そしてようやく彼女の名前が出せます
先程とは違い、明確な殺意は消えていたが渚はナイフを持ち、寺坂のスタンガンは腰にしまっている
「……」
殺せんせーもさすがに心配なのかこの状況に何も言えていない。
「安心したぜ。ナイフを使う気満々でいてくれてよ。スタンガンはお友達に義理立てして拾ってやったということか」
ポケットをゴソゴソと探り鷹岡は3つの液体入りの小瓶を出した
「こいつは予備の薬だ。渚クンが本気で殺しに来なかったり下の奴等が俺の邪魔をしようものならこいつも破壊する。作るのに1ヶ月はかかるそうだ人数分はないが、最後の希望だぜ?」
何人か助けに向かおうとしていたが薬を盾に抑制されてしまう。
(渚の暗殺技術と才能は平和な日本人が持っているとは思えないものだ。だが暗殺者は戦闘が本職じゃない。そうなる前に致命的な一撃を与える職業。故に、戦闘になれば不利になる)
渚は静かに忍び寄るような足取りで鷹岡に向かおうとするが渾身の蹴りが腹部に命中しゲホゲホと咳をだす。暗殺の基本は奇襲戦法だそして同じ奇襲は2度は通じない。
「おら、どうした?俺を、殺すんじゃなかったのか?」
腐りきっているが鷹岡は精鋭軍人。以前は傲り故に敗北したが今回は最初から戦闘モードでかかっている。戦闘経験も技術もない、体格差は圧倒的。勝てる可能性など0だ
「烏間先生‼︎もう撃って下さい‼︎渚が死んじゃうよ‼︎ 」
殺せんせーから鷹岡に聞こえないように危なくなったら撃つように指示をされていた烏間は茅野の言う通り、ナイフをとりだした鷹岡を見て限界だと判断し、銃を構えた。たしかに、このまま
「…もう少しまってくれ烏間先生」
「風見の、言う通りだ…手出し、すんな」
根性で完全に倒れる事なく見ていた寺坂は雄二に賛同した。カルマの方は限界なのか参戦する気でいる。
「………あいつの目が死んでない。むしろ、高揚してるように見える」
それは、小学生が理科の実験を楽しむかのような
「ご明察だ。…カルマはサボりが多くて、風見は別訓練に忙しくて知らねぇだろうが、まだ隠し玉を持ってるよーだぜ」
渚の顔は笑っていたそれは以前鷹岡を倒した時と同じ柔らかな笑み。その笑みのまま、すたすたと歩く以前と同じに見えるが
「どこか、違う?」
それは、ロヴロから教わった技術。通称【必殺技】
もう一度言うがこのまま戦闘を続けていては渚は勝てない。ならば戦闘から暗殺に戻す必要がある。だが相手が手練れの軍人ならそうはいかない。ましてここには身を隠す遮蔽物もない。
「くっそ、ガキィ〜」
この時の鷹岡はあの時のトラウマが脳によぎる。今なら大丈夫と思っていても、相手が殺しに来ていると判断しており、緊張とあの時感じた恐怖が頭の中でうずまき、鼓動が速くなる。
なお、【必殺技】というが暗殺者なら必ず殺すのは当たり前だ。この技はその状況に持っていくための技…否、その段階にする為の1つの行為にすぎない
(大丈夫だ、もうあの時のようなヘマはしないナイフを動かす前に捻り潰してやる)
近づいてくる渚の全ての動きを観察する。が、近づいて来れば来るほど、殺傷能力のあるナイフに意識がいく。そのナイフを渚は…捨てた。まるで、机に置き捨てるように。
(ナイフ、ナイフを使う前に、ナイフ…ない、捨てた、なんで)
捨てられた直後もまだナイフに意識がいっている。そして空いた手と手を眼前に素早く持っていき
パンッ
渚ができる最高速度、最高音で手を叩く。それは相撲でいう【猫だまし】他の者から聞いていればただの少し音が大きめな音。だが極度の緊張状態の鷹岡にしてみればそれはスタングレネード等しい。突然の常識外の行動も相まって一瞬意識がふっ飛ぶ。何がおこったのかもわからない。当然その隙を見逃す暗殺者などいない。落としたナイフを拾うヒマなどない。なら、もう1つの武器をつかう腰にしまった本命の武器、スタンガンを流れるように抜き、視界に入るまえに脇にあて、電流を流した
「ぎっ⁉︎」
どうしてこうなったかなど、わからないだろうそれくらいに一瞬の出来事だった。
「すげぇ…」
だれがこぼしたかわからないその言葉は全員の総意見だろう
「渚、動けないだろうがとどめを刺せ」
「おう、首あたりに最大にな。それで気絶する」
(殺意を、教わった。抱いちゃいけない種類の殺意があるって事、その殺意から引き戻してくれる友達の大事さも)
渚はけして鷹岡を許したわけではない。今も怒ってはいる
(殴られる痛みを、実践の恐怖を、この人から沢山の事を教わった)
だが、鷹岡は短い間だが彼の、彼らの先生であり、結果的に教わった事は多い。反面教師というやつだ
(ひどい事をした人だけど…)
それとは別に授業への感謝はちゃんと言うべきだと。そして感謝を伝えるなら
その時、鷹岡は理解した。自分の恐怖のトラウマの象徴である、
(やめろ……)
抵抗する力全身痺れてできない。もっとも今できても首にスタンガンがあっては間に合わない
(
その顔に、その表情は、普通なら恐怖の象徴でない。だが、一度その恐怖を植え付けられた鷹岡には
(もう一生、
渚の笑顔は悪魔の笑みに見えていた
元凶撃破
*
最大出力のスタンガンを受けて泡を吹いて倒れた鷹岡が動かないのを理解するとすぐに落とした梯子を回収して渚をヘリポートからおろし鷹岡は拘束した。しかし以前問題はある。
「薬はたったの3本か」
「どうしよう、全然足りない」
薬がなければ治すことはできない。かと言って助ける人を選択するなどという非道な行為もできない
「今はここを出よう。あの毒使いなら治療薬の製法もわかるだろうし、ウィルスの効果を一時的でも弱める方法もわかるかもしれない。烏間先生、頼む」
「………どういうことだ」
「?どうした」
「ヘリを呼ぼうとしているんだが、繋がらない」
「「「「「⁉︎」」」」」
また異常事態がおきた。ヘリを使えないならまた来た道を戻ることになるが疲労した皆で見つからずに出るのは不可能に近い
「とにかく、今はここで待機。おれは毒使いをここに連れてくる」
「フン、テメー等に薬なんぞ必要ねぇ」
「ついでに、ヘリを呼ぶ必要もないですよ」
冷静に対処しようとする烏間の言葉を遮り、声をかけてきた人物の方へ向くとここに来るまでに倒した暗殺者が勢揃いしていた。
「ガキ共、このまま生きて帰れるとでも思ったかい?」
(なぜ、声をかけてきた?)
ここまで来るとこいつらは暗殺する気があるのかと雄二は思った。相当なダメージはあるがそれでもここまで動ける手練れなら尚更だった
「お前達の雇い主は既に倒した。戦う理由はもう無い筈だ。俺は充分に回復したし、生徒達も充分に強い。これ以上、互いに被害が出ることはやめにしないか?」
「ん、いーよ」
「あきらめ悪ィな‼︎こっちも薬がなくてムカついて……え?」
すぐには理解出来なかったあまりに呆気ない即回答だったからだ。
「ボスの敵討ちは俺等の契約にゃ含まれてねぇ。それに今言ったろガキ。そもそもおまえ等に薬なんぞ必要ねーって」
「………まさか、鷹岡の言ってた毒じゃないのか?」
「その通り。流石に冷静ね」
「おまえ等に盛ったのはこれ食中毒菌を改良したものだ。あと3時間くらいは猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒になる。ちなみにボスが使えと指示したのはこっちだ。これ使えばマジでヤバかっただろうな。まぁ、こんな毒でも命の危機を感じるには充分だったろ?」
「ずっと、疑問だった。おまえ達は全員本気で殺しに来てなかった。例外はそこの銃使いだがあれは自身の命の危機のための自衛っていうなら納得できる」
そのおかげで暗殺ではなく戦闘で突破できた。もし最初から暗殺なら一方的にやられていたなどすぐに想像がつく。
「使う直前にこの4人で話し合ったぬ。ボスの設定した交渉期限は1時間。だったら、わざわざ殺すウィルスじゃなくとも取引は出来ると」
「状況に応じ、多種多様に柔軟に作戦を変えるのは暗殺者の基本。覚えておきなさい」
「いや、嬢ちゃんのワガママも原因だからな。来るのがわかってて俺等のカメラが細工されてても黙ってたせいでこっちは迷惑なんだけどよ」
「その分の治療費も報酬に出してますよ。最初の契約書にも書いてありましたよ」
「あの、そういえばなんで風見に固執してたんですか?それに、鷹岡の命令にも逆らってるし」
岡野の疑問に女は答える
「最初の質問には答えられないわ。まぁ、私の性格の問題と言っておくけど。……もうひとつの方だけど、プロが金でなんでもすると思ってるなら大きな間違いよ。むしろプロだからこそ殺しには意味を持たせなきゃいけないの」
「まぁ、依頼人の意にはなるべく沿うように最善は尽くす。だがボスは最初から薬を渡すつもりは無いようだった」
「聞いた時はビックリしましたよ。私、契約書を必ず書かせるんですけど、そこには超生物以外は殺すターゲットに入ってなかったんですから。こちらの3人と依頼人と一時的でもチームを組んでいるならそれは私が殺したのと同じになるんだもの」
「それ言うならあの坊主もターゲットじゃねーだろ。まぁ、そんなこんなでカタギの中学生を大量に殺した実行犯となるか、命令違反がバレる事でプロの評価を落とすか」
どちらが今後彼らのリスクになるか冷静に秤にかけたうえの行動だったのだ。
「命は1つ。奪うのは意味がある時。覚えておきなさい」
女がそういうとヘリの音が聞こえてくる
「ヘリを呼ぶ必要ないって言ったでしょ?先に呼んでおいたの混乱したらいけないから、ちょっとジャマーをかけたの」
「……どうやって軍の暗号通信を」
「どっちかっていうと私は軍人に近い暗殺者なの。そういう技術を昔習ってロヴロ
恐ろしい奴だなと烏間は思っていた。今度は毒使いが錠剤の入ったビンを渡してきた
「その栄養剤を患者に飲ませて寝かしてやんな『倒れる前より元気なったからまた殺しに来て下さい』って手紙がくるほどだ」
「「「「どんなターゲットだよ」」」」
「……信用するかは生徒達が回復したのを見てからだ。事情も聞くし、暫く拘束させてもらうぞ」
「来週には次の仕事が入ってるからそれ以内にな」
降りてきたヘリから自衛隊員が出てきて鷹岡やその部下を拘束しヘリに乗せる。それを見ながら雄二は女の側に行き小声で話す
「…俺に、殺されたかったのか?」
「………それが、私の贖罪だから」
「ざけんな。殺しには意味を必要にするんだろ?俺には何の意味もないんだよ」
「………」
沈黙してお互い顔も見ない。仮面は取れているのだから目と目を見た話せるのにだ
「あれは、どっちのせいでもない。俺もいろんな意味で未熟で、おまえも本心じゃなかった。だから…そうだな」
ぎこちなく雄二はいう
「生きていてくれて、少し嬉しい」
「こんな世界に生きるからいつかは死ぬかもしれないけどね………私もあえて嬉しかった」
そこからもう少しだけ話し、彼女と3人の暗殺者がヘリに乗ることになる
「さよならユージ」
「またなマーリン」
それぞれ違う別れの挨拶をした後、彼女、マーリンはヘリに乗った
*
「いいのかよ?」
ヘリの中でガストロがマーリンに話しかけていた
「なにがですか?」
「あのまま、あそこにいく道があっただろ?」
実際、マーリンは交渉してE組にいくこともほんの少し考えた。だが
「もう、彼の場所には私は必要ない。何より、彼が殺してくれないなら、この道を進むしかないですから」
「「「………」」」
3人の暗殺者は全員面倒だと思った
(((じゃあ、泣いてんじゃねーよ[ぬ])))
おまけ
「ところで、あのぬーぬー野郎なんだが」
「グリップさんがどうしたの?」
「あれ、教えなくていいのか?」
目を向けるとグリップの背には【私はバカです】と書かれているシールが貼られている。何人かの自衛隊員がツッコもうかと思いつつも仕事を優先しているので言わない
「貼り付けたのあなたでしょ?見てたから知ってる」
「いや、そうなんだがな」
この後服を脱いだ時に気づいたグリップがキレてきたのは、いうまでもない
実際マーリンをE組に入れようと思いましたが彼女の心境になると無理かもと思いやめました
でもまだ名残り惜しい感じもしてたりする
感想、意見、あればお願いします
頑張って今月もう1話出す……できるかなOTL