、俺はそろそろ行かせてもらう」
「雄二」
イスから立ち部屋を出ようとした時JBから声が掛かり、何かと振り向く。
「行ってらっしゃい」
「…あぁ。行って来る」
そうして雄二が部屋から出た後、先程かけた言葉は、どちらかというと親が心配する子供というより結婚してしばらくした後の仲を保とうとするために軽い事でも話そうとする夫婦のようだと思ってしまい、どっとため息を出していた。
集合場所である東京駅に着くと修学旅行の際の注意事項と合わせたE組いじりを聞いて電車に乗り出す。さらにここでもA~D組はグリーン車なのに対してE組は普通車である。とはいえ、もう分かっていたのもあり愚痴という愚痴もあまりでなかった。
「まぁ、いつもの感じね」
「莉緒、逆に考えろ普通車だからこそあいつらと一緒に旅する事なくE組の皆と楽しく旅行ができる」
「なるほど。そういう考えもあるね」
「まぁ、俺の考えじゃないが」
「どういう事?」
「それは…」
続きを言う前にそこに来た人物に流石の雄二も唖然とする。他の人とは違い、呆れた意味でだが
「ごきげんよう生徒達」
モデルのような歩き方とハリウッド女優のような格好で来たのはビッチ先生である
「なんなんだよビッチ先生その格好」
「狙ってる暗殺対象ターゲットにバカンスに誘われるって結構あるの。その時、ダサい格好だと幻滅させたら折角のチャンスを逃しかねないわ」
「場違いにもほどがあるだろ」
「言ってることだけは的を得てはいるがな」
「ふん、イイ女は旅のファッションにも気を使うのよ」
木村と雄二の意見にもどこ吹く風といった感じである。しかし当然ながらこんな目立つ服装を烏間先生が許すはずもない
「目立ち過ぎだ着替えろ。どう見ても引率の教師の恰好じゃない」
「堅い事言ってんじゃないわよ烏間!ガキ共に大人の旅の………」
「2度はないぞ、脱げ、着替えろ」
明確な怒りと殺気を出す。しかも冷静を保とうとして言ってるのだからある意味より恐怖を感じる。
結局、車内トイレに入ってシブシブ着替えていた……寝巻きに。
「って、なんで寝巻き?」
「言うな渚。きっとあれ以外の服も似たようなものだからだ。ビッチだからTPOをわきまえた服装もそうできないんだろう」
睨むビッチ先生を無視する雄二を見て相変わらずのビッチ先生いじりにもだいぶ慣れてきたのかもはやいつも通りだなと皆思っていた。
「あれ、さっきから殺せんせーの姿が見えないんだけど?」
「あ、そういえば」
「あぁ、殺せんせーなら、さっきからずっといるぞ」
スッと雄二は窓に向かって指を向ける。そう、窓際ではなく、電車の窓の外
「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー!」
【いやー駅中スウィーツを買ってたら乗り遅れてしまって。でも大丈夫です、次の駅までこの状態で一緒に行きます。保護色にすれば外からは服と荷物が張り付いてるだけにしか見えません】
「それはそれで不自然だよ!」
電車の中なので携帯で話している
「あの状態で携帯も出来るのか」
「ここでそのツッコミいる!?というか、さっきから気付いてるのになんでスルーしてたの!?」
「いや、殺せんせーのことだから何かしら意味があるのかと思ったんだが」
「「「「「あるか‼︎」」」」」
そうこうしてるうちに次の駅に到着すると同時にマッハで入ってきてようやく合流した。
「いやあ、疲れました。 目立たないように旅をするのは大変ですねぇ」
「そんなでかい荷物持ってる時点で目立つだろ」
「そもそも存在そのものが目立つし」
「いや、そうでもないぞ。学校近くのコンビニではもはや常連になっているのもあるが、全く不思議がられない」
「どこからツッコミを入れればいいのかわからないけど、とにかく目立ったらダメでしょ」
国家機密だというのに目立ちまくる殺せんせー。雄二の見るコンビニが異常なのか、お客様として対応してるのかは定かではないが少なくとも今この場ではとても目立つ
「ほら、殺せんせー。今使ってる付け鼻の代わりにこれ使いな」
菅野が渡したのは殺せんせーの顔にフィットするように加工した手作りの付け鼻である。
「顔の曲面と雰囲気に合うように削ったんだよ。俺、そういうの得意だし」
「おぉ!すごいフィット感。ありがとうございます菅野くん」
余程気にいったのか鏡を見て嬉しそうにそう言う。
「面白いね渚。旅行になるとみんなのちょっと意外な面が見れるね」
茅野の言葉に「うん」と返し渚は雄二を見て、この旅で皆の色々な顔を、特に今だに謎の多い雄二の別の顔が見れればいいなと思っていた。
今年最後の投稿でした
みなさん良いお年を!
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