世界の終わりに咲く炎花   作:航鳥

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序編に少し話を足します。


第3話 新米コレクター

魔狼との戦いから一夜明け、アキは独りコレクターズギルドに来ていた。

 

コレクターズギルドとは、コレクターが回収した魔剣の数々を納品する場所である。

元々はそれだけの用途であったが今ではコレクターの実力をあてにした人々が国中から依頼を寄せる場所にもなっていった。

 

「すみませーん誰かいませんか?」

 

カウンターからアキが声を上げる。

すると、内側から

「はい、今行きまーす」と元気な声が聞こえてくる。

 

「あら、アキじゃない!久しぶり今日は何のよう?そういえばコレクターに成れたんだってね、おめでとう!あれっ?ってことは仕事関係かな?」

 

すざまじい勢いで姿を現したのはアキと同じ赤色の髪を持ち、パッチリと開いた大きな目が特徴の女性だった。

彼女は、バニラ・エルクリア。

アキの4つ年上の彼の姉だ。

 

「えっと、納品のお願いに来ました」

 

よろしくお願いしますとよそよそしくアキは続ける。

 

「えぇーアキちゃん反応が薄い〜冷た〜い」

 

そう言いながら彼女はカウンターを二回人差し指でノックする。

納品対象の魔剣を出しなとそういう意味だ。

 

「Aランク二本、Bランク七本、Cランク十一本の計二十本です。属性付与は無し。全品納品で構いません、確認をお願いします」

 

「中々の豊作じゃない、初仕事とは思えないわよ〜」

 

「そりゃどうも」

 

「やっぱり、よそよそしいなコノコノ〜」

 

バニラはカウンター越しにアキを抱き寄せ頭を拳でグリグリと捻った。

 

「やめてよ、バニラ姉ぇ」

 

「ふふふふーん」とバニラは上機嫌に笑う。

 

ガンガンガンガンガン

 

突然、金属音が街を包んだ。

 

「あら、余雨かしら?強いわね」

 

バニラが言う。心なしか顔がひきつっているように見えた。

この金属音はアキもバニラも生まれてから度々耳にする馴染みの深い音だが、やはりどうにも好めるようなものではないからだろう。

 

音が止む。剣の雨が止んだようだ。

 

「そろそろ、天井もヤバいわね早く剣を加工して貰わないと…」

 

そう言うとバニラはアキの納品した魔剣を抱えて奥へと消えた。

 

「姉さん、俺もうちょっと取ってくるね」

 

アキが言う。

 

「ありがとー!よろしく頼むわ、くれぐれも怪我には気をつけて」

 

奥からは姉の馬鹿でかい声が聞こえてきた。それを聞くとアキはギルドを出て天井の外へと走り出した。

 

 

外へと繋がる門の前でアキはルーファスと合流する。

 

「ったく急に呼び出しやがって」

 

「まぁ、いいじゃんどうせ何もしてないんだし」

 

「はいそんなことはございませーんゆっくり寝てましたー」

 

「あの騒音の中を?」

 

「チッ」

 

ルーファスは舌打ちで返事を済ます。

それをアキは満面の笑みにウィンクをつけて彼に答えた。

 

「頼りにしてるぜお師匠様」

 

「はぁ、それじゃあ行きますか」

 

二人は門番と挨拶を交わして外に出た。

見渡す限り一面に魔剣が刺さっている。まるで戦争の跡地の様だった。

 

「どうやら一番乗りらしいな」

 

「そうだね」

 

「緊張しな!一番乗りってことはまだこの辺の魔物は掃討されていない!」

 

ルーファスが告げる。経験においてどうしても劣るアキは彼の言葉の一つ一つを肝に銘じる。

そして、ゆっくり目を閉じて周辺の探知を始める。

同じく、ルーファスも気配を探り始める。

 

「前方にいるな1、2、恐らく12」

「方面左に反応が3つ右に2つ」

 

ほぼ同時に二人が言い放つ。

 

「多いな…アキ、テメェは前の12体を焼いて来い。俺は左右の5体を消して来る」

 

「はぁー俺の方が負担デケェじゃんそれ」

 

「魔法使えんだから数なんて関係ねぇだろ?」

 

「そんなことはねぇーよ」

 

「でも、俺よりは楽にやれるだろ?」

 

「チッ、承知した」

 

「ほら行くぞ。3、2、1ゴー」

 

ルーファスの掛け声で二人は飛び出した。

 

「開け、鋼鉄の華」

 

彼は右側の2体を土魔法で足止めすると左側の3体へと距離を詰める。

そこで姿を見せたのは水棲の魔物だった。

「シーサーペントか、珍しい。この辺に水辺なんかねぇのに遥々御苦労さん」

 

シーサーペントと呼ばれた魔物は1体あたり2メートルくらいの長さでニョロニョロとルーファスへ向かってくる。

 

「こりゃ、アキの方は苦戦するかもな」

 

ルーファスは呟くと腰に携えた双剣を引き抜いた。

瞬間、辺りを風が吹き抜ける。

 

「さてさて、ちゃちゃっと倒してアキの加勢に行きますか」

 

彼はもう一度大地を強く踏みしめて跳ぶ。向かいくる3体の蛇を次々と薙ぎ倒した。

体を真っ二つにされた3体の蛇は尚もルーファスへと向かう。

ルーファスは腰の麻袋から種を3つ取り出して動きの衰えた3体に投げつけた。

 

「吸い付くせ宿り木」

 

その一言と共にルーファスは魔力を流すと、3体の蛇は干からびた砂のようになって散っていった。

そこに、三本の苗木を残して散っていった。

 

「さて、次か…」

 

ルーファスは足止めしておいた2体の元へと駆け出した。

 

 

12体の反応の元へアキが近づく。

手始めに、魔物の反応のある方へ魔法の火を放つ。すると、まるで効いていない様子のシーサーペントが複数ゾロゾロと姿を見せる。

8体。残りは姿を隠し続ける腹積もりらしい。魔物のクセに考えやがってとアキは心の中で毒付く。

 

「水棲の魔物か…面倒だな」

 

水棲生物は火が通りにくく数が増えれば増える程面倒なのだ。

青い蛇が群れを成して飛び掛る。

 

「轟く光の慟哭よ、我が願いを聞き届けてここに咲け、『サンダーソニア』」

 

アキは宝杖に雷属性の魔力を流す。

そして、宝杖でシーサーペントの群れを振り払う。

アキは衝撃に足を取られるが、雷の宿った宝杖の効果は覿面で直撃した1体は殴り飛ばされた先で動かなり、それ以外の何体かにも深くダメージを与える。

アキは体勢を持ち直そうと片脚に力を込める。

 

が、その隙を狙って隠れていた蛇が四方からアキに飛び掛る。

アキは1体を手で払うが残りの3体にそれぞれ腹と右足、左足を噛みつかれる。

 

「グアァッ」

 

激痛が走る。アキは痛みに耐えながら腰からフルーレを抜き宝杖と持ち替え3体の蛇を斬り払う。

すると、蛇はそれぞれ上手く躱し、茂みに隠れる。

 

「あーもークソ、コソコソコソコソ隠れやがって」

 

少しずつ怒りと焦りのボルテージが上がるのを感じる。

アキはフルーレで構えを取ると足元からシーサーペント12体全てが入る範囲へと魔法陣を展開し始める。

すぐに、シーサーペントが現れて噛み付かんとして来るところをフルーレで応戦する。自分の身を守るだけでいいので幾分か楽だ。

 

時間だ。魔法陣が完成する。

 

「お前ら干物にしてやるよ」

 

周囲に火柱が上がる。

火が消えると辺りは焼け野原と化していた。

 

「後で、ルーファスになんかテキトーに植えといて貰おっと」

 

楽天的に呟く。しかし、すぐに違和感はアキを襲った。

 

反応が消えない。

すぐに警戒体勢を取ると殆どノーダメージなシーサーペントが一挙に押し寄せてきた。

緊張が走る。

アキは1体を正面から細剣で突き刺すと回り込むように回避その後、もう1体を背後から一突きすると、距離を取る。

反応を確認すると残りは9体らしい。

再び宝杖を手に取ると雷の属性付与をかけ直し、できるだけ広範囲に雷を放つ。

2体は捕まるが残りは一挙に向かって来る。アキは杖で一体ずつ対処しようとするが数の差で更に2ヶ所を噛み付かれる。

 

「何やってんのお前?」

 

声がするとあっという間に体に巻き付いていた、蛇が細切れになって散る。

 

「相変わらず、火属性以外は扱い下手だねぇ」

 

颯爽と現れた彼は茂みに双剣を投擲、残った反応を次々と消していく。

 

「るっせぇ、テメーよりは使えるよ」

 

アキも負けじと雷を落とし、残りの反応を消し切る。

 

「水棲の魔物に火が通らないなんて常識だろうに」

 

「それは、少しイラついたから…」

 

「ったく、テメーはガキかよ…まぁ、少しは懲りて考えて戦えよ」

 

「ッ、おう」

 

少し苦い後味を残して戦闘が終わる。

ルーファスは早くも魔剣の回収を始めていた。

それを見るとアキも、持てる限りの魔剣を背中に背負った青い箱へと詰め始めた。

 

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