ごめんなさい無理です
その人物の最大のミス、それは階段側を見ていなかった事だろう。呑気でいたわけではないし、彼も訓練はしている7階の見張り同様に訓練によって戦闘経験は豊富だ。とはいえたかが中学生がましてやこちらには歴戦の殺し屋が4人いるのだから階段から侵入者が来るはずもない。
「ごぁ、ぐごぉぁ」
なにをされたか気付いたのは首を締め上げられてからだった。酸素が体に行き渡らず、しだいに意識が消える。
彼の声を出すのだとしたら『そんなバカな』であろう。
「ふうぅ〜大分体が動くようになってきたな。…まだ力半分といったところだが」
烏間のヘッドロックによって9階の見張りは泡を吹いて気を失った。
「あれで力半分って…それでも俺らの倍は強ぇ…」
「あの人だけで侵入した方が良かったんじゃ…」
烏間の化け物っぷりはこれまで見てきたが改めて見たそれに若干引きぎみである
「たしかにぶっ飛んだ強さだが、おまえ達を頼りにしてないわけじゃ無いし、烏間先生だけで侵入してミッションを完遂できたかは正直微妙だと思うぞ」
ここに来るまでに見た殺し屋や見張りの数などを考えて雄二はその考えになるがそれでもできないと言わないあたり彼もそのことは心の中で思ってはいた。
「皆さん、最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました。上の様子が観察できます」
「他のカメラにダミー映像ながしながらか?さすがだな律」
律に感心しながらスマホをみる。他の皆も自分のを出して確認しだす
「最上階一室は貸し切り。確認する限り残るのは……この男ただひとりです」
モニターを見ながらタバコを吸う男後ろ姿が映る。見ているものは
「こいつ、ウィルスに感染された皆を見てる…撮られてたのか」
「後ろ姿でもわかんぜ楽しんでみてんのがな」
「悪趣味なヤローだな」
冷静に言う雄二だが拳を握り、ギリギリと音を立てていた
「あのボスについてわかってきた事があります。……黒幕の彼は殺し屋ではない。殺し屋の使い方を間違えてます」
「それは薄々感じていたおそらく元々は殺せんせーを殺すために雇ったんだろうが、先生が身動きの取れないようになったのを確認して見張りと防衛に回したんだろう」
「そう。しかしそれは殺し屋の本来の仕事じゃない、彼等の能力はフルに発揮すれば恐るべきものです」
毒使いスモッグはすれ違いざまに殺るのが十八番のようだがすれ違うならもっと自分が目立たず他人の後ろに歩いて姿を隠しながらというものが最適だった。それができないのは見回りという役割があったから
「確かにさっきの銃撃戦も戦術勝ったけど…狙った的は1㎝たりとも外さなかった」
「あの、先程分かったことなんですけど…」
律が話しに入る
「風見さんが倒した仮面の人物も相当の相手です。どうやら、私の目すら騙くらかして皆さんの様子を見てたようです」
「なっまじかよ」
「なるほど、違和感はあったんだ。あいつ、ぬーぬー野郎の通信機を破壊したの知ってる素振りだったからな。連絡は……いってないんだろうなこの状況見るに」
あの時はわかりにくかったが戦闘面以外でもとんでもない化け物であったのがわかり戦慄を皆隠せない。
「そして、カルマくんが戦った相手もそう。見張るのでも、戦闘でもなく、日常で後ろから忍び寄られたらあの握力に瞬殺されていたでしょう」
「…そりゃね」
考えただけでも恐ろしいとカルマでさえ戦慄した。
「色々思うところも疑問もあるが、全部このイカれた男を縛ればわかる」
「…そうだな。時間がない。こいつは我々がエレベーターで来ると思っているだろうが、交渉期限まで動きが無ければさすがに警戒を強める。各個人に役割を支持するから聞いてくれ」
烏間の説明を聞いているとふと小声が聞こえたので雄二はそちらを見てわかった。階段を登る途中渚に聞く
「渚、寺坂はまさか…」
「…………うん」
それで完全に理解した。寺坂もウィルス感染していると
「あの状態で動けるのは大したもんだが、その分限界も近いだろうな」
「やっぱり今からでも」
「やめとけ」
雄二はすぐに止める
「今あいつを動かしているのは自身の想いと気力だ。周りにそれが知られたら動けなくなる。そうして、自分がお荷物なんだと意識してしまうだろう。そんな不安要素は周りにも本人にも伝えない方がいい」
渚は静かに頷き階段を登る。
___最上階に到達した。ここもカードキーが必要なのだが9階の見張りが持っていた。見張りにそんな大事な物を持たせるのはそもそも論外だがそれは階段から侵入してくると思っていなかった証拠であり、相手が油断し、気付いてないということである。
(だだっ広いが、遮蔽物も多いこれなら気配を最大に消せば忍び寄るのも可能だ)
その方法は体育で皆教えられている。
(すごいな。こんな状況で焦りもなくナンバができてる)
ナンバ:忍者も使うと言われた歩法。手と足一緒に前にだし胴の捻りと軸ぶれをなくし、衣ずれと靴の音を抑えるこができる
ススッとゆっくり確実に近づく。男はモニターに釘付けなのか振り向く動作も全く見せていない。
(奴か……あのスーツケースにつけらてんのは…なら、あの中に治療薬があるのか。…だが、あの爆弾に手元のリモコン…こいつまさか)
ともかく今は取り押さえることに意識を優先させる。
烏間の打ち合わせ通り可能な限り近づき、もし遠い距離で気疲れたときは本人を烏間の責任で撃つ。本来ならここに雄二も援護に回ってほしいが現状の彼ではできない。仮にできる状態でもさせはしないが。あとは皆で一斉に襲い拘束する。
「かゆい」
はずだった。その男の声を聞くまでは
「思い出すとかゆくなる」
ポリポリと顔をかくが爪をたてているので傷ができる。
「でもそのせいかな、いつも傷口が空気に触れるから…感覚が鋭敏になってるんだ」
すると男は大量のリモコン、おそらくその全てが起爆装置になっている物だ。20は少なくともある
「もともとマッハ20の怪物を殺す準備で来てるんだリモコンを超スピードで奪われないように予備も作る。うっかり俺が倒れても押せる位にな」
聞き覚えのある声。だがその声には以前と比べられない邪気があった
*
「だから、何があったんだ?」
「…まぁ、一応話しておくわ。ついで言うと烏間にも通達されているわ」
お互いにソファに座るとJBが話しだす
「先日、防衛省の機密費、本来ならあの怪物の暗殺に使うはずの資金がごっそり全て抜かれたの。金額はあの怪物の暗殺報酬よりも上よ」
「防衛省に泥棒なんてバカなヤローだが、それをされた方のセキュリティはどうなってんだよ」
「そのセキュリティをよく知ってる身内によるものよ。あなたも会ってる」
「?」
「つい最近まであのクラスの訓練責任者だったからその運営費の動かしかたも取り出し方も理解してた」
「って、おいまさか」
「えぇ。烏間も同僚って事で一瞬だけど疑われたわ。あの男…」
*
「連絡のつかなくなった殺し屋の他に防衛省の機密費を奪い、姿を消した同僚がいる……どういうつもりだ鷹岡ァ‼︎」
ぐるりと椅子を動かして顔を見せた鷹岡だが、その顔は自らつけたかき傷だらけで目は最初に見た時以上の狂気と憎悪で満ちていた
(JBめ。もっとちゃんと探れってんだ)
と愚痴を思ったがそんな場合ではない。今クラスの命はあいつの手の中で握られている
「悪い子達だ…恩師に会うのに裏口からくる。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ」
まだ身勝手に父親目線になっている鷹岡は反省などない。
「仕方ない。夏休みの補習をしてやろう。…屋上へ行こうか愛する生徒に歓迎の用意がしてあるんだ」
腰を上げ階段の方に治療薬の入ったケースを持って歩き出す
「ついて来てくれるよなぁ?おまえらのクラスは…俺の慈悲で生かされているんだからな」
リモコンをちらつかせる。行かない選択肢など当然ない
屋上のヘリポートに着くと烏間が問いただす
「気でも狂ったか鷹岡。防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウィルスで脅すこの凶行‼︎」
「おいおい、失礼だなぁ。俺は至極まともだぜ。これは地球を救える計画なんだ」
だが鷹岡は悪びれもせずむしろ自分こそが正義で正論を言ってるんだと言わんばかりに語りだす
「計画では、茅野とか言ったか?その女の方を使う予定だった。部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてある。そこに賞金首を抱いて入って、その上からセメントで生き埋めにする」
計画はおおよそ人道的と言いがたいものだった。その状況でも殺せんせーは脱出はできるだろだがそれは茅野の命を考えないと言う前提でだ
「生徒思いの殺せんせーはまさか生徒を巻き込んで爆裂なんてしないだろ?大人しく溶かされてくれると思ってな」
悪魔。そんな言葉を生徒達は思うほど歪んでいる
「全員で乗り込んでき来たことに気付いた瞬間は肝を冷やしたが、やることは変わらない。今おまえらを何人生かすかは俺の機嫌次第だ」
再びリモコンをちらつかせる。
「許されると思いますか?そんな真似が」
殺せんせーの怒気が含まれている声に鷹岡は知るもんかというような顔で語る
「これでも人道的な方さお前らが俺にした……非人道的な仕打ちに比べりゃな」
雄二もJBから聞いている上の評価は地に落ち、彼の指導は問題ありとして今後の指導者の権利も剥奪されたと
「屈辱の目線、騙し討ちで突きつけられたナイフが頭ン中でチラつくたびにかゆくなって夜も眠れねぇ‼︎」
自身の行いに悪びれず、自分勝手はもはや清々しいといえる
「落とした評価は結果で。受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す………特に潮田渚、俺の未来を汚したおまえは絶対に許さん‼︎」
「なるほど背のわざわざ低い生徒を要求するわけだ。狙いは渚ってことかよ」
「カンペキな逆恨みじゃねーか‼︎」
吉田の言う通り、逆恨みでしかない。殺せんせーの暗殺はついでに思える
「漢字辞典読んでみろあんたにピッタリな四文字熟語あるぞ」
自業自得。その言葉が全員によぎる。
「はっ!全くその通りだイカれ野郎テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろーが」
息を切らしながら寺坂も反論する。
「ついで言うとだ。あんた結果で評価を覆すって言ってが、それこそ無駄ってもんだ」
「あんだとぉ⁉︎」
「軍人ならわかるだろ?軍人に必要なのは規律だ。規律を破って行動するあんたに評価もクソもねぇ。なにより、あんたは軍人として失格だ。軍人が守るべきものは国民の領土、命、そして財産だ。あんたは身勝手と自己満足の為に血税を使い込み、国民の命を盾にしたクズの評価しか入らないんだよ‼︎」
正論に対して鷹岡がとったのは
「黙れ‼︎犬の分際で‼︎」
逆ギレだった。あの時と同じく、『犬』というワードで雄二を呼んで
「俺を犬って言うならあんたは駄犬だな。犬ってよんでじゃねー」
それにキレようとした鷹岡はニマリと笑う。ぶち壊してやるという顔で
「なら、こう呼んでほしいかぁ?
「やめろ‼︎それ以上挑発するな風見くん‼︎」
大きな声を出して雄二を止める。鷹岡は正気ではないだけじゃない。自分のことすら頭にない復讐鬼となっていた
「くくくまぁそうだなぁ、俺の指先でジャリが半分減るんだからなぁ‼︎」
リモコンのボタンに指をつけて脅し、渚にヘリポートまで登れと要求してくる。
「行くのか?」
「………行きたくないけど、行くよ。あれだけ興奮してたら何するかわからない。話を合わせて冷静にさせて治療薬壊さないように渡してもらうよ」
「………渚、聡いおまえなら大丈夫とは思うが、おまえは暗殺者だ。おまえ自身も常に冷静でいろよ」
「わかってるよ」
そう言って要求通りにかけられた梯子を渡りヘリポートに着くと鷹岡は梯子を落とした誰の邪魔も入らないようにする為だろう。雄二達の位置からはわからないが中央には本物のナイフが2振りある。そこまで行けと無言で指示される
「そこのあるナイフで何をしたいかわかるだろ?そう、この前のリターンマッチだ」
「待ってください鷹岡先生。闘いをしに来たわけじゃないんです」
「だろうなぁ。この前みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で俺にやられるだろうよ」
そこだけは正しい。そもそも渚は暗殺者であって軍人のような戦闘職ではない戦闘をする前に終わらせる者なのだから
「一瞬で終わるんじゃ俺の気が晴れない。だから闘う前に、やってもらわなくちゃな‼︎」
鷹岡は指を下に向け要求する
「謝罪しろ、土下座だ。実力がないから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な」
悔しい顔で足を曲げ正座する
「それが土下座かァ⁉︎バカガキが‼︎頭こすりつけて謝るんだよォ‼︎」
手をつき地面に頭を向け謝罪をした。実力が無いから卑怯な手で奇襲したと言われるままの通りに
「あ〜そういえば、その後偉そうに『出て行け』とか言ってたよなぁ〜…ガキの分際で、大人に向かって生徒が、教師にむかってよぉ‼︎」
渚の頭に足を乗せる。だが渚は冷静に相手の言わせたいことを理解し、謝罪の言葉を言う
「ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すみませんでした。本当に…ごめんなさい」
その言葉を聞き、ニンマリと邪悪な笑みを見せる。
「…よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんはうれしいぞ」
すると鷹岡は後ろに置いてあるケースを持ってくる
「褒美にいい事を教えてやろう。あのウイルスで死んだ奴がどうなるかスモッグの奴に画像を見せてもらったんだが笑えるぜ、全身デキモノだらけ。顔面がブドウみたいに腫れ上がってな」
(……まさか⁉︎)
「見たいだろ渚君?」
その、まさかだった。ケースを放り投げ、気付いた烏間の静止しも無視し躊躇なくスイッチを押した
瞬間、ケースは中に入って治療薬ごと爆発しケースと薬品と瓶のガラスが飛び散る
「なんて事を…」
絶望している皆の顔が心底愉快に感じたのか、盛大に鷹岡は楽しそうにゲラゲラと大爆笑する
「そう‼︎その顔が見たかったんだ‼︎夏休みの観察日記にしたらどうだ?お友達の顔面がブドウみたいに化けてく様をよ。はははははは‼︎」
その言葉がトリガーだったのか。渚の手がナイフに伸びる。鷹岡もそれに気付く
「殺…してやる…よくも、皆を」
「そう、その意気‼︎殺しに来なさい渚くん‼︎」
渚の殺意が形となって見えるかのようだった
「寺坂、渚の頭を」
冷やすぞと言い切る前にすでに寺坂は行動した自分の持っていたスタンガンを投げた
「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ‼︎テメー薬が爆破された時よ、俺を哀れむような目で見ただろ!いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞモヤシ野郎‼︎ウィルスなんざ寝てりゃ余裕で治せんだよ」
そこで皆理解した寺坂もウィルスに感染していると。だが寺坂は言いたいことを言う。
「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。テメーはキレるに任せて100億のチャンス手放すのか?」
「渚。今のおまえはさっきの仮面女と戦った俺に近い。殺意に呑まれるなそいつの命に価値は1つもない。言ったよな?おまえは暗殺者だ冷静になれ。殺すべき対象を選べないのは暗殺者じゃない。殺せんせーが俺に言ったろ?全部ぶち壊したいのか?」
「2人の言う通りです。逆上しても不利になるだけ。それに彼には治療薬に関する知識など無い。下にいた毒使いの男に聞きましょう。こんな男は気絶程度で充分です」
その言葉が不満なのか鷹岡は水を差すなという
「無視しろ渚。おまえは何処に居たい?俺たちと居たいならそのスタンガンで倒せ。全部捨てるのは簡単だが、捨てた物を拾うのはむずかいそのナイフは人を殺す物だがどう使いたい?おまえの心はどうしたいって言ってるんだ?」
すると寺坂がどさりと倒れた
「限界だろ休んでろ寺坂」
「るせーあとひと言ありんだよ俺も……やれ渚。死なねぇ範囲でぶっ殺せ」
「………渚、どんな力も使いよう、心意気次第だ。俺たちがいる。おまえの心にいる。だから、迷うな」
渚は黙り、上着を脱いでスタンガンを拾うだが
「お〜お〜かっこいいねぇ」
そのスタンガンを腰にしまいナイフを構えた
ちなみに
仮面女はビッチ先生と違い色仕掛けはある程度できるレベルですが機械関係は凄まじくその腕でビッチ先生の潜入から脱出まで手伝ったので当時あまり感情にのせてませんがビッチ先生はメチャクチャ感謝してます