IKUSABA投稿。
ただし長い間書いてなかったのでキャラ崩壊と、親指が蜂に刺されてしまってスマホがいじりにくいので誤字脱字が心配。
「ふぅ……」
ヴラド三世に契約破りの短剣を突き刺したことでジャンヌダルク・オルタとの契約を断ち切る。これでヴラド三世はジャンヌダルク・オルタの支配から逃れ、狂化のスキルの影響も無くなるはずだ。それは契約破りの影響で気絶しているヴラド三世が目覚めるまでは判断がつかないが、少なくとも敵対することは無いだろう。
契約破りの短剣が砕け、ヴラド三世の宝具の杭が消滅する。ようやくこれでひと段落ついたと安堵したレインヴェルだったが……
「ーーおいレインヴェル、詳しく聞かせてもらうぞ」
『ーーねぇ、私にも聞かせてくれないかしら?』
「神は死んだ……」
肩を叩きながらいい笑顔を浮かべているアルトリアとモニターに映るオルガマリーの姿を見て絶望した。
「ーーぬぅ……」
「あぁ、目が覚めたか」
ヴラド三世が目を覚ました時に側にいたのは瓦礫に腰を下ろしていたエミヤだった。手に夫婦剣を持って警戒しているが敵意を抱いているようには見えない。それはヴラド三世が敵意を抱いていないから。もし欠片でも敵意を抱いているのなら即座に首を跳ねるつもりだった。
だがヴラド三世は意識をハッキリさせるためになのか顔を振るっているだけで武器である槍を取り出そうともしない。それを見てエミヤも警戒を緩めた。
「余は……」
「貴方が結んでいた龍の魔女との契約はレインヴェルの手によって破棄された。狂化のスキルはどうなっている?」
「……消滅しているようだな」
「それは良かった。これで貴方は吸血鬼では無くなったのだからな」
狂化のスキルの消滅を聞いて、エミヤは警戒を完全に辞めた。狂化のスキルがあれば言動や思考が狂ってマトモに会話をする事も出来なくなるが、無くなったのならその心配は無い。仮にも領主であった彼の事だ、いきなり襲いかかってくるという事も無いだろうとエミヤは考えている。
「吸血鬼か……狂化のスキルがあったからとはいえど、あれ程までに嫌悪していた怪物のように振る舞うとはな……」
「悪いが、懺悔なら他所でやってくれ。私は神父では無いのでね」
エミヤは立ち上がり、ある一角に目を向けた。それに釣られるようにヴラド三世も目を向ける。
そこにはーー
「そら、キリキリ吐け」
「やめてやめてやめてやめて!!それ以上積まれたらマジで足がヤバイから……!!」
『アルトリア、もっと積みましょう』
「そうだな。おら犬、さっさと積め。もしくは犬を食え」
「誰が食うか!!」
地面に正座をして2メートル程膝の上に瓦礫を積まれたレインヴェルと、その前で仁王立ちをしているアルトリアと、アルトリアの指示でレインヴェルの膝に瓦礫を積んでいるクー・フーリンの姿だった。
「なんだあれは……」
「あれか?あれはレインヴェルがやらかしてそれにアルトリアと所長が嫉妬している場面だ。言っておくがあれでもマシになっている方だぞ?さっきまでアルトリアが闇堕ちした聖剣を真名解放しようとしていたからな」
自身が知っている常識とはかけ離れた光景を目にして、ヴラド三世は気絶したくなった。
「あー酷い目にあった……ロマ、一言ぐらいフォローあっても良かったんじゃないか?」
『お馬さんに蹴られたく無いから。それに今ネットアイドルの掲示板に実況書くのに忙しい』
「殺」
『謝』
レインヴェルの殺意をモニター越しに感じたのか、ロマンはキーボードの〝W〟を連打していた指を離して頭を下げた。それを見て溜飲が下がったのか、レインヴェルは美冬の足元に唾を吐き捨てる。
「よし、現状の再確認といこうか」
「ちょっと待てそこのキチガイ、どうして私に向かって唾を吐いた?答えろよ」
「オルタ側のサーヴァントは領主様が抜けたのとアーチャーだったアタランテをアルトリアが倒したんで残りは五騎になったわけだ。これは暫定で、向こうが聖杯使って新しくサーヴァントを召喚するかもしれないから増えると思って欲しい」
「クー・フーリン、ちょっとこいつに向かってゲイボルク使って」
「待って十六夜さん、ちょっとそこまで見たいなノリで三人しかいないマスター殺そうとしないで」
ガン無視された事にキレた美冬がクー・フーリンにレインヴェル抹殺を頼むが黒野の活躍によってそれは阻止される。マスターからの免罪符という事で槍を構えていたクー・フーリンはどこから調達してきたのか知らないが犬の死体を持っていたアルトリアに引き摺られて廃墟の裏に連れて行かれた。
『確か残っているのはジャンヌダルク、ジル・ド・レェ、カーミラ、マルタ、デオン・シュヴァリエだったわよね?』
「救国の聖女に青髭、吸血魔嬢に龍を手懐けた聖女、それに白百合の騎士か……」
『見事にフランスと龍に関わりのある英霊が揃っているわね』
「まぁ、それだけならどうにかなる。最悪各個撃破していけば良かったんだが……最悪なのは向こうがファブニールを呼んでいることだ」
「ファヴニール……あのジークフリートに倒された邪竜のことか!?」
「そうそう、しかも概念的にジークフリートじゃないと傷をつけられないようになってる。オルタに連れられてファヴニールに乗せてもらった時にコッソリと礼装で鱗を引っ掻いたけど傷一つつかなかった」
『何やってるのよ……』
「ドラゴンライダーは男の浪漫」
レインヴェルによってもたらされた情報でジャンヌダルク・オルタの戦力はすべて明かされた。だが、それによって新しい絶望が生まれることになる。サーヴァントだけならレインヴェルが言った通りに各個撃破すればどうにかなるだろうがファヴニールが厄介だった。
ジークフリートによって倒されたファヴニール、その逸話からなのかレインヴェルはファヴニールはジークフリートにしか倒されないという概念が付与されていると読んでいる。それはほぼ正解だろう。何故なら、エミヤの投影された剣を容易く切り裂いた礼装のナイフで傷一つつかなかったのだから。
例え各個撃破に成功したとしても、聖杯を持っているだろうと思われるジャンヌダルク・オルタがファヴニールに護られていればこちらに勝機は無い。そうなった場合に狙うのはファヴニールを掻い潜ってジャンヌダルク・オルタを討つことだがそれを許すほどにジャンヌダルク・オルタは弱く無いし、ファヴニールも甘くは無いだろう。
将棋で言えば、王手をかけることが許されても王将を取れないという状況。勝てないという現状を前にして、レインヴェルたちはーーー
「兎にも角にも、今必要なのはジークフリートだ。ファヴニールがこの特異点にいるのなら関わりのあるジークフリートが召喚されている可能性もあり得る」
『最悪こちらでジークフリートを召喚すればどうにかなるわね……英霊ガチャの準備してくるわ』
「私がバルムンクを投影すれば……」
折れていなかった。それどころかファヴニールを打倒する方法を探している。
絶望がなんだ。人生生きていれば膝を折るような絶望などいつか現れるものだ。そんな絶望を前にして膝を折るような心の弱い者はこの場にはいない。倒せないと分かっているのなら、倒せる手段を探せば良いと前を向いて進むのだ。
彼らの目的は人類史の存続。それを果たす為なら、ファヴニールなどという絶望になど負けていられない。
「さて、俺たちの方針は決まったけど領主様はどうする?」
大まかにこれからの方針を定めたレインヴェルは項垂れていたヴラド三世に声をかけた。契約をしていないので魔力が不足しているということもあるが、自身が嫌っていた吸血行為をしていたことに心を痛めていたヴラド三世は憔悴していた。レインヴェルの声に反応して上げた顔には覇気が宿っていない。
「余は……」
「吸血鬼だと思われたままで良いのかい?血を啜る下賤だと見縊られたままで良いのかい?」
「ーーー違う!!余は…余は……吸血鬼などでは無い!!」
「ーーーあぁ、うん。それでこそ俺が尊敬している領主様だよ。オスマンに侵略されていたルーマニアを守り続けた、誇り高い領主様だ」
ヴラド三世の悲痛な叫びを聞いたレインヴェルは満足気に頷き、手を差し伸べた。
「汚名を雪たいのなら、手を取れよ。こびり付いたイメージを払拭するのはすっごい難しい事だ。それでも、そうだとしても、俺は貴方ならきっと手を取ってくれると信じている。何故なら、貴方は俺が尊敬している英雄なんだから」
そう言うレインヴェルの目に映っているのは吸血鬼などではなく、自国を守る為に奮起した誇り高き武人だった。ヴラド三世は武器である槍を取り出し、膝をついて礼を取った。
「ーーー告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝が槍に」
「ーーー誓おう。我が名はヴラド三世、ルーマニアの王にして護国の将。我が槍を、我を人だと信ずる者の為に振るう事を」
ここに、レインヴェルとヴラド三世の間に契約は結ばれた。
レインヴェルは、尊敬するヴラド三世がその汚名を雪ぐ為に
ヴラド三世は、自分の事を
護国の将は完成された人間を目指す魔術師の手を取った。
レインヴェル折檻→クー・フーリン折檻→現状把握→領主様追加の流れ。
アポの領主様はカッコよくて好き、エクストラのぶっ飛び具合も好きだけど。