トウコさんはやっぱりトウコさん!
以上!
「プルリル![みずのはどう]!」
「ミジュマル![みずでっぽう]!」
「プ~ル~!」
「ミ~ジュ!」
ビルの中は火と煙に包まれていた……とりあえずは、前に進むために障害となる火を消していく
「トウコさん、後何階ぐらいでしょうか」
「……わかんないわ、とにかく上よ上!」
そりゃそうですけど……僕はいいですよ?でもトウコさん、きつくないですか?
「ハァ……ハァ……ぐっ!」
……きつそう、ですね……だから一人でいいと言ったのに……まぁそこがトウコさんのいいところなんですけどね?
『……だから…………でしょ?』
!?い、今の声は……!
「レンゲさんの声です!」
「レンゲ……って黒マント?放っとけば?」
いやでも……
『……無関係の…………のか!?』
……ちょっと待ってください……今の声は……
「……トウコさん、大変です……もう一人、知り合いがいました……」
「そ、そうなの?私には全然聞こえないからわかんないけど……」
もうね?知り合いというか……腐れ縁というか……
「チェレンくん、ですねこの声……」
「……マジ?」
そうして、声のするほうから、凄まじい爆音が鳴り響いた……
「チェレンくん!……っ!?」
「……うぅ……」
「んん?あぁヤナ君!それにトウコちゃんも!君たちもきたんだ!」
何階かは定かではないが、階段を上った先の一番奥の部屋……そこには、ウルガモス従えるレンゲさんの姿と、ボロボロ体で床に突っ伏しているチェレンくんとツタージャの姿があった……
「ヤナ……トウコ……ご、めん……止められなかった……」
「止める?いやそんなことよりその傷は!?」
全身いたるところにやけどの跡……どうやったらこんな風になるんですか……!
「……ヤナ……よく聴いてくれ……このビルの有様はこの女の仕業だ……」
……なんとなく予想はできていましたけど……なぜでしょう、理由がわからない……
「そう!まぁもういらないかなって!立派なアジトが別にあるしね~♪」
もういらない?アジトは別にある?……ダメだ、頭が回らない……煙を吸いすぎたかな……
「で!いざ壊そうと思ったんだけど……チェレンボーイが邪魔してきてさ……」
チェレンくんが?
「……このビルには……まだたくさんの人間と、奪われたポケモンがいるんだ……!」
「なっ!?」
「?何か問題でもあるの?最低な人間と弱いポケモンしか、このビルにはいないんだから別にいいでしょ?」
い……!
「いいわけないでしょう!!ポケモンになんの罪があるっていうんですか!!?」
「……罪?ないよね?弱いことが罪なんて、チープな悪役のどうでもいい持論だけど、私はそんな風には考えてないよ?」
そこで、レンゲさんは一度言葉を切る……そして続ける……
「結局ね?罪がないから死なないなんて、おかしな話だと思わない?どんな善人でも死ぬときは死ぬのよ、奪われたポケモンやあのゴミクズたちは……今がその時なんだよ」
「ふ、ふざけるのも大概にしてください!!貴女は何様ですか!!?}
なぜか哀愁を漂わせるレンゲさん……彼女は言葉を重ねる……
「……死にたくて死ぬ奴なんて、本当はどこにも居ないの……事故、自殺、他殺、病死、溺死、餓死、寿命……理由は様々だけど、どれ一つ自分が望んだ結果ではない、でも死ぬ、あっさりと死ぬのよ」
……確かに、僕だって望んで転生したわけじゃない……よりにもよって神様のミス殺された……それでも……!
「それでも!他の命を奪っていい理由にはならない!!アナタにそんな権利はない!!」
「……そうだね……でもね?私にしかできないことなの、私がやらないといけないの……もう邪魔しないでね?」
今までの比ではない殺気が、僕達をおそう……
「……みんな、出てきてください」
「モノ……?」「プル~!」「モグゥ!!」「ディぁ~♪」
モンスターボールを全て出し、僕の仲間が飛び出す……
「みんな、よく聴いてください……これからの指示は絶対に守って欲しい……いいですね?」
皆が皆、しっかりと頷く……うん、皆素直で……本当にいい子ですね……
「モノズ、モグリュー……君たちは捕まっているポケモンを助けに行ってください、そして、安全に外に脱出させるんです、できますね?」
「モノ……!」
「モグゥゥゥゥウ!!」
二体が一鳴きし、すぐさま行動に移る……頼みますよ……
「トウコさん、チェレンくんを連れて逃げてください……プルリル、トウコさんとのサポートをお願いします、チェレンくんを無事に逃がしてください」
「プル~!」
「なっ!?わ、私は残るわよ!アンタ一人でどうにかできるわけないでしょ!!?」
……トウコさん、貴女まで残ったら誰がチェレンくんを外に出すんですか……
「……やめろ……ヤナ……勝てるわけ、ない……」
「大丈夫ですよ、ちょっと考えがありまして……多分、なんとかなるはずです」
「……絶対に戻って来なさいよ?」
「…………はい、約束します……プルリル、頼みますよ」
その会話を最後に、トウコさんたちは部屋を出て行った……そうして、残ったのは僕とドレディア、レンゲさんとウルガモスになった……
「ディア!」
戦闘体勢になるドレディア……出鼻を挫くようで悪いんですが……
「ドレディア……君は今すぐポケモンセンターに行ってジョーイさんを呼んできてください」
「ディ!?ディア!!?」
驚愕するドレディア……説明が必要ですかね……
「傷ついた人やポケモンを、全部ポケモンセンターに運ぶのは無理です……いっている意味はわかりますね?」
「ディァ……ディ……」フルフル
……どうしてそこで首を横に振るんですか……
「ドレディア、心配しているのかも知れませんが、大丈夫です!僕には作戦があります!」
「ディ……?」
「はい、だから早く……君にしか出来ないんです」
「……ディア!」
そうして、急いで部屋を出た……さて、と……
「お待たせしました、始めましょうか?」
「……よくやるよね、そんなに死にたいの?」
……あぁ懐かしいな、このプレッシャー……本当の死が迫るこの感じ……皆元気かな?
「作戦なんて大嘘、君の目的はただの時間稼ぎ……別に逃げたければ逃げればいいのに、よくもまぁそこまでできるね?」
僕まで逃げたら、全員が逃げ切る前にドカン!でしょう?
「……レンゲさん、自分より大切な人っていますか?」
「いる」
僕の質問にすぐさま返答するレンゲさん……その答えは、僕の予期しない物だった……
「大好きだった、ううん、今でも大好き、私がどんなにアピールしても気付いてくれない鈍チンだったけど、こんな私と一緒に居てくれたあの人が好き、大好き!……だから……!」
「……だったら、僕の気持ちも分かってくれるんじゃないですか?────」
「───オマエトイッショニスルナ」
刹那、部屋中に熱気が篭る……来ますね……
「なにが僕の気持ちも分かってくれるだ!!オマエの友情と私の愛情をイッショニスルナァァァァァァァァア!!!!」
ウルガモスの六枚の羽から超高温の熱風が吹き荒れる……
「ぐっ!?うぅ……!!」
顔を守るように腕を前にする、腕が焼ける……足が焼ける……体が焼ける……臭いなぁ……肉が焼ける臭い……
「私はあの人に会いたいのよ!!あの人は私と一緒に居るべきなのよ!!誰にも渡すもんか!!神にだって渡したりしない!!絶対に私の物にするんだ!!だからヤナ君!!今は君が邪魔なのよ!!」
なお勢いは衰えない……レンゲさんの怒りの炎が、僕の体を破壊する……
「あぐっ!?……っく!」
しかし倒れない、倒れちゃいけない、倒れることは僕の敗北……死んでも負けない、負けられない!
「死ねぇ!死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
炎はさらに強くなる……大丈夫……僕、体力には自信あるんですよ?
「……ッチ!!ウルガモス![ほのおのうず]!」
熱風は治まったが……今度は僕を中心としたサークル状の炎に飲み込まれる……
「うぐ……!?あぁぁぁぁぁ……!!」
もう半分ぐらい意識はなかった……でも倒れることはない……
「……いい根性してるね?チェレンはこれで動かなくなったんだけどなぁ」
……皆、無事に逃げられたでしょうか……モノズ、モグリュー、プルリル、ドレディア……大丈夫かな……?
「……ハハ……ハ……」
おかしいですね……死にそうなのに……他人のことばかり……
「……もうちょっと……利口に、いきる、べきでした……ね」
……いや、これでいいんだ……僕がバカなおかげで……皆が助かる……
「……ハハ、アハハ……」
本当にバカですね……僕は……この旅で何も変われませんでしたか……まぁ、それならそれでもいいか……
「…………少しは……役に立てたかな……?」バタッ
もう立ってもいられなかった……後はもう、焼き殺されるのを待つだけの無力な肉の塊……
「……さぁレンゲさん……僕はもう鼻くそをほじるほどの体力も残っていません……好きにしてください……」
「……君にいくつか質問をするよ、ちゃんと答えられたら……助けてあげる」
……いつかの『楽しい催し物』と言うやつですかね……まぁ、いいか……
「質問、見ず知らず他人に命を張る理由は?」
……そうですね…………これ言ったら殺されちゃうかもしれませんね……まぁいっか、僕の本心なんだし……
「……僕は、助けてもらえなかったからです……」
「…………」
「僕が困ったていた時、死にたくなるくらい苦しんでいたとき、胸が裂けそうなほど悲しかったとき……誰も僕を助けてくれなかった……」
僕という人間を理解してくれる人が……前世では、ただの一人もいなかった……
「誰も助けてくれない……どうしてだろう、僕は考えました……子供っぽい結論ですが、情けは人のためならず、ってことです……」
「…………自分のために、人助けをしていたわけね?」
「……昔はそうでした……今ではもう癖になってしまいましたけどね……」
僕は所詮、偽善者というやつなのでしょうね……
「……合格」
「……は?」
ご、合格……?なんの話ですか……?
「ヤナ君、逃げていいよ……ってその体じゃ動けないか……」
え、ちょ、え?
「こ、殺さないんですか?」
「え?殺して欲しいの?」
滅相もございません……
「君はちゃんと答えたから……助けてあげるね?」
そういって、レンゲさんは僕を担ぎあげるのだった……
三十一回終了です!
ゲーム中に、「偽善でもいい、だって人のために善いことをしているその行為は善なんだから」みたいなことを言う人が居たと思います……
僕もそう思いますね、どういう気持ちであろうとも、助けられた人は、きっと感謝していますよね?
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!