捕まった生徒達が新たな牢屋に入れられて腕を後ろに組まされ警察が使っている物よりも丈夫な手錠をつけられる
「…はーあ。ビッチ先生に裏切られて悲しい〜」
必死の悪足掻きとばかりに陽菜乃は手錠をつけるイリーナに悪態を吐くがそんなものが効くはずもなく、手錠を取りつけられる。
「な、渚」
渚は死神から自身が使う猫だましの上位互換『クラップスタナー』を受けいまだ神経が麻痺して碌な反応を取ることができないのか、茅野の声にも反応せずぼーっとしている
「練習台はもう結構、あとはそこで人質でいればいいよ。一応言うけど、この牢屋はさっきと違って脱出は不可能だから」
興味はもう無く、物のように扱う様子にカルマが反論をする
「どんな方法で殺せんせーを殺そうとしてるのか知らないけどさ、そう計算通りに行くのかね?」
死神は何かな言わんばりにニコニコとカルマの話を聞く
「だってあんた、俺等の誰にも大したダメージを与えられなかったじゃん。この計算違いが俺等じゃなくて殺せんせーだったら、あんた返り討ちでやられてるよ。おまけに世界最高の暗殺者の癖して…」
視線を死神の後ろで直立不動で表情をまったく変えない2人の男に向ける
「ビッチ先生とは別に、あんな暗殺者を雇ってさ、相当臆病なんだね」
カルマの挑発に死神は作り物のような笑顔を崩すことなく、その反論をきる
「でも結果はどうだ?君等は牢屋にいるじゃないか」
絶対的な事実を告げるとカルマは何も言えない
「情報なんて不足して当然、ましてやあの怪物は…どんな能力を隠し持っているのか誰も知らない。たとえどんなに情報不足でも結果を出す…それが世界一の殺し屋だよ」
これがもし暗殺なら、気絶した時点で、捕獲された時点で、死が確定している。並大抵でない訓練で実力をつけた彼らを一蹴し、イリーナを容易く引き抜き、ありとあらゆる技術をもって結果を出す。仮にあの2人の暗殺者がいなくとも平然と捕まっただろう。
桁違い…そう表現できる圧倒的な差
「あぁ、それと君は勘違いしてる。僕は彼らを雇ってない。
その言葉の意味がわからない。死神を雇ったというあの2人の暗殺者はなんなのか、その言動を聞くとそもそもなぜ死神は彼らが裏切らないという自信を持っているのか。ただ、それを知ったところでどうすることもできない。囚われている身ではそんな情報無意味なのだから
「さて、次は烏間先生と風見雄二君だ。それぞれ別々に誘いだして人質に取る。彼らなら君達より良い練習台になるだろうし、烏間先生の方は捕らえておくと色々メリットが多い。風見君の方は後でやる事があるから絶対生かしておく必要があるけど…まっ、生きてたらそれでいいかな」
あの2人を捕まえる。正直そんなの無理と思いたいがこの死神はやると思えてしまう
ただ、死神も言ったが情報は不足して当たり前。
「ねぇ、死神さーんモニター見てみ。あんたまた計算違いしたみたいだよ」
牢屋の外にある監視カメラのモニターの変化に気づいたカルマは再び挑発する。言われた通り見ると、流石に死神も予想外だったのか眼が少しばかり見開く
「………なぜ、わかった?」
*
モニターの先にいた人物達、雄二、なぜか首輪付き犬の着ぐるみを着た殺せんせー、そしてそのリードをもつ烏間がいた
「ここです。犬に変装したおかげで自然ににおいを辿れました」
「こんなうすらでかいどこが自然だ」
「そもそも変装になってないし、する必要性もまるでかんじない」
今の彼らは生徒達には救世主みたいに見えていた。そんなことは知ることもないが雄二は建物の周囲を見る
「監視カメラか…この先の相手はこっちが来たことは承知してるだろうな」
「えぇ。しかし、花と生徒達のにおいで私を誘き寄せて殺すのがプランだったのでしょうが、私がサッカーの試合を見ずに帰ってきたこと、烏間先生と風見君が一緒に来たことはおそらく計算外でしょう」
「その根拠は?」
「私なら風見君と烏間先生もどうにかして別々に捕らえますよ。同時など厄介ですし。その2人が捕らえられてないのがいい証拠です」
確かにと雄二は思う。バイトにちまちまとちょっかいをしてきたのは生徒と烏間、殺せんせーから引き離す準備の為だったのだろう推測もした
「てことは、迎撃準備は不充分…勝算はあるな」
「えぇ。入りますよ烏間先生、風見君」
殺せんせーの言う通り、これは死神とっては大きな計算外であった。だが、それで焦りもしていなかったが
「倉庫みたいだが、さすがに入ってすぐあいつらが捕まってるみたいな状況じゃないみたいだな」
「どこかに、地下に行く方法があるはずまずはそれを探しま」
ガコンと音がして次に床がエレベーターのように動きだす
「歓迎するってやつか」
このようなシステムがあるのは予想外だが、動揺する3人ではない。何がきてもいいよう身構えると、最初に生徒達が降りてきた場所と違う階層に着いた。そこには4人の人物。1人はイリーナ手錠をつけられて銃を持った若い男に捕まえられている。残りの2人の男はその後ろに控え、マネキンのように動かない
「…!おまえ、この前の」
「知ってるのか、烏間先生?」
「先日偶然会った花屋だ。奴が主謀者だったか」
「そう。風見君と殺せんせーは今日会ったからはじめましてだね。聞いた事はあるかい?『死神』の名を」
死神、こいつがと雄二は警戒する。いや
(警戒したいのに、警戒できない。なんだこいつの変な安心感は)
銃を持ち、いつ撃ってきてもおかしくないのに、その声が安心感できてしまう。そしてこの距離なのに気配がぼやけている。何をするのか、何を考えているのか、まったく読めない。それは雄二ですら感じる、気持ち悪さだった
「生徒達も、ここのどこかに?」
殺せんせーはどこか焦りがあるのか少し間をあけて死神に問う
「そうだよ殺せんせー。君が死ねば、この娘も、生徒も殺しはしないよ」
そう言ってイリーナを乱暴にこちらへ投げる
「人質をわざわざ返してくれた…わけじゃないみたいだな」
「もちろん。彼女と生徒全員の首に爆弾をつけた。僕の合図ひとつで爆破できる」
烏間がイリーナの様子を見るが問題は無さそうだ意識はある。爆破しないということは、そのくらいは許すということ。だがどこまですれば爆破するかわからないので迂闊に動けない
「ずい分と強引ですねぇ。人質で脅しただけで私が素直に死ぬとでも?」
死神はどうだろうねとはぐらかすだけだが自身があるのだろう。後ろにいる動かない男達も気になるが今は目の前の死神だ
(殺せんせーなら、以前の修学旅行の時みたいに気絶せる事はできる。2人の男との距離、死神の距離、気をつけるべきは死神の手の銃のみ)
そう、雄二と殺せんせーは考えていた。
だが、雄二達が来たのは確かに予想外だったが予想外は死神だけでなく、雄二達もだった。プシュっと小さな音がした
「なっ⁉︎」
殺せんせーの触手のひとつが、とても小さいがダメージを負いバランスを崩す。撃った射線には手錠の鎖が外れて片方から出た仕込み銃を撃ったイリーナがいた
それに3人が同様するがまだ終わらない。イリーナは隠し持ったスイッチを押すと殺せんせーの床が抜ける所謂落とし穴だ。
(すぐには飛べない、捕まらなければ!)
すぐに触手を伸ばすが銃で弾かれる。触手が破壊されないという事は実弾だが逆にそれが原因で次の動きを死神は見切る。マッハ20は初速ではできない、せいぜい時速600Kmだ。だが、それを見切るなどそう簡単にはいかないできているこの状況がいかに恐ろしいかなどいうまでもない
あっという間に殺せんせーは生徒達が閉じ込められた牢屋に落ちていった
「あっけなかったな」
死神は幾つものプランを用意していた。3人がここに来てもまるであせらず、すぐに新しい作戦を使う。そして普通は不可能に近い作戦すら、その人間離れした能力と技術で成功させる。それを抜きにしても、意外とあっさり殺せんせーを捕獲したのはつまらないようだ
「生徒達人質に使うまでもなかったな。こうなるともう確定だ。お別れの挨拶を言いに行こう。
死神とはまた別の気持ち悪さの2人の男を横に死神の後を烏間と雄二は追う。いくつか階段を降りて行くと広い空間の一部は檻に挟まれて牢屋となっている。そこにクラスの皆がいた
「無事……ってわけでもなさそうだな。殺せんせーと一緒に閉じ込めて、どうするつもりだ神擬き」
「…死神だよ。ここは、殺せんせーが最後を迎える場所さ」
「広々とした横長の空間、少しの腐臭、水が乾いたような跡……まさか」
死神はへぇと雄二の洞察力に関心したような反応をみせる
「ご明察。ここは洪水対策で国が造った地下放水路さ。密かに僕のアジトと繋いでおいた。地上にある操作室から指示をだせば、近くの川から毎秒200tの水がこの水路に流れこむ」
弱点の水によって殺せんせーは身動きが取れなくなり、水圧によって檻に押しつけられる。当然檻は対先生物質が含まれている。生徒が逃げれないなら鉄のような金属を混ぜているのだろう。あとはところてんのようにバラバラになる。だが
「待て…生徒ごと殺す気か⁉︎」
今檻には生徒達がいるそんなことをすれば生徒も巻き添えになる。だが死神は「当然さ」と当たり前のように言う
「今さら待てない。それに、生徒と一緒に詰め込んだのも計画のうちだ乱暴に脱出しようとすればひ弱な子供がまきぞえになる」
「おい、操作室って言ったな?流石にそこにいるのは民間人だろ?」
「そんなの占拠すればいいだけさ」
皆殺しにする。言葉が無くともすぐにわかった。
「あぁ、外部と連絡はここではできないけどできてもしない方がいい。彼らを殺されたくなければね」
舌打ちをして雄二は死神を力なく睨む。
「イリーナ‼︎おまえそれを知った上で…」
「プロとして」
烏間の言葉を遮り、イリーナは告げる
「結果優先で動いただけよ。あんたの望む通りでしょ」
「…プロってのは目的の為なら罪のない一般人も殺すってか?被害は最小限にしてこそプロじゃねーのか?」
雄二の言葉に死神はクスクスと笑う
「随分と甘い考えだね。君もあのクラスで過ごして緩くなったのかな?」
ぎりぃと歯が軋む。
「ご心配は無用ですよ風見君。この対先生物質と金属を組み合わせたこの檻…非常に厄介ですが、ついに私の肉体はこれを克服したのです」
表情こそ崩さないが死神に警戒が走る
「初めて見せますよ…私のとっておきの体内器官を‼︎」
何をするのだっという警戒はあっさり終わる。
「…先生、犬の真似か?」
檻を出した舌でぺろぺろと舐めだす。ジュワァァと溶ける音がするがあまりにも小さな音。
「いや、確かに殺せんせーのベロ初めて見たけど‼︎」
「消化液でコーティングした舌ですこんな檻なら半日で溶かせます」
「「「「「いや遅いわ‼︎」」」」」
1ヶ所溶かすのにどれだけかけるのかもわからない。というか死神の前でそんなことが続くはずもない
「そのぺろぺろ続けたら全員の首輪を爆破してくから」
「えぇっ!そんあァ‼︎」
当たり前である
「さて、急ごう。他にどんな能力があるかわからないし、モタモタして生徒の怪我を考慮せず動かれてもいけない」
制御室を占拠するためイリーナと移動しようとする死神を、烏間が肩を掴み止める
「なんだいこの手は?日本政府は僕の暗殺を止めるのかい?あっちは大人しいのにね…いや違うか。手を出さないフリをして、僕の移動を防ぐため扉の前に立っているのか」
「………」
雄二とて動いて止めたいがわかりやすい形ではできない。烏間が止めると信じての行動だ
「確かに多少手荒なのは認めるけど、少数の犠牲で地球を救える最大のチャンスだそれをみすみす逃せって言うのかな?それに本来は君達2人も倒して人質に加える予定だった。君達じゃこの僕を止められないよ」
雄二には今、選択権がない。この場で死神を止める権利を持っているのは烏間だ。生徒の命と地球の存亡、天秤にかけてその判断をくだす。政府はそれについて明確に答えを出していない。ハッキリと言えばどこかで問題が発生した際、隠蔽できなかった際、それらの問題があるからだ。
自分達の手は汚したくない、汚いものを見せない、持っていないと見栄を貼る。だからこそ、
「日本政府の見解を伝える」
この場で烏間が出した判断が全て。烏間は手を離す
ゴッと鈍い音がし、烏間の裏拳が死神の頭にはいる。受けたダメージを相殺するため咄嗟に下がる。視線を崩さないでズザザと下がり、烏間を見る
「捕まった27人、その命は地球よりも重いそれでも彼等ごと殺すなら、俺が止める」
「…ふ。なら、俺も参加するぞ烏間。正直言ってこいつは1発くらいは殴りたかった」
烏間は上着をとり、雄二は制服を脱ぎ捨てる。その下には超体育着を装備済みだ。
「あと、こいつらもなぁ‼︎」
音もなく近づいて来た先程の2人の男、ⅠとⅡを回し蹴りからの鉄拳で左右に吹っ飛ばす。
(!効いてないのか……いや、こいつらまさか…痛覚がないのか)
無表情のまま、2人の男は雄二を見る。烏間は死神を、雄二はⅠとⅡを見据える。拮抗した状態は
「「⁉︎」」
ヌッと風のように死神が動き後に続くように2人がついていくことで切られた
「操作室だ!」
「追いかけるぞ風見君!」
「烏間先生、風見君、トランシーバーをオンにして!」
殺せんせーの言葉を聞きつつ上へ追いかけて行く
戦力は未知数それでも、彼らを守る為、烏間と雄二は足を速めた
ちなみに
ⅠとⅡは死神が生徒の元へ移動中にメールを受けて近くで待機してました。内容は『合図と共に部屋の中の扉前にいる男を殺せ』です。
ちなみに2
ⅠとⅡは死神の動きを見るたびにそれをコピーしてだんだん近付いています。あと1ヶ月あればほぼ同じ動きになりますが技術力は盗めないので死神には及びません。また作品内でも語れるかわからないのでここ書きますが長いこと生きれるようにはできてませんから1ヶ月生きるのは多分無理です