俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
では、どうぞ。
2人がピンチに陥っている姿を、モニターで見ていた愛香とトゥアールは心底焦っていた。ちなみに、未春はすぐに2人が勝って戻ってくるだろうと思ったのか、この場にはいなかった。
「ど、どうすんのよ⁉︎ このままじゃそーじとこーたが……! ねぇトゥアール、こっちからミサイルとか何かで援護出来ないの⁉︎」
「あればとっくにやってますよ!」
そう呟くトゥアールは、何か迷っているようだった。
「こうなったら、もう……」
やがて、トゥアールは拳を握り締め、震えながら意を決したように愛香にある事を告げた。
「……愛香さん。頼みがあります」
「あたしに出来る事があるの⁉︎ 2人を助けられるなら、何でもやるから!」
「では、変身してくれませんか?」
「分かったわ! 変身すれば……って、えっ⁉︎」
愛香は咄嗟にそう答えたものの、冷静になって事の重大さに気づいた。対するトゥアールは静かにその言葉の意味を語った。
「前に、もう一人候補がいると言いましたよね? それが、愛香さんなんです……」
「嘘……」
驚く愛香を見て、トゥアールは沈みきった表情で話を続けた。
「信じられないかもしれませんが、本当なんです。きっと、同じツインテール属性を持つ者同士だから導かれ、引かれ合ったのでしょう」
運命。そんなワードが頭の中に浮かんだ愛香は顔を赤くしたが、すぐさまある内容が頭の中を支配した。
「……ねぇ。確かあんた、もう一人は悪魔みたいな奴で、渡したら地球が滅ぶかもって言ってたわよね?」
「それは事実でしょう?」
刹那、愛香の久々にもなる骨法が炸裂した。かました後、愛香は拳を握りながら静かに呟いた。
「……そうね。確かにあんたの言う通り、悪魔って言われても仕方ないのかもしれない。でも、そーじやこーたを助ける事は出来るわよ!」
「あ、愛香さん。それ、殴った後に言うセリフでは……」
頬を抑えているトゥアールに、愛香は詰め寄った。
「あたしだってあんな変態達を相手するのは嫌だけど、幼馴染みのピンチを黙って見ているなんてもっと嫌よ! なのに何で頑なに拒んでいたのよ!」
その問いに、トゥアールは躊躇いながらも答えた。
「愛香さんを危険に巻き込みたくなかったんです……。そりゃあ、僅か数日で何度も殺されるような目に遭わされましたけど、この世界で出来た、大切な友達である事には変わりはありませんからね」
「……で、本当の理由は?」
未だに警戒心を解かない愛香はさらに問い詰めた。
「後でテイルギアの力を維持するために私の生体データを総二様の体内に取り込む必要がありまして……。という嘘をついて、いかがわしい行為に走ろうかと思っていたのですが、総二様は康太様と共に危険な状態。さらに、愛香さんにテイルギアを渡したら、辻褄合わせのために愛香さんも身体を重ねなければならないですから……」
「このど変態女がぁぁぁぁっ!」
遂に爆弾発言をしたトゥアールの首を容赦なく握り締める
「あんたは何でいっつもいっつもエロい事ばっかり考えてんのよ!」
「メスがオスに発情して何が悪いんですか!」
「開き直んなや! ……あーもう! あたしが嫌いなのはよく分かったわよ! でも、今は2人を助けたいの! だから、あたしにも戦わせて!」
すると、トゥアールは急に苦笑して、肩の力を抜いた。
「……本当の事を申しますと、嫌いなんて思っていませんよ。さっき言った、大切な友達というのは、嘘じゃありませんから」
「な、何よ急に……」
再び顔を赤くする愛香。トゥアールはモニターを見ながら、本音を語った。
「前にも言いましたが、この世界を守るためとはいえ、これは私の小さな復讐と今は亡きフィーリアの敵討ちのようなものです。直接関係の無い総二様と康太様に戦いを強いただけでも胸が張り裂けそうに苦しいんです……。その上、大切なご友人まで戦いに巻き込んでしまったとあっては……」
「……」
さすがの愛香も黙るしか他に無かった。もっとも、この会話を総二と康太が聞いていたら、こう答えていたのかもしれない。
……俺達は、そこまで大それた事は考えていない。ただ、自分達が好きなものを自分の意志で戦って守っている、と。
「愛香さんを戦いに赴かせたら、お二方はさぞ私をお恨みになるでしょうね。フィーリアに似て、本当に優しい方々ですから……」
「(あの2人がそんな事を思うとは思えないけどね……)」
そう思っていた愛香は、ため息をついてからトゥアールにこう告げた。
「あたしだってツインテールなのよ。どのみちあいつらの標的になるんだから、自分で戦える方が安全でしょ? あたしは他人を守るのに親身にはなれないかもしれないけど……」
「総二様に違ってあなたのツインテール属性は自分のためのものでは無いでしょう? あなたは、命と同じくらい大切にされてきたツインテールを賭けられますか? 一度ブレスをつけたら、もう後戻りは出来ないでしょう」
トゥアールから、おそらく初めてであろう気遣いを聞いて、愛香は笑みを浮かべた。
「あたしは自分の決断に責任が持てないほど子供じゃないわよ、トゥアール」
それを聞いたトゥアールは頷いて、ポケットから青いテイルブレスを取り出した。そして、真剣な眼差しでこう言った。
「本来は巨乳用に作られたテイルギアですから、多少不具合があるかと思いますが……」
「なんか嫌な感じしかしないけど、仕方ないわよね……」
「それから、約束してください。何があっても……。総二様の初めての女になるのは、私に任せてもらえると!」
「……オイ!」
ここに来てのまさかの変態発言に、愛香は間髪入れずにツッこんだ。
「時間がありません! いいからうんと言ってください! でなければ、これはさすがに渡せません! それとも、今からヒーローになろう者がまさか私を張り倒して奪っていくので……」
不意に愛香の雰囲気の変化に気づいたトゥアールは、顔を青ざめたが、すぐにその予感は的中した。
愛香はニコリと微笑みながらトゥアールに投げ技を決めて、その衝撃でトゥアールの手から離れたテイルブレスを手に取った。
「待っててね、そーじ、こーた! 今行くから!」
そしてテイルブレスを右手首につけて、腕を高くあげて、その変身コードを叫んだ。
「テイル・オン!」
すると、愛香の体は青色の光に包まれて、テイルギアを纏った戦士になった。やけに露出度が高いスーツだったが、動きやすさに関しては申し分なかった。
「……とりあえず、ブレスをくれた事には礼を言っとくわ、トゥアール」
愛香は、床に倒れこむトゥアールに振り向く事なく、静かにそう告げてから、転送装置に乗り込んだ。
愛香が転送されてしばらくしてから、トゥアールは何事も無かったかのようにムクリと起き上がって、白衣の乱れを整えてからこう呟いた。
「……今はもう戦えない私の分まで、彼らを守ってくださいね。愛香さん」
と……。
その頃、ホワイトは苦戦を強いられていた。現在、フォクスギルディのリボンによって拘束されており、頼みのレッドも、目の前にある人形のツインテールを壊せない事に葛藤しており、完全に戦意が削ぎ落とされていた。
「くっ……! こんな、ところで……!」
「ふふふ。そう抵抗なさらずとも、優しくしてあげますからね。……おやおや、甘えん坊さんですね〜。後で絵本を読んでさしあげましょう」
フォクスギルディは振り返って人形にネットリとした口調で余裕そうにそう告げていた。
はっきり言って、ホワイトは心の力を嘗めていた。所詮は偽物である事に変わりはないのだが、フォクスギルディの妄想力の強さを実感して、改めてその力に感服した。かつて、愛香の祖父が言っていたように、心の持ち用によって人は強大な力を発揮する。それはエレメリアンにも同じ事が言えるようだ。
しかし、だからと言ってこの状況を打開しなければならない。そうしなければ、自分達の周りから、大切なものが奪われてしまうのだ。
「(くそ……! 本当にジリ貧だ……! 一体どうすりゃ……!)」
ホワイトが必死になってフォクスギルディから離れようとした、その時だった。
「そこまでよ! 変態!」
「ムッ……⁉︎」
「えっ⁉︎」
「な、なんだ……⁉︎」
思わずフォクスギルディと一緒に振り返ってしまったレッドとホワイトだが、目の前に現れた人物に驚愕した。
その人物は、自分達がよく知る幼馴染みと同じ容姿だったからだ。
と同時に、どこからか嗅ぎつけてきたテレビ局のリポーターやらスタッフらが、カメラマンを引き連れてやって来た。
彼らも、現れた新参の登場に驚いていた。
「おやおや、誰ですか、あなたは?」
フォクスギルディがそう問うと、その戦士は周囲の目線を気にする事なく、ギアを纏った時のその名を口にした。
「あたしは、テイルブルー! レッドとホワイトと共に戦う仲間よ!」
現れた戦士……テイルブルーはそう告げたが、レッドとホワイトにはすぐにその正体に気づけた。どうやら認識撹乱装置は元から正体を知る者には効果は無いようだ。
「(愛香……!)」
「(愛香も、テイルギアを……⁉︎ まさか、トゥアールが言ってた、もう一人の適合者って……!)」
「フォクスギルディ! あたしが来たからには、あなたの好きにはさせないわよ!」
その堂々とした立ち振る舞いに、フォクスギルディも感心したらしく、不適な笑みを浮かべて言い放った。
「おお……! これはまた素晴らしいツインテールの持ち主ですね。まさか仲間がもう一人いたとは……。高鳴る鼓動が抑えきれませんよ!」
そしてフォクスギルディは別のリボンを形成して、ブルーに放った。
「あなたにもっとも似合うリボンを授けましょう」
案の定、ブルーは抵抗する間も無く拘束されてしまった。
「! まずい……! これじゃあさっきと同じ事に……!」
「私の力を侮ってもらっては困りますよ。ちょっとやそっとじゃ私のリボンは……」
「はぁぁぁぁっ!」
するとどうだろう。ブルーは力を入れると、難なくリボンを内側から引きちぎった。
「えぇぇぇぇぇっ⁉︎」
フォクスギルディが驚いている中、ホワイトを拘束しているリボンが緩んだ。
「……今だ! うぉりゃあ!」
「グハッ!」
チャンスと見たホワイトは、両足蹴りで攻撃してフォクスギルディから距離を取った。そして、
「オォォォォォッ!」
と、気合いを入れて、ブルーと同じように引きちぎった。
「残念だったわね! ちょっとやそっとじゃないから、あたし達は!」
ブルーが余裕そうに答えたが、フォクスギルディの方も、余裕の表情を崩さなかった。
「ほぉ……。なかなかやりますね。ですが、それならばなおのことこの人形は破壊出来ないでしょう」
そう言ってフォクスギルディはブルーの目の前にレッドそっくりの人形を出現させた。だが、ブルーにはその小細工は通用しなかった。
「本当に気味の悪い人形ね……! でも、こっちにも対抗策はあるのよ! エレメリーション!」
ブルーが両腕を広げると、胸の中心からエレメーラオーブが出現し、自分の左腕のパーツがスライド展開して、その穴に吸い込まれたかと思うと、ブルーの全身が緑色に光った。
フォクスギルディは瞬時にその光の正体に気づいた。
「! それは、リザドギルディの!」
「さぁ、大人しくしなさい」
ブルーが人形に向かって手をかざすと、人形はリアルさを無くし、ただの土人形のように変わった。
フォクスギルディの持つドール属性よりも強力なドール属性の力によって、人形に宿った生気を無力化したのだ。
「ふんっ!」
さらにブルーはフルスイングの鉄拳で、レッドを模した人形をあっさりと破壊した。
「いや、何してんだよ⁉︎ それ俺の顔だから!」
さすがのレッドも、あまりに躊躇のないブルーのやり方に異議を唱えた。ホワイトも後方から、若干引き気味な感じでその様子を見ていた。
その一方で、さすがのフォクスギルディも動揺を隠せず、思わず叫んだ。
「ば、バカな……! 何の躊躇いもなく破壊するなんて……! あなたの大切な仲間をそっくりそのまま模したものですよ!」
その疑問に、ブルーは鼻を鳴らしながら、あっさりと答えた。
「それが何? 仲間ならここにいるじゃない。どんなに完璧に作れてたって、あたしの知ってる仲間は、世界にたった一人ずつしかいないんだからね!」
「愛香……」
その言葉を受けて、レッドもようやく正気に戻ったようだ。ホワイトもうんうんと頷いている。
「そうだな……。この世にたった一つしかいない存在だからこそ、そいつを大切に思えるからな」
しかし、フォクスギルディも意地になって攻撃を仕掛けようとした。
「お、おのれ……! ツインテール属性はテイルレッドよりかは弱いようですが、こうなったらあなたのエレメーラを頂くまで……!」
そう言って再びリボンを取り出したが、今度はそううまくはいかなかった。
「そう何度も同じ手は通用しないぜ! 今度はこっちの番だ! エレメリーション!」
反撃開始と言わんばかりに、ホワイトはブルーと同様にエレメーラオーブを出現させて、左腕のパーツに取り込んでその力を起動させた。
「タトルギルディの属性力はブルマ。その能力は……重力操作!」
ホワイトが右手に作り出した半透明の球をリボンめがけて投げつけた。球が命中すると同時に、リボンが球体に包まれて、地面に落下した。
「なぁ……⁉︎」
「さぁ、これでご自慢のリボンは封じたぜ! 悔しかったら取ってみな
!」
「ぬぅぅぅぅぅっ! くそぉぉぉぉぉっ!」
フォクスギルディはめげずに重くなったリボンの塊を持ち上げようとした。これまで戦って来たエレメリアンもそうだが、どうやら彼らには殺し屋のように、自分なりの流儀で敵を倒そうという信念があるらしい。それが、自身をより敗北へと導いてしまっているのにも気付かずに……。
「そうら! お次は反重力だ! はぁっ!」
今度は左手に作り出した球をリボンに当てると、リボンは宙に浮いて、空高く舞い上がった。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ! わ、私のリボン、カムバァァァァック!」
フォクスギルディが天高くを見つめて嘆いている隙に、ホワイトは叫んだ。
「今だ! ブルー!」
「オッケー! ウェイブランス!」
ブルーは左右のリボンに手をかざすと、水が出てきて、海のような色をした槍の形になった。
「おぉ……!」
レッドが驚いている中、ブルーはウェイブランスを両手で掴んで振り回した。それと同時にフォクスギルディの周りを円柱型の水流が囲み、フォクスギルディを締め上げた。
「う、うぉぉぉぉっ⁉︎」
「戦いは新参でもね……!」
そして、回転させる手を止めて、ウェイブランスを構えると、
「ツインテールに関しては、あたしの方が、大先輩なんだか……らっ!」
そう叫んでから一直線に投げつけて、フォクスギルディを難なく貫通させた。これがブルーの必殺技「エクゼキュートウェイブ」である。
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ……! さ、最後に夢を……!」
苦しみ悶えるフォクスギルディは最後の最後に残しておいた気力で再び妄想の力を発揮させた。
「……あぁ、また服を着ないで。風邪をひいてしまいま……なるほど。リボンにそんな使い方があったとは……! う、うははははははははぁ!」
フォクスギルディはそれで満足したのか、笑いながら爆散した。
「妄想か……。案外バカに出来ないもんだな」
フォクスギルディが爆散した地点を見つめながら、ホワイトはポツリと呟いた。
ブルーは満足げに笑みを浮かべて、ウェイブランスを霧散させると、フォクスギルディの力の源であった「
「サンキュー。助かったぜ。テイルブルー」
「ありがと」
ホワイトはブルーに近づいて、ハイタッチした。レッドも申し訳なさそうに寄ってきた。
「ごめんな、2人とも。俺が不甲斐ないばかりに迷惑かけちまって……」
「勘違いしないで。ちゃんと自分で決めて変身したんだから」
「まぁ。愛香がそういうなら無理に止めないぜ。仲間が増えたのなら、それはそれで嬉しいし。そうだろ? 総二」
「う、うん……。そうだな。ありがとう」
レッドがそう微笑むと、ブルーは頬を赤く染めた。
そして、ようやく安全が確認出来たのか、遠巻きで様子を見ていた報道陣が駆け寄って来た。それを確認したブルーは顔を元に戻して、報道陣の前でピースしながら微笑んだ。
「今日から参戦しました、テイルブルーです! あたし達、チームで「ツインテイルズ」って事でよろしくね!」
「おい? それっていつ決めた?」
「いいじゃない。気にしなくても」
「結構ノリノリだな……」
レッドとホワイトがツッこんでいる中、ブルーはさっき手に入れたリボン属性のエレメーラオーブを使用してみる事にした。すると、ブルーのリボンのパーツがさらに伸びて翼のような形になった。
「おぉ! これ使える! 空飛べるみたいよ!」
やけに子供っぽくはしゃぐブルーを見て、2人は苦笑した。
「さてと、それじゃあとっとと撤収するか。行こうぜ、レッド、ブルー」
ホワイトがそう言うと、2人も頷いて、ブルーはレッドを抱いて、ホワイトはブースターで空高く飛び上がってその場を去った。報道陣も慌てて追いかけようとしたが、既にツインテイルズは遥か彼方に飛び去っていた。
「(そういやさっきからトゥアールの声が聞こえてこないけど、何かあったのか……?)」
帰還途中、ホワイトは一抹の不安を抱えながら、ブルーを見つめてそう思ってしまった。
新たな戦力として登場した津辺 愛香こと、テイルブルー。だが、彼女の登場はアルティメギルにとっての脅威となったと同時に、ある意味で、人類にとっての破壊神を降臨させてしまった事を、レッドやホワイト、そしてトゥアールは後々思い知らされる事になろうとは、この時誰も知る由も無かった……。
というわけで、テイルブルーの初戦となりましたが、いかがでしたでしょうか?ブルーの戦闘スタイルは、かなり暴力的なものが多いですからね……。これだとさしてホワイトと変わらないのではないかとお思いになるかと思いますが、ホワイトの方はまだ華麗に美しく戦って、拳を振るっていますからね。
では、次回「破壊神の理解者はヒーロー好き?」に、テイル・オン!