IKUSABA育ちのIKUSABA人   作:鎌鼬

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特異点F、オルレアンが終わるまではこちらをメインで書きます。




第9話

 

 

エミヤの固有結界が展開された頃、アルトリアは大聖杯がある大洞窟の入り口の前で目を閉じて一人で立っていた。アルトリアが黒野達に着いていけば勝率が上がっていたかもしれないがレインヴェルから一つの可能性を提示された為にこうしている。それはアルトリアも考えていたことで、火力不足が心配されていた黒野達だがそれにはすでに手を打っているので問題無いだろう。

 

 

「ーーー来たか」

 

 

アルトリアが目を開き、地面に刺していた剣を抜く。視界に入っているのは大災害で燃え盛る街並み、たがアルトリアのスキル【直感】はしかと敵の存在を捉えていた。

 

 

「■■■■■■■■■ーーー!!!!」

 

 

もはや声でも無い轟音を上げながら現れたのは黒く染まった2メートルを超える巨大と石でできた巨大な斧を片手で持ったサーヴァント、バーサーカー。キャスターの話が本当ならあのバーサーカーの正体はギリシャ神話に登場する大英雄ヘラクレス。

 

 

己の犯した罪を償う為に与えられた十二の試練を乗り越え、死後にその功績から神々の末席に座ることを許された半神半人の武人。ヘラクレスの存在こそがレインヴェルがアルトリアをここに残らせた理由だった。

 

 

アーチャーと戦っているレインヴェル、大聖杯を守護しているセイバーと戦っているであろう黒野達。どちらも死闘となっていることは間違い無く、そんな中でヘラクレスに乱入されては堪ったものではないとレインヴェルは考えていたのだ。そしてそれを防ぐ為にアルトリアをここに残した。

 

 

現れたヘラクレスが自身を認識するまでにアルトリアが踏み込む。レインヴェルから出し惜しみするなと言われているが供給される魔力は有限、その上にレインヴェルは現在進行形でアーチャーと戦っている。魔力の使いどころを考えなければ二人とも共倒れになることは目に見えて分かっている。

 

 

間合いに入り込んだ瞬間にヘラクレスがアルトリアを見つけ、同時に敵だと認識する。その一瞬の隙を突き、アルトリアは迷うこと無くヘラクレスの首に剣を滑らせる。ヘラクレスの耐久はAに対してアルトリアの筋力もA、堅い肉の感触があったものの斬れないほどのものではない。

 

 

地面に落ちるヘラクレスの頭部。ヘラクレスの身体は頭を無くしたことで力を無くし、地面に崩れ落ちるーーーことは無かった。傷口から蒸気が上がり、剥き出しになった新しい頭が再生されつつある。

 

 

「成る程、それが十二の試練を乗り越えた証という訳か」

 

 

半信半疑であったがキャスターの言っていた通りにヘラクレスは十二回殺さねば死なないらしい。ヘラクレスが頭部を無くしても死なないカラクリをすでにレインヴェルは解き明かしてアルトリアに教えてある。

 

 

ヘラクレスは己の犯した罪を償う為に十二の試練を乗り越えた。そしてその功績を神々から認められて不死性を得ている。サーヴァントとして召喚されたならヘラクレスは不死では無くなっている。だがヘラクレスの代名詞とも言える十二の試練が宝具に絡んでいない訳がない。そうして導き出された答えは十一の命のストックによる擬似的な不死性。十二度殺さねば死なないという宝具【十二の試練(ゴッド・ハンド)】これが雑多なサーヴァントならば大した脅威にはならなかっただろうが相手はギリシャの大英雄ヘラクレス、バーサーカーのクラスで召喚されたことで付与されたクラススキル【狂化】の影響で理性こそ無くしているもののステータスの殆どがAということも兼ねあって正しく化け物としか呼べない存在になっている。

 

 

余談ではあるが、もしヘラクレスがアーチャーのクラスで召喚されていたのならステータスは下がるものの十二の試練の最中で得てヒュドラを殺した弓矢【射殺す百頭(ナインライブズ)】を宝具として持っていた。自動追尾の幻想種殺しの射撃を放つという性能の【射殺す百頭(ナインライブズ)】を殺されても即座に蘇生する【十二の試練(ゴッド・ハンド)】で蘇りながら放つという悪夢じみた事態になっていた。

 

 

だがここのヘラクレスはバーサーカー、【射殺す百頭(ナインライブズ)】こそは持っていないものの【十二の試練(ゴッド・ハンド)】による擬似的な不死性は健在。助けなどあるはずも無く絶望的な状況だというのにーーーアルトリアは笑っていた。

 

 

「成る程成る程、これだけの相手なら私に任せる訳だ……フフッ」

 

 

アルトリアは狂って笑っているのではない、()()()()()()()()()()()

 

 

身体が震えている。だがそれはヘラクレスと一人で対峙している恐怖からでは無く、レインヴェルに()()()()()()という歓喜から来る震え。

 

 

アルトリアーーーアーサー・ペンドラゴンはブリテンを治めていた王である。選定の剣を抜いたその日からアルトリアは王としての道を歩んできた。その最中で頼られたことは当然ある。だがそれは王である【アーサー・ペンドラゴン】を頼っているのであって小娘であった【アルトリア】を頼っている訳ではない。その事に関しては理解はあったつもりだ。あの時のブリテンは疲弊していて、導いてくれる王を求めていたのだから必要なのは【アルトリア】ではなく【アーサー・ペンドラゴン】なのだと。まぁ途中で溜まりに溜まったストレスが爆発して一時国が機能しなくなったことがあったのだがそのお陰で王も人の子であったと円卓の騎士たちから理解されたので良しとしよう。

 

 

話を戻す。アルトリアは【アーサー・ペンドラゴン】として頼られる事はあったが【アルトリア】として頼られた事は生前に一度も無かった。誰もが【アルトリア】では無く【アーサー・ペンドラゴン】としてしか見ていない。だが、レインヴェルは【アーサー・ペンドラゴン】では無く【アルトリア】として頼ってくれたのだ。

 

 

レインヴェルはただ目の前にいるアルトリアをアルトリアとして扱っていただけだったが、たったそれだけの事がアルトリアにとっては何よりも嬉しかった。

 

 

故に、アルトリアは喜んでギリシャの大英雄ヘラクレスと戦う。ブリテンを治めた騎士王の【アーサー・ペンドラゴン】では無く、ただの女である【アルトリア】として。王では無く、一個人として自分を見てくれたレインヴェルの為に。

 

 

「■■■■■■■■■■!!!!」

 

 

頭部の再生を終えたはヘラクレスが吠え、石斧を振るった。爆音に近い咆哮で鼓膜が強く叩かれて痺れ、ヘラクレスの一歩で大地が震える。シールダーであるマシュだとしても盾ごと叩き潰されるだろうヘラクレスの一撃をアルトリアは半歩下がり、石斧に剣を当ててヘラクレスの力で軌道を逸らせることで容易く受け流す。

 

 

そして目の前にあるガラ空きになっているヘラクレスの脇腹目掛けて一閃。これでヘラクレスに浅くは無い傷を負わせて動きを鈍らせるつもりだったーーーが、剣から肉を切った手応えが無かった。アルトリアの剣はヘラクレスの脇腹に痕を付けるだけ、薄皮一枚すら斬れていない。

 

 

「ただの蘇生では無い?……死因となった攻撃に耐性を付けたのか?」

 

 

すぐ様に魔力を放出させてその場を離脱、その直後にいた場所に落ちてきた石斧の一撃をかわす。

 

 

ヘラクレスの宝具である【十二の試練(ゴッド・ハンド)】はただ十一の命のストックを与えるだけでは無い。ランクB以下の攻撃を無効化し、更に死因となった攻撃に対する耐性をヘラクレスに付与させる。例え世界を滅ぼす方法であってもランクB以下であるならヘラクレスには効かず、更に完全に殺し切るには十二通りの手段で殺さねばならない。

 

 

絶望的、そうとしか思えない状況をアルトリアはーーー

 

 

 

「ーーーハッ、笑わせるなよヘラクレス」

 

 

鼻で笑った。横薙ぎで放たれた石斧の一撃を魔力放出を絡めた一撃で弾き返す。そして弾かれた事で体制を崩したヘラクレスの頭を魔力を放出させる事で加速させた剣で()()()()()

 

 

刀身が分厚く、敵を鎧ごと押して斬る事を目的として作られている西洋剣だからこそ出来る兜割り。斬撃では無く打撃に近い一撃を受けてヘラクレスは二つ目の命を失う。

 

 

「十二の命?死因となった攻撃に対する耐性?あぁ凄いな、だからどうした?そんなもの私がブリテンを治めていた頃の敵であるピクト人に比べれば可愛い方だ」

 

 

アルトリアの脳裏に浮かんだのはブリテンを襲っていた蛮族であるピクト人。円卓の騎士たちと共に聖剣で薙ぎ払っても数日後には何事も無かったかのように襲ってくる連中に比べれば十二回殺せば死ぬヘラクレスなどまだ可愛い方だった。

 

 

「■■■■■■■■■■!!!!」

 

 

狂化しているので伝わるはずが無いのだが自分が二度も殺された事に対する怒りからか、ヘラクレスは石斧を地面にへと叩きつけた。そこから生まれた衝撃波が指向性を持ってアルトリアにへと向かう。

 

 

「温い!!!!」

 

 

それをアルトリアは容易く斬り払う。そして眼前にまで接近していたヘラクレスの石斧の一撃を受けた。隙を作るために衝撃波を出した訳ではなく、ただ本能に従ったから出来た隙。理性を無くしてもヘラクレスの武勇は健在だった。

 

 

受けごと叩き潰すつもりで放たれた一撃だったがヘラクレスは違和感を感じた。もしもヘラクレスが理性を持っていたらその違和感の正体に気づいていただろう。

 

 

ヘラクレスの感じた違和感の正体はーーー石斧に感じた手応えが軽過ぎたこと。

 

 

そして離れた場所から感じられる魔力の昂りによってヘラクレスは無傷のアルトリアの存在を知ることになる。

 

 

先の一撃、アルトリアなら躱そうと思えば躱せていた物だった。だがヘラクレスを殺し切る為にワザとその一撃を受けたのだ。当たる直前に剣を盾にし、石斧の振られる方向に合わせて飛んでいたのでダメージらしいダメージなど受けていない。アルトリアが求めていたのはヘラクレスとの距離だった。

 

 

距離にして30メートル。ヘラクレスの敏捷を持ってしても一瞬では詰めることが出来ない間。それこそが、ヘラクレスを殺す為に求めていた距離。

 

 

アルトリアの剣が灼熱する。人造では無く星によって鍛えられた神造の剣は本来なら目も眩むほどの光を放つ物。だがその剣から放たれるのは光を飲み込む闇だった。

 

 

「ーーー卑王鉄槌、極光は反転する」

「■■■■■■■■!!!!」

 

 

その剣の闇を見てヘラクレスは全力でアルトリアに向かって行った。まともなサーヴァントならあれを見て逃げようと考えるだろうが理性の無いヘラクレスには逃げるという考えは存在しない。

 

 

「光を飲めーーー」

 

 

そしてその判断が、ヘラクレスの命を奪う。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガ)ァァァァァァァァァァン!!!!」

 

 

アルトリアの宝具の真名が解放され、振り下ろされるのと同時に剣から黒い極光が放たれた。黒い極光はヘラクレスを飲み込み、【十二の試練(ゴッド・ハンド)】の護りを貫いてヘラクレスの命を奪った。

 

 

黒い極光が通り過ぎた後に残っているのはヘラクレスの下半身のみ。上半身は消え去っている。そして蒸気が上がりヘラクレスの再生が始まったが今の一撃でヘラクレスの命は()()()()()()

 

 

宝具の真名解放とはいえどたった一度で八度殺された。ヘラクレスはそのことを理解していない。蘇生が終わり、アルトリアを殺そうと動き出した時に見たのはーーー眼前で黒い極光の剣を振りかざしているアルトリアの姿だった。

 

 

「ーーー耐えられるか?耐えれぬだろう?その宝具はあくまで耐性を付けるだけなのだからな」

 

 

直感のスキルでアルトリアは【十二の試練(ゴッド・ハンド)】の弱点ともいえる物を見抜いていた。【十二の試練(ゴッド・ハンド)】は死因となった攻撃に対する耐性を付与する。だがそれはあくまで耐性だけであって無効化では無いのだ。流石に何度も繰り返して同じ死因を続けさせればいずれは無効化とも呼べるレベルの耐性を得ることはできるだろう。だがアルトリアの宝具は対城宝具、複数回死んである程度の耐性を得ることば出来たが完全に無効化出来る程の耐性では無い。

 

 

「ーーー約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガ)ァァァァァァァァァァン!!!!」

 

 

続け様に放たれた二度目の真名解放の一撃を受けて、ヘラクレスは三度死にすべての命のストックを使い果たした。

 

 

 





波旬お兄さんは弟さんを連れて歴代覇道神たちと食事に行ったのでしばらくお休みです。

アルトリアVSバサクレス、決まり手は連続真名解放によるゴリ押し。

Wikiを見たところ【十二の試練】で得られるのは死因に対する耐性だけで無効化で無いのでこんな感じの決着になりました。

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