俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
では、どうぞ。
フィーリアから託された想い、そして迫り来る脅威を改めて再確認し、決意を固めたところで再び会議が始まった。
その第一声として、総二が呟いた。
「そういえばトゥアール。テイルギアを使える人間って、俺と康太以外、他にはいないのか?」
総二の質問に対し、ようやく涙を拭き終えたトゥアールは座り直って話し始めた。
「さすがに量産は出来ませんが、あと1つだけあります。適合者も既に判明はしているのですが……」
と、ここでトゥアールの表情が苦々しくなった。
「ですが……?」
「お二人のように、正しい心を持った人ではありませんでした。言うなれば、心持たぬ非道な蛮族。そんな方にこれ以上の強力な力を渡してしまったら、仮に使えたとしてもアルティメギル以上の脅威になりかねないのです」
「そうなのか」
康太はそう呟いた。とはいえ、何故かそう言うトゥアールの視線が愛香に向けられているような気がするのだが、気のせいと思う事にした。
「ツインテールを好きな奴にそんな悪党がいるなんて、何か悲しいな……」
「お前はいつでもツインテール基準なんだな……」
「でも、エレメーラを持ってるのに心持たない奴がいるってのも変な話ね」
「そうですね。私もこの目で見るまではマジで信じられませんでした」
「……って事は、しばらくは俺達2人で戦う事になるって事か」
康太は腕組みしながらそう呟いた。実際、今回戦ったリザドギルディは切り込み隊長と呼ばれるだけあってそこそこ強敵だった。今後、それ以上の敵が現れた時、2人でどこまで対処出来るかが不安だった。
「(……ま、そこは気合いで乗り切るしかねぇか)」
康太がそう結論づけた。
「……でも、戦えるのはそーじとこーたの2人だけだから、止めようとはしないけどさ、自分の身体は最優先にしなさいよね」
「分かってるって」
「心配すんなって。師範の指導を受けてる俺達なら、ちょっとやそっとぐらいの怪我なんてどうって事はねぇだろ」
「心配するわよ! あいつらにとって2人は最高の獲物みたいなもんなんだし、負けたら何されるかと思ったら……!」
「何を言ってるんですか、むっつり愛香さん。別にエレメリアンは人間の身体に興味はありませんよ。どうせ触手とかそういうのを想像してたんでしょ」
そう言うが早いか、愛香は顔を真っ赤にして今日テイルホワイトがやってのけたようにアッパーをトゥアールの顎にクリーンヒットさせて、天井に激突させた。
「う、うるさいわね! そういう奴らだっていてもおかしくないって思ってたから……!」
「ていうかそろそろ手を出すのは止めてくれよ! ここ俺の部屋だから! 人ん家を殺害現場にするつもりか⁉︎」
総二が悲痛なツッコミを入れる中、トゥアールは何故か関係ない胸をさすりながら、3人に言った。
「さ、さて……。テイルギアの詳しい使用法や今後の方針は明日以降にして、今日はこの辺にしときましょう」
「そ、そうだな。これ以上はトゥアールの身がもたない気がしてきたからな……」
康太はこれまでの惨劇を思い返しながら、トゥアールに同意した。他の2人も頷いて了承した。(愛香は未だに不満げな表情だったが……)
その後、トゥアールが総二にある事を頼み込んだ。
「それでですね、総二様。今後の戦いをバックアップしていく為にも、この家に住まわせてもらいたいのです」
「「「はぁっ⁉︎」」」
3人は呆気にとられた表情で叫んだ。何故そこまでぶっ飛んだ話になったのか。その訳をトゥアールは説明した。
「アルティメギルの刺客はこれからまだまだやってきます。ましてやリザドギルディが倒されたとなればなおさら……。それに基地の建設も急務なんです」
「基地?」
「敵の規模が巨大な以上、お二人をサポートする体制は万全でなければなりません。出撃補助にモニタリング、メンテナンスを兼ねる事も考えるとそれなりの大きさの基地が必要になってくる訳です」
「なるほどな……」
確かにトゥアールのサポートの有り難みは、重々承知していた。それをより充実させるには、基地は必要不可欠なのかもしれない。
「ですので、この家の地下に空間を作ろうと考えているのです。今晩中までには何とかなるかと……」
「家の地下にって、地震来た時大丈夫なのかそれ⁉︎」
「ていうか、あたしとこーたの家、隣にあるんですけど」
愛香の言う通り、総二の家は愛香の家と康太の家に挟まれる形で建っている。実際、繋がっているといっても過言ではない。
それでもなお、トゥアールは胸を張って自信満々に答えた。
「ご心配なく。愛香さん1人だけが暮らしてる家でしたら特に考慮はしませんでしたが、さすがに愛香さんの両親や康太様にそのご家族にまで迷惑が及ぶような真似はしたくないので……」
「埋まれよなあ埋まれよ」
愛香は額に青筋を浮かべながら、トゥアールの頭を掴んで床にガシガシと擦り付けた。
そんな中、総二はう〜ん……と唸りながら悩んでいた。
「部屋に関しては、まだ空き部屋があるからどうにかなるし、基地の建設も賛成だけど、問題はそれをどうやって母さんに伝えるかだよな……」
「確かにな……」
康太も同じように腕を組んで考えた。おそらく未春は今回の件を知ったら確実に首を突っ込むに違いない。そうなると、色々と面倒な事になるかもしれない。どうにかして誤魔化すしかないが、どう説明すれば良いのだろうか。
そう思っていた矢先、
「話は全て聞かせて貰ったわ!」
と言う声と共に、バン! と扉が開き、未春が満面の笑みを浮かべながら、4人分の紅茶と皿に盛られたお菓子をおぼんに乗せて、入ってきた。まるでタイミングを見計らっていたかのような登場に、3人だけでなく、トゥアールも驚いていた。
「何聞いてんだよぉぉぉぉぉっ⁉︎ 自分の息子のプライベートを何だと思ってんだよ!」
「ていうか、プライバシーの侵害ですよ! 未春おばさん!」
「そうですよ!」
「いやぁ、だって愛香ちゃん以外の女の子を連れてきてたから、何か面白展開になるんじゃないかなぁって」
未春の言葉を聞いて、総二は額を押さえて呻いた。どうやら裏口から入ってきた時点でバレていたらしい。原因は間違いなく愛香にあるだろうと、総二と康太は思った。
「……どこまで聞いた! 何を聞いた!」
「ニュースでやってたあの事件、あなた達が解決したんですって?」
「何でそれを疑いなく信じられるんですか⁉︎ 現場を見てた訳じゃないでしょう⁉︎」
康太が驚く中、未春はおぼんを置き終えた後、天井を見つめて深く息をついた。
「とうとう、この日が来てしまったのね……」
「えっ⁉︎ まさか母さん、ずっと前から知ってたのか⁉︎ 俺がテイルギアの装着者に選ばれるって……!」
「全然知らないけど?」
真顔での即答。3人は思わずズッコケた。
「何で思わせぶりな事を言ったんだよ! 全然話聞いてねぇだろ!」
総二がそう言うと、未春は意気揚々に言った。
「聞いてたわよ。エレメーラっていう人間の精神エネルギーを狙って、アルティメギルっていう組織の、エレメリアンっていう化け物がこの世界に攻めてきて、それを総ちゃんと康太君がテイルギアっていうスーツを装着して戦ってたんでしょ? それで、康太君のテイルブレスはフィーリアちゃんから託されたものなんでしょ?」
「完全に理解してたぁぁぁぁっ⁉︎」
「理解力凄ぇぇぇぇぇっ!」
総二と康太が未春の理解力の良さに驚きながらツッコんでいると、未春が不意に恍惚とした表情で天を仰いだまま語り始めた。
「……昔からの夢だったのよ。母さんが中二病をこじらせてるのは知ってるでしょ? それで、世界を守るヒロインになる事を夢見ながら日々を過ごしていたわ。それは叶わずに一児の母になったけど、その夢は全てへその緒を通してあなたに託したのよ」
「生まれる前の我が子に何て事してくれてんだよ!」
総二がヒステリックな声をあげて、康太と愛香が話についていけずに唖然としている中、未春はお構いなしに話を続けた。
「それでね。死んだ父さんも同じよう中二病だったの。私達2人は出会って付き合うようになってからも、真逆のシチュエーションを夢見ていたから、何度も反発し合っていたわ。……別れかけてた時にね。総ちゃん。あなたが母さんのお腹の中にいる事が分かったの。それからは仲睦まじくなったわ」
「それっていわゆる、できちゃった結婚ってやつじゃないですか⁉︎」
とうとう康太もツッコミを入れざるを得なかった。一方、当の本人はというと……。
「……聞きたくなかった。何だよその出産秘話……」
「あっ、そうそう。ちなみに総ちゃんの名前に入ってる「二」って文字はね。母さんと父さんの共通の思いが込められてるの。「あ〜、ホントに中二の頃が楽しかったな」っていう良き日の郷愁から、生まれてくるあなたの名前に「二」がつけられたのよ」
「何でその事実を墓まで持って行ってくれなかったんだよ!」
「本当はもっとかっこいいものにしたかったのよ。
「……グレるぞ」
ボソッと呟く総二を尻目に、トゥアールが未春に話しかけた。
「それで、お母様。総二様にはもうお話したのですが……」
「家に住ませて欲しいって事でしょ? 良いわよ。断る理由が無いもの。もちろん、秘密基地の件もOKよ」
「ありがとうございます!」
「って、うぉい!」
あれよこれよと話が進んでいくのを見て、総二は慌てた。
「それとお母様、今から「困ったわね、予備の布団が無いのよ。そうだ。総ちゃんのベッドで一緒に寝るといいわ!」と言ってもらう算段をつけたいのですが」
「それ本人の目の前で言わせるもんじゃないだろ⁉︎ 総二のいないところでやった方が……」
トゥアールからのまさかの一言にツッコむ康太。が、未春は歓喜しながら叫んだ。
「トゥアールちゃん、いいわ。あなたとってもいいわ! あなたのような人が異世界からやって来たなんて、母さんとっても嬉しい! ここを自分の家だと思って暮らしてね! ……でも、困ったわね、予備の布団が無いのよ。そうだ。総ちゃんのベッドで一緒に寝るといいわ!」
「ボイスレコーダーみたいに完璧に再生しやがった⁉︎」
「ある意味凄ぇ!」
さすがは青春の全てを中二病に費やした事だけあって、その対応は圧巻だった。
「というわけで、トゥアールちゃんは家に住んでも全然構わないから。総ちゃんの部屋含めて、自分の家だと思って遠慮なく使ってね」
「はい、お義母様! 主に総二様の部屋を自分の家と思って生活します!」
「……ふふ。でも条件は2つよ。1つは基地が完成したら私にも見せてくれる事。それから、総ちゃんをちゃんと男にする事」
「嫌ですわ、お義母様。そんな他人行儀な。いつかと言わず、何故今晩にと言ってくれないのですか?」
「トゥアールちゃん……!」
「お義母様……!」
「あの……」
完全に置いてきぼりにされている総二と康太だが、そこへすかさず愛香が割って入ってきた。
「未春おばさん! ちょっとこっちに!」
「あらあら、おばさん大人気♪」
「それからあんた! 勝手に「義」をつけるんじゃないわよ!」
「何故分かったのですか⁉︎」
愛香が抱き合っていた2人を引き離して、未春を廊下に連れ出した。ついでにトゥアールへのツッコミも忘れずに……。
呆然としていた総二を見て、康太はやれやれと言った表情で、総二の肩に手を乗せて言った。
「ま、俺もなんとかフォローするからさ、とりあえず頑張れ」
「……マジで頼む」
一方、愛香と未春の方はと言うと……。
「未春おばさん! よく考えて! あんな痴女と同居させたら、そーじの貞操がピンチに……!」
「願ったり叶ったりじゃない。急に美少女が同居してきてエロい展開になるなんて、まさにあの日あの時思い描いた理想そのままよ! 想像しただけでもたまらないわ! だから別に総ちゃんが押し倒されても、私は痛くも痒くもないわ」
「ちょっと! それでも親ですかあなた!」
愛香がそう言うが、未春はいつになく真剣な眼差しで愛香を見つめて、キッパリと言い切った。
「親よ。だからこそ、一人息子に彼女が出来て欲しいって思うのは、普通の親心じゃなくて?」
「そ、それは……」
割と的を得ている(?)意見に愛香も反論しづらくなり、顔を赤く染めながら俯いた。
「本当はあの娘が現れなかったら、もう少しゆっくりとあなたを見守っていたかったけどね」
「な、何言ってるんですか⁉︎」
「トゥアールちゃんはいい目をしてたわよ。一目で分かるわ。あれは童貞食いたくてムラムラしてる節操無しの女の目だわ」
「仮にも客人に言う言葉なんですか、それ⁉︎」
不憫に思った愛香がそうツッコむが、未春はまたキッパリと言い切った。
「……彼女は客人じゃないわ。トゥアールちゃんはもう、立派な家族なの」
「お義母様……!」
そこへ、扉を開けて部屋から出てきたトゥアールが目を潤ませながら未春に抱きついてきた。
「何故感動的な場面に……?」
康太が困惑する中、トゥアールと未春が2人だけの空間に入り込んだまま会話をしていた。
「お言葉ですがお義母様。私は節操無しではございません。総二様一筋です」
「前半の部分も否定せい!」
「そうね。1人の男にだけ節操がなくなるのも女のロマンなのかもしれないわね……」
しばらくその様子を眺めていた愛香だったが、これ以上は無駄だろうと考え、隣の自宅に帰する事にした。帰る前に、愛香は総二に向かって忠告した。
「そーじ。今日から部屋に鍵をかけて寝なさいよ」
「何でさ?」
「何でもじゃ! やらなかったら外側から溶接するわよ!」
「…ここ、木製だぞ?」
康太のツッコミも無視して、愛香は靴を履いた。玄関の扉を開ける前に、愛香は振り返って2人に言った。
「……あいつ。あーやっておちゃらけているけど、何か隠してるわよ」
「……えっ?」
「……愛香もそう思ってたのか」
「康太……?」
愛香の意見に賛同する康太に対し、困惑する総二。愛香は続けざまにこう説明した。
「トゥアールは、元いた世界は滅んだって言ってたけど、それじゃあ肝心のテイルギアのコアになるツインテール属性はどうやって手に入れたの?」
「あっ……!」
愛香の指摘を受けて、総二も疑問を持った。康太が言葉を繋いだ。
「俺もそれが分からなかった。姉ちゃんが開発してたこのテイルブレスをどうやって作ってたのかが……。肝心のトゥアールも、何かいろいろとぼやかしているように見えてな……」
「とにかく、気をつけなさいよ。あいつ、何か大切な事を隠してるわよ……」
そう言って、愛香は扉を開けて去っていった。
康太も、そろそろ両親が帰って来る頃だと思い、同じように靴を履き始めた。そして、振り返りざまにこう呟いた。
「……ま、どっちにしてもやる事には変わりはねぇけどな」
そう笑みを浮かべながら、扉を開けて観束家を後にした。
「(姉ちゃんが何を思ってこのテイルブレスを作ったのかはよく分からねえ……。けど、この力でみんなの希望となるものを守れるのなら、今はそれでいいのかもな……)」
康太は右手首につけられた、
ちなみにその日の夜は、総二の家の地下の方で何やら怪しげな掘削音が響いていたが、康太はとことん無視する事にした。
というわけで、今回はこの辺で。
普段はおちゃらけているように見える未春さんも、重度の中二病とはいえ、やっぱり一人息子を大切にしてるように見えるので、良い母親なのかもしれませんね。母親の、子に対する愛情は、海よりも深いものなのかもしれません。
それでは、次回「SNSって本当に怖いものですね」に、テイル・オン!