やってきたのはBW!   作:エレンシア

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前回のあらすじ!

レンゲさんのいちにち!

以上!


第四十二回~しゅうけつ~

誰かが来てくれる予感はしていた……誰かと言わず、はっきり言えばトウコさんが来てくれると信じていた、疑わなかった……

 

「やぁやぁ、ヤナ君、昨日ぶりだね~」

 

激しい爆発音の後、煙の中から現れた人物は、僕の予想とは随分かけ離れていた……その人は全身を黒いマントとフードで覆い、悪竜従え颯爽と……

 

 

 

「ケッホ!?ウェッホ!?埃っぽ!?」

 

……と、いうわけでもなく、いつも通り、騒がしく登場するレンゲさん……一瞬でもかっこいいと思ってしまった自分が恥ずかしい……

 

「……なんで、レンゲさんが……?」

 

「そんなことよりヤナ君!勝手にどっか行っちゃ駄目だよ!すっごい探したんだからね!?」

 

……そういえば、黙って戻ってきちゃいましたね……昨日からずっと探してくれていたんでしょうか……

 

「ご、ごめんなさい……好奇心に負けてしまって……」

 

「探す身にもなってよね!?心配し────てたわけじゃ、ないんだけど……その……」

 

後半になるにつれ、じょじょに声が小さくなっていく……うまく聞き取れはしませんでしたが、心配してくれていたようです

 

「ヤナ!大丈夫!?」

 

あ、やっぱりトウコさんも来てくれたんですね……後ろにはチェレンくんとベルさんも……僕の相棒も……一緒にいるのかな……?

 

「大丈夫……とはいえませんね……」

 

僕は歩美を横目で見た後、視線を戻す……戻す、というよりは戻せざるをえなかった……今、歩美の顔を直視することは、僕にはできなかった……

 

「……どういうことでしょうね、こんなに早く見つかるはず、ないんですけどね……ねぇ?兄様……」

 

気づいた、歩美は気づいた……彼女たちがこんなにも早くここに辿り着いた理由、それに早くも気づいたんだ……

 

「一匹、逃がされていましたか……さすがは兄様、あれだけのプレッシャーを受けても冷静に対処できるとは」

 

冷静に、とはとても言えたものではなかった……突然の歩美の登場に、僕の神経は一瞬にして磨り減ってしまった、それでも、最低限身を守ることだけは忘れない、本能のようなものだった……

 

「……形成逆転です、歩美……僕を解放してください」

 

これで勝ったはずです……状況としては1対4、僕を含めれば5、多勢に無勢、数の暴力で勝利をつかめるはず……

 

「……兄様は、どうしても私とは一緒にいたくたいのですね?」

 

「…………」

 

僕は答えない……答えないという答えを、僕は歩美に、暗に示した

 

「……分かりました、もう何も言いません……────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ────実力行使、といきましょう」

 

その瞬間、部屋の空気が変わった……体が重い、そう錯覚させるほどの重圧が、部屋を包み込んでいた……

 

「一対四……数の上では不利ですね、なので私は……」

 

そう言った直後、ゴチミルの目が怪しく光る……

 

 

 

直後────地面に転がっていた工具や鉄の棒、ナイフやイスが、一斉に空中にフラフラと浮遊し停止している……

 

「ふふふ、ゴチミルの[サイコキネシス]……やはりエスパータイプは応用が利いていいですね」

 

歩美の手がゆっくりと標的を指差す、それに呼応するように、浮遊していた工具の一つが真っ直ぐに放たれる

 

「!?サザンドラ![守る]!」

 

キンっ!という金属音の後、サザンドラの生み出した薄緑の障壁を前に、工具は弾かれ地面に突っ伏した

 

「いきなりご挨拶だね、しかも今、完全に私自信を狙ったでしょ?」

 

「煙を絶つには元を消す……私はもっとも効率のいい方法で貴女方を排除します」

 

そう言い放ち、歩美は次々と物を飛翔させる……

 

「サザンドラ戻って!キリキザン!レディ!ゴー!」

 

「……!」

 

出てくるや否や飛来してくる鉄の武器を、木材の塊を、全てその両の腕で弾き返すキリキザン……さすがはレンゲさんのポケモン、こういった状況にも慣れている

 

「[きりさく]!」

 

「かわして[めざめるパワー]」

 

凄まじい速度で接近するキリキザンを、紙一重で回避し、橙色の光の塊を放つゴチミル……その光弾は、吸い込まれるようにキリキザンに命中し、吹き飛ばした

 

「ッチ!めざ格とかピンポすぎっ!キリキザン![アイアンヘッド]!」

 

「[サイコキネシス]」

 

頭を白銀に輝かせ、キリキザンは再び接近するのに対し、ゴチミルもまた、怪しく瞳を輝かせた

 

「どうして[サイコキネシス]なんだ?悪タイプのキリキザンにエスパータイプの技は効かないのに……」

 

チェレンくんが素朴な疑問を放つ……嫌な予感がした────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────次の瞬間、トウコさんがキリキザンとゴチミルの間で直立していた……

 

「っ!?!?キリキザン!!よけて!!」

 

「!?」

 

寸でのところで、キリキザンは左にかわす、が……体のバランスを失ったのか、そのまま転んでしまった

 

 

 

「お馬鹿さん、ゴチミル、[めざめるパワー]」

 

 

 

ゴチミルの放った光弾は、キリキザンの意識を完全に奪い去った……

 

[サイコキネシス]はキリキザンに向けられたものではなかった……始めから歩美は言っていた、元から絶つと……だから歩美は躊躇無く、トウコさんに向けて技を放った、始めから身代わりにするために……

 

 

 

「……キリキザン、ごめん、ゆっくり……いや、急いで休んで、すぐに元気な姿を見せてね……」

 

レンゲさんがキリキザンを戻そうとボールを取り出した瞬間────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ゴチミル[10まんボルト]」

 

ゴチミルの[10まんボルト]が無常に、無慈悲に、意識の無いキリキザンへと放たれた……体はビクンビクンと痙攣を起こし、泡をふきながら、レンゲさんの前まで吹き飛ばされた

 

「…………キリキザン」

 

「怒っているんですか?腸煮えくり返っているのは私の方なんですよ?私と兄様の貴重な一時を邪魔した罪……ただの死で済まされるとでも思っているんですか?」

 

レンゲさんはキリキザンを優しく撫でた……撫でた手のひらから、ジュウ、という音が聞こえた……電流が流れたことにより、高温の熱を帯びていたのだろう、それでもかまわず、レンゲさんは撫でることをやめなかった……

 

「…………ごめんね、こういう戦いだって、分かってたのにね……」

 

いつものレンゲさんには似つかない、あまりにも優しすぎる声に、僕はレンゲという人間の本質を垣間見たようなきがした……

 

「……ゆっくり、たくさん休んでね……どれだけ時間がかかってもいいから、また元気な姿を見せてね……」

 

 

 

 

 

 

「っ!!歩美っ!!!」

 

僕は叫ばずにはいられなかった……目の前の少女は、相も変わらず無表情で、不思議そうにこちらを見ている……

 

「?どうかしましたか?兄様」

 

「どうもこうもありません!!キリキザンはすでに戦闘不能だったはずです!どうしてあんなことしたんですか!?」

 

「……えぇ、戦闘不能だった、ですよね?ってことはまだ死んでないってことじゃないですか」

 

もう、目の前の少女が何を言っているのか、僕には理解できなかった……

 

「にしても、しぶといですね……虫の息、というのでしょうか……」

 

まぁ、再起不能には変わりませんが……そんな言葉が放たれた……

 

 

 

 

 

 

目の前の少女が誰なのか、僕にはもう、わからなかった

 

 

 

 

「……ひどいよぉ……どうしてこんなことするの……?」

 

「…………」

 

ベルさんとチェレンくんは、目の前の惨劇に耐えかねて、目を逸らし、膝から崩れ落ちてしまった……しかし……

 

「……────…………」

 

トウコさんは依然、ゴチミルの前から動こうとしない……それどころか、指先の動き一つ、瞬きの一つせず、ただ、佇んでいた……

 

「…………トウコさん?」

 

呼びかけに応じない……トウコさんの目は光を失い、瞳孔が開いていた……

 

「っ!?トウコさん!トウコさん!!どうしたんですか!?」

 

返事はない、わずかな反応すらも……普通じゃなかった

 

 

 

 

「あぁ、この雌は今、私の人形ですよ?[サイコキネシス]で体の自由を奪い、ゴチミルの催眠術で意識を奪いました」

 

そういって歩美はトウコさんに近づき、髪の毛を掴んで地面にたたきつけた

 

「この雌も……この雌も兄様を惑わせる病原菌……しっかり消毒しないといけませんね……まぁ病原菌でも役には立ちましたけどね……」

 

でも……そう続けて、歩美はトウコさんの腹を蹴る……何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も……

 

 

 

 

「こいつはもう十分に役立ちました……なので、もういりません」

 

ゴチミルは手のひらに光弾を作り出す、その矛先は、倒れているトウコさん……

 

「歩美!!いいかげんにしてください!!もうこれ以上僕の大切な人を傷つけないでください!!」

 

「大切な人なんて、私がいれば十分でしょう?」

 

クスっと笑いかけてくる少女、その表情に、これから人を殺す、そんな杞憂や憂鬱感をまったく感じさせない、そんな笑顔だった……

 

「どうして……!どうして歩美はいつもそうなんですか!?どうして殺すことでしか解決しないんですか!?」

 

「……私は一番効率の良い方法で物事を進めるているんです、この先邪魔になる可能性の高い蛆が、蝿になるのを待つほど、私は暇ではないんです」

 

そう────歩美はいつもそうだった、可能性を潰してきた……僕の、歩美自信の、そして……

 

「……ゴチミル、[めざめるパワー]」

 

光弾は放たれた、まるでスローモーションのように、ゆっくりと、ゆっくりと、トウコさんに向かって迫っていく……そして……────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         ──────かたきうち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ました────自分でそう、意識が意識であると感じ取れていたとき、歩美の部屋は半壊していた

 

当の歩美の姿は見えず、レンゲさん以外の三人はまだ気を失っていた……レンゲさんの前には赤く染まった、両手に石柱を携えるポケモンの姿があった

 

「……ありがとう、ローブシン……」

 

ローブシン、そう呼ばれたポケモンの色が、赤色から、ゆっくりと肌色に変色していく……いや、あれが本来の姿なのだろう……

 

「……レンゲさん……」

 

「……キリキザンは、大丈夫だよ……なんてたって、私のポケモンだもん……」

 

レンゲさんの声は……震えていたのだろうか?僕には判断できなかった……

 

「……手錠、外すね?」

 

「あ、これ、歩美じゃないと外せないって……」

 

 

 

バキっ!そんな音が、僕の手首から聞こえる……音とは対照的に、僕の手首に痛みはなかった

 

「外し方なんて人それぞれだよ……ようは外れればいいの」

 

めちゃくちゃだった……でも、どこか安心したのもまた事実だった

 

「レンゲさん、歩美は……」

 

「……キミの妹は爆発に紛れて逃げたよ……たぶん、この街にはもういないんじゃないかな?」

 

逃げた────その一言を聞いただけで、僕は脱力し、肩の力が抜けた……張り詰めていた糸が切れ、僕の心は、ようやく開放されたのだった

 

「……妹さんはね、どこまでもヤナ君────キミを追い続けるよ……必ずね」

 

レンゲさんはそう確信しているようだった、この一戦で、歩美という人間を少し、理解したようだった

 

「…………レンゲさん、お願いがあります」

 

「……ん?」

 

僕はずっと考えていた……僕は強くならなくちゃいけない、チェレンくんとも、トウコさんとも、Nさんとも違う……僕自身を、皆を守る強さ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「────僕を鍛えてください」




第四十二回、終了です

更新が遅くなってしまってすみません;
どういうわけか筆が進まなくなってしまいました;気合が足らないのでしょうか……
皆さんの期待には応えたいと、強く思っているのでどうか最後までお付き合いください

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
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