断頭颶風の神殺し   作:春秋

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あとがき

石上鉄也

kkkで宗次郎に憧れ、彼の剣を模倣したオタク主人公。憧れの人物は壬生宗次郎だが、信仰する神は黄昏の女神。他の神殺したちは世界法則に則った超人たちだが、彼は世界法則を崩壊させる自滅因子。

ネイアを殺す際に神殺しの刃であると誓う。神殺しという偉業を成し遂げておきながら、彼女を殺すことしか出来なかった自分を憎んでいる。本当は彼女を愛していなかった、などと嘯き自己愛を謳うのは己へ向けた皮肉なのだ。

剣の師でもある父は鋼助といい、鋼を助けるという神刀の一族らしい名。鉄也の「鉄なり」という名もこれから来ている。

 

 『冥界の処刑刀(ヘカート・デスサイズ)

ギリシア神話に登場する女神ヘカテーより簒奪した権能。死の風を呼び込み絶命の武具を生むとされているが、そんなことをしなくてもそのまま死を撒き散らす事も可能。急速に死へ近付く呪いの風や、骨肉を腐らせる毒を生み出す。

 

 『疾走する停滞』

インド神話のラーフというアスラより簒奪した権能。ラーフは日蝕や月蝕を起こす悪星となる伝承を持っている。陽月が失われれば暦が読めず時が進まなくなるという特性を取り上げ、そこから時間停止の権能を得る。時空を歪め神速化する権能だが、後に掌握して敵の神速を解除する能力も得る。太陽を呑んで自分を加速し、月を呑んで敵を減速し、序曲から終曲へと進化する。予定だった。

 

 『陀羅尼摩利支天』

まつろわぬ蜃気楼より簒奪した権能。文字通りの異能であるが、それはあくまで剣の像に限り、自身の像は紡げない。要するに燕返しの権能。太極に至ると凄まじい効果範囲へと変貌する、億千万の刃。は違うか。

 

ネイア

イーピゲネイア。一度はローマに顕現したまつろわぬヘカテーの表層人格。本性であるヘカテーの人格に呑まれることを見越して、鉄也に加護を与え神殺しを促す。鉄也と誓いを交わして消滅するが、不死の領域(神座の記録)に還る前に汲み取られて再び顕現する。犯人はパンドラか観測者あたり。

本来の彼女は第五天の世界に生きた人間であり、主神ゼウスの配下で疑似神格だったアルテミス=ヘカテーへの生贄として捧げられる。それを哀れんだ女神はその魂を手元に置き、消滅も転生もしないままで神座が交代。第五天ゼウスの消滅に伴ってアルテミスも神格を失い、その魂を諸共に第六天パンドラのもとへと移動する。それから眠りに着いて幾星霜、彼女は運命の出会いを果たすのだった。

 

八意

愛称はコロ。第二部で白面金毛九尾の竜骨である殺生石を食べて、某作品的に「喰霊解放――八意ッ!」みたいな感じの巨大化する予定だった。某フォウ君みたいに、人語を解しはしても話すことは絶対にない。ケモッ娘や竜や武器は喋っても動物は話さない、という変なポリシーのため。

 

パンドラ

「神を殺したい」という覇道が鉄也の「神殺しの刃になりたい」という渇望に呑まれ、求道に転化した先代の神座。今代の座に認められているがゆえに消滅を免れているが、敗北した旧神ゆえに陽炎のように薄い存在。

 

ラーマ

最後の王という名の触覚。かつて神の眷属としてあった旧世界の存在だが、自死を望んだパンドラが座より記録を汲み上げた。その役割は神への踏み台。神殺しという名の自滅因子たちが力を付け、その最終段階として神格域に至るために用意された贄であり最終試練。彼の死がそのまま特異点への潜行装置として機能しており、女神が覇道を流れ出さずとも特異点に至れた。という設定。

 

カンピオーネ

第六天パンドラの法則の具現。基本的に覇者の気質を持ち、神格を持って生まれてくる訳ではなく、『まつろわぬ神』という神格の欠片を取り込むことで位階を上げる。神殺しというのは闘争により魂を鍛え、『まつろわぬ神』の力を取り込むという工程を経た、パンドラ流の永劫破壊と言えるかもしれない。

パンドラ自身も誤認しているが、「自滅因子=石上鉄也」であって「カンピオーネ=自滅因子」ではない。神殺しの魔王は覇道弑殺の世界法則に則った存在であるため、変則的だが第六天に属する疑似神格に近い。鉄也が自滅因子としては例外的存在なのは、この特性が混じっているためというのもあるかもしれない。

 

『まつろわぬ神』

第六天の法則である「覇道弑殺」により、神座より力を与えられた魂。それは小さな小さな神格の欠片であり、神殺しという存在を進化させるための贄。現在の世界法則に馴染めぬ異形。行き場を失った世界の、まつろわぬ化外の民。かつて滅びた神座(せかい)(かみ)の眷属、その影。つまりかつて実在した神格・疑似神格そのままであり、現代に伝わる神話伝承は旧世界の実話、森羅万象の根源である座より零れ落ちた情報から成り立っている。という設定。

 

 

 

 

 

正史編纂委員会東京分室、退魔部神霊対策課特命係

俗称、極東十三騎士団黒円卓

 

 

第一位首領、石上鉄也=断頭颶風の神殺し(シュトゥルム・ルイゼット)

第二位、『斉天大聖』孫悟空 

第三位首領代行、沙耶宮馨=神に刃向かう者(ヘレル・ベン・サハル)

第四位、未定。

第五位、未定。

第六位、連城冬姫=贋造・祭壇の巫女(ツォアル・ゾーネンキント)

第七位大隊長、『黒騎士』清秋院恵那=猛き嵐の使者(デーヴァ・ラージャ)

第八位、万里谷裕理。

第九位大隊長、『赤騎士』エリカ・ブランデッリ=紅い悪魔(ディアボロ・ロッソ)

第十位、甘粕冬馬=影に忍ぶ者(ハサン・サッバーフ)

第十一位、『禍祓いの巫女』万里谷ひかり=神を生む女(テオトコス)

第十二位大隊長、『白騎士』八意=日輪喰い(マーナガルム)

第十三位副首領、草薙護堂=東方の軍神(ペルシアン・ウォーロード)

 

第十三位副首領前席、イーピゲネイア=死灰の花嫁(ヘカティック・グライアー)

 

 

 

 

 

 

――――以下、没ネタや小ネタ――――

 

 

恵那

「鉄也さんの負け。ってことで、罰ゲーム!」

 

鉄也

「決め台詞って、いきなりどこぞの奇策士みたいな事を言い出しおってからに……」

「……もうさ、『ただしその頃には、アンタは八つ裂きになっているだろうけどな』でいいんじゃないか? いや、それでいいに違いない。それがいい。一番いい。はい決定!」

「――――違うんだよ! 元ネタありきのリスペクトと自分で考えた『かっこいいせりふ』とじゃ、痛さが全然違うんだよォッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 鉄也がまず思ったのはひとつ。

 

(九尾の狐……まさか型月の偉業が反映されてたりしませんよね……)

 

 具体的にはケモ耳天照とか。

 だって白面金毛九尾などと言われたら、能登さん演じる黒いセーラー服JKとか、某弾幕ゲーの「ちぇえええええええええん」な御方とか、そして良妻賢狐なキャラぶれ淫乱ピンクあたりが代表的でしょ?

 そう公言して憚らない鉄也だからこそ、眼前の九尾に警戒心が膨れ上がって止まらない。

 間髪入れず脳内再生されるのは螺子がぶっ飛んでブレーキがへし折れたシリアルヴォイス。

 

――謂れはなくとも即参上、軒轅陵墓(けんえんりょうぼ)から、良妻狐のデリバリーにやってきました!

 

 この九尾がもしアレ(・・)だとすれば、持ちうる神格は多岐に渡る。

 まず日本で白面金毛九尾といえば当然の如く挙げられる玉藻御前。

 そして玉藻は九尾の狐ということから稲荷大明神として祭られる事もあり、同じく稲荷神のダキニ天へ変化し得る。

 インド仏教で荼枳尼(ダキニ)と呼ばれていた羅刹女は大日如来に調伏され、善神となって大日如来の徳の化身と解釈されるようになった。

 大日如来はその名が示すとおり、日輪を象徴する神格である。後に神仏習合の概念によって天照大神と同一視された。これによって玉藻の前(キャスター)はアマテラス=大日如来=ダキニ天という、複雑怪奇極まる霊格と神性を有する事になるのだ。

 簡潔に纏めると、魔女や巫女として知られ宇宙を生み出したとまでされる太陽の神。

 原型そのままならば神座万象的な意味での神に等しい存在である。

 

――勝てるわけがねぇ!

 

 誰だってそう思う。

 鉄也だってそう思った。なので。

 

スーリヤへの報復あれ(時よ止まれ)!」

 

 まずは太陽と月絶対殺すマン(ラーフ=ケートゥ)の権能を発動した。

 権能の超感覚による判定は――白。

 よしんばダキニ天まで繋がっていたとしても、そこから太陽の神性までは帯びていないらしい。ひとまず安心である。

 

「ま、神に成り上がられても面倒なんで即殺だけど」

 

 

 

 

――ゆえ、義母(かみ)は問われた。

 

貴様は何者か(あなたはだぁれ)?』

 

――愚問なり、無知蒙昧(もうまい)

 

「知らぬならば答えよう……」

 

 いつの間にか集った石上鉄也の黒円卓(なかまたち)

 剣の巫女、男装の媛巫女、隠密の男、そして白き賢狼が咆哮した。

 

「――我が名はレギオン(オオォォォォォン)ッ!!」

 

 東の果てに建つ宮殿、黄金魔城が遂に顕現する。

 

 

 

 

梵天王魔王(ぼんてんのうまおう)自在大自在(じざいだいじざい)

 

 石上鉄也は神殺しである。

 彼は剣士として修練を積み、そして魔王へ成り上がった。

 確かにその力は諸人を寄せ付けない超常の代物だろう。

 

除其衰患(じょごすいがん)令得安穏(りょうとくあんのん)

 

 だがしかし、である。

 かの王は戦士としてなら一流を超えた超一流と言えど、剣士としてはまだまだ未完。

 流派の皆伝とて得ていない。ならば、石上神道流の免許皆伝は誰であるのか。

 問うまでも無し、その師にあたる実父である。

 

諸余怨敵(しょよおんてき)皆悉摧滅(かいしつざいめつ)――」

 

 彼は石上鉄也を上回る剣客であり、若輩の頃から数多の戦場を駆け抜けた経験は折り紙付き。

 剣術の完成度もまた息子の遥か上を往く。

 鉄也が実現せしめた首飛ばしの颶風とて、その修行風景を観察することでいち早く完成形を察し、実のところ息子より先に体得していた剣聖。

 故に鉄也の父親が。石上鋼助こそが。

 自他ともに認める、不動の石上流最強剣士なのだ。

 

「首飛ばしの颶風・蝿声ェッ!」

 

 二十年以上の歳月をかけて磨き上げた刀術。

 イタリアの『剣の王』などという才能頼りではなく、修練によって高められた達人の技巧により、

 

 

 

 ネイアを現世に留めるには必要だったのだ。

 相応に高純度かつ希少な呪的血統と、その膨大な力で自壊しない器――呪力を溜め込めないという欠点(・・・・・・・・・・・・・・)を併せ持つ存在が。

 そして器として機能する者は、気位が高く他者の指図を受けないような人格こそが好ましい。我が儘で人の思惑を鑑みず、さりとて力を持たず影響力の乏しい人材。

 即ち彼女こそ――――。

 

「極東十三騎士団黒円卓第六位、連城冬姫=贋造・祭壇の巫女(ツォアル・ゾーネンキント)。本人は知らないが、そういうことになっている」

 

 無知にして無自覚なる神の依り代。

 石上鉄也の統べる黒円卓、その最後の一員であった。

 

 

 

 

と、ここまでがちょくちょくと思いついては書いていた没シーン。

或いは載せられるまで物語が進まなかった故に掲載を断念した一幕です。

 

ここまで亀の歩みを思わせる遅筆でのろのろと続けて来ましたが、そろそろ潔く筆を置こうと決意しました。もともとは「女神を腕に抱く魔王」の息抜きとして、ストーリーとか何も考えずネタを綴っていただけの本作。それが物語を進めていく内に構想を練りだし、それ故に行き詰ってしまいました。

この度に完結を断念したのは自分の中で「カンピオーネ!」世界を「神座万象シリーズ」の世界が浸食し始め、果ては終章のように広げた風呂敷をさらに引き伸ばしてビリビリに破いてしまった、というような状態になってしまったからというのもあります。

私事ですが、年末だというのに引っ越しという心を入れ替える機会も訪れたことから、この辺が退き時だろうと感じました。他の作品は今後も続けていきますし、本作も気が向けば断章という形でまたネタを突っ込むこともあるかもしれません。また私の拙い文に目を通されることがあれば、どうぞ「ここは間違っている」という指摘でも、図々しいながら「ここが面白かった」という感想でも書き込んでください。心待ちにしています。

それでは最後に、この作品に感想を送ってくださった方々。評価を付けてくださった方々。ページを開き、本作を読んでくださっていた皆様方に深くお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 





最後の最後の蛇足。

「いくら最近俺が太極とか言って調子に乗ってるからって正田卿の愛児たちをどうにか出来るなんて思うほど自惚れてはないんですよッ!!」
「帰ったらアニメ版Diesの放送があるんだよさっさと斬られろォ――ッ!」

とか鉄也に言わせたかった。


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