断頭颶風の神殺し   作:春秋

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「…………(はッ!素早くッ!セイバーッ!)」

 

平日の真昼間からソファーに座り、仕事中だというのにスマホを持ち出し、無言でソーシャルゲームをする男の姿がそこにあった。

……っていうか俺だった。

 

「…………(はいっ!行きますとも!お任せを!)」

 

その対面のソファーに腰かけ、同じく職務時間の真っただ中というのにスマホを弄り、無言で同じゲームに精を出す男の姿がそこにあった。

……っていうか甘粕冬馬だった。

 

「…………(なんだよ。アイツ?やれやれ……)」

「…………(選定の剣よ、力を!邪悪を断て!『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』!)」

 

鉄也は思う。

課題達成(クエストクリア)を目指してちまちまやってる自分を前に、この男は何を宝具なんて使ってるんだと。

 

「…………(はい。了解です。行きます。)」

「…………(「束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるが良い!『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!)」

 

鉄也は思う。

コイツ宝具チェインとか舐めた真似をしてくれると。

 

「…………(ステータスアップ、頑張ります)」

「…………(卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』!!!)」

 

鉄也は思う。

アルトリア三連星とか羨ましいことしやがってと。

 

「……ところで甘粕さん(私以外のセイバー死ね……)」

「……どうしました石上さん(突き立て!喰らえ!十三の牙!『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』!)」

 

鉄也は思う。

コイツ金に物を言わせてアルトリアコンプしてやがると。

 

「今日はどういった用件で?(星光の剣よ……赤とか白とか黒とか消し去るべし!ミンナニハナイショダヨ!『無銘勝利剣(えっくすかりばー)』!!)」

「いえね、最近馨さんがなにやら裏で根回しをしているようでして。何か心当たりでもありはしないかと思いまして(選定を真にするまで、私は倒れません!)」

「……さあ、俺も与り知らないところですね(セイバーに遭えばセイバーを斬る……神に遭えば神を斬る……主にセイバーばっかり増やす神を!)」

 

下手な誤魔化しだ。

鉄也が自分でそう思ったように、冬馬も盛大に違和感を覚えたらしい。

 

共に一区切り付いたためケータイを仕舞い改めて向かい合った。

 

「甘粕先生、聖剣ブッパしたいです(`・ω・´)」

 

具体的には騎士王の聖剣を、彼はキメ顔でそう言った。

 

つまり全力で話を逸らしにかかったのだ。

発したのは紛れもない本音だが。

 

「諦めなさい。それは作品(せかい)が違いますよ」

「やだやだ! 俺も約束された勝利の剣(エクスカリバー)――ッ! って叫んでみたい!」

「首飛ばしの颶風(かぜ)で満足しておきなさい」

「それとこれとは話が別です。神座(アレ)はアレでいいものですけど、運命(これ)はこれで違うカッコよさがあるのです」

「まあ、ヘリオス戦で燕返しとかやったそうですしね」

「やめて! あれ実は微妙に黒歴史なの!」

 

――閑話休題。

 

「で、実際のところどうなんです石上さん。何かご存知なんでしょう?」

「……実は先日、室長から黒円卓を立ち上げてみないかと打診を受けまして」

「ほう。ほうほう。非常に興味深いですね。叶う物なら私にも関わらせて頂きたいことです」

「……もし結成するその時には、甘粕さんにシュピーネさんの席をお願いするという話に纏まりまして」

「――――ファッ!?」

 

奇声を上げて硬直する冬馬。

致し方ないだろう。告げられた事が事だ。

 

獣の爪牙、ならぬ剣鬼の佩刀の一振りに任ぜられる。

それ自体は非常に光栄な事で、元ネタを愛している冬馬からしても心躍る事案だ。

 

永劫回帰を繰り返しても絶対に顔の差で負ける形成(笑)(シュピーネ)さんの席とは言え、黒円卓第十位という栄誉を賜れるとなれば小躍りでもしそうなものだろう。

 

――が、しかし。

 

考えてみてほしい。

創作でも現実でも変わらず、黒円卓は神殺しの騎士団である。

 

一緒にまつろわぬ神と戦おうと、そう乞われて頷く術者がいるだろうか?

 

断言しよう。

そんな馬鹿は現状、世界に七人しかいない。

 

だからこそ彼らは人を超え、王と崇められているのだから。

 

「…………それは、第十位という事は、主に諜報活動ですよね?」

「頼むのが甘粕さんという事もあるので、本人の資質からしてもそうなるでしょうね」

 

談義の際には軽いノリで応答していたが、鉄也と馨とて見かけほど軽々しく指名した訳ではない。

 

まず神殺しと戦場を共にする可能性が跳ね上がる危険。

それを推してなお職務を実行し、成功させる卓越した資質。

互いに不安を押し殺してでも事を成せる程度の信頼関係を築いている人材。

 

それらを加味して考えると、現状では沙耶宮馨と甘粕冬馬の二名しか存在していない。

 

政治的かつ社会的な活動を期待される馨はまだ良いにしても、問題は冬馬だ。

彼の場合は諜報暗躍という内実からして、死地へ飛び込まざるを得ない可能性が高くなる。

 

それを考えると気が重いため、鉄也は黒円卓結成を保留にとどめたのだが。

 

「やれやれ、仕方がありませんね。給料を弾んでもらうよう馨さんに打診してみましょうか」

「……甘粕さん」

「はは、そう気に病むことはありませんよ。この業界に入ってから、危険なんてもう友達みたいなものです。そう思えば、同じ危険なら楽しい職場の方がいいでしょう」

 

それに、と。

普段通りの胡散臭い笑みで、一欠けらの変化すらなく忍は宣う。

 

「戦場以外のアナタは些か殺しやすく見えてしまう。神殺しではなく剣士としては、まだ隙が多いようですからね。周りに誰かがいた方がいいでしょう。いずれ来る招集のときは、楽しみにしていますよ」

 

眼光を鋭くしたり、笑みを消したり、或いは深くしたり、殺意を滲ませたり、空気を異にしてみたり。

 

そんな漫画のような展望などいらない。

真に忍ぶ者は頼りない笑顔のまま、相手に違和感すら覚えさせる事無く立ち去る。

 

変わらず抱く親しみのまま、殺されたとて怨めない。

 

見よ、これぞ影の使者。

闇に住まう男の本懐である。甘粕さんかっけー」

「前も似たようなことをしてませんでしたっけ?」

「これ持ちネタにしようと思います。僕はキメ顔でそう言った(`・ω・´)」

 

 

 





七階以上が手強い。なかなかクリアできない。
そしてようやく素体200が終わりそう!

そういうことでネタそのものでしたが、みんなGOやってるのかな?


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