世界の終わりに咲く炎花   作:航鳥

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第2話 赤い炎の魔法使い

約束の時間。

朝の冷気が肌を刺す。

街の南門にアキの姿はあった。

杖を携え腰に細剣を一本帯刀して、背中に小柄な人なら入れてしまいそうなほどに大きい青色の箱を背負っている。

 

「ッタク、ルーファスのヤツ遅えなぁ。師匠面するなら時間ぐらい守りやがれっての」

 

アキがボヤく。

すると、見計らったかのようなタイミングで背丈がアキを頭二つ分抜くほどの大男、ルーファスが姿を現した。

ルーファスは腰に二本の剣と小さな麻袋が巻かれている。

 

「悪いねぇ時間を守らない大人で」

 

「お前、絶対焦らしてただろ」

 

「んなことねーよ。今来たところ」

 

「嘘くせぇ」

 

「ハッ、遠足ではしゃぐ子供はよく転けるからなこうやってクールダウンしてやんねーと」

 

笑いながらルーファスが言う。

 

「子供じゃないんだ、そんくらい大丈夫だ」

 

「そうか?まだ二十歳になったばっかだろ。発言から行動まで俺から見ればまだまだガキだがな」

 

自覚のあるアキとしては耳が痛い話だ。

 

「まぁ、いいか。そろそろ出発と行こうや」

 

こうして南門をくぐりアキ達は天井の外に出た。ここから先は危険地帯。

いつ降るかわからない剣の雨、数多の魔物に常に気を割かねばならない。

 

「ほうほう、昨日降ったばかりだっていうのに全然残ってないモンだな」

 

残ってないとは勿論、回収対象である剣達だ。

 

「まぁ、こんなモンだろ。魔力値の低い魔剣は一晩あれば無に還る。

それにこの辺の剣はもう回収されてるのが頃合いだろうな」

 

ルーファスの説明にそんなものかとアキは納得する。

 

街から大分離れて森に入る。

魔物とのエンカウントが多い森は余り手をつける同業者も少なく彼らにとっては狙い目だった。

 

「ところでアキ、お前って探査魔法使えたっけ?」

 

探知魔法とは特定の範囲内にある魔力の大小、生命の有無を認識する魔法だ。

 

街中で使われることはほぼなく実用性も無に等しいので、使える人は疎か知っている者すら乏しい古代魔法の一種とされている。

 

「まぁ、人並みには」

あまり得意ではないけど。とアキが付け足す。

 

人並みって普通の人は使わねーよなぁとルーファスは思う。

 

「そうかじゃあ、できるだけ広範囲で使ってみな」

 

疑問符を付けて何でと問う。

 

「いいから、いいから」

 

大男はニヤニヤと催促を始める

 

「もう、しょうがないなぁ《探査開始》」

目を閉じて意識の網を広げる。

 

「どうだ?魔剣の在り処がわかるだろ?」

 

「そうだね、西方にAランクに相当する魔剣が結構溜まってる」

 

「おおっ流石だねぇ〜」

 

「あと今、俺達結構な数の魔物に囲まれてる」

「数は約三十」

 

「はっ?」

 

唐突な遭遇に空気が固まる。

 

「そうか、アキお手柄だ」

 

ルーファスが腰から双剣を抜く。

空気が一変した。

彼を中心にビリビリと震えが場を伝わる。

 

とても長い時が流れたような、しかしながら一瞬の時だったような不思議な感覚が迸る。

 

刹那。

静寂を切り裂き茂みから獣の群れが一斉に飛び出す。

魔狼だった。

群れ行動が基本で、連帯のよく取れる、集まれば集まるほどに厄介な敵だ。

飛び出して来たのは前衛の九匹。

正面から二匹、後方から三匹、左右に二匹が一斉にルーファスへ牙を剥く。

「こっちは任せな」

 

そう言うとルーファスは右側二匹に双剣を投げ、並外れた速度で目標を捕らえる。

一方は頭をもう一方は足を正確に射抜いた。

右に空いた空間に向かい大地を蹴る。

 

「邪魔だ」

 

足を取られていた一匹をルーファスは容赦なく顔面から踏み潰す。

二匹の屍から剣を抜き去る頃には魔狼の包囲網は崩壊していた。

 

一度崩れた、陣形には隙しか残らない。

 

ルーファスは双剣を振るい統率の乱れた魔狼を瞬く間に薙ぎ倒す。

半数を消し去り残りは四匹となったとき思わぬところで緊張が、走る。

 

「ルーファス、雨だ!」

 

探知魔法の残滓でいち早く忌雨の反応を察知したアキが声を張り上げた。

 

全く予想もしてなかったこのタイミングで雨が降ろうとしていた。殺戮の雨が、数々の魔剣が突如空に出現した。

 

「チッ最悪のタイミングだな」

 

ルーファスは魔狼の群れをいなして距離を取り、麻袋から小さな種子を一握り分だけ取り出すと足元に向かって叩きつけた。

 

「咲き誇れ鋼鉄の華」

 

種子からツルが伸び上がり絡み合ってルーファスの頭上を護る壁となる。

 

土の魔法。

ルーファスが唯一使える魔法であった。

途端、魔剣が勢いを伴って大地へ落下する。

銀色に輝く花が咲きルーファスの頭上を護る。

 

 

 

 

一方アキは、火の魔法を使い天まで届くほどの火柱を上げ、頭上の剣を消す。

 

魔剣などの魔力を核に成り立つ魔具は内包する魔力が尽きると同時に消える。

これによって剣の雨が降った後に長時間残るのは高ランクに分類される魔力値の高い魔剣のみとなる。

 

そして、所有する魔力以上の魔力を外側から受けると打ち消し合い、弱い魔力のものから消える。

この原理でアキの頭上にあった魔剣の数々は消滅した。

 

何故だか魔物は剣の雨の害を受けない。

 

故に魔狼の群れは最後のチャンスだと休む間も与えない勢いで襲いかかる。

 

剣の雨が止んだ。

 

ルーファスは初太刀をツルと剣で受けきると二本の体制を立て直し猛追する。

 

しばらく剣撃が続く。

 

最後の魔狼を切り裂いたルーファスが叫んだ。

 

「ぶちかませアキ‼︎」

 

「任せろ」

 

大地を無数の線が駆け巡り一つの魔法陣を形成する。

 

ルーファスの戦いの中組み上げた術式だった。属性は炎。

再び探知魔法で探った座標に漏れなく範囲を定める。

 

「最上の炎に灼かれ朽ちるがいい、俺にやられたことに光栄に思え」

 

またいつもの癖で病的なまでの台詞を吐きながら、アキは練った魔法を解き放つ。

 

アキの周りを取り囲むように二十二の火柱が上がった。

 

それは、彼の魔法の腕故にコレクターに選ばれた、赤髪の魔法使いアキ・エルクリアが冠する『紅極星』の異名の所以だった。

 

 

 

 

火柱が止み、周りから魔物の気配が消えるのを確認すると二人は魔力値の高い魔剣を持てるだけ背中の大箱に詰め込むと街へと帰還した。

 

アキの仕事はまだまだ始まったばかりである。

 




ご覧いただきありがとうございました。
次回は10月20日中に投稿したいと思います。
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