魔法少女リリカルなのは~鬼神降誕~   作:汰蹴

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まず、始めに誤っておきます。


申し訳ございませんでした。......orz


文章が無駄に長くなってしまったので、分けました。


序章 肆

 

 

 

「そっか……、俺が死んでからそんな事が……。悪いな……、俺の為に怒ってくれて……」

 

 

 

 自分の為に怒ってくれた彼女達に、大雅はしみじみと感傷に浸る。

 

 

 

 しかし彼女達は、大雅の言葉に恐縮する格好で、顔を俯かせ、口を開いた。

 

 

 

 

「いえ、大雅様の剣として、当然の事です。ですが、私達は大雅様に感謝される程何もしていません」

 

 

 

「魅空の言う通りなのであります。マスターへの雑言を反論する事ができず、腹を立てる事しか出来なかった私達は、悔しくて、逆に大雅様に感謝されてしまうと、恐縮してしまうのであります」

 

 

 

「まぁまぁ、そう気に病むなよ。俺は、そう想ってくれるだけで嬉しいんだ。逆に悪かったと思っているぐらいだ。あんなに近くに俺の事を分かってくれる人が居たのに、お前達の存在を気付いてやれず……」

 

 

 

 

 大雅は、すぐ側に居た、彼女達の想いを汲み取ってやる事が出来なかった事に対し、彼女達に頭を下げ、謝罪する。

 

 

 

 

「い、いえ、そんな滅相もありません。大雅様は謝らないで下さい」

 

 

 

「そうなのであります、マスター。私達が許しを乞う立場なのであります」

 

 

 

「いや、だから、ああ……、まぁ、いいや。そういう事にしておく」

 

 

 

 

 このままでは、謝罪合戦になりそうだと感じた大雅は、彼女達の顔を立てて、その謝罪を受け入れ、話を変える。

 

 

 

 

「でも、まぁ……、形はどうあれ、お前達に逢えて嬉しいよ」

 

 

 

 

 彼女達に言った言葉は、大雅の、嘘偽りならぬ、正直な気持ちを伝えた。

 

 

 

 

「そう仰って頂けると、私は幸いです。大雅様にこうして逢うのみならず、想いを伝える事が出来て、大変嬉しい気持ちです」

 

 

 

「私も、魅空と同じ気持ちなのであります。叶わぬと思っていた願いが、現実にこうして、人として接する事が出来、嬉しさと同時に、これからは、ちゃんと支えてあげられる事が出来るのが、より一層の喜びなのであります」

 

 

 

 

 彼女達の想いが、痛い程伝わって来た大雅は、気恥かしさから、苦笑いを浮かべ、返答する。

 

 

 

 

「ハハハ……。もう少し柔らかい言葉で話してくれると助かるけど、直らなそうだし、俺が慣れる様になればいいか。慣れるまでに時間が結構掛かりそうだけど……。取り敢えず、まぁ……、これからは、刀としてだけでなく、人としても宜しくな?」

 

 

 

「「は、はい!宜しくお願い致します(致しますでありあります)。これからも、永遠《とわ》の忠誠を誓(います)(うのであります)」」

 

 

 

 

やっぱり慣れんなぁ……。相変わらず堅苦しい……。

 

 

 

 

「さて……、これからどうs……あ!!天照の事すっかり忘れてた……」

 

 

 

 

 魅空と夕魅の事は、一応一件落着?となって気が緩み、まったりとしかけそうになったが、其処で大雅はハッ!?と思い出した。

 

 

 

天照と、話の途中だったのをすっかり忘れていた大雅は、慌てて天照の方を向くと、天照は何故かハンカチらしきものを目に当て、ホロホロと泣いている光景があった。

 

 

 

 

「は?何泣いてんだ!?」

 

 

 

「いえ、両者共すごく苦労したんだなぁと思いまして……。ある意味、死んだ事でようやく救われたのかなぁ?と思ったら、ついつい感極まってしまいました……」

 

 

 

 

 ( ;∀;)イイハナシダナーな感じで語る天照を、大雅はジト目で睨む。

 

 

 

 

「まぁ、その苦労の原因の一部はあんた達にもあるけどな」

 

 

 

「ア、 ハハ……、えっと……、あ、そうだ!これからの予定ですよね!?」

 

 

 

 

 大雅の指摘に、天照は言葉を詰まらせ、話題を変えて誤魔化した。

 

 

 

 

「「「誤魔化(したな?)(しましたね?)(したのであります)」」」

 

 

 

 

三人にあっさりバレた。

 

 

 

 

「ウッ……、ゴホン!」

 

 

 

 

わざとらしい咳をしてスル―し、天照は強行して続けた。

 

 

 

 

「兎に角、これからの予定ですけども、如月大雅さん、貴方には転生して貰おうかと思っています」

 

 

 

「はぁ?転生って輪廻転生の事か?」

 

 

 

「概ね、そういう事になりますね」

 

 

 

「それって変じゃね?天照であるあんたが居るって事は、神道なんだろうけど、神道に輪廻転生の概念って無かったよな?死んだ後は、自然に還るだとか、守護霊とかになって子子孫孫に見守り続ける様な事が神道だろ?輪廻転生の概念は仏教だろ?」

 

 

 

「細かい事は気にしないで下さい」

 

 

 

 

 大雅の疑問を、天照は一言で切り捨てた。

 

 

 

 

「おい、一言で切り捨てるな」

 

 

 

「まぁまぁ、多神教の国で神仏習合に寛容なんですから、そういうのを取り入れたと思ってくれればいいんですよ」

 

 

 

「ああ、分かった分かった。あんたがそう言うならそういう事にしておくよ。じゃあ続けてくれ」

 

 

 

 

結構適当な天照に、頭痛を覚えたが、大雅自身も、話していると段々と脱力していく事に気付き、面倒臭くもなって来たので、話を続けさせた。

 

 

 

 

「はい。転生させる理由として、まず、私達が原因で死なせてしまった事でのお詫びと、前世が流石に哀れ過ぎると思っての慰安の意味と、そこの転生先でやって貰いたい事があります」

 

 

 

 

 天照の言っている事は、嘘偽りない事なんだろうけども、本質は違う所にあるだろうなと、大雅は思った。

 

 

 

 

「あのさぁ……、それって、前者二つは建前で、後者が本音じゃないか?」

 

 

 

 

 大雅の思った事は、案の定だった様で、天照は大雅から目を反らしていた。

 

 

 

 

「おい!こっち向いて説明しろ!」

 

 

 

「い、いえ、あのですね、一応、前者に言った事は本当に思った事ですよ?後者に就きましては、また私達の不手際がありまして……、貴方なら何とかしてくれるかな?と思いまして……」

 

 

 

「やっぱりな。だったら最初から誤魔化さずに言えや良かったのに……。受けるかどうかは別として、話しぐらいは聞くから」

 

 

 

「は、はい。どうもすいません。

実はですね、さっき神は基本的に暇人って事を私は言いましたよね?その暇を潰す為に、一部の神の間で、ある流行りがあるそうです。

その流行りというのが、死んだ人間を使って別の世界に転生させ、その転生した人間の人生を酒の肴に面白おかしく楽しんで見るというのが横行しています。

実際に、此方の失敗で、人間を殺めてしまった場合、その特例は認めてはいますが、故意でやるのは当然認めていません。

ですが、法の抜け穴と言いますか、故意死を事故死に見せ掛けてやられると、本当に事故死かどうかは逐一見てなければ分からないので、法を通り抜けてしまうのです」

 

 

 

「成程なぁ……。しっかし、呆れて物も言えんとはこの事だろうな……。でもさ、ただ単に転生させるだけなら、特に問題無くないか?」

 

 

 

「確かに、転生させるだけなら何ともありませんよ。

ですが、失敗をして転生させる際、お詫びの一つに、何かしらの願い事を聞いて、叶えてあげる事が出来るのですが、性根が悪い人物は、とんでもない願いを言う事があります。その願い事の力で、暴れまわったり、世界を征服したり、女性を漁り囲ったりと、やりたい放題する事が出来ます。

それで、貴方にお願いしたいのが、その世界の崩壊を防ぐ為に、転生者の監視をして貰いたいのです」

 

 

 

「ふ~ん、そう言う事。取り敢えず言いたいのは、その神を殴らせて欲しい。まぁ、それは横に置いといて、天照であるあんたなら、転生者とやらに楔を打つ事ぐらい出来るんじゃないの?」

 

 

 

「確かに出来ますよ。そして、私がお尻を拭わないといけないのは重々承知しています。ですが、ここでネックになっている約定があります。

それが、【神は下界で采を振れない】という約定です。

簡単に言うなら、私達は地上に降りて人や世界に干渉してはいけないという物です。

何故なら、下手に地上に降りたら、人や世界が混乱しちゃいますからね。

ただし、祭事や神事、世界の崩壊になりそうな緊急事態以外は、話しは別ですが……。

秘密裏に処理しようとしても、主神をしている事から、良くも悪くも有名ですので、直ぐにバレてしまいます。私アンチの神に非難されるのが目に見えています」

 

 

 

 

力も名声もあり、尚且つ、主神でもあるが故の苦労だ。

 

 

 

 

「まぁ、事情は分かった。だが、その言い方だと、俺も一応神なんだろ?だったら約定に引っ掛かるんじゃないか?」

 

 

 

 

そう、天照の言う【神は下界で采を振れない】というのなら、大雅にも例に洩れずな筈だと想い、大雅は聞いた。

 

 

 

 

「確かに約定には引っ掛かりますが、大雅さんはまだ神に成りたてで、成ったのを知っているのは私を含めた上層部ぐらいです。大雅さんの存在は本当に丁度いいんですよ。

神に成りたてながら、実力は『八岐大蛇』にも勝てる程です。

ウチの三軍神にも匹敵しうるかもしれません。

打算は確かにありますが、私は貴方の力を純粋に評価しています。

ですから、他のバカ神達に知られる前に、件の特例を利用して、転生者の一人として転生させようと考えました。因みに他の上層部の神達からも許可は頂いておりますよ」

 

 

 

随分と用意周到だな……。

 

 

 

 

「OK、理解した。ところで、別の世界ってさっき言っていたけど、平行世界的な何かと捉えていいのか?」

 

 

 

「はい、その解釈で宜しいかと。もう少し細かくするなら、貴方の居た世界では、アニメや漫画、物語としてあったものが、別の世界では、普通に現実として存在しているのもあるのです。それで、貴方に転生して欲しいのが、その物語がある世界に転生して欲しいのです」

 

 

 

「ほー、物語だったものが別では現実ねぇ……。つまり、憧れの世界に行って、その物語の主人公として成りたいのが、転生者に居て、そしてその転生者の行く先を神は面白がって覗いているわけね?」

 

 

 

「はい、まさしくその通りです。察しが早くて助かります」

 

 

 

 

 話しの筋が見えてきた大雅は、頷きながら納得した。

 

 

 

 

「それじゃあ、物語の世界って言うけど、物語ってたくさん有るよな?俺に行って欲しいところってどの物語?」

 

 

 

「そうですね……、お願いしたいのは幾つもありますが、貴方に行って欲しいのが、『魔法少女リリカルなのは』と呼ばれる作品の世界です」

 

 

 

「……は?何?魔法少女、えっと……、何だって?」

 

 

 

 

 聞いた事のない作品に、大雅は首を傾げ、もう一度聞き直した。

 

 

 

 

「リリカルなのはです。アニメ界隈では、結構人気アニメですよ」

 

 

 

「うん、全っ然分からない。魔法少女って事は、『魔女っ子○グちゃん』とか『ひみつ○アッコちゃん』みたいな感じか?でもあれって昭和のアニメだからなぁ……。第一、アニメどころか、テレビなんて暇が無くて殆ど見てなかったからな……。偶に見たとしても、情報収集する為に、ニュースや報道番組ぐらいだもん。普通に見れていたのだって、俺が人間だった頃だもんなぁ……」

 

 

 

「アハハ……、何というか、心中お察しします」

 

 

 

 

 不貞腐れ始めた大雅の態度を見て、天照は苦笑いを浮かべ、思わず同情の言葉が吐いて出た。

 

 

 

 

「それで、魔法少女リリカルなのはって何だ?あ、やっぱり此処は説明しなくていいや」

 

 

 

「え?知らなくて宜しいのですか?」

 

 

 

 

 大雅の言葉は予想外だった様で、天照は虚を衝かれた様な顔をしている。

 

 

 

 

「だってよ、物語の世界であっても、現実の世界であっても、未来を知っちゃたら人生つまらないじゃん?それに、本来なら居ない人物が其処では居るとなると、まるっきり未来が同じとは限らない。下手に物語を知ってしまうと、逆に変な先入観を持ってしまうからな……。予想外な出来事が起きた場合に、対処し難く成ってしまう気がするんだが……」

 

 

 

「おお、其処まで考えているとは流石ですね。やっぱり、貴方頼んで正解でした」

 

 

 

 

 大雅の言葉に、天照は称賛の声を上げる。

 

 

 

 

「おいおい、その言い方だと俺が承諾したみたいじゃないか。俺は、飽くまで話しを聞くと言っただけで、一言もやるとは言ってないぞ?」

 

 

 

 

底意地の悪い顔で、天照を揺さぶる。

 

 

 

 

「ああ、そう言えばそうでしたね。でも、やって頂けるのでしょ?」

 

 

 

 

 しかし、天照は大雅の言葉に釣られなかった。

 

 

 

 

「ハァ、俺が拒否するとは考えなかったのかよ?それに、俺も違う世界に行ったら、好き放題するかもしれんぞ?」

 

 

 

「いえ、貴方の人柄を見れば、やってくれると思いましたし、自分の命を懸して人の為に尽くす貴方が、好き放題なんてする訳ないじゃありませんか。これでも、主神しているんです。為人は見ただけで大体分かります。こうして話しているだけで、貴方の人の良さが窺い知る事が出来ますよ」

 

 

 

 

 天照は、やや説教口調で大雅の言葉を否定する。

 

 

 

 

「其処まで俺を買ってくれるとはな……。まぁ、俺自身はあんたに協力するのは構わない。で魅空と夕魅にも意見を聞きたいんだが、いいか?」

 

 

 

「はい、構いませんよ」

 

 

 

「それと、別の世界に行ったとして、魅空と夕魅も連れて行ける事は出来るよな?」

 

 

 

「はい、出来ますよ。人型を象っているとはいえ、大雅さんの武器ですので、当然可能です」

 

 

 

「分かった。じゃあ、魅空と夕魅が反対すれば、多数決では俺の負けだから、協力は出来なくなるけど大丈夫か?」

 

 

 

 

 大雅の言葉に、天照は考え込み、答えを出した。

 

 

 

 

「…………まぁ、その場合は仕様がないですね。別の方法を考えます」

 

 

 

「悪いな……」

 

 

 

 

 そして大雅は、魅空と夕魅の居る方に目を向けて尋ねた。

 

 

 

 

「という事なんだけど、俺が行くとなれば、お前達も付いて来てくれるか?」

 

 

 

「はい、当然です」「勿論なのであります」

 

 

 

 

 大雅の問いに、彼女達は考える素振りすらせず、一秒で即答した。

 

 

 

 

「早いな。一秒で即答されてしまった。それで、お前達は俺が転生する事に就いて、何か意見はあるか?」

 

 

 

「そうですね。天照さんという懸念材料はありますが、基本的に大雅様が決めた事に、私が反対する理由はありません」

 

 

 

「そうか……、夕魅は?」

 

 

 

「私もマスターの意見に反対する理由はないのであります。ですが私は、天照に、お優しいマスターの心に付け込んで、体よく騙されてないかが心配なのであります」

 

 

 

「ええ!?私は騙すつもりはありませんよ!?どれだけ私は信用されてないんですか!?」

 

 

 

 

魅空と夕魅の懸念に、天照は堪らず抗議した。

 

 

 

「天照はちょっと黙っててくれ。抗議は後で聞くから」

 

 

 

 

 相談途中に天照の横槍が入り、大雅が窘めた。

 

 

 

 

「はい……」

 

 

 

 

 大人しくなった天照をみて、彼女達に向き直り、再び尋ねた。

 

 

 

 

「よし……。胡散臭いけど、天照の人柄、いや神柄か?それは信用出来るから、まぁ大丈夫だと思うが?」

 

 

 

「納得はいきませんが、大雅様がそう仰るのであれば、一応天照を信用します」

 

 

 

「ですが、もし、マスターに何かがあれば直ぐに叩き斬るのであります」

 

 

 

 

二人に睨みつけられ、天照は涙目になり怯えるが、大雅は二人を止めた。

 

 

 

 

「まぁまぁ、二人共落ち着きな。取り敢えず、お前達は俺の転生に賛成という事でいいんだな?」

 

 

 

「「はい」」

 

 

 

「分かった。じゃあ天照、その依頼を受けよう」

 

 

 

「あ、そうですか……、感謝致します。後、私は騙すつもりで、お願いした訳じゃありませんからね!確かに打算はありますが、飽くまで私は……」

 

 

 

 

天照は、まだ気にしているらしく、抗議をした。

 

 

 

 

「まぁ、落ち着け天照。あんたの態度を見れば、演技でない事は十分分かるから」

 

 

 

 

 流石に、大雅もちょっと可哀そうだと感じた為、天照にフォローを入れた。

 

 

 

 

「はい、どうもすみません。気遣って頂いて本当に有難う御座います」

 

 

 

 

 大雅のフォローで、天照が落ち着いたのを見計らって、大雅は話しを戻した。

 

 

 

 

「それで?やるとは言ったけど、どうすればいいの?」

 

 

 

「では、一から説明します。さっきも言いました通り、大雅さんには『魔法少女リリカルなのは』という異世界に転生して貰い、その転生先で、他の転生者の監視をして頂きたいのです。理由は、世界の崩壊を防ぐ為です」

 

 

 

「分かった。それで、その転生者ってのは何人居て、それぞれの為人は分かるか?その転生者の背格好や、顔立ちが分からなければ、監視の仕様がないからさ……」

 

 

 

「はい、そうですね。ちょっと待って下さい」

 

 

 

 

 天照はそう言って、何も無い空間に手を伸ばすと、肘から下が消えた様に無くなり、数分後に、消えた所からまた手が現れ、マル秘と書かれた資料の様な物が、その手に有った。

 

 

 

 天照は、その資料らしき物を捲り、それを読み始めた。

 

 

 

 

「まずはですね、貴方が監視して欲しい転生者の人数は、三人居ます。振り分けは男性二人と女性一人ですね。調査に依ると、女性の方は善人と言える方ですが、男性二人の方は、性格がかなり破綻していますね」

 

 

 

「そんなにすごい性格なのか?」

 

 

 

「はい。何でも、女性崇拝と言いますか、女性支配願望と言うんですかね?それがあるみたいでして、物語の世界の女性達を囲ってハーレムとやらにしたいそうです。全く……、女を何と思っているんでしょうか!?女の一人として不愉快極まりないです!」

 

 

 

 

 天照は、男達の為人が書いてあるだろう資料に向かって、殺気を孕んで言い放つが、大雅が天照の怒りを窘め抑える。

 

 

 

 因みに、魅空と夕魅も、天照の話しを聞いて、その男達に何か思う事がある様で、大雅がいる手前、大っぴらにはしていないものの、静かに怒っているのが表情で窺える。

 

 

 

 

「まぁまぁ、気持ちが分からんでもないが、此処は抑えてくれ。そいつ等が何かしでかす様なら俺がぶっちめるから。要は、そいつ等を監視後、抑制もしくは排除って事でいいんだろ?」

 

 

 

「はい、概ねそんな感じです。何かしでかしたら、私の怒り分も込めて制裁して構いませんからね!?主神の私が許可します!」

 

 

 

「結構私怨入ってるなぁ、おい。まぁ、女性が被害を受けるのは、見ていていい感情はしないから、それは了解した」

 

 

 

「お願い致しますね?」

 

 

 

 全く……、喜怒哀楽の激しい神様だ……。

 

 

 

 

「それじゃあ、個々の為人を照会します。聞きたい事があれば、照会し終わった後にお願いしますね?」

 

 

 

「分かった」

 

 

 

「では、まず一人目。旧名『御手洗 天馬(ミタライ ペガサス)』、今世では、『北大路 天馬(キタオオジ テンマ)』と名乗っていますね。享年、22歳。

前世での生活環境は、親が代議士で、お金に不自由無く過ごし、かなり甘やかされて育っていますね。何かしらの事件を起こしても、お金を使ったり、弱みを握って脅したりして揉み消しています。そんな環境に育ったものだから性格が最悪です。

その性格が、強欲、嫉妬深い、自己中心的、何かあれば直ぐに人の所為にする馬鹿、何があってもお金や権力で解決出来ると思っており、女好きで特に、可愛かったり綺麗な女性には、その人達の意志関係なく、俺の嫁と宣言し、男性、特にこの人が気に入った女性に近付く男性や醜女の女性には敵愾心を抱く程に嫌悪する人格破綻者です。

そんな性格ですから、友達なんて呼べる人は居ませんでしたね。

だから、結構アニメ鑑賞等を趣味にしていた様ですよ。とまぁ、為人はこんな感じですね。

次に、前世での死因が、階段から転げ落ちて脳挫傷で死にました。  

容姿が、前世では、二重顎が目立つぐらいの小太りで、眼鏡を掛け髪を金色に染めていましたね。まぁ、前世の容姿なんて知っても意味ありませんので、此処は流して下さい。

今世では、銀髪で、右目が金色、左目が銀色のオッドアイで、少女漫画に出てくる様な男性並にかなり整った顔をしていますね。

願い事が、ニコポ、ナデポ/イケメン、銀髪、オッドアイ(瞳の色指定)/魔力SSS/無限の剣製/剣製のデメリットなし/という願い事を叶えさせています。

此処まで何か質問ありますか?」

 

 

 

「うん、まぁ、名前に就いては敢えて突っ込まん。性格はさっき聞いてたからショックは少ないな。それにしても、とんでもなく都合のいい前世だな……。取り敢えず、聞きたいのは、意味の分からない単語が多過ぎて、どれから質問していいか分からんな。まぁ、順々に聞くぞ?」

 

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

 

「まず、前世と今世で名前が違うのは分かる。転生なんだからな。情けない死に方だけど死因も分かる。願い事で容姿にコンプレックスがあれば、変えたくなるのも分かる。ただ、分かんないのは此処からで、願い事の中にある、ニコポ・ナデポって何だ?」

 

 

 

「ニコポ・ナデポですね?分かりました。

ニコポ・ナデポと言うのは、感情変換の一つって事になるんでしょうかね?

例えば、好意を持っている人の微笑みを見ると、紅潮する事ってありますよね?

それを、自分から女性に向けてニコっとやって、惚れさせるのがニコポです。

ナデポも似た様な物で、子供の時に親とかから、何かしら褒められて、頭を撫でて貰うと嬉しい気持ちに成りましたよね?

それを、自分から好意のある女性に頭を撫でる事で、惚れさせる事です。

多少でも好意を持っていれば、その好意を最大限に惹き立て、惚れさす事が出来ます」

 

 

 

「ふ~ん、そんなのあるんだな。たださ、その理屈で言うと、それに対して一切の好意がなければ、好意が何倍になろうが、最大限だろうが、無意味じゃない?」

 

 

 

「はい、大正解です。その人に対して好意が0なら、何を掛けても0にしかなりません」

 

 

 

「だよな?それについては大体分かった。次は、魔力SSSの事だな。まぁ、魔力はなんとなく分かるぞ?魔法とやらを使う為の力の源の事だろ?だが、SSSって言うのはよく分からないんだよね……」

 

 

 

「魔力SSSに就いてですね?貴方の言う通り、魔力とは魔法を使う為の力の源です。

その魔力という物には、ランク、言わば、力の階級の事です。その力の階級をアルファベットで表し、SSSはその力の階級の最上位に位置します。

その種類は、一番下のFから始まり、E<D<C<B<A<AA<AAA<S<SS<SSSとおまけに+、-が付きます。

まぁ、私から言わせて貰えば、どれだけ力が大きかろうと、所詮は人の範疇で、神には遠く及びません。貴方からすれば、其処まで気にしなくていいと思いますよ?」

 

 

 

「成程ね。それじゃあ、次は無限の剣製に就いてだな」

 

 

 

「無限の剣製ですね?能力説明に就いては、私でも説明し辛いんですよね……。これを説明するには、まず固有結界というものを説明しなければ話しが進められないので、この固有結界について説明させて頂きます。よろしいですか?」

 

 

 

「ああ。ただ、その説明ってかなり長い?」

 

 

 

「う~ん、長いといえば長いんですが、普段使わない様な難しい単語が出てくるので、そっちを気にした方がいいですね。ですので、聞き逃さない様にしっかり付いて来て下さい」

 

 

 

「分かった。説明続けてくれ」

 

 

 

「はい。では、行きますよ?固有結界とは、術者の心象世界を形にし、現実に浸食させて形成する結界の事です。

それは、結界内の風景、世界法則を一時的に塗り直したり、捩じ曲げたり、入れ替えたり、書き換えたりして変貌させる事が可能です。

ただし、術者の意のままに自然を変貌させる事は出来ません。

固有結界は、術者の一つの内面を具現化させる為、結界内の心象風景、能力を術者の意志で変える事は出来ないのです。

代わりに、自然と、結界内部のあらゆるものを結界内のルールの影響下に置く事が出来ます。結構自由自在に見えますが、制限もある異界創造法なのです。

そういう性質上、固有結界は術者個人個人で全く違います。

そして、それが無限の剣製に行き着きます。

 

 

 

「うん、まぁ、良くわからんが、俺なりに解釈したんだけど、つまるところ、自分の心象をなんやかんやあって、表に引き出す事だろ?」

 

 

 

 

 大雅のかなり大雑把な解釈に、天照は、眉間に皺を寄せ答える。

 

 

 

 

「ま、まぁ概ね間違いではないんですけど、結構頑張って説明した私の立場が……、まぁ、いいですけど……」

 

 

 

「ああ……、悪い悪い。まぁ、でも合ってんなら、あんたの説明も決して無駄では無かったって事だ」

 

 

 

「なら、いいです。ある程度理解したのなら、次は無限の剣製に就いての説明ですね。

これは、貴方の行く世界とは違う物語の世界での能力で、その能力というのが、視認した武器、と言っても白兵武器に限りますが、それを魔力で複製し、さっき言った固有結界の中に貯蔵しておく事が出来ます。

一度複製した武器は、固有結界を発動せずとも投影として外界に引き出す事が出来る他、応用的に改良を加える事も出来ます。

更に、神話に名を残す様な、所謂、神造武器も、程度によりますが、複製する事が可能で、神話に迫った同じ様な力の使い方が出来ます。当然魔力消費は激しいですよ。

ただし、複製した武器は本物より一歩劣り、極めて高い神秘性の伴った、神造武器は複製出来ません。ですから、大雅さんの持つ、神秘性が高く、インテリジェンスどころか人の姿を象る程の神剣である霊蒼剣と霊紅剣は複製出来ません。

他の用途として、ただ複製し振り回すだけでなく、外界に引き出した武器は、連弩の様にして飛ばす事が出来る他、それ自体を力の詰まった爆弾として扱う事も可能です。

上手く使えばかなり強力な能力ですが、当然デメリットもあります。

武器を心象に貯蔵するという都合上、結界を広げて武器を使うと、使用した後にオーバーヒートして、刃が皮膚を内側から突き破って出て来ます。

他にも、神秘性が高くなっていくと、力の消費も激しくなって行き、脳や体が耐えられません。細かいのはまだありますが、おおまかなデメリットはそんな感じですね。

ですが、この能力を欲しがった北大路天馬は、このデメリットを願い事で解消しました。

最初から出来ない物は、デメリット云々関係ないですけどね。ふぅ……」

 

 

 

 

 天照は長い説明を言い終え、一息吐いた。

 

 

 

 

「成程ね。ただ、この能力に神秘性のある武器を複製出来ると言っていたが、それって本物、あるいは贋作とかがないと、複製出来ないよな?第一、そんな神秘性のある武器ってそうホイホイ転がっている物なのか?」

 

 

 

「ご指摘の通り、普通はありませんね。その様な武器を見る事すら、稀でしょう。ですから、能力の原点となった物語の様にはいかないと思いますよ?いくらデメリットを解消したとはいえね……」

 

 

 

「だよな?それとさ、心象風景って普通は一人一人違う訳だろ?無限の剣製というのは、飽くまで、その物語の登場人物の心象風景なのであって、ええっと、なんだっけ?北大路だったっけか?その北大路の心象風景ではないだろ?北大路本人にも嘘偽りのない自分だけの心象風景がある筈なんだから、自分の心象風景と、他の人の心象風景を重ねると、拒否反応みたいの起こり得るんじゃないか?その辺どうなの?」

 

 

 

 

 大雅の指摘に、天照は表情を一瞬凍らせ、その直ぐ後に目から鱗が落ちましたという様な表情に変えて、返答した。

 

 

 

 

「あ、ああ……そう、ですよねぇ……、私は気付くどころか考えもしませんでした。興味も無かったので、気にも留めてませんでした。ですから、心象風景が重なってどうなるかは、私にも分かりません。お役に立てなくてすみません」

 

 

 

「そうかぁ……。まぁ、分かんないならいいや。俺がどうなるって訳じゃないし……」

 

 

 

 

 大雅がした質問なのに、どうでもいいか?とばかりに投げ槍にスル―した。

 

 

 

 

「まぁ、北大路に就いては大体分かった。次の人を頼む」

 

 

 

「分かりました。次の人ですね?

二人目は、旧名が『山田 辰郎(ヤマダ タツロウ)』、今世では『神楽坂 龍斗(カグラザカ リュウト)と名乗っています。享年、21歳。

前世での生活環境は、中流家庭の育ちで、本人はアキバ系と言われるオタクで、それが行き過ぎて引きこもりニートのダメ人間の典型です。親からも疎まれていた様ですね。

性格は、北大路天馬程最悪ではないですが、似たり寄ったりな性格ですね。

前世での死因が……………………」

 

 

 

 

 スラスラと言っていた説明を、唐突に言い詰まらせ、天照は頬を誇張させ、非常に言い辛そうにしている。

 

 

 

 いきなり説明が止まって気になった大雅は、何事かと聞いた。

 

 

 

 

「あ?どうした?何か分かんない事でもあったか?」

 

 

 

「いえ、そうではないんですけど、女性が言うには少々恥ずかしい事なので……」

 

 

 

「そうなのか?だったらそこは飛ばしてもいいが?」   

 

 

 

「いえ、言いますよ。この人にとっても隠さなくてはいけない黒歴史ですし、私の羞恥心と怒りを込めて、八つ当たりしてやります。

全く、この人は……、幾ら何でもこんな死に方をしなくてもいいのに……。

では、言いますよ?この人の死因は、自慰行為のし過ぎによる、テクノブレイクを引き起こして死亡しました」

 

 

 

 

 天照は、若干の怒りを込めて暴露した。

 

 

 

 

「ハァッなんじゃそりゃ!?て、テクノブレイク?いや、テクノブレイクの意味は一応分かるが……、一生の内に一回使うか分からない言葉だぞ?第一、そんな死に方って現実にあったのか。死んだ人に言う事じゃないけど、本当にしょーもない死に方だな」

 

 

 

「この人が何かしでかす様なら、この事を突き付けるのも悪くないですね。戦って止めるより、よっぽど効果があるかもしれませんね。フフフ」

 

 

 

「ま、まぁ、そういうやり方も有りかな……。ハハハ……」

 

 

 

 意味あり気な笑顔を浮かべて、結構腹黒い事を言う天照に大雅はタジタジになり、話しを変えた。

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ続きをお願い」

 

 

 

「分かりました。では、続けますね。容姿は、前世では……、まぁ別に言う必要ないですよね。どうせ聞いても意味ないですしね。今世では、金髪金眼で、顔は北大路天馬とあまり変わりないというより、略同じですね。

願い事は、ニコポ・ナデポ/金髪金眼・イケメン/魔力SSS/魔法変換素質全属性/完全魔法無効化能力/という願い事を叶えさせています。此処までで何かありますか?

 

 

 

「そうだな……、取り敢えず、ニコポ・ナデポ、魔力SSSっていうのは標準装備なのか?まぁ、其処はいいや。さっき聞いたからな。それじゃあ、願い事にある魔法変換素質全属性っていうのは、魔力を火とか水とか雷とかに変質させる事だろ?」

 

 

 

「はい、概ねそれで合っていますよ」

 

 

 

「おお、合ってたか。それじゃあ、完全魔法無効化能力っていうのは、単純に考えれば、魔法を完全に魔力諸共無力化出来るって事だろ?」

 

 

 

「はい、そうですね」

 

 

 

「となると、魔力以外の俺が持つ、妖力や霊力、神力それと固有能力の鬼火はどうなるんだ?」

 

 

 

「そうですね、妖力や霊力は絶対にとは言えませんが無効化されると思いますよ。ですが、力が強大な神力や、源泉がない単純な火力勝負の鬼火は無効化出来ないと思いますよ?」

 

 

 

「そうか……。それじゃあ、北大路のアレはどうなる?複製とはいえ、魔力で編まれた物だしさ……」

 

 

 

「さぁ、調べた事がないので分かりません。出来るかもしれませんし、出来ないかもしれません。でも、私の考えでは、無効化出来る可能性の方が高いと思いますよ?」

 

 

 

「ふ~む……。まぁ大体分かった。それじゃあ、次の人を教えてくれ」

 

 

 

「はい、分かりました。次の人の名前は……」

 

 

 

 

 天照はサラッと名前を言う前に一息おいて、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 天照が次に言う名前に、夢想だにしなかった大雅は驚愕する事になる。

 

 

 




バレバレですね。


次回こそは、序章最後にします。

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