さて、今回はデート回です
「うわぁーみてみて風見くんワニにエサあげれるんだって」
ある日の放課後、雄二と陽菜乃は以前約束していた通り動物園に来ていた。
「確かに迫力あるな」
「ねー。次、あっちに行こうよ」
「腕を組む必要があるのか?」
「あるの、はぐれないようにね。それにこれデートなんだから」
そう言って腕を組んで動物園を歩く次についた場所には白ウサギがいた。ここでは実際に動物と触れ合えるコーナーで赤い目がこちら見つめ陽菜乃が手をふると反応して近くに来る。
「たしかウサギの目が赤いのは血管がすけて見えるからだったな」
「色素のないアルビノだけだけどね。本当によく知ってるよね」
「以前にアメイジングアニマルという番組をみてて、そこである程度覚えた」
「あ、私もそれ見てた」
この状況を桃花と莉桜がみれば悔しがっていることは間違いないであろう。が、今回はそれでも彼女に譲った。流石にここに割り込むのいけないだろうと思ったからである。
「それにしても、動物園に来るのを風見くんから言い出すとは思わなかったなー」
彼女は今度の放課後にどこか遊びに行こうとは言ったが場所を提案したのは雄二であった。
「プランをたてようと思った時に倉橋が動物好きだからここにしようっていう安直な考えだったんだが」
「気にしないで。むしろ嬉しいよ」
安直と雄二は言うが倉橋が動物好きというだけここにしたわけでもない。動物なら最近はネコカフェのような場所でも触れ合える。それでもここにしたのは様々種類があるという至極当然のこと、ネコにも種類があるがそれでも猫だけ。さらに休憩したいなら園内のいたるところにあるベンチと飲食店ですぐできる。何よりここなら相手のすきな話題に振りやすい
「しかし、ずいぶん人が多いな平日のこの時間に」
多いというには少し盛りすぎな言い方かもしれないが雄二が思っていた光景よりは確かに客の人数はあった。
「あぁ、なんか去年のアニメで擬人化した動物の話があるんだけどそれのコラボ期間なんだよ」
「擬人化?アニメ?そういえばさっき見たアライグマのところにキャラクターの看板みたいのがあったが、ここのマスコットじゃないのか?というか、そういうコラボは連休期間にやるものなんだろ?」
「去年にも同じコラボやってたけどその時はあまりの人気に期間が延びたから、今年は早めに始めたんだと思う」
なるほどなと雄二は思いながら園内をめぐる。
「色々やってんだな最近の動物園は。前に師匠と来たときのとは全然違う」
「………ずっと気になってたんだけど、風見くんの師匠ってどんな人なの?」
倉橋が聞くと顎に手を当てて「どう説明したものか」と小声で言って少し考えて語りだした。
「師匠と出会う前は家族を亡くし、俺は父親の知人に拾われ生きていたわけなんだが…その知人ていうのが、世にいう悪党でな」
「は、初耳なんだけど⁉︎」
「まぁ、クラスメイトに話すのは初めてだからな」
「そっか、私が初めなんだ」
ちょっと嬉しそうな倉橋であったが何故彼女が嬉しそうなのかわからず頭にクエスチョンが出た雄二だが気にせず続きを話す。
「で、そんな悪党の巣窟に少数の部隊を率いて強襲し、ごく短時間で制圧をして俺を保護したのが俺の師匠の日下部麻子だった」
「…警察の人?」
「…少し違うな。
「あ、刑事ドラマで見たことある!そっか〜その悪党から風見君を救ってくれたのが師匠なんだね」
「簡単に言うとな。それからは麻子と一緒に暮らすことになり、仕事の関係でアメリカにもついて行ったこともある。そうして一緒に暮らしていく中で生きる力を教わった」
倉橋は話を聞いて相当凄い人であったのだろうことはわかった。
「今の風見君の恩人で、師匠で、お母さんみたいな人なんだね」
「弱虫だった俺を一端の男に育てたという意味では、確かに母親に近いのかもな。つっても生活面はズボラな面が多かったから、ある程度したら家事は俺がやってた」
「そんなズボラなところを支えてたんだね」
「感謝の想いがあったからな。来たばかりの時の俺は何にたいしても価値を見出せず、死んでいるのと同じだった。見かねた麻子は慣れない子守でも色々してくれた。その時に動物園にも連れて行ってくれたんだ」
当時のことを遠くを見るように、しかしどこか嬉しそうに語る雄二に倉橋は惹かれていた
「風見君はさ、今はどう?楽しい?」
「…正直に言うと、わからない。俺は麻子に恩を返したくて生きてたのにその前にあいつは死んじまった。それだけで生きてた俺がこの時間を楽しめんのかな」
(そう、そんな些細なことを許されるのか?)
「難しく考えすぎ。目の前にあることに集中してればすぐに楽しめるよ。それに、一緒にいる私が楽しめてるんだから、無意識に風見君も楽しめてるよきっとね」
「…そうか、そうだといいな」
ひと通り見たので少し休憩も兼ねてテーブルのある休息所についた
「何か買ってくる」
と倉橋に言って少しだけ歩いたところにある売店に向かう。が意外と並んでいたので少しだけ時間がかかり戻って来たとき雄二は誰が見ても不機嫌な顔をする
「なにしてんだ?」
「あら、お帰りユージ〜」
「あ、風見くんお帰り〜」
なぜかニコニコと仲よさそうにしている倉橋とJBがそこにいた。
10分ほど前
「相席しても良いかしら?」
その言葉に最初は連れがいるので断ろうとした倉橋であったが話しかけてきた女性の顔に身に覚えがありすぐに声が出なかった。とはいえ、一方的に名前知っている程度のものである。以前にカルマと莉桜が写真で見せてくれた雄二の身元保証人兼、バイトの上司
「えっと、春寺 由梨亜さんでしたっけ?」
どう見ても日本人に見えないが雄二から帰化してこの名前になったと聞いていた。
「あぁ、あの子に聞いたのね。なら、説明不要ね」
あまりに突然だったのでどう声を出そうか一瞬迷いながらも問う。
「あの、なんでここに?」
「あの子が今日デートするって聞いてね。ちょっとだけ心配だから来てみたの一応言うけど、私は尾行してないから」
「そ、そうなんですか」
デートの事を聞いていると聞きさらに緊張してしまうがそれに気づいたのかJBは落ち着かせるように言う
「正直言って安心したわ。ほら、あの子って鈍感なのにナチュラルに女の子を落とすから」
「あ、たしかに私以外にも好きな人がわかってるだけでも2人もいますし」
「あーもう遅かったかーというより、それで良いのあなた?」
「大丈夫ですよ私が1番に好きになってもらいますから」
勢いもあったが仮にも雄二の養母である彼女に大胆な発言である
「……でも良かったわ。あの子学校での事はあまり話さないから」
「以外です。話すの好きそうなのに」
暗殺のことを話せないのは当然としてもそれ以外は話していると思っていた彼女の素直な意見である。
「だとしたら私だけなのかしら?まぁ、とにかく色々大変だと思うけど、仲良くしてあげて」
「………春寺さんは雄二といつ知り合ったんですか?」
「ん〜どこまで言ったら良いかしら?」
「あ、さっき前の保護者の麻子さんのことは聞きました」
と言うと少々驚いた顔をするがすぐに戻って語る
「な、なら話しやすいわね。ユージとは麻子があの子の保護者になる時に会ったの。あの頃は可愛かったのに麻子が色々余計なことも教えてた所為であんな感じになって…今やだんだん麻子に似てきてるし。手が掛かる所とか、自分勝手なとことか、喋り方とかあーもう!」
「………」
おしとやかそうな人がいきなり声を荒げたのを見て呆然としてしまう。
「ハッ!ま、まぁそんなこんなで出会って、麻子が保護したは良いんだけど麻子は壊滅的に家事がダメだからよく見に行ってたわ。本当に、麻子だけに任せてたらどうなってたことか」
「ふふふ」
可笑しくてつい笑ってしまいJBは不思議そうな顔をする。
「あ、ごめんなさい。でも、風見くんもですけど春寺さんも麻子さんのことは大事な人だったんですね」
「……まぁね。麻子とは私が孤児院にいた時会ってそれからずっと腐れ縁だったの。当時から破茶滅茶で無茶苦茶だったけど、麻子とは切っても切れない関係だったわ」
怒っているように話しているようにも見えたが懐かしむようにも聞こえていたからこそ大事な人なのだと理解していたその証拠に麻子という名が先ほどから何度も出している。
「あ、そういえば風見くんが春寺さんのことをJBって言ってたんですけど」
「帰化する前の名前が
とここから先はたわいない話をし出したときに雄二は戻ってきたのである。
「話はわかったが、いちいち見にくる必要ないだろ」
「人が心配して見に来たのにその態度はないでしょう」
雄二は「面倒な」と口に出して悪態を吐くが気にせずJBは立ち上がる。
「ありがとう。えぇと…」
「あ、陽菜乃です倉橋 陽菜乃」
「改めてありがとう陽菜乃さん、話せて楽しかったわ。…これ、私のプライベートの電話番号何かあったらいつでも連絡して応えられる時は出るから」
番号が書かれた用紙を渡し、普通の男ならときめくようなウインクをして立ち去った
「ったく、本当に何しに来たんだあいつ」
それから少しして帰り始める時にJBの行動に不満を言う
「風見くんが心配なんだって」
「大きなお世話だまったく」
「…………」
「どうした?」
「別になんでもないよ」と答えたが彼女はある決意があった
(あんな美人な人と暮らしてたら女性の耐性もできちゃってるんだろうな〜もっと頑張れ、私!)
「ねぇ、風見くんお願いがあるんだけど」
「なんだ?」
女性からのお願いは面倒なもんが多い。麻子からそんな言葉を聞いていた彼は少し身構える
「私も次からは雄二くんって呼んで良い?私のことも陽菜乃で良いから」
「…そんなことで良いのか?」
簡単過ぎて拍子抜けしてしまうが
「なら、改めてよろしくな陽菜乃」
「うん!雄二くん」
後日、2人の呼び方が変わったことでクラスから一斉に質問責めされ、一部女子と男子に嫉妬と怒りの眼差しを向けられて「やっぱり面倒ごとになった」と言うことになるのだがそれは別の話
別時間帯、ハワイにて
渚とカルマは殺せんせーにお願いして《ソニックニンジャ》という映画を見に来ていた。そして映画が終わり、初のハワイに名残惜しさもあり帰ろうとした時
「あ、ごめんカルマくん、殺せんせーちょっとだけ待って」
「おや、どうしました渚くん?」
「これ、落とし物した人がいたんだ。すぐに渡して戻ってくるから待ってて」
カルマと殺せんせーは了承したので渚は人混みの中を行く人物を追う。そこまで離されてないのでどうにか追いつけた
「
ビッチ先生から語学は受けていたのである程度話せるため英語を使う。渚が声をかけられビクリとしてその人物は振り向く。40歳前後の金髪の男は少しだけ驚いた顔をしたが表情はすぐに笑顔になる
「ありがとう、でも日本語で大丈夫だよ」
流暢な日本語で返してくるとは想像できず渚も驚いた。
「日本語、お上手ですね」
「仕事の関係で日本に行く事があったからね。日本人の顔立ちもなんとなく知ってるから日本語にしたんだが、どうやら正解のようだ。拾ってくれてありがとう」
ニンマリとして男は受け取る
「…ところで、お礼も兼ねて食事でもどうだい?良い店を知ってるんだ」
「え、ええと、その、すいません、連れと先生と来ていてもう帰らないといけないので」
「…そうか、ならこれをあげよう」
男は懐から小さな箱出す。開けるとメロディーが流れ出しオルゴール型の小物入れだと理解した。
「チョコレート?」
「嫌いかな?」
「いえ、ありがとうございます。それじゃ」
と言ってすぐにその場を去る。
(失礼だったかな?)
そう思うが何故このような行動をしたのか渚もわからない、わからないが何かを感じた。そしてそれが悪意がしないことが逆にわからない怖さがあった。
「ふむ、人目があるとさすがにこれ以上は無理か」
渚が立ち去った後、男は少々残念そうな顔をするがすぐにどうでもよくなったのか再び歩き出し、近くの黒い車の後部座席の戸を開け座る。
「出してくれ」
運転手は「はい」と答えて車は動き出す
「久々に面白い物を見つけたよ。日本という国は平和ボケした連中しかいないのかと一時期思ってたけど、やはりいるところにはいるもんだね。素晴らしい才能だから欲しかったけど、まぁ仕方がない」
「……大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ、確かに才能はあるけどまだまだだったからそっちの者じゃないよ。けど、」
「けど?」
「彼を思い出してしまった。あぁ、また会いたくなってしまったよ」
車は走る夜の道を___
もし、渚がついて行ったらどうなったかは………書いた自分で言うのもなんですが想像したくもない
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