隠し玉のギガイアス!
以上!
「ゴチミル、[めざめるパワー]」
「……ゴチ!」
ゴチミルの手のひらから、何発もの橙色の光弾が放たれる……さっきまでとは違い、最初から全力みたいですね……
「ギガイアス!」
「ギィガァァァァァァア!!」
耳を劈くような雄叫びをあげ、ギガイアスはゴチミルの放った[めざめるパワー]を文字通り『踏みつぶした』……依然と変わらない、否それ以上の馬鹿力……めちゃくちゃだ……
「[かげぶんしん]」
しかし、歩美にとっては予想通り……もとい予定通りなのか、特に驚いた様子もなく次の指示を出す……
ゴチミルの[かげぶんしん]は瞬く間に数を増やし、一瞬にしてギガイアスの周りを囲む……レイトの[かげぶんしん]よりも早い……!
「ギガイアス![すなあらし]で薙ぎ払え!」
「ギガァァア!」
地面を二度踏みつけると、ギガイアスを中心に砂嵐が吹き荒れる……それによって、ゴチミルの[かげぶんしん]は一体残らず吹き飛ばされ、本体のゴチミルも堪らず後方に跳ね飛ばされた
「ゴチミル、問題は?」
「ゴチ……」フルフル
ゴチミルは首を横に振り、否定の意思を示す……あれぐらいじゃあダメージにもならないってことですか……
「[10万ボルト]」
「ギガイアス![ロックブラスト]!」
ゴチミルの右手から放たれた稲妻と、ギガイアスの口から吐き出された岩石がフィールドの真ん中で衝突する
[10万ボルト]は[ロックブラスト]を打ち砕き四散させるが、そこで力尽きたかのように放電する……
「[サイケこうせん]」
「ゴチッ……!」
ゴチミルの掌から、今度は虹色の光線が放たれる…………バトルには関係ないですけど、ゴチミルの手からはなんでも出てきますね……手品とかできるんでしょうか?
「[パワージェム]よ!」
「ガァ!」
ギガイアスの橙色の岩石が光りだしたかと思えば、高密度のエネルギーの塊がギガイアスの口から打ち出される
エネルギーの余波で、フィールドに小サークルが出来る……結果はまたもや相討ち……
ここまで火力は互角……それならトウコさんの方が圧倒的に有利だ……ギガイアスに並の攻撃は通用しないし、大技を出さざるを得ないゴチミルは戦いの節々で必ず無理をする……そこさえ押さえれば、ゴチミルに勝機は訪れない……
「…………ふむ、ゴチミル、[サイコキネシス]」
「ゴチミィ……!!」
ゴチミルの両目が妖しく光りだす……この技は確か……!
「ギガァ!?」
「ギガイアスっ!?」
ギガイアスの体が、ゆっくりと宙に浮かび上がる……あの巨体を持ち上げるって……
「ゴ、チ……」
ゴチミルの無表情が苦悶の表情に変わる……ゴチミル自身にも相当な負荷がかかっている、それはきっと、歩美も分かっているのでしょう……
それでも歩美は仕掛けた……勝負に出ましたね……
「潰しなさい」
「ゴチ……ミィ!!」
ブォン────空気を劈く音を轟かせ、ギガイアスはフィールドの壁にたたきつけられ、メリメリと壁にめり込む音と共にギガイアスの身体が壁に埋まっていく……
「ギ、ガァ……!?」
「ギガイアス!?お願い!なんとか抜け出して!!」
懇願するようにギガイアスを見つめる……祈るように、ただただ傍観することしか出来ないトウコさんを見て、自分もまた、その姿を傍観することしか出来ない……
やがて、音は鳴りやみ、ギガイアスの身体が完全に埋まったところで、ゴチミルの[サイコキネシス]も切れたようだった……
「ゴチ……ミィ……」
肩で息をするゴチミル、呼吸も荒く、額には汗も浮かんでいる……随分と無理をしたみたいですね……
「……お疲れ様ですゴチミル、よくやってくれました」
「…………」
決着がついた、あのギガイアスを以てしても、歩美を止めることは出来なかった……
「さて……ご自分で宣言したお約束は覚えていますか?」
「…………っ……」
決着がついた、トウコさんの全力を以てしても、歩美を止めることは出来なかった……
「ん?良く聞こえませんね?もう少し大きな声で話してくれませんか?」
「……ガ…………スト……」
決着がついた、トウコさんの思いは、歩美には届かなかった……
「どうしました?なんなら私が思い出させてあげてもいいんですよ──────」
「────────[ロックブラスト]」
ボゴン────突如聞えた鈍い音、音のした方を向くとそこには…………
「っ!?ゴチミル!かわしなさい!」
「ッ!!?ゴチッ!!」
壁から顔だけ突き出し、ゴチミルに照準を合わせ巨大な岩石を放つギガイアスの姿がそこにはあった
ゴチミルは半ば倒れこむように横っ飛びし、転がりながらもギリギリのところでかわしきる……
「ギガイアス、まだいけるわよね?」
「ギガァ!!」
ボグン、ボゴンと、ギガイアスは壁からゆっくりと這い出る……あれ程の圧力を受けても尚、ギガイアスはフィールドに君臨し続けた
「約束ならしっかり覚えてるわ!絶対にアンタを負かして約束守って貰うんだから!!」
佐野歩美は驚愕していた────いや、ここでその名前は適切ではないのかもしれないが……兎にも角にも、少女は驚いていたのだ……
(予想外……いえ、むしろ予定外と言った方が良いのでしょうか?)
貧乳野蛮人の前に、明らかな存在感を放つ岩石の化け物……こんな隠し玉が出てくることなど、当然予定に入っているはずがない……
私の目の前で戦っているゴチミルに視線を向ける……不規則な呼吸、いつもの無表情は苦痛と疲労で歪み、一撃も喰らっていないにも関わらずすでに限界ギリギリ……、
(……ゴチミルでは荷が重そうですね)
小回りの利くゴチミルなら小技の多さでは有利でしょう、しかしそれは小技が通用する相手にのみ有利だというだけ、小手先の技が通用しない相手に対してはあまりに無力……
(……ごめんなさい、ゴチミル)
誰にも聞かれないよう、自分の心の中でのみゴチミルに謝罪する……
私の弱さは、私だけが知っていればいい……
何はともあれ、打開策……
(……積んで基礎能力をあげれば……)
どうやって?
一撃だって受けられない……それを受けるということは、このバトルを終わらせるのと同義……
(塵も積もればなんとやら……時間をかけていけば……)
……ジリ貧ですね、動き回る分、スタミナ切れはこちらの方が早いでしょう……
(一撃にかけてみますか……?)
かけた結果がこれですね、火力不足ですよ完全に……
……今の、少し兄様っぽかったですね、ふふっ
少女は驚愕していた……が、焦ってはいなかった
自分の手持ちを重々理解している彼女だからこそ、この現状に希望が見いだせない
この世界の知識が多い彼女だからこそ、このバトルに勝機が見いだせない
彼女が【佐野夜奈】の妹であるからこそ、彼女は決して無理をしない
(せっかくのチャンスだったんですが……まぁ仕方ありませんね)
溜息を一つつき、私は私の対極いる雌を視界に映す……
(まぁ……私に負けはありませんけどね)
心の中でほくそ笑み、私は【勝ち目のない戦い】に意識を戻した……
「ギガイアス![パワージェム]!」
「ギガァ!!」
再びギガイアスの体の一部の岩石が光り出し、口から高密度のエネルギーの塊が打ち出される
「ゴチミル、左に避けなさい」
「…………」コク
無言で頷くと、ゴチミルは指示通り左に体をずらし、難なくギガイアスの攻撃を流す
「っ!ギガイアス![じならし]!」
「上に跳びなさい」
ギガイアスがその場で足踏みをすると、その場を中心として、足場が盛り上がる……すかさずゴチミルはその場から跳び空中へと退避する……
「空中に逃げ場はない、のよね!?ギガイアス![ロックブラスト]!」
「ギ、ガ!」
空中のゴチミルに、4つの岩石が飛来する……トウコさん、さっきの当てつけなのでしょうか……
「[サイコキネシス]」
「……!」
ゴチミルの両目が怪しく光る……しかし、岩石の勢いは止まらない……!
「上に避けなさい」
「…………」ニヤ
ゴチミルが笑みを浮かべ、【足場のない】その場からさらに上へと飛躍した……何がどうなって……!?
「……[サイコキネシス]、ゴチミル自身に使ったのね」
「ご明察」パチパチ
小馬鹿にするように、歩美は拍手を送る……[サイコキネシス]……応用の幅が広い、歩美が多用するのも分かる気がします……
しかし、先ほどから少し気になることが……
「…………」フヨフヨ
空中に浮き続けるゴチミルに、攻撃する気配が見えない……それどころか、攻撃しようという意思が感じられない……
「……なんのつもり?」
「なんのつもりだと思います?」
クスクスと笑みを浮かべる歩美……あの顔には見覚えがある……あの顔をした歩美を見た次の日は、高確率で僕の部屋への侵入を許してしまっていた……
つまり、何が言いたいかというと……十中八九、悪いことが起きます……
「っ!ギガイアス![うちおとす]!」
「ガっ!」
球体の岩石が、空中に浮遊するゴチミルに放たれる……少しずつ、トウコさんの冷静さが、集中力が切れかけているみたいですね……
「かわしなさい」
「ゴチ」
まるで嘲笑うかのように、ゴチミルはいとも容易くかわしきる……反撃する様子は見えない……
「~~~~ッッ!!!アンタねっ!!」
「怖い怖い……」クスクス
……完全に煽ってますね……何が目的なのか……そもそも目的なんてあるんでしょうか……
「やる気ないならさっさと負けを認めてくれるっ!?」
ただ逃げ続けるだけの歩美にイライラするトウコさん、言葉の節々に怒気が込められる……いや、これは僕でも参ってしまいますね……
バトルに真剣なトウコさんだからこそ、余計に腹が立つのかもしれませんね……
「……ふむ、ゴチミル、どうですか?」
「…………」コク
ゴチミルの問いかけに、ゴチミルは無言で頷き、ゆっくりと下降し地に足をつける
「……やっとまともにやり合う気になったみたいね!ギガイアス!![ロックブラ─────
「────────降参します」
あっけない幕切れだった……
第五十回、終了です!
また長い期間お持たせしてしまい申し訳ありません……先がみえず、少し迷走してしまいました……
今回の戦いにおいて、賛否両論(2:8ぐらいでしょうか?)だと思われますが、今後の展開的にもこれがベストだと思い、こういった結末させていただきました。
まぁ、歩美なら平気で不意打ちしそうではありますが……
ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!
また、いつも読んで下さっている方々、お待たせしてすみません、できることなら、今後も応援よろしくお願いします!