受験で1年更新しない宣言してからどのくらいでしょうか?
やっぱり書きたくなる時間っていうのがあるので書いてしまいました。更新したりしなかったり読者視点に立つとこの作者嫌だなとは思うのですが申し訳ありません。
生暖かく見守って頂けると幸いです。
それでは、どうぞ本編へ
アキは大丈夫でしょうか?
そんな疑念を抱きながらシーラは駆ける。進めば進むほど、アキを辿るのが難しくなっているのをシーラは感じる。
既に整備を施された道はなくなり、繁茂した草を掻き分けて進むようになっている。アキが通ったらしき跡ももう草木に埋もれて隠れてしまっているようだ。
アキ、どこへ?
自分と一回りも二回りも離れたあの少年が来てからまだ2日と経っていない。
それなのに、たったそれだけの付き合いなのにも関わらず自分が大分彼に肩入れしているなと思う。
「やっぱり私、ずっと一人で寂しかったのかな…」
なんて、シーラは少し感傷に浸る。ふと口調が変わっている自分を思ってシーラは少し頬を紅潮させる。
「なんにしても早くアキを見つけないといけませんね…」
いつもの調子でそう言うとシーラは夕闇に包まれつつある森の奥へと目を凝らした。彼女の目にはその深く繁った森は斜陽の光を阻みとても薄暗くひどく不気味に映った。
「早く、進みましょう」
不安な予感を払うように再度彼女は足を進める。
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更に進んだ先に不自然に折れた木の枝と砕けた剣のようなものを見つけた。
「これは…」
見覚えのあるソレを拾い上げよく確認する。それはアキのフルーレだった。
少し警戒しないといけないかも知れませんね。
砕けて折れている彼の武器を見て、シーラは気を引き締める。
シーラが警戒を高めた刹那、微かな空気の動きをシーラは感じとる。「敵!?」
直感に任せて彼女は身を左回りに捩る。
すると元々彼女の左腕があった場所目掛けて剣が振り下ろされていた。
「キヒヒヒ、ヒャア」
全く気配を感じられなかった。その事実に彼女は驚く。眼前に突如現れたその不気味な何かは振り下ろした剣をそのままの体勢からシーラの脚を狙い振り抜いた。
シーラは紙一重なタイミングで跳躍し、その動作の中で鞘から剣を引き抜いた。
着地と同時に後退し、その不気味な存在を凝視する。
頭には深々と黒いローブが掛けられ体も黒の衣服で染まっていた。
「キヒヒヒヒィ」
「赤髪の少年を知っていますか?」
「キヒィィ」
「話は通じないようですね」
なら、とシーラは剣を構える。早く斬り伏せてアキの元に行かなくては。
何かが妙だ。何百年と過ごしてきた森で初めて感じる違和感。
脳裏をよぎるその不安を払うかのように彼女は駆け出す。
黒装束に身を包んだ何かも彼女の動きに呼応して剣を振り下ろした。
刃と刃が火花を散らす。力量が拮抗しているのか、お互いに動きが止まる。
「キシャァ」
黒い何かが笑ったのを感じた。
途端、背後に風を斬る音を聞く。
「くッ…」
シーラはただ“思いっきり”力を込めて鍔迫り合いの状態だった剣を一切の予備動作なしで振り切った。
その剣筋にはその体勢から放たれたものとは思えない力が加わり、今まで拮抗していた黒い何かが持っていた剣は一挙に押し返された。
黒い何かが足を取られてたたらを踏んでいる間にシーラは振り抜いた勢いをそのまま利用し180度体勢を変え、斬撃に備える。
高い金属音を上げシーラの刀身が相手の攻撃をしっかり受け止める。
「キヒャアーハ、ヒヒャヒャヒ」
「奇妙なのがもう一体ですか…」
全く同じ格好をした黒装束の2体は不気味な声を上げながらシーラを挟んで対称に位置取る。
隙の少ない構え、体勢、連携だ。
「長引けば長引いただけ、こちらが不利ですね」
頭の悪い策ですが、ただ“思いっきり”、迅速かつ力強く、やりましょう。
そう思考を巡らせると彼女は息を静める。
呼吸は読ませません、予備動作は極力短く。
彼女の意識は深い集中の中へと落ちていく。
次で仕留めます。必要なのは単純な力量。
彼女の体に赤い線が走る。彼女自身は気付いていないようだが、肩から手の甲へ、足の付け根から足先へと赤い線が浮かび上がり始める。
いざ、参ります。
ダッと大地を踏み締め地を跳ねる。平かった大地が沈み込む。
先ほどとは比べ物にならない速度で彼女の刃は相手へ向かう。
黒装束の片割れは咄嗟に防御の構えを取ろうと動く。
だが、そこまでの反応をシーラは既に読んでいた。
「遅い」
そう呟くとシーラは自身の構えを変え下からその剣を振り上げた。
その一閃は黒装束を腰から肩へと斬り抜いた。
もう一体ッ!
そこから背後を狙って迫って来ていたもう一体を振り返り様に斬り抜く。
相手はそれに気付き後ろへ飛び退くも躱しきるには至らず。
その剣戟を浅くもその身に刻み付けられる。
彼女はまたも地を跳ねる。まるで一人だけ重力の支配から放たれたように、軽やかに飛ぶ。
僅かにしか反応できない。敵を置いて、彼女はまたも跳躍。
2回の跳躍を経て、相手の横を抜け背後へと回り込む。
「終わりです」
そう告げてシーラは残りの一体を胴から真っ二つへと斬り込んだ。
ふぅー。息を一つ吐くと集中が切れ、沈み込んでいた世界から引き上げられるのを感じた。足が震え、全身の筋肉が痛む。
少し無理をし過ぎましたね。
それにしても、なんだったのでしょう。
そう思い、2体の亡骸に目をやると、2体は魔物と同じように切り裂いた部位から黒い闇を吐き出して消えようとしていた。
それらが完全に消えた時、不穏さだけがそこに残った。
「何かが起こりつつあるのでしょうか…」
シーラの不安気な呟きは虚空の中へと消えていった。
お目通しありがとうございました。
また次回も読んで下さると幸いです。