俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
では、どうぞ。
やけに騒がしかった夜も明けて、次の日の朝、康太はいつも通りに両親に行ってきます、と一言言ってから総二の家の前に向かった。康太が玄関を開けるのと同時に、総二、愛香も出てきた。総二の方は疲労困憊といった様子だ。
「よう、総二、愛香。今朝、ものすんごい音が聞こえたんだけど、何かあったのか?」
康太は挨拶も早々に済ませて、今朝方総二の部屋から鳴り響いた鈍い音について質問した。
「あぁ、おはよう……。それの事なんだけどさ……」
総二がげんなりした様子で愛香を見て呟いた。
なんでも、夜明け前に総二が目を覚ますと、トゥアールがちょうど基地建設を終えたらしく、寝ぼけ眼のまま、鍵のかかっていない総二の部屋に入り込んで来たらしい。そこに、音を聞きつけて駆けつけた愛香が鬼神の如くトゥアールにパンチやらキックやら……。康太はこれ以上想像する事を止めにした。ちなみにトゥアールは現在、掛け布団に巻かれて、紐で縛られた状態でグッスリ寝ているとの事。
「……そりゃあ、ご愁傷様だな」
「……あぁ」
「ま、あいつの事は今は放っておきましょう。それよりも、今朝の新聞見た?」
そう言って愛香が差し出したのは、今朝の新聞の一面だった。そこには、昨日「マクシーム空果」で起きた怪事件の内容や写真が掲載されていた。幸いな事に、アルティメギルならいざ知らず、テイルレッドやテイルホワイトの事までは記事には載っていなかった。
「まぁ、昨日は新聞社らしい団体は見なかったしな」
「とりあえず大事にはならなくて済んだみたいね」
「母さんは相変わらず1人ではしゃいでたけどな」
総二は苦笑しながら呟いた。
「とにかく、世間に知れ渡らない内にあいつらを片付けていけばいいもんな」
「あぁ」
「そうね。じゃあ、行きましょ」
2人もそう呟くと、学校に向かって歩き始めた。おそらく、自分達の事や敵の事はしばらくは噂には出てこないだろうと康太は思っていた。
……だが、教室に着いた途端、その考えは早くも崩れ去った。
「……マジ?」
総二と康太が呆然とする中、愛香はポツリと呟いた。そう呟くのも無理は無い。何故なら目の前には1人の男子生徒が、黒板にテイルレッドとテイルホワイトの似顔絵を描いており、その周りにクラスメイトが男女問わず群がって、絵を見て感激していたのだ。
「凄〜い!上手じゃない!」
「へへっ、まぁ、これくらい朝飯前だからな」
「さすが元漫研。センスあるなぁ」
「可愛い〜!」
「にしても、マジで似てるなぁ!テイルレッドたんに、テイルホワイトたん!」
「ちょっと!テイルホワイトはお姉様って言ってるでしょ!」
「おっと、失敬。そうだったな。ホワイトお姉様だったな」
「どぉでもいいわぁぁぁぁっ!」
我慢出来なくなって、康太が教室に響くぐらいのツッコミを入れた。
それに気づいたクラスメイトが康太に声をかけた。
「おっ、康太じゃん。おはよっす」
「おぉ、おはよう……じゃなくて! 何なんだよこの状況⁉︎」
「何でお前ら、テイルレッドとテイルホワイトの事を……⁉︎」
総二が生徒達に尋ねると、男子生徒の1人が自身のスマホの画面を見せた。そこにはテイルレッドとテイルホワイトが協力してリザドギルディにパンチを決めている画像が載っていた。
「昨日、ネットですんごい噂になってさ! 突如現れた怪物の前に颯爽と姿を見せた2人のヒロインが敵をやっつけるって内容でさ! これなんてもう閲覧数が100万を超えてるんだぜ!」
それを聞いて、康太はしまった、と言わんばかりに手を額に当てて天を仰いだ。世はSNSによって成り立つ現代社会。そう考えれば、昨日の件も遠くから見ていた観衆のほとんどが、自分達の様子を写真なり動画なりと記録しているのは当たり前だ。さすがにそこまでは配慮していなかった為、当事者である総二と康太は項垂れていた。
すると、校内放送が流れてきて、スピーカーから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「陽月学園全生徒に告げます。今日の一時限目の授業を中止して、臨時の全校集会を行います。したがって、全生徒は体育館に集まってください。繰り返します……」
それは生徒会長でもあり、昨日の被害者の1人であった慧理那だった。
「……何だ?」
「昨日のやつじゃね? うちの学校の人も何人か巻き込まれたって聞いてるし」
「じゃあ、行くか」
そう言って生徒達はぞろぞろと教室を出ていった。そんな中、当事者となった3人は頭を抱えていた。
「何なんだよ……! 何でこんな事になっちまうんだよ……」
「と、とりあえず、体育館に行きましょ……」
「……なんか、嫌な予感しかしねぇけど、しょうがねぇよな」
という訳で、3人も一抹の不安を抱えたまま、体育館に向かった。
体育館に全校生徒が集まったところで、壇上に慧理那が登場した。館内が静粛に包まれる中、慧理那が口を開いた。
「皆さんも知っての通り、昨日、突如現れた謎の怪人によって、街は未曾有の危機にさらされました。そして、私自身もその被害に遭った1人なのです」
「なっ……⁉︎」
「何だって⁉︎」
「マジかよ! 許せねえ!」
慧理那の一言に、生徒達の間で怒号が飛び交った。確かに生徒会長で、しかも可愛い部類に入る慧理那が狙われたともなれば憤るのも無理は無いのかもしれない。何故か、「俺の身体にダイナマイトをぉぉ!」という、奇妙なワードも聞こえてきたのだが……。
「皆さんのその正しき怒り、とても嬉しく思いますわ。他人の為に心を痛められるのは素晴らしい事です。ましてや、私のような先導者として未熟者の為に……」
身長が低い為か、何度も背筋を伸ばして話す度に揺れるツインテールに目を奪われる総二だが、本人は気にせず話を続けた。
「しかし、狙われたのは私だけではございません。この中にも数名いらっしゃるでしょうし、学外に目を向ければ、さらに多くの女性が危うく侵略者の毒牙にかかるところだったのです」
再び騒めく生徒達。そこに、慧理那の次の言葉が生徒達に聞こえてきた。
「……しかし、今こうして私は無事にここにいます。おそらくテレビではまだ情報は少ないでしょうが、ネットでは知っておられる方も多い事でしょう。あの場に、風のように颯爽と現れた、2人の正義のヒーロー……、この場合はヒロインでしたね。彼女達によってに助けていただいたのです!」
その言葉を聞いて、嫌な予感がした総二と康太の背筋に冷たい汗が伝った。
「私は、あの少女達に心奪われましたわ!」
その一言と共に、体育館全体から歓声が湧き上がった。
「うぉぉぉぉっ! その言葉を待ってたぜ!」
「良かった……! 胸を張って小ちゃい子ハァハァ言うのに、正直引け目を感じてたんだけど、会長がそう言うのならもう何の憂いも無し!」
「いやいや、憂いは持っとけよ! それでもってハァハァしとけよ!」
「(何とんでもない事口走ってるのさ!)」
日本、もとい地球の将来を不安視させる発言を前に、康太が心の中でそうツッコんだ。総二も肩を震わせている。
そんな彼らに、さらに追い討ちをかけるかのように慧理那は右手を挙げて叫んだ。
「これをご覧あれ!」
その瞬間、SPとして側にいたメイドの1人がすかさず背後のスクリーンに、ある映像を映し出した。そこには2人の少女が映っていた。
「「「うぉぉぉぉっ!」」」
「「おぁぁぁぁっ!」」
皆の歓声とは裏腹に総二と康太は絶叫した。そこには、レッドがブレイザーブレイドを振り回してアルティロイドを倒すシーンや、ホワイトがアッパーでアルティロイドを吹き飛ばすシーン、そして極め付けは2人同時に必殺技を繰り出してリザドギルディを倒すシーンが流れていた。完璧としか言いようのないアングル。どうやら既にネットで全世界に流出されているようだ。
「神堂家は、あの方達を全力で支援する事に決定しました! 皆さんも、どうか私と共に、新時代の救世主を応援していきましょう!」
その一言で、館内はさらに盛り上がりを見せた。困り果てた康太は総二に話しかけようとしたが、何故か総二は映像に映し出されたツインテールに目がいっていた。康太は小声で話しかけた。
「お、おい、どうした……! ツインテールにつられてるぞ!」
「い、いや。だって、あんなに見事なツインテールが2つもあるんだぞ! 何よりもあの会長がだぞ……! 会長が俺達のツインテールを見てくれているんだぞ! みんなにツインテールを見られてると思ったら……」
「戻ってこい……! お前までとんでもない領域に踏み込もうとしてんじゃねぇよ! 俺達、とんでもない辱めを受けてるんだぞ……!」
「……はっ!」
康太に指摘されて、ようやく総二も右の頬をつねる事で気を確かに持てたようだ。
学校ぐるみで自分達を応援してくれるのは、本来ならありがたい事この上ないのだが、女体化という業を背負ってしまった彼らにとっては、決して手放しで喜べるものではなかった。
全校集会も終わり、授業が再開されてからも、2人に安らぎというものは存在しなかった。全校集会でレッドとホワイトの話が出てからというものの、放課後には必ず生徒達は噂話で2人の事を話題にしていた。中でも、休憩時間の長い昼休み、総二ら3人が固まって昼食を食べている時にはさらにヒートアップしていた。
そんな中、総二の後ろの方で、男子生徒達がスマホを片手に集まっていた。どうやらこちらはテイルレッドがメインになっているようだ。
「お〜! まだこの写真は見てなかったな!」
「可愛いなぁ、テイルレッドたん」
「うんうん、可愛いよなぁ、テイルレッドたん」
「俺、巨乳好きだったんだけど、こういうのも悪くないかもな」
「決めた! 俺、レッドたんのお兄ちゃんになる!」
「ぶ〜〜〜〜⁉︎」
思わず飲んでいたフルーツオレを噴き出す始末。
「ちょっとそーじ! 顔にかけないでよ!」
「わ、悪い……、つい……」
総二が謝る中、康太は頭を抱えていた。
「にしても、思いっきりネットに拡散してるなんてな……」
「今日帰ったら、トゥアール締め上げてネット上にアップされたファイル全部消させましょうよ! あいつの科学力ならなんとか出来るでしょ?」
「せめて暴力以外の解決方法で事を進めてくれよ!」
総二のツッコミが炸裂する中、男子生徒達は依然として可愛い、可愛いと連呼している。しまいには、
「あぁ! もうたまらん!」
「あっ、こら! 抜け駆けするなよ! 俺が!」
男子の1人が自身のスマホに口づけをしようとしているのを慌てて抑える他の男子の姿が。
とうとう我慢出来ずに、
「おぁぁぁぁっ!」
総二は愛香のマグボトルを掴んで口づけしようとした男子生徒に投げつけて、後頭部に直撃させた。どうにかしてギリギリのところでキスは回避出来たようだ。
「痛えよ! 何すんだよ観束!」
「お前こそ何やってんだよ! 恥を知れよ! そんな小さな子に!」
「もう恥なら受け入れたさ!」
「堂々と言うもんじゃねぇよそれ!」
「つーか観束、お前確かツインテール部を作りたいほどツインテール好きだったよな! 独占しようったってそうはさせないぞ!」
「しねーよ! 後、名前覚えててくれた事は感謝するけどな! なぁ康太、お前からも何とか……」
そう言って康太に助け船を求める総二だったが、康太の方を見てみると……。
「きゃー! かっこいいー!」
「素晴らしい身のこなしで、あれほどの数を相手にするなんて……! さすがですわ、ホワイトお姉様!」
「男勝りなあの振る舞いが、またたまらないわ! ホワイトお姉様!」
「一度でいいから、生で見てみたいなぁ! それでもって、優しく抱きしめられたら、これ以上の幸せはないわね!」
「あぁ、愛しのホワイトお姉様! あなたに会える日を、私は心からお待ちしてますからねぇ〜!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
周りでこれまたスマホを片手に騒ぐ女子生徒達の会話を聞いて、顔を机に伏せながら、魂が抜けているかのように青ざめる康太の姿が。隣に座っていた愛香も心配そうに康太の身体を揺さぶっている。
「こ、康太ぁぁぁぁっ! 死ぬなぁ! 生きるのを諦めるなぁぁぁぁぁっ!」
総二は康太に手を伸ばしながら叫んだ。
どうやら男性陣ではテイルレッドが、女性陣ではテイルホワイトがそれぞれお気に入りの対象になっているようだ。
……ただ1人、康太の隣の席に位置する真矢だけは、周りの女子の輪に入ろうとはせずに、黙々と昼食を摂っていた。
……と、このように新学期が始まって2日目にして、2人にとって胃の痛くなるような時間を過ごす事となったのであった。
キリがいいので、今回はこの辺で。
クラスメイト達の変態ぶりはいかがでしたか?
ちなみに、今回のタイトルは私の本音をそのまま題材にしています。故に私はTwitterやLINE、Facebookの類は一切利用していません。単純にそこへの書き込みが怖いですから……。
それでは、次回「ツインテイルズ、テイル・オン!」に、テイル・オン!