暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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今回はちょっと短いです


それでこんだけ時間がかかるって|||OTL|||



傷の時間

季節は夏。ジージー、ミンミンと蝉が1週間しかない命をこれでもかと言わんばかりに鳴いて輝かせている。校舎から見た校庭には陽炎がかかっている。そのくらいに真っ盛りな夏、クーラーのないE組は大丈夫なのかというと

 

「あじぃ〜」

 

当然、大丈夫ではない。生徒は皆暑さで机でふせたり仰いだりと限界そうであった

 

「律は大丈夫なのか?オーバーヒートしてないのか?」

 

「私は内部で冷却処理をしていますので、このくらいの暑さなら平気ですよ」

 

「さすがだな」

 

一方で雄二は汗をかいているが平時とあまり変わらない顔をしている。

 

「平然としてるけどすごい汗かいてるけど、痩せ我慢?」

 

さすがに暑い中なのでパタパタとノートで扇ぐカルマが聞いてきた。

 

「そうだ。師匠曰く、狙撃中と逃走者の基本は痩せ我慢だそうだ」

 

「………誰かから追われるような事したの?」

 

「あいにく、国に追われるようなことをした覚えはない」

 

「あぁそう。けど痩せ我慢ってことはやっぱり辛いんだ」

 

「当たり前だ」

 

時折ハンカチで汗を拭くがすぐに出るのであまり意味がない

 

「だらしない…夏の暑さは当然のことです‼︎」

 

「殺せんせー、今にも溶け出しそうな感じで机に伏して言われても説得力がないぞ」

 

「失礼な。これは生物として当然の行為です」

 

「じゃあ、放課後はどうするんだ?」

 

「…………寒帯に逃げます」

 

「「「「「ずりぃ‼︎てか説得力ねぇ‼︎」」」」」

 

もっともなツッコミが入るがそれだけでも疲れてしまう。

 

「でも今日、プール開きだよね。体育の時間が待ち遠しい~」

 

「いや、それもE組にとっては地獄さ。炎天下の中1㎞先の本校舎にあるプールを目指して、終わって帰る時はプール疲れも相まってまさに地獄。カラスの餌になりかねない」

 

木村が言った事は冗談ではなく本当なので皆がっくしと憂鬱になっていた。

 

「先生〜なんか良い案はないか〜」

 

「風見君とは思えない他力本願ですねぇ…でもまぁ、この暑さですから気持ちは分かります」

 

教科書を閉じて「仕方ありません」と言い立ち上がる

 

「全員水着に着替えてついてきなさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう。そこに涼みに行きましょう」

 

言われた通り着替えるが

 

「あれ?雄二は着替えないの?」

 

「ん、あぁ。うっかり水着がなくてな。まぁ、涼むくらいならなくても良いだろ。というか……」

 

「?」

 

「やっぱり男なんだな、渚は」

 

「今更⁉︎」

 

渚は以前から少し疑問があったがツッコミをするとそれも消えて着替えてから先生についていく。

 

 

 

時刻は少し戻って雄二のバイト先JBの部屋

 

「プールびらきねー」

 

「…」

 

「いや、別に禁止するわけじゃないけどあなたの場合はちょっと特殊だからね」

 

「人をカナヅチみたいに思われる発言はよせ」

 

「別に恥ずかしいことじゃないでしょう?いっそそれを理由にしたら?」

 

「………」

 

「はっきり言うけど、気にしすぎよ。特殊なのは認めるけど」

 

「気にしないでいいのか、すればいいのかどっちだ」

 

「そのくらい、自分で考えなさい」

 

 

 

 

「そういえば、沢ってどのくらい?」

 

と思考の中にいると途中で茅野が聞いてくるので最近あの辺りで自主訓練している雄二と千葉 龍之介が答えた

 

「沢と言っても本当に小さい。足首まであるかないかのレベルだ」

 

「まぁ、静かで少しは涼しいから射撃訓練にはいいけどな」

 

「ふーんそんなものかって、射撃訓練?」

 

「あぁ、最近千葉から提案があってなスナイパーライフルを使った射撃訓練をしているんだ」

 

「…それ、私も参加していい?」

 

E組女子のなかで最も射撃成績の良い速水 凛香は少し小声だが聞き取れるくらいにはっきりと言う

 

「構わない。というより、千葉からもそうしたらと言われていたからな。今日にも話そうとは思っていた」

 

その言葉に対して「ありがとう」と短く返す。千葉と速水、どちらも仕事人タイプだなと雄二が思っていると殺せんせーが喋りだす

 

「さて皆さん、さすがにマッハ20の先生でも出来ないことがあります。そのひとつが君達をプールに連れていくこと。残念ながらそれには1日ほどかかります」

 

「1日…って大げさな。本校舎のプールなんて歩いても20分くらいですよ」

 

磯貝の言う通り、マッハ20 ならそれこそ何往復して皆を連れてもすぐであろう。…本校舎のプールまでであれば

 

「誰も本校舎とは言ってませんよ」

 

意味深なことを言う先生であるがすぐにその意味はわかった。サァァァァと涼しく波打つ音がして皆が駆ける。そこにあったのは山の景観も生かした豪勢なプールができていた。

 

「なにせ小さな沢を塞き止めて水を溜めるのでおよそ20時間はかかりました。25mコースの幅もしっかり確保。シーズンオフには水を抜けば元通り。水位を調整すれば魚も飼って観察出来ます」

 

後のことも考えて作られたプールはまさに天国に見えただろう

 

「さぁ、製作に1日、移動に1分。後は1秒あれば飛びこめますよ」

 

皆一斉に水着になって飛び込んだ。

 

「おや、風見君はいいのですか?」

 

「あぁ、水着を持ってきてなくてな。まぁ、充分涼めるから良いさ」

 

「……それは残念です。けど、気にし過ぎだと思いますがねぇ」

 

「………」

 

 

 

「隣、いい?」

 

「狭間か?別に聞かなくても良いぞ。というより、もう座ってるじゃねーか」

 

「一応聞いておくのがマナーでしょ」

 

殺せんせーが作ったであろうビーチチェアにかけて2人は本を読みだす。全く濡れていないので泳いでないのは雄二はすぐにわかった

 

「『悪童日記』それも翻訳版でなく、原作か」

 

「えぇ。最近の授業のおかげでだいぶ読めるようになってきたからタコに頼んで買ってきてもらったの。どう翻訳されているかも気になったし。あなたは…『アルジャーノンに花束を』?随分と普通ね」

 

「名作と言え。というか、お前の場合は後味が悪い話ばかりだろ」

 

「それがいいんじゃない」

 

「あぁそう」

 

とお互いの読書感が静かにヒートアップしかけているとピィィィというホイッスルが鳴る

 

「木村君‼︎プールサイドを走っちゃいけません‼︎転んだらあぶないでしょ‼︎」

「原さんと中村さん‼︎潜水遊びはほどほどに‼︎溺れたかと心配になるでしょ‼︎」

「岡島君‼︎盗撮は厳禁です‼︎カメラは没収します‼︎」

 

プールの監視員のごとく小うるさくホイッスルを鳴らして注意をする殺せんせー

 

「狭間さん‼︎本ばかり読んでないで泳ぎなさい‼︎風見君‼︎水着ないからといってだらけてばかりいないでください‼︎」

 

「うぜぇ」

 

「完全に王様気分ね。ありがたみがうすれるってわからないのかしら?」

 

自分が作ったプールだけに得意げな感じになっている殺せんせーに辟易していたがここで思わぬ形で弱点が露見した。

 

……《プールマナーにやたらうるさい》ではなくそのあとだ。陽菜乃が遊び感覚で何気なく殺せんせーに水をかけた時だ

 

「カタいこと言わないでよ殺せんせー、水かけちゃえ‼︎」

 

「きゃんっ」

 

見た目に似合わない女の子みたいな声の悲鳴を聞き皆一瞬沈黙しているとカルマがスキを見てスーウッと殺せんせーの近くまで泳ぎ監視塔を揺らしだす。

 

「きゃあッ‼︎ゆらさないで、水に落ちる‼︎」

 

まるで深い水に入るのが初めてな子供のように怯えてだし、その場から脱する殺せんせー。

 

この瞬間に頭の中でよぎる、殺せんせーの弱点の可能性!

 

「べ、別に、泳ぐ気分じゃないだけだし〜水に入ると触手がふやけて動けなくなるとかそんなのないし〜」

 

この瞬間に頭の中でよぎる、殺せんせーの弱点の確信!

 

今まで様々な弱点が露見してきたがコレはその中でも1番使える弱点だと考え、水殺という大きなテーマが皆の中にできた時だった

 

「あ、やば!バランスが」

 

泳げないという理由で浮き輪に浮いていた茅野が突然(・・)バランスを崩して水に落ちてしまう。しかも深い位置で背の低い彼女では足がつかない。

 

「かっ、茅野さん‼︎このふ菓子に捕まって…」

 

オロオロしながらビート板かと思っていたふ菓子を出すが届かない。そこに元水泳部の片岡が入ろうとするより早く行動した者がいた

 

「落ち着け、茅野。首を支えているから力を抜いておけばいい」

 

制服を着たまま飛び込んで茅野を助けたのは雄二であった。

 

「あ、ありがとう」

 

「私より早いね。ビックリしたよ」

 

「まぁ、前にいた学校のプールの時間には教師によくしごかれたからな」

 

同じく助けにきた片岡に雄二は淡々と言った。

 

「なら、今回の殺せんせーの水殺計画は私たちの出番かもね」

 

「………」

 

「風見君?」

 

「あぁ、そうだな」

 

少し嫌そうな顔をして雄二は言う。

 

「ほんとうにありがとうね、風見君、片岡さん」

 

「良いってこのくらい」

 

「………まぁ、気をつけろよとだけ言っておく」

 

「あはは、ごめんなさい」

 

「それより、早く着替えないと風邪ひくよ」

 

水から出ると当然だが制服はびしょ濡れである

 

「そうだな確か体操服くらいならある。下着は、烏間先生に頼んで買ってきてもらえばいいか。じゃあ、ちょっと着替えて…」

 

「ちょっと待ってください風見君」

 

殺せんせーはどこから出したのかバスタオルを雄二に渡す。

 

「その前に上着を抜いで体を拭きなさい。そのくらいならここでしても大丈夫でしょう」

 

「………」

 

雄二の沈黙は1秒ほどだった。その時雄二は殺せんせーの真意を考え、表情が「大丈夫です」と言われた気がしたのと、隠し続けるのはどの道不可能であると考えて上着とシャツを脱いだ。

 

「「「「「「‼︎⁉︎」」」」」」

 

クラスに来た当初からガタイが良いと思っていたが脱ぐとたくましい筋肉が目に入る。が、それよりも目についたのはその体に複数箇所に付いている傷だった。まず目がいくのが胸の中央部、手術の縫合痕。それが肩や腕、腰回りと様々にある。年月が経っているからだいぶ薄いがそれでも目立つものだった。

 

渚は以前から少し疑問があった。体育の時はいつも雄二は先に制服の下に体操服を着るか何処かに行ったと思えばいつの間にか着替えて体育に参加していることにだ。その理由がおそらくこれであるとすぐに理解した。ほかの皆もだいたい同じであろう

 

「おい、俺はストリッパーじゃないぞ」

 

体を拭きながら雄二は言う。じっと見ていた彼らはその一言でハッとして我に帰るもどう言葉を出そうかと思っていると

 

「傷って男の勲章って言うけど、雄二は特にすごねーちょっとカッコいいレベル」

 

「男に体を褒められるのは少し複雑だな」

 

カルマが真っ先にそれに触れると雄二はいつもの調子で話だしたのを見て皆会話に混ざりだす。

 

「確かに、ちょっとだけ羨ましいなその体つき、僕なんかこの通り細いからさ」

 

「渚、俺はノーマルだ。彼女になるならまず手術からな」

 

「しないよ⁉︎あとなんで僕にはいつもそれなの⁉︎」

 

「そういや、矢田ちゃんってあの胸に抱き抱えてもらえたんだよねー羨ましい」

 

「うぅぅ」←思い出して顔真っ赤

 

不安はすぐに収まっていつもの通りになる。雄二が殺せんせーを見るとウンウンと唸っている

 

(ありがとう、殺せんせー)

 

感謝を言葉には出さないが表情で返すと顔に花丸を出していた。

 

 

 

 

 

 

一方でそんな様子を見ている影もあった。

 

「チッ」

 

後の事件の引き金を文字通りひくことになる人物は舌打ちをしてその場を去った。

 

 

 




雄二の傷についてどうしよう思う部分がずっとありました。

本編の雄二は割と普通に肌見せてましたが今回はJBに言われたことで彼の中に少し不安があったという設定です。


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