魔法少女リリカルなのは~鬼神降誕~   作:汰蹴

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原作崩壊が嫌な方、転生ものが嫌な方、俺TUEEEEEEが嫌な方、オリジナル展開が嫌な方、ハーレム展開が嫌な方、オリキャラの登場が嫌な方は、読むのをスパッと切る事をお勧めします。


これらの要素があっても「大丈夫、問題ない」という方は、厚く歓迎すると同時に、感謝の意を表します。


大切な事なので此処でも書かせて頂きました。


序章 弐

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?ック、頭痛ぇ……。何処だ?此処……」

 

 

 

 

大雅は目を覚ますと、痛む頭を押さえながら、起き上がり、辺りを見回した。

 

 

 

上を見上げれば、快晴日の空の様に青い光景が、下を向けば、雪の様に真っ白な地面が広がり、周りは、生き物は疎か、建物すらない、青と白だけの殺風景な世界に大雅は居た。

 

 

 

 

「っつうか眩しいな、おい……。しっかし、ホントに何処だよ此処……。俺って死んだ筈だよなぁ?という事は此処ってまさか天国……な、訳ないな。俺が天国とか(笑)ねーよ。そう思った自分が恥ずかしい。かといって地獄の様にも見えんしな……。さっぱり分からん。う~ん……」

 

 

 

 

いきなり身に覚えのない知らない場所に来た大雅は、なんとか情報を得ようとキョロキョロと辺りを見回しても、何も無さ過ぎて、まともな情報が掴めない。

 

 

 

歩き回って情報を探す事を考えたが、マサイ族を優に超える視力を持つ大雅が見回して何もないのだから、動き回るのは得策じゃないと判断し、その場に座り込んで、目を閉じ、思考に耽った。

 

 

 

状況を整理して、色々考え推測してみるも、即座にその考えを否定し、何度も思考の海に飛び込む。

 

 

 

色々と考えた結果、大雅は一つの疑問に気付いた。

 

 

 

 

「あれ?もしかして、俺ってこんなん考えてる事自体意味ないんじゃね?」

 

 

 

 

 そう思った途端、大雅は考えるのが馬鹿らしくなり、自身に苛立った。

 

 

 

 何故なら、大雅の考えが、当たっていようが当たってなかろうが、大雅の疑問に答えてくれる人はいない為、考える事が無意味と感じ、考える事を放棄した。

 

 

 

 実際に、大雅の疑問が当たっていたとしても、どうする事も出来ないのだから。

 

 

 

 

「だぁ!!!考えれば考える程ドツボに嵌るぞコレ!?いかんいかん、一旦落ち着こう……。ふぅ、どうしようか……。取り敢えず、まぁ、考えたところで何にもならんから、寝てるか。果報は寝て待てって言うしな」

 

 

 

 

そう思った大雅は寝転ぼうとした時、不意に大雅の背後から、人らしき気配を感じた。

 

 

 

 

「!!!其処に居るのは誰だ!!?」

 

 

 

 

直ぐ様振り返って、臨戦する構えを取ると、其処には、青い髪と赤い髪をし、その髪の色と同じ色である、青と赤を基調とした、巫女服みたいな服装を着ており、その容姿は、誰からも目を惹く事間違いない程の二人の美女が、立て膝の姿勢で、大雅に向けて恭しく頭を垂れていた。

 

 

 

 

「えっと……は?どういう状況これ?ていうか、誰だ?」

 

 

 

 

 頭を下げていて、少々分かり辛いが、それからでも窺い知る事が出来る程の美女で、尚且つ、初対面の筈にも係わらず、畏まられているこの状況に毒気を抜かれ、大雅は困惑し、まともな言葉が出て来ない。

 

 

 

 考えていても無駄である事を感じてジタバタするのを辞め、寝っ転がって事態を待とうと思った矢先に、見知らぬ美女二人の普通ではない登場で、展開が急過ぎて思考が付いていけず、疑問符ばかりが頭上に浮かび上がる。

 

 

 

生前に縁のある誰かかと思い、女性二人の顔色を窺いながら、生前の記憶を絞り出そうと思い馳せるがやっぱり出て来ない。

 

 

 

明確な答えは導き出せなかったが、大雅は二人の女性を見て、ふと、ある事に気付いた。

 

 

 

 

「しかし、あれだな。初めて見る顔だけど、何故だか初めて会った気がしないんだよなぁ……。何というか、俺の持つ愛剣と似た気質を感じるし……。あれ?そうだ、愛剣で思い出したけど、終わった後、刀をどこかに吹っ飛ばしたまま忘れてたな。まぁ、それとこれ関係あるかどうか知らんけど……」

 

 

 

 

どうにかそこまで考えが行き着くと、何時までも立て膝の態勢のままである事に気付き、態勢を崩す様にと、彼女達に話し掛けた。

 

 

 

 

「あ、そうだ、君達が何故そうしているか分からないけど、取り敢えずその態勢崩してくれないか?そうされるの結構気恥かしいからさ……」

 

 

 

 

「「はい、分かりました(であります)」」

 

 

 

 

大雅に話し掛けられ、ずっと大人しく控えていた彼女達は、ようやく口を開いた後、態勢を崩し、立ち上がった。

 

 

 

彼女達の佇まいを見て、改めて綺麗な人達だなぁと、大雅は心の中で思った。

 

 

 

 どちらの女性も上背があり、スタイルの出難い和服なのにも係わらず、自己主張の激しい双乳、特に青髪の女性の方はその主張がより顕著だ。

 

 

 

彼女達を個々に見ていくと、青髪の女性は瞳も青く、若干釣り目で、どことなくお嬢様の様な清楚な雰囲気を醸し出し、青く綺麗な髪を腰元ぐらいまで伸ばし、見た目の年齢を予想するなら、十八歳前後くらいだろうか?

 

 

 

顔立ちは、前にも述べた通り、誰もが綺麗だと思う美人で、似ている人物像をイメージするなら、SHU○LE!の背が高めでエルフ耳のないネ○ネに似ているだろうか?

 

 

 

変わって、赤髪の女性を見ると、こちらも髪の色と同じ様に瞳は赤く、こちらもやや釣り目で、髪の長さは、肩に届いているところと届いていないところがあるが、基本的には短めの髪で、見た目の年齢を予想するなら、こちらも二十歳《はたち》前後だろうか?

 

 

 

顔立ちだって此方も綺麗な顔をしているし、敢えて似ている人物像をイメージするなら、某灼眼に出てくる、髪がもうちょっと赤くなったヴィ○ヘ○ミナ・カ○メ○だろうか?初めて口を開いた時「~であります」って言っていた気がするし。

 

 

 

表情に出す事はなかったが、思わず大雅は見惚れてしまったが、先に死別した恋人を思い出し、心を落ち着けた。

 

 

 

 

「あぁ……、立ったままでいないで、取り敢えず座りなよ。君達に聞きたい事が結構あるから」

 

 

 

 

「「はい、失礼致します(であります)」」

 

 

 

 

 大雅に座る事を促され、返事をし、その場に座り込んだ。正座で……。

 

 

 

 

「態々厳かに正座じゃなくて楽に座ればいいのに……。まぁ、いいや。取り敢えず幾つか質問があるんだけど、質問してOK?」

 

 

 

 

「はい、なんなりと」

 

 

 

 

「私が応えられる範囲なら、全て応じるのであります」

 

 

 

 

 二人の許可が得られたので、大雅は質問を始めた。

 

 

 

 

「それじゃあ、まずは、君達誰?」

 

 

 

 

 やんわりとした質問ではなく、いきなりド直球な質問だったが、彼女達同志で視線を合わせた後に、躊躇する事なく応えた。

 

 

 

 

「では、僭越ながら私が……」

 

 

 

 

 先に口を開いたのは、青髪の女性だった。

 

 

 

どうやら、彼女たちが視線を合わせたのは、どちらが、話すか?の為の視線だったらしい。

 

 

 

 

「この姿では、初めてになりますね。私はずっと大雅様に使って頂いた『霊蒼剣』で御座います」

 

 

 

 

 霊蒼剣と名乗った女性の突然の告白に、大雅は驚きの様相を見せる。

 

 

 

元々、霊格の高い霊剣だったが、人に成れたのは流石に予想外だった。

 

 

 

 

「まじでか!?っていう事は、もしかして君は……」

 

 

 

 

 蒼髪の女性の霊蒼剣発言から、大雅はふと閃き、赤髪の女性の正体に心当たりがあり、赤髪の女性に視線を投げ掛け、赤髪の女性も待ってましたとばかりに応えた。

 

 

 

 

「はい、マスターの想像通り、私の正体は『霊紅剣』であります」

 

 

 

 

 荒唐無稽な話しで、彼女たちが嘘を言っている可能性だってあるにも係わらず、大雅は心の底で納得していた。

 

 

 

 

「そうかぁ……、霊蒼剣と霊紅剣か……。彼女達が嘘を吐いている雰囲気も見えんし、何より、気質が刀と同じ波動を感じるから、彼女達の言う事は本当なんだろうな……。取り敢えず、何で人になってんの?というより、人に成れたの?」

 

 

 

 

 大雅は、彼女達が、霊剣である事を納得しているが、何故そうなっているのかは、理解していない。

 

 

 

 

「申し訳御座いません、大雅様。私達も、何故人になっているかは、私達自身存じ上げておりません」

 

 

 

 

「気付いたら、人の姿をとっていたのであります」

 

 

 

 

霊蒼剣の言葉に、霊紅剣が補足する様に説明する。

 

 

 

 

「そうか……、君達で分からないのなら、俺が分かる訳ないか……。あ、そうそう、一つ思ったんだけど、態度とかにも出ていたけど、もうちょっと砕けた話し方出来ない?何故そんなに畏まるのか分からないけど、堅苦しくてさ……」

 

 

 

 

 現れた当初から気になってはいたが、其処を聞いている余裕がなかった為、一旦横に置いといたが、今はそこそこ余裕も出来て来た為、改めて聞いてみた。

 

 

 

 

「気にしていたのなら、申し訳御座いません。私にとって大雅様は、忠誠すべき主ですので、自然とそうなっていました。大雅様がこの口調を気にしているのなら、なんとか変えられる努力は致します」

 

 

 

 

「マスターに忠誠を誓っているのは、霊蒼剣だけではなく、この霊紅剣もそうなのであります。そして、私もマスターが気になさるのなら、私も変える努力をするのであります」

 

 

 

 

納得はしてくれた様だが、直ぐには変えられない様で、やっぱり大雅に対して謙ってしまう傾向にあり、その謙り方が強い所為で、普通に会話出来る様になるまで、道のりはまだ遠い様だ。

 

 

 

 

「ま、まぁ、出来るだけでいいから頑張ってくれ。そうだ!距離を縮める為に、君達の名前を考えようか。幾ら刀とはいえ、人型を取っているなら、何時までも霊蒼剣とか霊紅剣のままじゃ可哀そうだしな」

 

 

 

 

「いえ、私はそのままでも構いませんが……」

 

 

 

 

「私も霊蒼剣の意見に賛成であります。私達の所為で、態々マスターの手を煩わす訳にはいかないのであります」

 

 

 

 

大雅は、否定する事を言うだろうなと見越していた様で、すかさず答えた。

 

 

 

 

「まぁ、待ちなって。距離を縮めるきっかけの一つとしての提案だよ。何よりさ、名前がないと不便だろ?という訳で、君達の名前は俺が考えよう」

 

 

 

 

「いえ、あの、はい、どうもすみません」

 

 

 

 

「申し訳ないであります」

 

 

 

 

「うん、あのな?ここは、謝罪するところじゃないだろ?」

 

 

 

 

「「あ、はい、あの有難う御座います(であります)」」

 

 

 

 

「そう、それでいい。それじゃあまず、霊蒼剣、君の名前から決めるな」

 

 

 

 

 そして大雅は、霊蒼剣の顔をじーっと眺めて、しばし思考する

 

 

 

 霊蒼剣は、大雅にじーっと見詰められ、気恥ずかしさからか、顔を紅潮させて、体をモジモジさせている。

 

 

 

 

「ん?顔赤いけどどうかした?」

 

 

 

 

 原因が大雅本人である事を気付かずに、ノー天気な質問をする。

 

 

 

 

「ひぇ!?いえ、何でもありません」

 

 

 

 

訝しんだ大雅に、いきなり話し掛けられ、可愛らしい悲鳴を上げるが、霊蒼剣は慌ててその場を取り繕う。

 

 

 

 

「そう?おっと名前だな。う~ん……、青、蒼、藍……よし、決めた!霊蒼剣、君の名前は、『魅空《ミソラ》』だ。安直だけど、青髪青眼である容姿から、青といったら何かなと考えたら、空が出てきて、すぐに思いついたのが美空だったけど、【美】ではなく【魅】にしたのは、俺の事を表す鬼を捩って【魅】の方にしてみました。【魅】って鬼を使っているけど、悪い意味でもないしね。どうだろうか?」

 

 

 

 名前の付け方自体は安直だが、それなりに凝った名前で、大雅自身もなかなかの出来栄えだなと思っているが、霊蒼剣本人にはどう映っただろうか?

 

 

 

 

「魅空、ですか……」

 

 

 

 

霊蒼剣はしばらく熟考した後、破顔した顔で頷いた。

 

 

 

 

「はい!すごくいい名前だと思います。私の為にこの様な素晴らしい名前を付けて頂き、誠に有難う御座います!それも、大雅様を表す鬼を頂けるなんて……嬉し過ぎて、思わず絶頂に達してしまいそうです!」

 

 

 

 

 霊蒼、否、魅空は満面の笑みを浮かべ、深く深くお辞儀をする。

 

 

 

あまりの喜びように、大雅は少しタジタジだ。

 

 

 

 

「ま、まぁ其処まで喜んでくれるのには驚いたけど、喜んでくれて何よりだ」

 

 

 

 

「フフッ、魅空……魅空……魅空……。私の名前……」

 

 

 

 

 かなり嬉しい様で、大雅の言葉すら届かず、自分の名前を呟いて心に沁み込むように反芻し、ただただ嬉しさを噛み締めている。

 

 

 

 その光景を、霊紅剣は羨ましそうに、魅空を見つめ、大雅の顔色も窺っている。

 

 

 

 

厚かましいと思いながらも、嬉しそうにする魅空を見て、居ても立っても居られず、思わず大雅に声を掛けた。

 

 

 

 

「あの、マスター……」

 

 

 

 

「おっと、悪いな。次は麗紅剣、君の番だな。それじゃあ、どうしよっかな?う~ん……紅、赤、朱……、よし、決めた!霊紅剣、君の名前は『夕魅《ユミ》』だ!君の名前の決め手も、赤髪赤眼である事から、赤いモノを考えた結果が、夕焼けで、魅空と共通しているのは、どちらも空の事だし、ある意味姉妹剣っぽい君達の事だから付けたんだがどうだい?」

 

 

 

 

「私の名前でありますか……はい、私にもこの様な素晴らしい名前を付けて頂いて、大変嬉しいのであります」

 

 

 

 

 魅空に比べて、若干感情は希薄だが、それでも顔を紅潮させ、表情を綻ばしている。

 

 

 

 

「気に入ってくれて何よりだ。よし、名前も決まった事だし、次の議題に入るか」

 

 

 

 

 ほんわかしている雰囲気を、大雅の言葉で一変させ、話しの内容を切り替えた。

 

 

 

 

「まず、此処が何処で、死んだ筈の俺が居て、今のこの状況がどうなっているか、君達は分かるか?かなりボロボロにされた筈なのに、傷が見当たらんし……」

 

 

 

 

 明確な答えなんて返って来ないだろうなと思ったが、何かのヒントになるかと思い、聞いてみた。

 

 

 

大雅の問い掛けに、二人はしばらく考えた後、魅空がゆっくり口を開いた。

 

 

 

 

「大雅様、私なりの考えがありますが、宜しいでしょうか?私が考えておいて荒唐無稽なのですけども……」

 

 

 

 

 魅空が自信なさそうに、言い淀んでいるが、大雅は構わず続けさせた。

 

 

 

 

「魅空の考えが、的を射ているかどうかは、俺が判断するけど、荒唐無稽だとしても、取り敢えず、聞かない事には先に進まんから、魅空の考えを話してみて」

 

 

 

「分かりました。判断材料がないので、自信は無く、飽くまで私の推測ですけども、此処は恐らく、大雅生死の狭間、天国と地獄の境目、或いは、三途の川や黄泉比良坂の様なあの世に準ずるものの一つではないか?と考えましたが、案外、ただの夢という説も無きにしも非ずと思っております」

 

 

 

 

「成程ね……。魅空もあの世という説を考えたか……。俺も、あの世的な何かかと思ったんだけど、君達が人の姿で出現したと分かった時、あの世説に疑問を抱いて、判断を鈍らせているんだけど……、夕魅の方はどう?」

 

 

 

 

 大雅は、魅空の考えを吟味した後に、夕魅にも考えを求めた。

 

 

 

 

「そうでありますね……、私もこの件に関しましては、霊蒼……いえ、魅空の考えと近いのでありますが、此処があの世でないとするならば、別世界、もしくは平行世界の通り道の中間点、或いは、根源《アカシック・レコード》の様な場所への到達したのではないかとも、考えましたであります」

 

 

 

 

 夕魅の考えは、魅空よりも、斜め上を行く荒唐無稽さだが、それを否定する材料がないので、大雅はその考えを受け入れた。

 

 

 

 

「成程ね。そういう解釈もあるか……。荒唐無稽さがレベルを増したけど、かと言って否定する事も出来ないか……」

 

 

 

 

 それからも三人は、あれこれ意見を交換し合いながらも、結構和気藹々とした雰囲気で居る空間内に、突如として、緊張が走る。

 

 

 

 

「「「!!!?」」」

 

 

 

 

 三人は慌てて、卍の陣の様に背中合わせになり、臨戦態勢を取る。

 

 

 

 

「魅空、夕魅、警戒を怠るなよ?」

 

 

 

 

「「はい」」

 

 

 

 

「よし。其処に誰か居るのは分かっている!今すぐ出てこい!」

 

 

 

 

 大雅が気配のある方向を睨むと、大雅の正面から、靄の中から現れてく人影の様に、スーッと姿を現した。

 

 

 

 そして現れたのは、十二単に羽衣を着飾り、小柄だが、美少女といえる様な顔立ちで、艶やかで、地面に着きそうな程黒く長い髪をした、15,6歳ぐらいの少女が大雅の前に現れた。

 

 

 

 見掛けとは裏腹に、大雅は強い圧力を感じた。

 

 

 

 しかし、敵対する様子はない様で、少しだけ警戒を緩めたが、それでも完全には解かない。

 

 

 

 魅空と夕魅も、現れた少女に気付き、大雅と同じ方向を見た彼女達は、何故か逆に、警戒を強めている。

 

 

 

 

「「何者ですか(ありますか)?」」

 

 

 

 

 彼女達の問いに触発されたかは分からないが、その少女がゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

「待たしてしまってすまんのぉ。妾が主等を呼んだ者じゃ」

 

 

 

 

 少女の言葉に、彼女達は元より、大雅も緩めた警戒を強くし、少女を威圧する様に睨む。

 

 

 

 それに気付いた少女は、慌てて大雅達を止める。

 

 

 

 

「はわっ!?ま、待って下s……ゴホン!待って欲しいのじゃ、妾の話しを聞いてたも。まず、自己紹介をするのじゃ。妾の名は、天照と申すのじゃ。倭の国の主神を務めておる」

 

 

 

 

 少女のその名前に、大雅は更に警戒を強め、今にも跳び掛かりそうな雰囲気すらある。

 

 

 

 

「え!?何でですかじゃなくて……何でじゃ!?」

 

 

 

 

 常識的に考えて、いきなり天照と名乗られても、荒唐無稽な為、「はい、そうですか」と頷ける筈もない。

 

 

 

というより、さっきから、何かを言いかけて言い淀んだり、ババァ口調だったりと、変な喋り方をしていて気になり、少女の言葉が中々耳に入ってこない。

 

 

 

 

「お願いじゃから、妾の話しをちゃんと聞いてくれんかの?」

 

 

 

 

 少女の言葉に、大雅は彼女達と視線を合わせて、確認を取った。

 

 

 

 

「分かった。取り敢えず、話を聞こう。魅空も夕魅も一応警戒を完全に解けとは言わないけど、少し力を抜いてくれないか?」

 

 

 

 

「「分かりました(であります)」」

 

 

 

 

 そして三人は、ある程度警戒しつつも、話しの聞く態勢を作った。

 

 

 

 

「うむ。これでちゃんと話せるのぉ……。では、改めて自己紹介から。妾の名は天照といい、主等も承知の通り、天照大神で、日本の主神を務めておる。まず妾は、如月大雅お主に、謝らなければならんのじゃ」

 

 

 

 

 すると、自称、天照と名乗る少女は、いきなり大雅に土下座をした。

 

 

 

 それはもう、地面に額を擦り付けそうなぐらい低く、堂に入った正座で……。

 

 

 

 

「本っ当に申し訳ありませんでしたぁ!!」

 

 

 

 

「は?え?どういう事?取り敢えず、謝られても何の事だか分からないから。兎に角、頭を上げてくれ。傍から見たら、いい大人が少女を虐めている構図にしか見えんから……」

 

 

 

 

 いきなり自称とはいえ、天照と名乗る少女に、土下座され謝られた大雅は、突然の事に理解出来ず、しどろもどろになりながらも、天照に頭を上げる様に言い、そう言われた天照は、頭を上げた。

 

 

 

 

「お気遣い感謝致すのじゃ」

 

 

 

 

「うん、取り敢えず、説明してくれ。いきなり謝られても訳分からんから。後、その変な喋り方辞めてくれないか?」

 

 

 

 

 大雅の言葉に、天照の動きが固まる。

 

 

 

 

「え?あ、あの?すいません。気付いていたのですか?」

 

 

 

 

「ああ、なんか、所々普通の言葉が出てたし、無理して古臭い喋り方しているなぁと思ってさ……」

 

 

 

 

「そうですか、すいません。私……、女だし、この幼児体型な形では、色々嘗められるので、嘗められない様に無理して使ってました……」

 

 

 

 

「そうか……、取り敢えずさ……、この場だけなら俺等しかいないんだから普通に自分の言葉で喋ったら?」

 

 

 

 

「分かりました。自分の言葉で話します」

 

 

 

 

「よし。それじゃあ、気を取り直して、また説明を始めてくれないか?」

 

 

 

 

 話しが脱線し掛けたが、大雅の言葉で修正し、その後の説明を求めた。

 

 

 

 

「では、続けますね。さっきも言った通り、貴方が此処に居るのは、私達の所為なんです。それには、色々複雑な理由がありまして、一つ一つ説明すると長くなるのですが、其処はご了承下さい。まず、第一に、貴方は先の戦いによって、戦死致しました」

 

 

 

 

「だろうな。あれで、助かる見込みなんてないだろうしな」

 

 

 

 

 死んだというのは、大雅自身も分かっており、納得しながら頷いた。

 

 

 

 

「そして、貴方を死に至らしめた『八岐大蛇』の事なんですが、根本的な原因は私達の不手際にあるのです。つまり、『八岐大蛇』を貴方の世界に解き放ったのは私達神なんですよ。正確に言うなら解き放ったのは、私ではなく他の神ですが、結局のところ監督不行きである、私にも責任はあります」

 

 

 

 

 天照が言った驚愕の事実に、怒るべきか、叱るべきか、監督不行きとはいえ、直接の原因でない天照に言っていいのか判断が出来ず、言葉が中々出て来ない。

 

 

 

 大雅は、思考を総動員して、どうにか言葉にする。

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ、あれか?『八岐大蛇』が出現したのを知っていて、放置してたのか?」

 

 

 

 

「いえ、放置というには語弊がありますね。放置していたのではなく、行けなかったのですよ。結界を張られていた所為で、気付くのに時間が掛かってしまいました」

 

 

 

 

「成程。しかし、『八岐大蛇』ってそんな器用な事出来たんだな。ただ只管に暴れている様にしか見えんかったな……。ところでさ、ふと疑問に思ったんだけど、『八岐大蛇』ってあんたの弟が斃したんじゃなかったっけ?」

 

 

 

 

 生き延びて子を生した時に酒呑童子が生まれたという説があるが、神話の通りなら素戔嗚尊に斃された筈だと、大雅は疑問に思った。

 

 

 

 

「まぁ、そういう事になっていますね。実は言いますと、『八岐大蛇』は完全に斃された訳ではなく、封印していたのです。はっきり言って、『八岐大蛇』は殺しきる事は略不可能に近いです。蛇には脱皮を繰り返す事から長生きの象徴がありますが、『八岐大蛇』もその例に洩れず、長寿且つ、不死性すらあったので、頭を斬り落とした後に、厳重に封印するのが精一杯なのです」

 

 

 

 

 『八岐大蛇』の知られざる一面に、大雅は驚きを隠せないが、同時に天照の話しを聞いて、疑問がまた出てきた。

 

 

 

 

「何だって!?『八岐大蛇』が略不死って事は、あっちではまだ死んでいないで、時期に復活されて暴れ出したら、止められる人いないぞ?それじゃあ、俺って無駄死にって事になるんだが?あんなに頑張ったのに……」

 

 

 

 

苦労して斃したと思ったら、天照の言う事実に、大雅は愕然とした。

 

 

 

しかし天照には、焦った様子がなく、淡々と話し出した。

 

 

 

 

「いえ、其処は解決してありますよ。貴方の御蔭で再封印する事が出来ましたよ。スサノオを中心に複数の神を現地に派遣して、今も事後処理をして貰っています」

 

 

 

 

「そうか……、良かった……」

 

 

 

 

危機を逸した事で、大雅は胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

「しかし、あんたみたいな高位の神で、尚且つ、頑張って封印したのなら、そう簡単に封印なんて解けるものじゃないんじゃない?」

 

 

 

 

「はい、貴方の言う通り、ですよ。ちょっとやそっとじゃそう簡単には解けません。ですが、あの封印は事故ではなく故意なのです。それでも、神とはいえ、高々一柱程度では解けません。ですが……」

 

 

 

 

「ああ、複数居たのか……」

 

 

 

 

 天照が言い辛そうに言い淀むが、大雅は察して、先に口に出した。

 

 

 

 

「はい、そういう事ですね」

 

 

 

 

「はぁ、神様っていったい……」

 

 

 

 

 大雅は、ため息を吐きながら、眉間に皺を寄せ、頭を抱えた。

 

 

 

 

「それで?解いた理由ってなんなの?」

 

 

 

 

「え?えっと……、怒りませんか?」

 

 

 

 

 よっぽど下らない理由なのか、もったいぶる感じで言う。

 

 

 

 

「内容に依るな。でも怒るのは、あんたにじゃないから気にすんな」

 

 

 

 

「分かりました。その……、解いた動機が、退屈だからだそうです」

 

 

 

 

「は!?もう一回お願い」

 

 

 

 

 あまりにも下らな過ぎて耳を疑い、思わずもう一度問い掛けた。

 

 

 

 

「ですから、退屈だからだそうです」

 

 

 

 

 そんな下らない理由で、世界を破滅させられそうになった事に、大雅は思わず殺気を飛ばした。

 

 

 

 その殺気に当てられた天照は、涙目になり、それを見た大雅は慌てて取り繕った。

 

 

 

 

「あ、悪い。本当に下らな過ぎて普通にイラッと来たから……」

 

 

 

 

「いえ、私達が悪いのは分かっているので、咎は甘んじて受け入れます」

 

 

 

 

「確かにあんたの監督不行きだけど、あんたには謝って貰ったしな。実際、悪いのは封印を解いた馬鹿野郎共だから、主神だからって、其処まで自分を責める必要はないと思うぞ?」

 

 

 

 

「いえ、そう言って頂けて、非常に嬉しいです。神って基本的に寿命はありませんから、長生き故、退屈は天敵なんですよ。ですから、退屈凌ぎにアホな行動を起こす神が少なからず居まして……、私は結構忙しいんだけどなぁ……」

 

 

 

 

天照は、弱々しく愚痴る。

 

 

 

それを見て、大雅は天照に同情した視線で見つめ、ぼそりと口を吐いた。

 

 

 

 

「あんたも苦労してんのな……」

 

 

 

 

「まぁ、良くも悪くも主神ですから……。愚痴ってすいません……」

 

 

 

 

 最初に登場して来た時の覇気とは違い、その覇気が会話していく度に、下がって行き、今では悲愴感すら感じる。

 

 

 

 

「それで、そんな馬鹿な事をした神に対して、ちゃんと処罰はしたよね?」

 

 

 

 

「はい、それについてはご心配なく。ちゃんと処断しましたよ。神力《みちから》を奪った後に、特殊な呪いを掛けて、高天原から追放してやりました!」

 

 

 

 

 天照はその時の事を思い出したのか、スッキリとした表情で、満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

それだけ、鬱憤が溜まっていたのだろう。

 

 

 

その笑みを見て、大雅は思わずスルーしそうになったが、聞き捨てならない言葉を、天照が口走っていた事に大雅は気付いた。

 

 

 

 

「ちょっと待てよ、今スル―しそうになったけど、高天原から追放とか言ってたみたいだけど、もしかして、此処って高天原なのか?」

 

 

 

 

「あ、口に出していましたか。はい、貴方の言う通り、此処は高天原になります」

 

 

 

 

天照が現れる前に、此処が何処なのか、魅空と夕魅とで相談し合っていたが、流石に高天原の案は出て来なかった。

 

 

 

 

「そうかぁ、高天原かぁ……。にしてはやけに殺風景だよな?」

 

 

 

 

「まぁ、高天原でも端の方ですし、何より、結界やら何やらで見えなくなっているだけです」

 

 

 

 

「成程な。それじゃあ、余計に俺が此処に居る理由が分からなくなったんだが……」

 

 

 

 

「それはですね、主に、『八岐大蛇』に真っ向から戦いを挑んで勝ったのが原因です」

 

 

 

 

「ここでまたその名前が出てくるか……。それで?」

 

 

 

 

更に天照は続けて言う。

 

 

 

 

「それが原因で、貴方の霊格が上がり、神格化しました。その為、魂が強靭になり、自然に還る事が出来ず、高天原に引っ張られる形で、此処に召喚と相成ったのです」

 

 

 

 

「ハァ!!!?マジで!?流石に予想外過ぎるぞ!?それは……」 

 

 

 

 

先程からずっと、飽和し兼ねない程に驚きの連続だったが、天照の話しを聞いて、今、一番驚いた瞬間だった。

 

 

 

 

「っていう事は……、つまり……、えっと……、どういう事なんだ?あれか?俺に神格が付いたって事は、鬼神的な何かになったって事か?」

 

 

 

 

「はい、まさしくそれです。人を超え、妖を超え、遂には神へと進化したのです。ですが、鬼という種族は変わらないので、神性を持った鬼、つまり鬼神へと相成ったのです」

 

 

 

「俺が神かよ……、柄じゃないな。ん!?ちょっと待てよ……」

 

 

 

 

 そこで大雅は、ふと気付く。

 

 

 

 

「それじゃあ、霊剣が人型を取っているのは……」

 

 

 

 

 天照は、大雅の言いたい事を察し、先に言い出した。

 

 

 

 

「はい。貴方の考えている通りだと思いますよ?貴方の霊剣もまた、霊格が上がり、略もう神剣と化していますね。ですから、貴方がずっと気になっているであろう、剣が人型になった理由として、単純に、彼女達が願ったからじゃないですか?それぐらい強い想いがあれば、神剣になった彼女達なら、人型ぐらい簡単になれると思いますよ?」

 

 

 

 

 天照の言葉を聞いて、大雅は「そうなの?」という風に彼女達を見る。

 

 

 

 そして、大雅の視線に気付いた彼女達は、今までの想いも含めて、語り出した。

 

 

 

 

「はい、私はずっと大雅様の支えに成りたいと、一日千秋の想いで、ずっと願っておりました。剣として大雅様の身は護れても、剣だから心を護れない私に、ずっと歯痒い思いをして来ました。意思の疎通が出来るだけでもいい、ただただ大雅様の心を解せる方法を、霊蒼剣の中からずっと模索しておりました。そして、この様な形とはいえ、人と成って接する事が出来、喜びの感情と供に、これからは、どんな敵意からも護り通し、振り払って見せます」

 

 

 

 

続けて、夕魅も語り出す。

 

 

 

 

「私も、魅空と同じ気持ちをずっと抱いて来たのであります。どんな敵意があっても我慢し気丈に振る舞い、自分の事よりも他人の為に傷つき、大切な人を亡くして悲しんでいる時に、私が人であれば、励ます事も、慰める事も、抱き締めてあげる事だって出来たのにと、ずっと想い続けて来たのであります。これからは、人に成れた事で、そんな憂いも無くなり、共に歩き、共に探し、共に笑い、共に誓い、共に感じ、共に選び、共に泣き、共に背負い、共に抱き、共に迷い、共に築き、共に願っていける様に努力をして行く所存であります」

 

 

 

 

 彼女達が其処まで言うのには、大雅の波乱万丈に満ちた人生にあった。

 

 

 

 

 これから、大雅の為人を見る為に人生を軽く振り返って行こうと思う。

 




すいませんが、もう少しプロローグが続きます。


いや~、すごく長くなっちゃったな。10000文字越えちゃったよ。


ここまで長くなるとは思わんかった・・・・・・。


というわけで、次回は、主人公を知って貰う為、主人公の今までの人生をダイジェストでお送りします。


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