やってきたのはBW!   作:エレンシア

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前回のあらすじっ

夕暮れに差し掛かる頃、僕達は不可解な事件に巻き込まれる、死んだ先輩の残した「おいで」という言葉の意味は?警察が事件を隠蔽しようとするそのわけは?真実は、ゆっくりと、そして確実に、僕達を蝕んでいく……


ヤナ「続きはwebで!って、何遊んでるんですか!?」


第四十三回~それぞれのおもい~

「…………やだ」

 

半壊した部屋、砂埃の舞うこの空間、僕の一世一代の思いは、そんな二文字の言葉で片付けられた……

 

「だ、ダメですか?」

 

「ダメっていうか……やだ、うん、やだ!」

 

満面の笑みでそう答えるレンゲさん、しっくりくるなぁ───そんなことを言いながら、僕に笑いかける

 

「……意地が悪いですね……」

 

「そうだよ?私は意地悪なんだ~、なぜなら私は悪党だからね!」

 

意地の悪い笑顔を向けるレンゲさん……しかし、彼女の笑顔に、影が落ちているようにも見えた……

 

彼女はすっと表情を戻し、未だに気を失っている三人を順に視線を向ける……切り傷と擦り傷がところどころに見えるが、大きな外傷や目立った傷は見受けられなかった

 

「……三人とも無事みたいですね……よかった……」

 

「無事、とはいえないのが若干一名いるよ……」

 

ほら────そういって、レンゲさんはトウコさんを顎で指した……見たところ、そんなに大きな外傷は無いように見えますが……

 

 

 

そこまで考えて、僕は思い返した……今回の出来事で、一番ダメージを負ったのはトウコさんじゃないですか……

 

歩美の暴力、近距離での爆発……だけではない、ゴチミルの催眠術……心身ともにボロボロのはずだった

 

「……トウコさん……」

 

「しんみりしないの!別に死んじゃったわけじゃないんだから!」

 

そう、確かに……トウコさんの慎ましく、存在を主張しようとは決してしないその胸は、規則正しく上下に動いていた……

 

「よかった……」

 

「まだ安心するのは早いけどね、一先ずは、だよ?」

 

にしてもぺったんこ────そんな言葉を吐きながら、ゆっくりとトウコさんを抱え上げる……レンゲさんは見た目以上に力持ちだった

 

「さ!とっととこんなところから出て、ポケモンセンターに行こう!君たちの怪我の治療と、モンスターボールの開閉スイッチの修理をしないとね!」

 

そう言って、スタスタと歩いていってしまった……残された僕は少しの間放心して、はっと我に帰った

 

「ベルさんとチェレンくん、僕一人で運ぶんですか……?」

 

僕はハァっと溜め息をつく……一応、僕も怪我人なんですけどね……まぁ怪我してるのは主に顔面だけなので、体自体はピンピンしているのですが……

 

「ハァ……っと、ん?」

 

ベルさんを持ち上げようと視界を移し、僕の視界が捕らえたものは……僕の相棒のモンスターボールだった

 

「ベルさんが持っていたんですか……」

 

ベルさんの手からボールを取り、そのまま開閉スイッチを押す……現れたのは当然、僕のパートナーのモノズだった

 

「…………」

 

「モノズ、ただいま」

 

モノズはただ黙ってこちらを見続ける……一切の動きも無く、本当に生きているのかすら怪しく思わせた

 

「モ、モノズ?どうしたんですか?」

 

「…………ノ……」

 

一声────か細い声がモノズの口から漏れる……聞き取れたのはたまたまだった

 

その一鳴きに始まり、モノズは僕の足に噛み付いた……

 

「モ、モノズ!?痛い!痛いですよ!?」

 

「…………」

 

無言で噛み続けるモノズ、何度も噛みなおすのではなく、ぎゅうっと、執着に噛み締める……それは今までの噛み方のどれとも違った

 

「モノズっ……どうしたんですか……?」

 

苦痛に顔を歪めながら、僕は再度モノズに問いかける……様子がおかしい、それぐらいは僕でも分かります、でもどうして?

 

 

 

 

 

────モノズだけを置いて行ってしまったから?

 

 

 

 

 

自分の中で一つの仮説が浮上した……モノズは臆病だ、この旅で幾分かマシになっていたとしても、それでもモノズは臆病なのだ……自分が目の前から消えたことが、何かしらの影響を与えたのではないか……?

 

「……自信過剰すぎですね」

 

そこまでモノズが僕に依存しているとは思えません……大方、トウコさん辺りに驚いて怖くなったのでしょう……

 

「モノズ、ごめんなさい」

 

「…………」

 

ピタっと、モノズの顎の力が停止する、これ以上踏み込まれたら骨とか以前に繋がっているかどうかすら怪しかったですね……

 

「怖い思いをさせてごめんなさい、僕はここにいますよ」

 

「…………ノ」

 

スッと、僕の足からその口を離す……ジンジンとした痛みが襲うが、それをあえて口に出そうとは思わなかった

 

「…………モノ」

 

コクンと頷くと、モノズは自らボールの中へと収まった……ボールは不規則にガタガタと揺れていた

 

「……許してくれた、んですよね?」

 

いまいち理解できませんでしたが、離してくれたということはきっとそうなんですよね?

 

「……まずは、二人を運びましょう」

 

僕はベルさんとチェレンくんを背負い、開閉スイッチの破壊されたボールを、少し軽くなった鞄のなかへ突っ込み、半壊した歩美の家を出た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか、私が逃げ帰る羽目に会うとは思いもしませんでしたよ」

 

雲の上、一人の少女がぽつりと呟く

 

「トウコ、ベル、チェレン……この三人だけなら、完封できていたはず……」

 

あのイレギュラーのせいで────ぽつぽつと、少女は言葉を紡ぐ……聞いているのは、黒と紫を基調としたゴスロリ姿のポケモン、ゴチミルだけだった

 

 

 

イレギュラー────そう、まさしくイレギュラーだった……私は原作知識、つまりはこの世界の理を熟知している……少なくとも、この世界の誰よりも、私はこの世界を知っている、なのに……

 

 

 

「あの悪趣味で中二全開の黒マント……あんなのが原作で出現していたらゲーフリ始まってますよ……」

 

しかも中二なのは見た目だけじゃない、パーティも厨ポケと呼ばれるものばかり……極めつけに……

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッチ!めざ格とかピンポすぎっ!』

 

 

 

 

 

 

そう、このセリフ……この世界のどれだけの人間が【めざめるパワー】の効果を知っているかは定かではありませんが、【めざめるパワー(格闘)】を一切の迷いなく【めざ格】と言い放った……これは、間違いなく……

 

 

 

「私や兄様と同じ……転生者……」

 

しかも、私と同じく原作知識持ちの、それも、最低でも三値までは熟知している人間……

 

「……邪魔ですね」

 

早めに消しておきたいですが……ゴチミルとこの子だけではいささか不利ですね……

 

「……今は様子を見ましょう……時間はあるんですから、ね?」

 

そういって、右手に掴まれた「ソレ」を見つめる……ニヤリと笑みを浮かべ、少女はそのまま砂嵐の方向へと飛び去っていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……空が……青い……ですね……」

 

「もう夕方だよ、お外まっかっかだよ」

 

生死を彷徨いながら、僕は二人の人間の体を無事に運び終える……正直、歩美に殴られてた方が楽でした……

 

ジョーイさんは半ば呆れた顔で、「二部屋しかあいてないないよ」といい、トウコさん達の手当てをしてくれました……今は三人とも、ゆっくり眠っています

 

「さ、ヤナ君も休んだ方がいいよ?疲れちゃったでしょ?」

 

僕とレンゲさんは、もう一つの部屋を使い就寝する……今日二回目の眠りにつくのかと思うと、なぜか眠る気になれなかった

 

「……レンゲさん、キリキザンは……」

 

「もう!さっきもいったでしょ!?大丈夫だよ!ちょっとダメージが大きすぎただけ!」

 

レンゲさんはそうやって明るく振舞っていた……きっと心の内では心配に違いないのに……

 

「それより……私はキミのことが知りたいな」

 

スッと表情が険しくなり、レンゲさんはそう切り出した

 

「僕のこと、ですか?」

 

僕のこと……おそらく、歩美のことを言っているんでしょう……あの【少し変わった少女】のことを……

 

「わかってると思うけど、あの【頭のおかしいサイコ女】のことだよ」

 

どうやら、レンゲさんと僕の間には若干の認識の誤差があったようです……

 

「あの女は……ヤナ君の妹だって言ってたよね?それは本当?」

 

これは……答えづらい質問ですね……まぁ歩美関連の質問で答えやすい質問なんてないんでしょうけど……

 

「……僕は一人っ子ですよ?」

 

「違う、とは言い切らないんだね?」

 

暈そうにも、レンゲさんの前ではそれも意味をなさなかった……

 

「……だと思ったよ、嫌に親しそうだったしね」

 

ふぅと、レンゲさんは息を吐く、どうやら始めから分かっていたようだった……

 

「……レンゲさん、あの」

 

「うん……複雑そうな話みたいだから、これ以上は聞かないし、誰にも言わないよ」

 

そう言って、レンゲさんは黙った……目を瞑り、何かを考えているようだった……

 

僕も目を瞑り、何かを考える……何かを……何を?

 

 

 

 

僕を追って来た歩美のこと?

 

 

様子のおかしいモノズのこと?

 

 

今目の前にいるレンゲさんのこと?

 

 

歩美に傷つけられたトウコさんのこと?

 

 

元の世界に残された優希のこと?

 

 

八方塞の僕自身のこと?

 

 

 

一体何を考えろと言うんでしょう……こんな一度に問題が押し寄せてきて、僕はまず、何を考えればいいんでしょう……

 

こういう時、僕はいつも、何も考えなかった……ひたすら逃げて、逃げて、逃げて、逃げ続けてきました……自分の考えを示しているようで、ただ問題を先送りにしてきました……先送りにした結果、まさか来世まで続くとは思っていませんでしたけどね

 

 

 

 

 

 

もうこれ以上、逃げたら駄目ですよね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(予想外……あまりにも予想外だよこれは……)

 

心の中で私は悪態を付く、目の前の少年は目を閉じ、自分の考えに没頭している……そんな中、私も自身の考えに没頭していた

 

(あのサイコパスがなんでこっちの世界にいるのかな!?)

 

夜奈の妹……歩美の存在はよく知ってる、知らないはずがない……いつも夜奈の近くにいて、何度も私の邪魔をした……あの憎き糞女……

 

(こんなところまで私の邪魔する気……?)

 

もし、あの女が私の邪魔をするとして……確実に勝てる保障がある?

 

(私のキリキザンが、あぁも簡単に倒された……)

 

ゴチミルに対してキリキザンはベストアンサーだったはず……否、だからか……めざ格ピンポだったのは、ゴチミルの苦手とする悪や鋼で止まらないため……

 

(……思考が完全にやりこんでるんだよね)

 

めざ炎、めざ氷は確かに汎用性が高い……でもここ一番で使えない技なんてなんの意味も無い……だからめざ格……それに……

 

(残忍性なら、私より上、かもね……?)

 

……そんなこともないか、私だってもう四人……殺してるしね……ムカツクけど、あの時非情になれなかった私が弱かった、それだけか……

 

(はぁ……できればもう会いたくないけど……)

 

絶対に会うことになるよね……私も易々とヤナ君取られるわけにはいかないし……って、別にヤナ君は私のじゃないんだけどっ

 

(……どうしちゃったのかな?最近……)

 

私の中の夜奈が揺らいでいる……ヤナ君はどうしたって夜奈じゃないのに……どうしても、被ってしまう……

 

(……ダメ、だなぁ……夜奈分が足りない……)

 

ゆっくりと、片目だけ開くと、目の前の少年は未だにうんうんと唸って考え事に没頭している……ゆっくりと左右に頭を振り、たまに俯く、その仕草一つ一つに、目が奪われていた……

 

(……末期だよ……もうヤナ君が夜奈にしか見えなくなってる……)

 

ゴクリと喉が鳴る……手を伸ばせば、欲しかったものが手に入る、そのあまりに短い距離……私はゆっくりと手を伸ばし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……っ……ダメっ!)

 

 

 

 

 

 

 

伸ばした手が、空中で停止する……夜奈との距離は、あまりに遠かった……

 

(……最低だな、私……)

 

この少年はヤナ君……夜奈の生まれ変わり……ヤナ君は確かに夜奈かもしれない、最近、私は強くそう思う……

 

でも、夜奈は死んだ、私の目の前で死んだ……

 

だから私も死んだ、夜奈の目の前で死んだ……

 

(もう、頭の中グチャグチャだよ……)

 

何がしたいのか、何を考えているのか、夜奈のことだけじゃない、自分自身のことすらもう分からない……

 

(……情けないなぁ、自分の気持ちに自信が持てないや)

 

 

 

ねぇ夜奈……私どうすればいいのかな……?

 




第四十三話、終了です

さて、そろそろヒウンから出ましょうか(笑)
話が進まなくて皆さんもイライラしているのではないかと思いますから;
考えてみたら、プラズマ団アジト、古代の城、ジム戦、歩美先生と結構ぶっこみましたからね;お腹いっぱいになってると思います(味が薄いのは、勘弁してください;)

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
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