暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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随分遅くなってしまいました
まさか新年明けてゆっくり休める日が一日もないとは…

ようやくひと段落したので一気に書きました
では


近いと誓いの時間

「おっ、やってんねそっちも」

 

「あ、凄い‼︎野球部相手に勝ってる‼︎」

 

試合を先に終わらせた女子達が応援に来た。ちなみに、彼女達の結果は惜敗。後で男子達も知るのだが茅野が女子バスケのキャプテンの巨乳が目に入り怒りと殺意で思うように動けなくなってしまったのが主な理由である。

 

「まぁ、ここまではね。でも見ろよあれ」

 

言われて見た先にいる人物を見て納得した。

 

「早々にラスボスが登場したわけ」

 

 

 

 

「理事長先生、ありがとうございます」

 

理事長は進藤の言葉に軽く「うん」とだけ言う。

 

「さてまず最初に杉野君だけど、部活に出られなくなってから市のクラブチームに入団したそうだ。彼なりに努力しているんだね」

 

その言葉に野球部は顔を下に向けた

 

「だがそれがどうした?小さな努力なんて誰でもしている。だが、君達は選ばれた人間だ」

 

「選ばれた…」

 

「そう!これからの人生でああいう相手を何千も踏み潰して進んでいくんだ。だから、今しているのも野球と思わないでただの作業と思ったら良い」

 

野球部の目が変わる。気合いはあるのはもちろんだが、それはまるで獲物を狙う目のような。

 

「あぁ、それと風見君についてだけど……」

 

 

 

 

いくつか理事長が指示を出して試合再開となる。だがそれは先程までE組がしていたものより異様な光景である。

 

『こ、これは何だー⁉︎』

 

解説ですら驚く。外野選手を含めた守備全員が内野に集まる。本来ならこんなことをすればバッターの集中を阻害する極端な前進守備として審判による注意があるだろうが、

 

「ルール上、フェアゾーンならどこを守っても自由だし、審判があっち側についてるんじゃ、まぁ無理だろうね」

 

竹林の言う通り前原、岡島はこれによりあっという間にアウトを取られた。続いて千葉が出るが内野守備にビビり、バントの構えもできてない。進藤の豪速球でストライクを取るだが2球目に入った瞬間1塁にいた雄二が走り盗塁をする。極端な守備をしてるのだから当然セーフ…だが

 

『野球部、完全スルー‼︎プレッシャーを与えるつもりだったのか?そんな浅はかな手は通用しないぞ!』

 

盗塁されたことなど全く気にしてないというより雄二を見もしない。理事長が彼らに教えた事それは

 

「彼は天才のように見えるが、実際は努力型だ。本当の天才である君達には遠く及ばない。だから姑息な手で君達にプレッシャーを与えてくるだろうが、基本無視してかまわない。おそらく彼も運動神経が良くてもバントくらいしかできない。そして痺れを切らして盗塁をして少しでも君達を揺さぶろうとするだろうね」

 

その読み通りの動きだったから無視したのだ。先程雄二は進藤をコントロールしたが今度は雄二が理事長にコントロールされていた。これにより意趣返しができ、野球部はさらに自信を高めてしまった。

 

「すまない。余計なことをしてしまった」

 

「気にすんなよ。俺らのためにしてくれてんのはわかってるから」

 

スリーアウト後雄二が謝ってくるが皆「気にすんな」と言う。

 

「気合い入れ直して守備と行くか。まずは俺からな」

 

「いや、舐めらてるのは我慢できない俺から先に行かせてくれ」

 

と、雄二が出る

 

「…いいぜ。なんか考えもあるんだろうし」

 

 

 

 

ピッチャーボックスに立ち少し上を向く

 

(あぁ、こんなとこに俺はいるのか)

 

学生同士、しかも今この試合は単なる余興試合(エキシビションマッチ)だ。それでもここに立っているそれが雄二には少し信じられない想いだった。

 

『おーっと、E組ピッチャー!呑気に上の空かーもはや諦めムードかー』

 

(さて、やってみるか)

 

side渚

 

キャッチャーの渚はまたどこか遠いところを見るように空を見た雄二に不安を感じた。ちゃんと投げれるのか?という不安ではない。

 

(杉野と殺せんせーの特訓で充分に力は付いたらしいし)

 

雄二曰く、姉から左で投げた方が良いと言われたとのこと。さらに前の学校にいた時にも投げる練習をしていたそうだ。もっともボールではなく石らしいが。

 

 

「その時は野球なんてできる環境じゃなくてな。ちょっと鳥を落とそうという気持ちでやっていた」

 

「結構危ない気持ちだね…」

 

「確かにな。まぁ、練習はしたが結局鳥にも人にも投げる機会はなかったが」

 

「どっちもダメだよ!投げちゃ‼︎」

 

 

そうして先生と杉野から手ほどきを受けて今日に間に合わせた。だからその点で不安はない。

 

(っと僕も集中しないと)

 

雄二のあの顔を見るとなぜだかわからないが何か親近感のようなものを感じる。それが不安の理由なのだが、今それを考える暇はない。

 

 

sideフリー

 

キッと目でバッターを見る。ほんの一瞬だけ相手がたじろぐがすぐに構え直す。フゥと呼吸をし直してから振りかぶり投げた。

 

「ストライク!」

 

進藤ほどではないがそれでも野球部のメンバーの彼は驚きを隠せない。正直素人に毛がはえた程度だと思ったからだ。だがその球は推定ではあるが120㎞の速さに近い。そうして次の球もストライクを取られる

 

(だが、次は打てる)

 

正確な球だが正確すぎる。だから打ちやすい。実際雄二は2人からはほとんどストレートしか教わっていない…

 

(もらった‼︎)

 

杉野からストレートの手ほどき、殺せんせーからは

 

『打ったー!…いや、これはフライだ!おっとしかしザルな守備のE組こぼしてしまうその間に2塁をっと狙いません余裕ですねー別に行っても良かったぞ』

 

フライを取れなかったが持ち直しが早く2塁に行くより安全策をとった。

 

(……今のは、気のせいか?)

 

理事長は何か違和感を感じたが、決定的なものもないので気のせいとした。

 

 

『さー次です。せめて野球部だった杉野君の方がいいんじゃないかーまぁ、その彼の球は遅すぎて話にならないらしいけど』

 

実況の煽りで笑いが起こるが聞こえないフリをしてまた投げるが

 

「ファーボール!」

 

『おやおや、威勢がいいのは最初だけか!これでノーアウト1塁2塁です。野球部は完全に調子を戻したようです』

 

2人目は最初だけストライクをとるが残りは全てボールとなった

 

『さぁ、野球部得点のチャンス‼︎しかもこの後はエース進藤君だ!』

 

実況の煽りで観客からは歓声があがる。そして、球を投げた

 

「っ!」

 

「よし!」

 

野球部は完全に油断した全員が「こいつは素人に毛が生えた程度」と侮っていた。ここで投げたのはギリギリストライクゾーンのストレート。見逃しても良かった。その方が逆に良かったかもしれない。だが彼らは理事長の言うように選ばれた者としての、野球部としての練習を重ねてきた。考えるより先にストライクゾーンのボールに向かってバットを振った。その結果はピッチャーフライ

 

「木村動くな!」

 

即座にその球は木村のグローブに向かう。野球部はすでに走り出していたが正確無比の球が吸い込まれるようにグローブに入った。

 

「!そのまま2塁へ」

 

いくらザルな守備とはいえ、最低限の守りはできる。雄二のプレーに一瞬呆然としてしまった1塁ランナーに気付きギリギリだがなんとか

 

『「と、トリプルプレー…」』

 

審判と実況の声が聞こえてようやく事態を理解した。殺せんせーから受けた指導それは打たせる球の投げ方。もちろんだが狙ってできるなら誰でもできる。殺せんせーの練習は時間がある時は残って、さらに律と竹林の選手データで癖などを深夜やバイトの時の待つ時間など使える時間を使うなど様々な徹底的な研鑽のもので奇襲に近い。故に次にやっても失敗するのはまず間違い無い。

 

「すげーよ風見!トリプルプレーだぜ!」

 

「偶然だ正直ダブルプレーで上々だと思ってた。運が良かった…あの進藤相手じゃどうにもならなかっただろうしな」

 

その進藤は今も理事長の暗示による改造を受けている。誰が見てもやばいと思うだろう

 

「あれをお前に任せてしまったな」

 

「大丈夫任せておけ」

 

杉野の方はまったく気にせず、むしろワクワクしてるかのようであった

 

「すまないが、あとは任せた、そろそろ、限界、だ」

 

先ほども言ったが時間を使うだけつかった雄二は当然ながら寝不足だ。むしろここまで出来たことも奇跡である

 

「おう!ゆっくり休んでな」

 

「まぁ、試合が終わるまでは起きてるよ」

 

 

 

「雄二くん、凄かったよって大丈夫⁉︎すごくフラフラしてるけど!」

 

「すまない桃花、肩貸してくれると助かる」

 

「あたしも貸すよ矢田ちゃんとだけじゃ支えるの難しいし」

 

「だ、大丈夫だよ」

 

「あっ、だったらわたしもー」

 

「いや、2人で充分でしょー」

 

莉桜と陽菜乃も入ってちょっとしたカオスである

 

「どうでもいいから早くしてく…」

 

「「「どうでもよくない‼︎」」」

 

3人同時の答えにふかーいため息がでる雄二であった。

 

 

 

 

野球部の守備は先程と変わらず極端な前進守備でガチガチに前を守っており、カルマはそれをじっと見ていると審判から注意を入れられた。

 

「どうした?早く打席に入りなさい」

 

審判に言われたカルマはそれを無視し理事長の方を向いて口を開いた。

 

「ねーえ、これってズルくない理事長センセー?こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさぁ審判の先生は何でなにも注意しないの?観戦してるお前らもおかしいと思わないの?………………あっ、そっかぁ!お前等バカだから守備位置とか理解してないんだね」

 

カルマがそう言うと周りはイラッとしたのか野次を飛ばしていた。

 

「小さいことでガタガタ言うなE組が!」

「たかがエキシビションで守備にクレームつけてんじゃねーよ!」

「文句あるならバットで結果出してみろや!」

 

周りは罵詈雑言を言い、中にはゴミ飛ばす者もいた。そうしてカルマを含め全員何もできずスリーアウトとなる

 

「さっきの挑発は殺監督の指示か?」

 

「まぁね。多分何か考えがあるんだろうけど」

 

2回の裏、早速エースの進藤の強打によってホームランを決められる。だがこれは杉野も想定内だ

 

『さてピッチャーが変わったが、やはり遅い球だ‼︎おいおい元野球部なら気合見せろーさっきのやつの方がまだいいぞー』

 

(やれやれ、実況は何も見えてないのか)

 

雄二は杉野とピッチングの練習をしていただからわかる。今のはわざとだと。

 

(つっても、ホームランにさせるきはなかったんだけど…あーあ、風見のやつ期待してんだなぁ)

 

一方杉野はその視線に気付いて心の中でぼやいた。彼から見れば雄二の方が凄いと思えた野球の経験はない奴があのようなトリックプレーを成功させたのだ。

 

もちろんあれは練習と研究、相手の油断によるものであることもわかっているそれでも

 

(負けてらんねーよな、俺も‼︎)

 

野球が好きで努力した彼を刺激するには充分な理由だった。闘志をボールに乗せ、今自分ができる新たな技を見せた

 

「うおっ」

 

どう考えてもストライクゾーンのボールがいきなり曲がる。打つ気でいたバッターは振りかぶったが空を切るだけだ。野球部はまさか杉野がここまで様々な変化球を投げれるとはおもわず3人連続三振となった。

 

「わるい、1点とられた」

 

「気にするな。それにさっきの変化球は見事だった」

 

ハイタッチをした2人に皆が微笑んだ。しかし試合が終わったわけではない続いて三回表は相変わらずの鉄壁のバントシフトで三者凡退

 

「ここを守り抜いたら勝ちだ。任せた」

 

「簡単に言うなー。まぁ、やってやるさ」

 

最後のピッチャーも杉野である。正直雄二の技では打たれる可能性が高いためだ。だが、

 

『あーっとバント⁉︎』

 

先程の意趣返しと言わんばかりの連続バント。本来ならブーイングが来ても良いだろうがE組が先にした事によって〔手本を見せる〕という大義名分ができてしまった。E組は基本バントしか練習していないため守備はザルだ

 

「流石にこれはまずいな」

 

あっという間にノーアウト満塁そしてつぎのバッターは

 

『さぁ、真打登場!我が校が誇るスーパースター進藤君だー‼︎』

 

1回、2回裏を合わせて1点で抑えられたのは理事長にとっても想定外ではあったが、何の問題もない最初から最終回でこれを演出して勝つことのために進藤を育てて来た。強者による圧倒的な一撃のために

 

(杉野…)

ボコっ「もどかしそうな顔をしなくとも大丈夫ですよ風見君」

 

「……いきなり地面に現れないでくれ殺監督。というか、誰かに見つかったらどうすんだ?」

 

「ご心配なく、最大の注意を払っていますので」

 

「そうか」と言うがそれでも心では(本当か?)と思わずにはいられなかった

 

「で、何が大丈夫なんだ?」

 

「まぁ、とにかく見ててください」

 

そう言われて見ると磯貝とカルマが明らかにバッターの集中を乱す前進守備をしていた

 

「さっきそっちがやった時は審判は何も言わなかった。文句無いよね理事長?」

 

先程のカルマのクレームは同じ事をやり返しても文句を言わせない為の布石だった。明確な打撃妨害と見なすには守備がバットに触れた時だが、このような前進守備が集中を乱す妨害行為と見なすかは審判の判断次第である。しかし先程カルマのクレームを脚下した以上今回も黙認するしかない。

 

小賢しい。どうぞ、ご自由に。選ばれた者は守備位置位で心を乱さない」

 

その程度で集中力が落ちるような教育(・・)はしていないと理事長は高を括る

 

「じゃ、遠慮なく」

 

カルマは楽しそうに、磯貝はやれやれと言った感じでさらに前に出る

 

『「(近い‼︎)」』

 

その距離は振れば確実にバットが当たる位置。前進守備など生温いものではないゼロ距離守備だ

 

「あんなのじゃどんなに集中力をあげても無理だな。これも監督の作戦か?」

 

「ここまでは言ってません。カルマ君のアドリブでしょう。…それよりも、心配ではないんですか?万が一でも当たれば骨が砕けますが」

 

「いや、1番心配しなきゃいけないあんたが練り菓子作りながら余裕で心配してない時点で大丈夫だろ」

 

そもそもマッハ20の暗殺で皆の動体視力は鍛え上げらている。さらに2人の度胸はE組でもトップクラスだ。

 

雄二と殺監督の読み通り、進藤の大きく振ったバットをほとんど動かずかわした

 

「ダメだよそんな遅いスイングじゃ。…次はさ、殺すつもりで振ってごらん」

 

カルマの静かな煽りは、進藤にはまるで悪魔か死神の声にも聞こえただろう。もはや理事長の戦略に体がついていかないようになってしまい、第2球はどうにか振るが腰が引けたスイングになる。ホームベースに当たってバウンドしたボールをすぐにキャッチャーの渚に投げ、そのボールを三塁に投げツーアウト。そしてそれを一塁に投げる。進藤は完全に力が抜けへたり込んでしまい動いてないポンポンとバウンドするボールを冷静にキャッチ。トリプルプレーだ

 

『ゲ、ゲームセット‼︎…なんと、E組が野球部に勝ってしまった‼︎』

 

ベンチの男子も応援した女子も大喜びで讃えた。

 

「良いもんがみられたろ?」

 

「……チッ」

 

雄二は観戦していた寺坂達に言う。それが気にくわないのか舌打ちをして早々に去った。それを見届けてから進藤と話し終えた杉野に声を掛ける。

 

「何話してたんだ?」

 

「ん、ちょっとした自慢と、次は高校でっていう約束」

 

「自慢?」

 

「あぁ、今の俺にはこんな仲間達がいるんだっていうな」

 

「そうか。ただ…」

 

「?」

 

「約束の方はあの先生をどうにかしないと、だけどな」

 

「………確かに」

 

いろんな意味で決意を新たにし、球技大会は幕を下ろした

 




さて次回は鷹岡回かオリジナル回で少し迷ってます

亀更新なのに迷うって……

感想、意見お待ちしてます。誤字に気付いて言ってくださる皆さまにも感謝です!

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