修羅場、かな?
以上!
前方の鬼神、後方の般若……虎や狼なら、まだ助かる可能性が無きにしも非ず、といったところなのですが……
「「…………」」
無理無理無理!!ナニコレ??何ナノこれ??え、死ぬの??僕死ぬの???もう一回死ぬんですか??
「…………ぁ……ぁの……」
「…………」ギロ
あ、はい黙りまーす、蛇に睨まれた蛙というよりはDQNに絡まれたオタクみたいな状態?ビクビクと死刑判決を待ってる状態だと思ってもらえれば幸いです
「……言いたいことがあるなら、言ってみてはどうですか?」
あ、僕しゃべっていいんですか?いいんですよね?今歩美に許可もらいましたよね?
「ぁ……あの!」
「兄様は黙っていてくださいね?」ニコ
ボクジャナインデスヨネー、これ僕いなくても良くないですか?いいですよね?帰っていいですよね?
「…………」ソローリ
「…………」ギロ
直立不動っ!!サー!待機するであります!サー!
ふざけているように見えるかもしれませんが、正直なところ、こうでもしてないと平静を保っていられないんですよ……
いつものトウコさんの重圧も、それはまぁ怖いものがあるのですが、今回のはなんと言いますか、質が違うと言いますか、濃いと言いますか……
それにもう一つ……トウコさんが一言もしゃべっていないことも原因なのではないか……レンゲさんの時もそうでしたが、トウコさんは基本的には突っかかっていく性格、今回のようにただ黙って睨むようなタイプではなかったはずなのに……
「それで?言いたいことはないんですか?」
「……いいわ、口で勝てないのは前回学んでいるもの……でも」
嵐の前の静けさ……今のトウコさんはあまりにも静かすぎた……
「……表、出なさいよ」
────────────────────
───────────────
──────────
─────
どうしてこうなったんですか……
「使用ポケモンは二体、先に二体とも戦闘不能になった方の負けよ」
「口で勝てないと分かったら実力行使ですか、野蛮な方ですね」
ポケモンセンターの施設の一つでもあるバトルフィールドに、歩美とトウコさんが対峙する……いや、本当にどうしてこうなった……
「ヤナのことあんなにボロボロにしたアンタに言われたくないわ」
………………何も言わない、それが大人です
「それともう一つ、負けた方は今後一切ヤナに近づかない、いいわね?」
っ!?どういうつもりですかトウコさんっ!
「……後悔しないでくださいね…………いえ、一生後悔し続けるといいですよ、フシデ、出なさい」
「…………」
紅色の体の、見た目ダンゴムシのような虫ポケモンが歩美のボールから現れる……ヤグルマの森で見かけたことがありますね……
「おねがい!ミジュマル!」
「ミジュ!」
対するトウコさんはミジュマル……相性は五分五分ですが、果たして……
「……フシデ、[どくばり]」
フシデの口から、毒々しい棘が打ち出され、真っ直ぐとミジュマルに放たれる……
「かわして[みずてっぽう]!」
トウコさんの指示通り、ミジュマルはそれを右に流し、ノータイムで[みずてっぽう]を放つ……
「フシデ、[こうそくいどう][どくばり]」
次の瞬間、フシデの姿はそこにはなく、ミジュマルの[みずてっぽう]は無情にも壁を濡らすだけで終わり、右後ろから、フシデの[どくばり]がミジュマルを襲う……
「っ!ミジュマル!地面に向かって[みずてっぽう]!」
「ミジュ~!」
勢いよく吐き出された[みずてっぽう]によって、ミジュマルの体が上方へと跳ね上がる……[どくばり]は寸でのところでミジュマルの下方を通り過ぎた……
「ふむ、よくかわしましたが……空中では身動きがとれませんよ?」
フシデは再び空中のミジュマルに照準を合わせ、[どくばり]を放つ……それは一寸の狂いもなく、ミジュマル身体を目掛け飛ばされる……
「……っ!ミジュマル!天井に向かって[みずてっぽう]!」
「!ミ、ジュ~!」
くるりと反転し、ミジュマルは天井に向かって放水され、ミジュマルの身体は、今度は勢いよく地面に向かう……飛行ポケモンでもないのに、トウコさんのミジュマルの動きは完全に立体的だった……
「……なるほど、口だけではないようですね」
「……ミジュマル![シェルブレード]!」
務めて、トウコさんは冷静だった……今のところ、フシデの攻撃技は[どくばり]のみ、それなら接近戦に持っていくのは十分選択肢に入ります……
貝殻を構えたミジュマルが、フェイントを混ぜつつフシデに接近する……
「[ポイズンテール]」
歩美のその一言で、フシデの紅色の尻尾が毒々しい紫色に変色し、ミジュマルに振り上げられる……
「ミジュ!?」
ペキッという音とともに[シェルブレード]と[ポイズンテール]がぶつかり、ミジュマルはそのまま弾き飛ばされる……単純なパワーならフシデの方に分があるようですね……
「まだよ!ミジュマル![リベンジ]!」
「っ!ミジュ!!」
地面に足がついた瞬間、再度貝殻を構え接近するミジュマル……リベンジって……また弾き返されて……!
「フシデ、[ポイズンテール]」
案の定、フシデは再び尻尾に毒タイプのエネルギーを集中させ、迎撃態勢をとる……そして……─────
─────バキッ!!
先ほどまでとは明らかに質の違う音が響き渡り、フシデが地面にたたきつけられる……一体……?
「よしっ!」
「ミジュ!」
ガッツポーズをとるトウコさんと、それに応えるミジュマル……誰でもいいから状況の説明をしてほしかったです……
「……なるほど……フシデ、[しっぺがえし]」
「……ッ!!」
地面に突っ伏していたフシデが、勢いよく起き上がりそのままミジュマルに突撃する……
「ミジュマル!かわして!」
「ミジュッ!?」
トウコさんの指示も虚しく、完全に油断していたミジュマルが避けられるはずもなくそのまま吹き飛ばされる……完全に僕は置いてけぼりだった……
「ミジュマル!大丈夫!?」
「ミ、ミジュっ!」
態勢を立て直しつつ、多少詰まりながらも元気に返事をするミジュマル……
しかし、休んでいる暇を、歩美が与えるはずもなかった
「[どくばり]」
ミジュマルが態勢を立て直している間にも、フシデの攻撃の手が休まることはなかった……続けざまに、幾本もの毒の針がミジュマルを襲う
「っ!?ミジュマル!」
「ミ、ジュ……!」
当然、避けられるほどの余裕もなく、[どくばり]はミジュマルの身体に突き刺さる
「[どくばり]」
何本も……
「[どくばり]」
何本も……
「[どくばり]」
「[どくばり]」
「[どくばり]」
「[どくばり]」
「[どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり][どくばり]…………」
「……ミジュマル、戦闘不能……フシデの勝ちです……」
「ミジュマル……」
ボロボロになったミジュマルを抱き上げるトウコさん……今にも泣き崩れてしまいそうなほど、今のトウコさんは弱っていた
「ごめん、ミジュマル……ゆっくり休んで……」
「トウコさん……」
泣き崩れそうなトウコさん……しかし、決して【崩れ】はしなかった、ギリギリだけれど、歯を食いしばって、踏ん張って、踏みとどまっていた……
「兄様、どうですか?私は普通に戦っても強いんですよ?」
「……普通?今のどこが普通だったんですか!?」
僕の少ない知識の中でも、[どくばり]という技は毒タイプの技の中でも最弱レベルだったはずです……しかし、どうして歩美はその技を多用したのか……
簡単な話です、じわじわと嬲るため、相手を侮辱するために他ならない
もちろん、弱い技というのはその分『出が早い』……ゲーム風にいうなら『ディレイが短い』
そういった意味では、使いやすく便利な技かもしれないが……歩美ならそんなことに頼らなくても戦えるはずだし、その方が戦いやすいはずだった……
「?私は何もルールを破っていませんよ?プレイヤーを直接攻撃していなければ、周りの機材を戦闘に使ったわけでもなく、誰かを操って盾にしたわけでもない」
「っ!!そう言う問題じゃ……!!」
「私 が 何 か 間 違 っ た こ と を し ま し た か ?」
そう言われて、僕は反論することが出来なかった……倫理的に間違っていたとしても、論理的には何も間違っていない……そもそも倫理なんてものは千差万別、決まったものがあるわけでもない……
「ヤナ、いいよ……大丈夫だから」
トウコさんは……僕が思っていた以上に、強かった……
「まだやるんですか?もう結果は見えたも同然なんですが……」
「……まぁ、状況が状況だしね……本当はもうちょっと先にお披露目する予定だったんだけど……そうも言ってられないわよね」
そういって、トウコさんはいつもの赤と白によって配色されたモンスターボールではなく、黄土色と黒色の目立つモンスターボールを取り出した……あのボールは……?
「お願い─────────
───────ギガイアス!」
「─────ギィガァアァァァァァァァァァァァアアアア!!!!!」
鉱物の化け物が今、雄叫びをあげながらフィールドに君臨した……
「ギ、ギガイアス!!?」
なんでトウコさんが!?っていうか、え!?本当にあのギガイアス!?何か前よりも大きくなってない!?
「アロエさんに手伝ってもらったのよ、修行の一環でね」
……………………、
そりゃあ強くなってますよね!?だって僕達手も足も出ませんでしたからね!それを捕獲してるんですからそりゃあ成長してるに決まってますよね!?
「ギガイアス、準備はいいわね?」
「ギガァ……」
どっしりと構えるギガイアス……まるで要塞だった……
「……フシデ、[ヘドロばくだん]」
フシデが口の中でモゴモゴし、口から大量のヘドロの玉を吐き出す……今までの[どくばり]の比ではない威力の攻撃がギガイアスに迫る
「[すなあらし]!」
「ギガァァァ!!」
ギガイアスを中心に、砂嵐が巻き起こる……その砂嵐によって、フシデの[ヘドロばくだん]はすべて掻き消えた……やってることがめちゃくちゃだ……
「[ロックブラスト]!」
「ギィ……ガァ!」
ギガイアスの口から、弾丸のような速度で岩石が打ち出される……それは真っ直ぐに、フシデに向かって放たれる……
「ピギッ!?」
[すなあらし]によって足場を崩されていたフシデに避ける術はなく、奇妙な声を上げながら吹き飛ばされていき、そして……
「フシデ戦闘不能、ギガイアスの勝ち、よね?」
「…………」
唖然とする歩美……それもそのはずです、歩美にとって、この世界の人は皆下位の存在だったからです……負けるはずがない、負ける要素がない、そう思っていたに違いなかった
「……ハハ……」
僕は乾いた声をあげる……なんだこれ?チェレン君、そりゃあ勝てませんよ……
「あまり狭いところだとこっちが身動き取れなくなっちゃうからね、ヒウンじゃあ使えなかったのよ」
ヒウンというのはきっと、プラズマ団のビルと歩美の家のことだろう……
崩れかけのビルの上階でこんなのだしたら、底が抜けて全員真っ逆さま……なんてことになりかねないし、歩美の家ではすでにサザンドラが出ていた、あれ以上あの部屋を圧迫できなかった、ってことですよね……
「出なさい、ゴチミル」
「…………」
無言で現れるゴチミル……その目は何かを覚悟した目だった……
「……ゴチミル、少し無理をさせます……許して下さい」
「……ゴチ……」コク
「ゴチミル……ギガイアス、油断しちゃダメよ?」
「……ガァ……!」
二匹のポケモンは主人に応え、戦闘態勢に入った
第四十九回、終了です
ここまでいろいろ書いてきましたが、ミジュマルがバトルで勝ったシーンが一度もありませんでした……彼の今後の活躍にご期待ください
久しぶりの戦闘描写でしたね、最後に書いたのが五月……頑張ります
ここまで読んで下さった方、ありがとうございます!