暗殺教室 グリザイアの戦士達   作:戦鬼

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あのヒーローが来る‼︎


依存の時間

雄二の傷の件で一瞬の戸惑いがあったが結局普通に戻り、放課後にプールに集まって作成会議が始まった。

 

「まず、殺せんせーが本当に泳げないのかと言う疑問についてだが…」

 

実はプールでの行為は全てがブラフという可能性。それについてまず声を出した雄二の結論

 

「あれにポーカーフェイスとか無理だろ」

 

「「「「「確かに」」」」」

 

ここに殺せんせーがいたら「ヒドイ!」と言うかもしれないが事実である。秘密は多いがその確信にふれた際の殺せんせーはあまりにもわかりやすい。

 

「それにさ、前に湿気でふやけるところも見たし」

 

「さっきも倉橋が水をかけたとこだけふやけてた」

 

いくつかの事実からくる考察の結果、仮に全身が水でふやけたら、死ぬまではいかなくても極端に動きが悪くなる可能性はかなり高いと踏んだ。

 

「で、昼休みに風見君と計画を立てたんだけど、この夏の間どこかでタイミングを見計らって水中に殺せんせーを引き込む」

 

「もうすでに知ってると思うが先生は殺す行為、又は殺傷の可能性がある行為には敏感だがそれ以外はそこまでではない。水中に落とす行為そのものは殺す行為ではないため、先生の反応は遅れるはずだ」

 

「あとはふやけて動きが悪くなったところを水中で待ち構えた生徒がとどめを刺す」

 

「なら水中は昨年度の水泳部クロール学年代表、片岡メグ選手の出番ってわけだな」

 

雄二と片岡の作戦を聞いてそう言う前原だが片岡は否を唱える。

 

「そこは私もそうしようと思ったんだ。バレッタに対先生ナイフを仕込んでいつでも殺れる準備してたから。でもそれだけじゃダメだって風見君に言われてね」

 

「え?なにがダメなんだ?」

 

「まず、泳げない事をバレた相手に対してあっさり水中に落とされるとは思えない。恐らくだが落ちない自身はあるだろう。さらに高度な水中戦ができるのは現在のところ俺と片岡だけだろう。確実にやるならもう少し人数を増やしてからにしたい」

 

「そういうこと。大事なのは殺せんせーを水場近くで警戒心をなるべく起こさせない事と、クラスの水中での行動力上昇。大丈夫、夏は長いわ、じっくりチャンスを狙ってこう‼︎」

 

「「「「「おうっ‼︎」」」」」

 

 

 

会議の後片岡はプールに残り泳ぎの練習を始めた。見学者は渚、茅野、律(モバイル)、雄二、

 

「いやぁ〜カッコいいですね。先生には負けますが…それにしても何に必死なんでしょうかね〜」

 

いつのまにかいた殺せんせーである。

 

「まぁ、せっかくプールが出来たんだ、ブランクを戻したい気持ちがあるんだろ」

 

「ほうほうそうですか」

 

水殺計画を悟られないように話していると片岡のスマホからピコンと音がする

 

「片岡さん、多川心菜という方からメールです」

 

律からの情報を聞いた途端に片岡の顔が暗くなった

 

「メール内容を読みます[めぐめぐげんきぃ〜じつゎ、またべんきょ教えて欲しいんだ〜とりま駅前のファミレスしゅーごー]以上です」

 

「なんだその頭お花畑みたいなメールは?ヘンな薬でもキメてんじゃないか?」

 

「「こらこら」」

 

「でも確かに知能指数がやや劣る方だと私も推察します」

 

「「律まで…」」

 

と、律と雄二に対していうが2人もだいたい同じ感想はあった。

 

「[すぐいく]って返しといて。じゃね、ちょっと用事できちゃったから」

 

「片岡、大丈夫か?」

 

「うん?何が?」

 

「いや、なんでもない」

 

そうして片岡は先に帰っていくがその合間も顔は暗いままであった。

 

「気になりますか風見君?」

 

「それは先生もだろ」

 

「では皆さんも一緒に様子を見に行きましょう。…皆から頼られている人は、自分の苦しみは1人で抱えてしまいがちですからね」

 

「………そう、かもな」

 

 

 

間を空けて駅前ファミレスに移動してきたが

 

「先生、言いたくないが怪しくないかこれ?」

 

「何を言いますか完璧な隠密です」

 

鬘をつけて帽子をしてサングラスをしているだけで全然隠密できてない。渚と茅野、雄二もサングラスをしているだけである。一応言うが、隠密において怪しく見えるのはNGである。

 

 

席を離れて見ているとメール通り片岡が勉強を教えていた。

 

「期末テスト近いから助かるぅ〜!めぐめぐE組だけど私の苦手教科は得意だもんね」

 

「…まぁね」

 

片岡は少し困った顔をして教えていく

 

 

「メールでわかっていたが、見た目も言動も知能が低そうだな」

 

「ゆ、雄二…」

 

そう思うところがある為か渚もそれ以上言えなかった。

 

 

「あのさ心菜、私今やりたい事があってさ、もうクラスも違うんだしさ…」

 

意を決して片岡は思っている事を口にしたが

 

「…ひどい。私の事殺しかけたくせに」

 

途端、詰め寄り睨んでくる。

 

「あなたのせいで死にかけてから…私怖くて水にも入れないんだよ」

 

「だから、」と今度は両手で片岡の右腕を抱くように握る

 

「支えてくれるよね?一生」

 

わざとらしい涙を出しながらそう懇願した。

 

 

 

友達と遊ぶ約束があると言って去った後、片岡は最初から気付いていたのかため息を出したあと

 

「で、そこの不審者4人組は何か御用?」

 

と声を掛けてきたので店を出て経緯を聞いた。

 

「去年の夏にね、同じ組だったあの娘から泳ぎを教えてくれってたのまれたの。好きな男子含むグループで海に行くから、カッコ悪いとこを見せたくないという理由で」

 

「お前ならしっかりと教えられるだろうな」

 

片岡は首を横に振り

 

「いや、1回目のトレーニングでプールで泳げるぐらいには上達したんだけどなんだかんだ理由つけてそれ以降練習に来なくなったの」

 

「なるほど、読めてきた」

 

常に一定の波がくるはずのない海でちょっと前まで泳げない人間がちゃんと泳げるのか?答えは当然Noだ。もちろん片岡はそれは分かっていた。だからこそ何回か教えようとしていたのだ。

 

「で、案の定?」

 

「うん。海流に流されて溺れちゃって救助ざた」

 

「愚かだな。トレーニングというのは欠かさずに行うことに意味があるんだ。地味な反復練習の繰り返しこそが基本だってのにな」

 

吐き捨てるように雄二は言う

 

「それ以来、【死にかけて大恥かいてトラウマだ】【役に立たない泳ぎを教えた償いをしろ】って」

 

そうしてテストのたびにつきっきりで勉強を教えている間に片岡は苦手科目をこじらせてE組行きになったという

 

「そんな、彼女ちょっと片岡さんに甘えすぎじゃない?」

 

「あれは小判鮫みたいな奴だ。こいつといれば安全だとくっつき続け、いざ危なくなると真っ先に見捨て逃げるような」

 

茅野は心配して言うが片岡は「気にしないで」と言い

 

「いいよ、こういうのは慣れっこだか…「ダメだ」え?」

 

「ダメだ片岡。それだけはダメだ」

 

有無を言わさず雄二は否定する。

 

「小判鮫と違って、人間って奴は優しくされると甘えたくなる。甘えているうちに、いつかその対象に依存するようになり、そいつが居ないと生きられなくなる。そして甘やかしている方も時に依存してしまう。あの時、お前はこの関係を終わらせようとしてたが、結局慣れっこだからという理由で片付けてしまうつもりだったんだろ?何も変える気はないんだお前は」

 

「!」

 

「風見君の言う通りです。片岡さんのそれは共依存にあたります」

 

誰かに依存される事で自分自身も依存されることに依存してしまう悪循環。今の片岡はそれに入っていた

 

「片岡さん、あなたの面倒見や責任感は本当に素晴らしい。ですが、時には相手の自立心を育てることも必要です。“こいつならどんなにしがみついても沈まない”そう思うと人は自力で泳ぐことをやめてしまう。それは彼女のためにもなりません」

 

今の自分が置かれている状況が理解できたのか、片岡はどうすればいいのかを聞いた

 

「簡単です。彼女に自力で泳いでもらえるようにすればいい」

 

「言って聞くようなタイプでもなさそうだが、どうするつもりなんだ?」

 

「なぁに先生に任せなさいこのタコが魚も真っ青なマッハスイミングを教えてあげます」

 

 

 

 

「どこ、ここ?」

 

多川心菜は記憶をたどるも状況が理解できない。ベッドで就寝していたら幻想的な泉でにいた……ベッドごと。

 

「あぁ、夢か」

 

現実逃避に見えるが脳としては正常な判断である。

 

「目覚めたみたいだね」

 

と声したので振り返ってみるとそこには人魚…というより魚人のようなカッコをした人物がいた

 

「えーと、ここは魚の国!さぁ、私たちと一緒に泳ごうよ‼︎」

 

「……あんた、めぐめぐに似てない?」

 

「違うし、メグメグとか知らないし……魚魚だし」

 

「なにその居酒屋みたいな名前!?」

 

夢だと思っているからバレてないが当然片岡である。

 

「堂々と魚を演じなさい片岡さん。夢の中だと思わせなければ我々の行為は拉致監禁です」

 

ヒソヒソと片岡に注意をすると殺せんせーも含めてのこりの自己紹介をする

 

「僕の名前は魚太」

 

と名乗る渚。ちょっとだけ緊張している。

 

「私は魚子だよ」

 

「なんで魚子は魚なのに浮き輪してんの⁉︎」

 

泳げない茅野に浮き輪は必需品だがこの場では違和感でしか無い。

 

「私は鮮魚超人マーグロマーン‼︎必殺技は自身の肉体を裂いて身を投げつけるんだ‼︎」

 

「何その必殺技⁉︎つかテンションたか!」

 

手足のはえた謎のマグロの着ぐるみを着た雄二は結構ノリノリである。

 

「雄二、なんなのその着ぐるみ?」

 

「俺もよく知らないが、この前スーパーの福引で当たってな。細かい設定を店のファンに聞いたんだが使い所が出来て良かった」

 

鮮魚超人マグロマンそれは一部の人たちにウケつつあるヒーロー番組である。

 

「そして私が魚キング。川を海を自在に跳ねる水世界最強のタコです」

 

「タコかよ‼︎」

 

魚キングなのにタコとはいかがなものかと言わんばかりのツッコミである

 

「素晴らしい連続ツッコミですね。良い準備運動になります」

 

そう言うと殺せんせーは速攻で水に入る為のストレッチと早着替えをして文句が出る前にプールへ入水させた。突然のことで多川はパニックになるがすぐに片岡も水に入り指導をしようとすると

 

「今更いいわよ泳げなくて‼︎それを逆手に愛されキャラで行く事にしたし‼︎それにそうしとけばアンタに似てる友達が何でも言うこと聞いてくれるし‼︎」

 

「よく臆面もなく言えるな。誰かが守ってくれると信じ切ってノホホンと暮らしていれば、有事のさいになにも出来ない奴になるぞ」

 

「何よ!正義の味方気取り⁉︎」

 

「一応正義の味方だからな。この世に硬骨魚類の助けがある限り正義のマグロは現れる‼︎」

 

「人間の味方じゃないの⁉︎しかも助ける対象がすごい限定的‼︎」

 

「もういい。片……魚魚いいから体を温めろ」

 

「………了解。さっ、もっと歩く」

 

ギャーギャー言う多川を無理矢理動かしていると泳げないと思っていた殺せんせーが躊躇なく水に入ってきた。

 

(まさか、あれがブラフだったのか⁉︎)

 

雄二もこの行動には驚くがすぐに杞憂に終わる。水に入ってはいるが、完全防水の魚型の水着である。そしてその状態でバタ足でマッハで泳いで周ることで渦となり流れるプールになる

 

「すごいが、これじゃ魚キングが水に入れるかわからないな」

 

「そーだよ‼︎水着じゃなくて生身で水に入れるかみたかったのに‼︎」

 

「いえ、入れますよ生身でも」

 

と、完全防水の水着を渚に渡してきた

 

「ほ、本当に生身で水に入ってる?」

 

「いや、よく見て」

 

「桶で周りの水を掻き出してるな。波のプールになったぞ」

 

マッハの無駄遣いだなと心の中で思いながら片岡たちを見る

 

「まぁ、ある意味1番すごいのはこんな状況でも冷静に教えることができるあいつかもな」

 

殺せんせーの作り出した流れるプールと波のプールの中でも冷静にしっかりと教えている片岡に尊敬をする雄二であった。

 

結論やはりスパルタすぎて殺せんせーの体育は人間に教えるのに向いてない

 

 

 

殺せんせーのスパルタ特訓は片岡の指導があったため有意義にはたらき結果的に多川は教師から良いタイムだと言われる程泳げるようになった。多川との関係もこれで解消された

 

「これで彼女に責任は感じませんね片岡さん。これからは手を取って泳がせるだけじゃなく、あえて厳しく手を離すべき時もあると覚えてください」

 

片岡の表情は晴れやかでつきものが落ちたようである。

 

「あぁ、それと……察しの通り先生は泳げません。水を含むと殆ど身動きとれなくなりますから弱点としては最大級と言えるでしょう」

 

水が浸かった触手は膨張してふやけていた。

 

「けど、それをわざわざ言うって事は大して警戒してないんだな」

 

「ご明察です。落ちない自信もありますし現状満足に水中で暗殺できるのは片岡さんと風見君でしょうから、それなら相手ができます。ですから皆の自力も信じて皆で泳ぎを鍛えてください」

 

「問題ないな。もとよりそのつもりだ」

 

「ニュフフフ、いい心がけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、話しって?」

 

「クラスの水中での行動力上昇これに変わりないが、茅野はガチのカナヅチだからな無理はするな」

 

「それだけのためにわざわざよんだの?」

 

「それはそうだろう。お前、殺せんせーが泳げない事を確認するためにワザと水に落ちたろ」

 

「…………」

 

「殺せんせーは最初はふ菓子で助けようとしたが、最終的に水に入ってただろう。サポートに回るのも良いがもう少し命を大事にしろ」

 

「うん」

 

それだけ言うと雄二は去った

 

「危なかった………バレたと思った。そうなったら……消す以外ないし」

 

平然という彼女の顔は何も変わらないいつもの茅野である。雄二の考えは少し違う。泳げないのを確かめようとしたのではない

 

泳げないのを教えようとした(・・・・・・・)

 

「命を大事に、か………うん。けどそうと決めたら一直線だから私」




マグロマンはどうしても出したかった。そして出すならここしかないそう思ってました


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