レンゲさんTUEEEEEE!
以上!
…………?……ここは……?
『────いい加減にしろ!』
誰かの怒鳴り声がする……誰の……?
『……いい加減にするのはそっち』
今度は諭すような落ち着いた声……別の誰か……じゃあ誰ですか……?
『この人間には我らの主としての素質はない!おまえにだってわかるはずだ!』
『わからないね、私と貴女は似ているようで正反対なんだから』
やがて、ぼんやりとした影のようなものが浮かび上がる……影は二つ……
『自分の姿を取り戻せなくなるぞ!?それだけじゃない!本来の力だって……!』
『……イッシュを滅ぼした伝説のドラゴンの力、でしょ?いらないよそんなの、そんな姿も、力も、私はいらない』
『……我らは求められているのだ、素質を持つものに……』
『でも私は求めてない、そんな自己中なやつらに良いように使われるなんてまっぴらよ』
……なんの話をしているんでしょう……そもそも、これは夢なんでしょうか……
『……我々は人間と共存の道を選んだ、ならばそれも我らの役割だ』
『そんなのつまんない、たとえ私に力がなくても、この人間は私を退屈させない……それに共存の道っていうなら、別に私がこの子と一緒にいてもいいでしょ?』
二つの影が、一際輝きだす……それに引きかえ、僕の意識は霞みはじめる……
『何故だ!?この愚かで!浅はかで!無力で!大きな夢があるわけでもなく!今この瞬間を生きるのに精一杯の幼き人間の子供に!おまえは何を感じ取ったというのだ!?』
『そんなの決まってるでしょ?
運命だよ────』
ガブッ!
「────っっっ!!?いったぁぁぁぁあ!!?」
「モノ……」ガブガブ
僕の朝は、痛みによって引き起こされる叫びによって始まる……誤解の無いように言っておきますが、毎日ではないです
「モ、モノズ、刺激的なスタートですね」
「モノ、モノ」チョイチョイ
モノズが時計を小突く、現在の時刻は10時15分、お日様昇りきっており、窓からはサラリーマンやOLの人などが忙しなく歩いている……完全に寝坊ですね
「あはは……いつもありがと、モノズ」
「モノ……」ヒラヒラ
今度は机の上にあった紙をこちらに差し出す……ん?置手紙?
『 ヤナへ
今日のポケモンバトルだけど、ヤナが起きるの遅いから先にいってるね!
約束どおり、10時に中央広場だから!お・く・れ・ず・に・く・る・こ・と!
トウコより 』
再び時計の確認……長い針が、4を超えた……
「……お、落ち着きましょう、うん、まだ慌てるような場面じゃありません」
そう、こういうときにこそ、冷静かつ慎重な行動をとる必要があります、平常さを欠いてはなりません……
「……まずは朝食ですね」
「モ、モノ?」
一日の最初は朝ごはんからって誰かが言っていました……誰だったかな……?
『兄様、一日の最初は朝ごはんからですよ?』
あぁ、歩美ですか……歩美や優希は、僕が死んだこと、知ってるのかな?僕がいなくても……元気に過ごしてくれれば……
「……さ!モノズ!ご飯を食べに行きましょう!」
「……モノ」
少し感傷に浸りながら、僕たちはフードコーナーへと向かった……
「なんなのよアンタ!」
貴女はどうしてここにいるんですか……トウコさん……
「なんなの、とはなんですか?」
そして、そのトウコさんと対峙しているのが、見た目12歳ほど金髪の女の子、ワンピースを着ており、なぜか裸足……知り合いでしょうか?
「助けてあげたのにお礼もできないわけ!?」
「お願いしましたか?助けてくださいって」
またキャラの濃そうなのがでてきましたね……
「どうかしたんですか?トウコさん」
「あ、アンタ今頃起きてきたの!?もう30分も過ぎてるじゃない!」
あ……つい15分ほど前のことをもう忘れてました……
「ま、まぁまぁ、それでどうしたんですか?」
「私がちょっと厳ついおじさんに絡まれていたのをお節介にも助けてくれたんですよ」
先ほどのキャラの濃そうな少女が答える
……ん?
「……いいことですよね?」
「はい、それ自体は大変素晴らしいことだと思います、しかし、この人はそれに対してお礼を求めました、私は幻滅しています」
やれやれといった感じで、銀髪の少女は答える……
ん~……なんていうか……
「トウコさん、大人気なくないですか?」
「うっ」
こんな年端もいかない女の子にそんなことで怒鳴りつけるなんて……傍からみたらさっきの厳ついおじさん(?)と変わりませんよ?
「そ、そりゃあそうかもしれないけど……!」
「ほら、もう行きますよ?君も、時間取らせちゃってごめんね?」
「……いえ、こちらこそすいませんでした」
ふむ……中々どうして、できた子じゃないですか
「むぅ……なんか納得いかないけど……いいわ!それよりヤナ!早くバトルしなさいよ!」
「わ、わかりましたから、っていうかここからならセンターの施設使った方が早いですよ?」
あ、そっか、といって、トウコさんはジョーイさんのところへ許可を取りに走っていった……
「……ヤナ?あなたの名前ですか?」
どうやらまだ居たようで、銀髪の少女は僕に話しかけてきた
「ん?あぁうん、そうだよ、僕はヤナっていうんだ、カノコタウンのヤナ、君の名前は?」
「……洋食よりも和食派、特に煮物が好き?」
無視ですか、しかもなんというピンポイントな質問、まぁ当たりですけど……
「……好きな言葉は【臆するな、逃げろ】?」
なんともまぁひどい言われよう、まぁ当たりですけど……
「……あなたの秘密は、家族に内緒でこっそり猫を飼っていたこと?」
猫かわいいですよねぇ、三毛猫だったんですけどねぇ……って!
「なんでそんなに僕のこと知ってるんですか!!?」
何なんですかこの子は!?初対面とは思えないほど僕のことを知っている、いやそういう問題じゃない!?
「どうして君が猫のことを知っているんですか!?」
僕は確かに猫を、ミオを飼っていた……でもそれはこの世界のことではない!僕が死んだ前世での話のはず!
それにさっきから感じていた違和感、この子は本当に12歳なのか?発言にしても態度にしても、とても子供のそれとは思えない……!
「君は……何者なんですか?」
「……最後の質問です、答えられたら、私が何者なのかという質問にも答えましょう」
最後の質問……この得体の知れない人物から、いったい何を問われるというのですか……
「一日の最初は……なぁ~んだ?」
ボクハコタエルコトガデキナイ、ソノシツモンニハコタエチャイケナイ
「…………」
「……答えない、それがあなたの答えなんですね?」
空気が固まる、心臓がうるさい、久しぶりの、懐かしの、二度と味わいたくなかった、押しつぶさんとする圧倒的重圧……
「……そうですか、やっぱりそうなんですか……」
ヒタ……ヒタ……
ゆっくりとその少女は近づいてくる、周りには人がいる、いるはずなのに、声が聞こえない、ただ、ヒタヒタと地面に吸い付く裸足の音のみが聞こえる……
「私は正解したようですね……ようやく私は会えたわけですか……」
僕はこの子を知っている……いや、違う……知っている人物の中で、当てはまるものが一つしかない……
「あの子は……残念でしたね、きっと向こうで元気に暮らしてますよ」
ヒタ……ヒタ……
足音が止む、それはつまり、この少女が僕の目と鼻の先に居るということだ
「……ねぇ、兄様、私、とても寂しかったんですよ?あの日、兄様が交通事故で亡くなったあの日から、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずぅっと!!優希と一緒にあの家で二人暮らし、兄様の居ない生活は今でも私の過去に黒い一点を残していますよ?私はすぐに死んでしまいたかったです、だって兄様のいない世界になんて存在する価値もないんですから、お葬式にね?兄様の友達がたくさん来ましたよ、なんて名前でしたっけ?あぁそうそう【佐倉 真琴】でしたっけ?兄様に媚を売っていた雌犬、あまりにもムカつきましたから『二度と人前に姿がさらせない』ようにしてあげましたよ、兄様は褒めてくれますよね?兄様のためにやったんですから、大好きな兄様のために……大好きなんて言葉じゃ言い表せないほど、私は兄様しかいないんです、分かっていただけますよね?ねぇ、兄様?」
僕に正面から抱きつくような形で、銀髪の少女────歩美は言葉を放つ
「……優希はどうしたんですか?」
「……私が目の前に居て、私が兄様に愛を囁いているというのに、兄様は優希のことを心配するのですか?」
「……僕はもう、君の兄様じゃないんですよ」
無理に引き剥がそうとするも、華奢な身体からは想像もできないほど強い力で掴んで離さない……
「いいえ、貴方は私の兄様です、【ヤナ】という人間はこの世界には存在しないんです、だって貴方は【佐野 夜奈】なんですから」
「……夜奈は死んだんです」
「いいえ、生きています、私の知っている兄様が、私を知ってる兄様が、今こうして私の目の前に居るんですから」
……違う……僕は夜奈じゃない……僕はヤナとしてこの世界を……
「……先ほどの質問に答えるなら、優希は今も向こうでよろしくやっていると思いますよ、『にいちゃんはまだ生きている』とうわ言のようにブツブツいってましたが」
「……見捨てたんですか?」
「兄様のために」
なんの悪びれる様子もなくただただ当然のように無表情で、いつもの口調で淡々と言葉を口にする
「兄様は幼少の頃より私たちを助けてくれました、育ててくれました、今考えれば、それは凄まじいまでの重圧だったでしょう」
僕は腰のホルダーに手を伸ばし掴んで取り外した……ところで手をはなした……
僕は今、ポケモンを使って何をしようとした……この子に対して何をしようと……!
「……ふふ、こんなときでも優しいんですね?その優しさによって育てられた私たちが、兄様を好きにならない理由なんてなかった」
僕のボールの一つがコーンコーンと、虚しく響く……
「……家族にそこまで思われるなんて、僕は幸せ者ですね」
「でも兄様はその幸せを受け入れたりは決してしなかった」
言葉に力がこもる……少なからず怒気を含んだ声だ……
「兄様は確かに鈍いです、しかし……兄様は気づいていたはずです、私たちの好きの意味を」
「…………」
当然だった、それは至極当然だった……僕は確かに、恋愛ごとに関しては無頓着な性格です、でも人として、あそこまで分かりやすいアプローチをかけられれば気づくのは当たり前だった
「気づいていても、決して答えなかった……それどころか、兄様は私たち避けるようにすらなった」
「……包丁を投げられる身にもなってください」
「それは兄様がそういう態度を取り始めてからのはずです」
それも正解だった……僕は確かに彼女たちを避けていた……心のどこかで恐怖していた、これからも妹と弟に僕の人生を振り回されるんじゃないか、僕は一生この子達の奴隷なんじゃないかと……
「……そして、兄様は答えを出さずに私たちに別れも告げずに去っていった……」
「…………」
「でも、今こうして、私たちは抱き合っています、これって運命ですよね?」
運命……こんなにも皮肉の利いた言葉があっただろうか……僕にしてみれば、これは呪い、前世からの、死神からのプレゼント……
「さぁ兄様、私の家にきてください……いえ、これからは私たちの家ですね」
抵抗は可能だった……可能であっても、無駄であることは変わらなかった……
僕は無抵抗のまま、希望を絶やさず、彼女について行くのだった
第三十八回終了です!
これでオリキャラは出しつくしました(たぶん)
どれもこれも重要な役割をもっています、そして誰一人としてまともではありませんw
5万アクセス記念に何かやろうと思っています!くわしく活動報告で!
おそらく、それが今年最後の更新になります
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!