2話です楽しんでもらえたら幸いです。
初日の最初の授業は雄二にとって色々な意味で新鮮だった。分かりやすく、要点をしっかりとおさえており、かつこちらへの質問には興味を引くような形でしてくるので面白みもある
(たしかに、教師としては一流だな)
なぜここで教師をしているのかなど疑問は多いが、とにかく今は情報収集と思い席をたったとき
「あ、あの、風見君だよね」
「?すまない、まだ来たばかりで全員の名前がわからないんだが?」
「矢田桃花だよ。それより、風見君だよね?昨日の私を助けてくれたの」
雄二はゆっくりと昨日のことを思い出す。
*
side風見雄二
目的地につき、予定時刻に余裕を感じたので地図を見ながら街を回ってジョギングコースを考えていた。そこに仕事熱心な警官に見つかってしまい職務質問をされていた。
「で、その中になにが入ってるの?見せてよ」
「断る。見せる必要がない」
「じゃあ、ここらで何してたの?」
「この街は初めてでな。大荷物をしょってジョギングコースを考えていただけだ」
「それが怪しいんだよ!いいかげん、本当のこと言ってよ」
やれやれ、本当のことを言ってるのだがな
「あんたの彼女とのデートコースを考えていただけだ。何も知らないままなら平和な暮らしができたのに、残念だったな」
「おまえ、舐めんのか!?」
場の空気を和らげるためのジョークだったのだが失敗したようだ。
「もういい。ちょっと来なさい」
「任意の同行なら拒否する」
「それは、なにか後ろめたいことでもあるのか?」
「いちいち、気に過ぎるなよ。ただでさえ忙しいんだろ?ハゲるぞ」
「だまれ!いいからおとなしく…「キャー!」な、なんだ?」
女性と思われる声がした。警官がそちらを見たので俺もつられるように見る。
「おら早いとこ金出せ!」
商店街の店の1つで包丁をもった大柄な男とそいつに捕まっているポニーテールの女性が目にはいる。
「会社もリストラされて、今までなにもいいことがなかった!だから金を手に入れてやり直してやる!」
どうやら人質をとり、金を要求しているようだ。
「お、おいお前、そこまでだおとなしくしろ!」
警官は拳銃を見せ、相手に言う。しかしこいつ新人か?動揺しすぎだ。
「うるせー!いいから下がれよ!」
人質に包丁をつきつけて脅すと警官はたじろいでしまう。このまま放置しても事態は好転しそうにもない。
「ハァ、どいてろ」
「お、おい君!」
「おいクソガキ!近付くとこいつを殺すぞ!」
外野もさわぎだす。
「で、その後はどうするんだ?」
「え?」
「仮にこれ以上俺が近付いて、そいつを殺した後はどうするんだ?」
「そ、それは」
「なにも考えてないのか?」
「う、うるせー!別にいいんだよ実際お前はこれ以上は」
「スキだらけだな」
その言葉と同時に小石を飛ばす。
「ってぇ!」
相手のデコに命中し、一瞬全身の力が緩む。さらに姿勢を低くしフェイントを混ぜた動きで視界から外れて近付き、顎に拳を入れる。
「ごぅ!」
人質が解放されるがいきなりでバランスを崩す。片手を瞬時に持って、腕に抱き寄せる。
「わわっ!」
「う、ご、おま、え」
意識が朦朧としながらも落とした包丁に手を伸ばす。が、もう遅い。片足で手を踏み、痛みで悶えたと同時に包丁を遠くに蹴り飛ばす
「おい!何ぼさっと立ってる!早く確保!」
「お、おう!」
ようやく状況が読み込めた警官が手錠をかけた。
*
逮捕された男は警官が呼んだパトカーに乗せられる。
「君も、来てもらうよ。状況証言と君自身にも聞きたいことがあるからね」
やはりか。余計なことをしたな
「あ、あの…」
もう1台のパトカーに乗って移動する際に先程の人質となっていた少女が声をかけるがパトカーは発進してしまった。
*
siedフリー
「あぁ、思い出した。怪我はしてないか?少し強引に引っ張ったからな」
「う、うん!大丈夫、大丈夫」
顔を赤くして答える彼女に少し疑問を持つが本当に大丈夫そうだと思い雄二はホッとする。
「そんな事があったんですか!矢田さん、大丈夫でしたか!?」
殺せんせーは話しが聞こえていたのか教壇から一瞬で近付き矢田を心配する。
「うん。大丈夫だよ殺せんせー。雄二君が助けてくれたから」
「そうですかぁ、先生ホッとしました。ありがとうございます風見君。君は私の生徒の恩人です」
これから殺しにかかるメンバーの1人に言うセリフではないなと思いつつも気になったことがあり雄二は聞く。
「あ、あぁ。それはいいが、矢田。どうしていきなり名前で呼ぶんだ?」
「え!?いや、これからもっとなかよくなれたらなーって…だ、ダメだった?」
「そうか。なら俺も桃花と呼ばせてもらおう」
「う、うん!」
「ニュフフフ、いいですねぇ、いいですねぇ!」
あからさまにゲスい顔をした殺せんせーに矢田がナイフを振るが当然よけられて逃げられた。
一方その様子を見ていた渚達は雄二のことを話していた。
「意外に鈍いんだね、風見君って」
「だな。普通気づくぞあれは。なぁカルマ?」
杉野の問いに「んー」とあまり興味がないように言う。
「どうしたの、カルマ君?」
「いや、まぁ同意だし面白くあるけど…渚君さぁ、どう思う、あいつのこと?」
カルマの問いに渚は少し考え答える。
「まだ4月だから編入生がきてもまだおかしくはないけど、今この時期にくるのは自然とも言い難いし、なにより彼自身の体つきとか見たら普通とも言えない」
「んじゃ、暗殺者ってことか?」
「それにしては若すぎるような気もするけど…それに、自分は殺さない僕らで殺すって言ってるし。殺し屋のセリフとも思えない」
「色んな意味で不自然だよねー」
そして彼らの言う通りその疑問はこの日の体育の時間で一気に加速する
*
体育の時間、烏間の指示を聞きながらナイフに基礎の振り方を行っている。
「潮田だったか?あの3人はいつもああなのか?」
渚の近くに来て練習に積極的でない、寺坂達を指差して聞く。ちなみにクラスの名前はすでに全員覚えていた。
「うん、だいたいそう。あと渚でいいよ風見君」
「そうか。なら俺も雄二と呼んで構わない。くんもいらなくていい。しかし、地球の危機だって言うのに協調性もないのか?普通に軍法会議にかけられて処刑ものだ」
「例えが独特な上に残酷だ!まぁ、強制はできないし、でも暗殺する気はあると思うから」
「なら、いいんだが」
そう言って訓練を続ける。すると砂場でノイシュヴァンシュタイン城を作成していた殺せんせーがふと立ち上がる。因みにこの体育の時間は烏間に取られてからは砂場で遊んだり、見守ったりしている。
「すいません烏間先生。城を作りながら思い出したのですが、次の授業で使う資料をドイツから持ち込むのを忘れていました。少しでできますついでにこの後は昼休みなので少し観光もしてきまーす!」
次の瞬間に殺せんせーはマッハ20で飛び立った。
(早いとは聞いていたが本当だったな。…とはいえ、初速からマッハ20というわけじゃないはず)
ならやりようはいくらでもあると考えどうしていくかと雄二が思っていた時
「それでは、残り時間もあと少しだ。ここからはいつもの実施訓練を行う」
「実施訓練?」
「この授業の最後に烏間先生を相手に数人でナイフを当てにいくんだ。まぁ、いまのところ一撃も当たらないけど」
「!そ、そうか」
渚は雄二の質問に答える。いきなり後ろからかえってきた声に一瞬だけ雄二はドキりとする。
(緩んでいたとはいえ、俺の後ろにいつの間にかついていたのか?こいつはまさか……まさかな)
「雄二?どうしたの」
「いや、なんでもない。それよりいきなり後ろにつくな。俺の彼女にでもなりたいのか?」
「そんな気はないし僕は男だよ!」
「俺はそっち系の人間じゃないから、ヤルなら他の男子にしてくれ」
「話聞いてる!?」
「じゃあさ、取っちゃえば問題ないよね、雄二」
「なるほど、確かにその通りだな赤羽」
「ああ、俺のこともカルマでいいよ。つか俺もさっきから雄二って呼び捨てだし。というわけで渚君、今ならタイがいいみたいだよ」
「ホルモンの関係もある。いましかないぞ」
「取らないから!大事にするから!というか、なんで雄二もそんなにノリノリなの!?」
渚が2人に対してツッコミをかましていると、ドサっという音がして見ると烏間と実施訓練をしていた木村と前原が軽くいなされて尻もちをついたのがわかった。
「2人とも動きはいいが、まだまだ動きに無駄がありすぎる。それにお互いのコンビネーションもあまりできていない。即興であろうといつでもいい動きができるようにしていけ。とくに前原君は2撃目への入り方はいいが、まず初めの1撃目が完璧であれば、つぎの攻撃はさらに鋭くなる」
「「はい!」」
的確なアドバイスをして2人の手を引いて立ち上がらせる。
「やっぱ強いわこの人」
「かすりもしないどころか、あの場所からほとんど動いてないんだぜ」
木村と前原が感想をいいながら戻ると烏間は「次」と言って1人の人物を見て言う。
「風見君。1対1で俺と模擬戦だ」
その言葉にクラスの全員が驚いた。そう全員、雄二も含めて。しかし雄二の驚きと彼らの驚きは別の意味である。3ーEの驚きは1人で勝てるわけがないのになぜ烏間は彼1人だけを選んだのかということ。雄二の驚きは勝つ負けるの問題ではなく、何故自分を選んだかというものだった。
「君は来たばかりだが、体つきを見れば誰でも体を動かすのが得意なのはわかる。故に、実力を知っておきたい」
(嘘だ。烏間は俺の実力を知っているはず。…いや、知っているからこそか)
烏間の思惑は2つあり、1つは雄二の実力は資料によるものであり、実際にそのナイフさばきを見てない彼は確かめるという意味があった。もう1つは雄二が考えていたことで彼を知っているからこそ、その
(とはいえ、わざと負けたりするとかえってダメだ。それに烏間の考えはもっともだ)
故に雄二は前に出る。戦いの中で分かり合えるかは分からない。が、それでも今できる最善を尽くそうと雄二は考えたからだ。
「よろしく頼…みます」
一瞬頼むと言いそうになるがすぐに言い直して対先生ナイフを構える。烏間もそれを見て臨戦態勢に入る。そして2人のにらみ合いが始まる。E組の全員が息を飲む。20秒ほどたっただろうか。 にらみ合いはまだ続く。一般人ならなぜ動かないかと思うだろう。だが2人の間では何度も攻防戦が頭の中で繰り広げられている。どちらも攻められない。2人とも相手のまったく隙のない態勢に。
(くる!)
「シャ!」
動いたのは雄二。1歩目から距離を詰め、
(フェイクか!)
雄二の手には何もない。ただ腕を下から上にアッパーのように思いっきり振るった。その瞬間とほぼ同時にナイフを手放しもう片方の手を使い指2本で上手く刃の部分を取ってそのまま烏間の方に投げる。因みに鍔の部分から落ちるようならそのまま握り第2撃、3撃目を与えるつもりであった。
(これはよけてもおそらく上の腕でキャッチして次の攻撃。俺がこのナイフを取っても拳がくる。ならば!)
烏間は体を後ろに傾けると同時に足に思いっきり力を入れてバク転をし、ナイフを蹴り飛ばして後ろに下がる。そしてこんどは烏間が前に出る。足が地に着いた途端に再び力を入れて距離を詰めて格闘戦にはいる。
(くそ、こうなると厄介だ)
雄二は防御をしつつそう思っていた。勿論いまの攻撃で決まらなかったことも想定していた。が、目の前の烏間という人物は次の動きには入れないような攻撃。つまり、決定打になるものではなく、封じこめる攻撃で着実に体力を奪うものだ。
(とはいえ、防御術をやめて無理に攻め込めばやられる。だったら)
「そこ!」
「ぐっ!」
と、ここで雄二は肩に攻撃を受ける。これに驚いたのは他の誰でもない烏間であった。何故なら当てるつもりなどなく防御をされるのを前提で放ったのだ。そしてすぐにこれが罠だとわかった時には既に腕を持たれていた。そこから懐に入られ、肘打ちが来るが烏間のもう片方手で止められる。
(ここだ!)
肘打ちをした方の手から別の対先生ナイフが出てくる。隠し持っていたものだが肘を止められている腕では当然振れない。だが手首は動かせる。この試合はナイフを当てれば勝ち故に靴にあたろうともOK。烏丸の足元に投げ決まる。誰もがそう思うがその前に烏間は全身に力をいれて雄二を前に押す。無理やりと言っていいほどだがこれによって完全に態勢が崩れ、隠していたナイフも落とされる。だが雄二も力を入れ、押されていた体を止める。この状態では膝蹴りも出来ない。動かせば簡単に押し倒される。
「…俺の負けだ」
と、雄二が降参すると烏間は力を弱めた。
「勝負はまだ着いていなかったぞ」
「烏間先生の方が力が強い。膠着状態に入ったなら力が強い方が有利だ」
「なるほど」
汗をぬぐい、2人は息を整える。
(とはいえ俺もだが、完全に本気というわけでもないな。おそらくあの状況から抜ける手段もあるのだろうが、それを使わないのは単純にいまが訓練だからだろう。彼は力のふるいどころを分かっている。なら、いまは大丈夫だろう)
そう思い、烏間は脱いでいた上着を取りに行くのだった。
矢田との恋の話はまだまだ先になりますので、しばらくは動きなしです。
因みに矢田を含めて確定しているヒロインは現在3人です。
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