俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
では、どうぞ。
「……以上、この20日あまりで撃破された同胞は、隊員15名、アルティロイド135名に及びます」
「ふぅ〜む……。確かにこれは甚大だな」
「ツインテイルズ……! これほどのものとは……!」
アルティメギルの基地のホールで行われている会議では、彼らが深刻な表情のまま唸っていた。
アルティメギルによる宣戦布告から早1ヶ月近く経とうとしていた。
アルティメギルは続々と戦力を投入するわけだが、一向に成果が出ず、それどころか戦力が減る一方であった。
戦闘に慣れ始めた総二と康太に加えて、未春や慧理那、康太の両親からの激励で吹っ切れた愛香が徐々に頭角を現し始め、刺客達をものともせず撃退していた。
「この世界に降りてより、我らが手に入れられたエレメーラは皆無。リザドギルディのように一時捕獲出来たエレメーラも全てツインテイルズに奪還されています」
「ならばエレメーラの持ち主もろとも捕獲し、即座に一時撤退すれば良いではないか」
「何を申す! それではまるでツインテイルズを恐れ、逃げ腰でいるようではないか!」
「そうだ! それは我らアルティメギルにおいて恥ずべき事だ!」
「しかし、いつまでも手をこまねいているわけにもいきませぬぞ」
「う〜む……。この映像を見ての通り……」
一体のエレメリアンがモニターに映し出されたツインテイルズを凝視しながら呟いた。
「3人、というのがまた手強い。テイルレッドは可憐さを備えていると共に強大な力を秘めている。テイルブルーは……、エレメーラこそ劣るものの、攻撃に迷いも無い。故に我らにとっても危険な存在だ。そして極め付けはテイルホワイト。ツインテール属性はそれほど強力でなくとも、知性に美しさに凛々しさ、そしてテイルブルーに匹敵する力を兼ね備えている。この3人が連携を取れている状態では、そう簡単に事は上手く運べないでしょう」
いよいよアルティメギル側にも焦りが見え始めた今日この頃。その一方で、幹部のドラグギルディが腕組みをして、今後の展開を考えていた。
「……ツインテイルズの実力は本物だ。それはこの数日で各々、重々理解した事だろう。最早生半可な戦力をぶつけてもいたずらに削がれていくだけの消耗戦となろう」
そしてドラグギルディは立ち上がって叫んだ。
「これより先は勇者のみ許されし聖戦である。我こそはと志願する者はおらぬか!」
「はっ! それならば私が!」
誰もが躊躇すると思っていた矢先、真っ先に立ち上がって声高々に志願したのは、水色の鉄を思わせるエレメリアンだった。
「おぉ!
「お褒めにあずかり光栄です」
スワンギルディは賞賛してくれた同胞に頭を下げた。
若き新鋭でもあるスワンギルディは、その純粋さや意志の強さを同僚のみならず、歴戦の重鎮達からも一目置かれていた。
事実、ドラグギルディも彼の意志表明を聞いて頷いている。
「よかろう。……だが、今回は出撃の前に2つほどテストを行う。お前がツインテイルズと戦えるに相応しいかをな」
その瞬間、ドラグギルディは自身の剛剣を抜き、一瞬でスワンギルディに詰め寄って剣先を眼球に向けていた。その差、僅か数ミリ。他のエレメリアン達は、あまりにも早すぎて動揺していた。しかし、さすがは若き新鋭と呼ばれるだけあり、全く微動だにしなかった。
「フッ……。肝は中々のものだな。だが、次はどうかな? ……あれを持てい」
ドラグギルディの指示と共に、一体のアルティロイドが黙礼してホールに入ってきた。その手にはパソコンが。それを見て、スワンギルディは初めて動揺を見せた。
「⁉︎ 私のパソコン……! 何故ここへ⁉︎」
これには周りのエレメリアン達も騒めいたが、ドラグギルディが一喝した。
「静まれぃ! これもテストの一環である」
「ま、まさか、あの修羅の試練、エロゲミラ・レイターを……⁉︎」
ドラグギルディの真意に気づいたスワンギルディだが、時既に遅し、ドラグギルディはパソコンを起動し、デスクトップにある1つのアイコンをクリックしていた。
スワンギルディの怯えが一層強まる中、部屋の大モニターに映し出されたのは、俗に言うエロゲーだった。そこにはまだ未成年と思しき女性達がナース服を着ている状態で映っていた。すかさず「ロードする」を選択するドラグギルディ。
「これはこの世界で数日前に発売されたばかりのゲームであろう。もうコンプリートしておるばかりか、オマケのハーレムモードまで手にしているとは、卑しい奴よ」
「ひっ……!」
「それにしても、このセーブデータ、サムネイルが肌色ばかりよのう……」
「お許しを! どうかご慈悲をぉぉ!」
遂に耐えきれなくなって発狂するスワンギルディだが、ドラグギルディは手を動かす事を止める事なく、さらに追い打ちをかけた。
「……ほう。だが一つだけ頬を赤らめた少女のサムネイル……。このセーブデータは怪しいのう!」
そう言ってロードすると、エロゲー独特の会話が始まった。どうやら主人公の部屋で今夜食事に行くが、どこがいいかなどの、2人きりのやりとりが行われていた。が、つつがなく普通の会話に終始し、場面が移ってしまった。
それを見てドラグギルディは察した。
「ふむ。どうやら幼馴染みの部屋に遊びに来て、空気が変わった事ですかさずセーブをしたのであろうな。これから2人で睦言を始めるのではないかと……。だが、何事も無く終わり、次の日の日付けロゴが表示され、落胆!」
「「あるある」」」
「恐るべし、エロゲーあるある……!」
「ぐぁぁぁぁぁっ!」
とうとう耐えきれずにスワンギルディは絶叫し、気を失って倒れこんだ。
「! スワンギルディ!」
「連れて行け」
ドラグギルディがそう告げると、アルティロイドは肩を貸して運んで行った。
「フッ、情けない。これしきの事で……。これでツインテイルズと一戦交えようとは笑止」
一見冷徹に見えるこの言葉。だが、その裏腹、その目にはどこか部下への慈しみも見て取れた。それは他の面々にも察する事が出来た。
「(やはり、まだ青いな。スワンギルディよ。お前の強さは我も周知しておる。だからこそ、お前はまだ倒れるわけにはいくまい。……ここは1つ、腹をくくるとしよう。テイルホワイトとテイルブルーを一度この目で確かめたいからな……)」
そして、ドラグギルディは静かにこう宣言した。
「我が行く」
これを聞いたエレメリアン達はどよめいた。
「なっ⁉︎ ドラグギルディ様自らが⁉︎」
「そ、そのような事は……! 偉大なる首領様より実権を預かる我らの統率者でもあるドラグギルディ様が行かれるなど!」
「こ、ここは私めが出ます! なんなら、今一度テストをしていただいても……」
「くどい!」
そう一喝してから、マントを翻し、ホールを出て行こうとするドラグギルディ。と、そこに会議に出席していなかったエレメリアンが慌てて駆けつけた。
「ど、ドラグギルディ様!」
「何事か」
「さ、先ほどのドラグギルディ様のお言葉を受けて、ラビットギルディが、ドラグギルディ様に迷惑をかけさせずにアルティメギルの士気を高めようと勝手に……!」
「むっ……! あやつが……! 直ぐに向かう! 待っているがいい、ツインテイルズ!」
報告を受けたドラグギルディは急ぎ足になった。
「(いかにあやつとて、ツインテイルズに敵うとは思えぬ……! ラビットギルディよ、早まるなよ……!)」
そして、ホールを出たのを確認すると、エレメリアン達は緊張感が解けたのか、口々に話し始めた。
「なんと神々しい……!」
「さすがはドラグギルディ様、恐ろしきお人よ」
「当然だ。ドラグギルディ様は、歴代アルティメギル戦士の中でも、五大究極試練と言われる苦行、スケテイル・アマ・ゾーンを乗り越えられた、数少ない勇者でもあるのだ」
「なんと……! あの、通販で買った物が1年間ずっと透明な箱で梱包されて配達されると言われる恐ろしき苦行を⁉︎ まさしく生きた伝説……!」
「私ならばそんな悪夢、初日で絶命してしまう……」
「だが、あのお方ならば必ず……」
画面は再びツインテイルズの映像に切り替わり、エレメリアン達はそれを眺めながら、ドラグギルディの勝利を願う他なかった。
所変わって森が生い茂る山の中。その中でも開けた場所で1つの決着がつこうとしていた。
「な、何故だ! 何故分からぬ! 寂しいと死んでしまうという儚さをその身に宿した天使の」
「シャイニングフィスト!」
一瞬にしてラビットギルディを塵に還すテイルホワイト。どこと無く非情に見えるが、最早ホワイトのみならず、ツインテイルズにはもう見慣れた光景だった。実際そうでもしなければ自分達の身がもたない。
と、そこへ遅れてテイルレッドがやって来た。
「お疲れ。そっちはどうだ?」
「問題ないぜ。……しっかし、アルティメギルの連中はてんで代わり映えしないんだな」
「そうだな。ここん所、ぶっちゃけ弱くね?」
レッドの言う通り、フォクスギルディに苦戦して以来、出てきたエレメリアンを全くと言っていいほど相手にならなかった。社会的被害も初戦以外に出ていない。それでも、相変わらずと言っていいほどツインテイルズ(主にレッドとホワイト)の人気はうなぎのぼりだった。
とはいえ、今回ラビットギルディが現れたのは人気の無い場所だったためか、まだ報道陣の姿は見えなかった。
「……にしても、なんであいつはこんな人気の無い所に出たんだ?」
「……まさか、野生の兎まで守備範囲だったとか?」
『大丈夫? もう終わった?』
「おう。じゃあ今から……」
レッドがそう言ったその時だった。
「⁉︎」
不意にこれまで感じた事のない気配を感じたホワイトは、とっさに上空を見上げた。
すると、太陽の横で何かが光ったのが見えて、それが自分達めがけて落ちてくるのが分かった。
「! レッド!」
「うわっ⁉︎」
間際で気づいたレッドは、ブレイザーブレイドを盾にしてその勢いを殺した。そしてそのまま後ろに下がって距離を置いた。
「な、何だ⁉︎」
やがて土煙が吹き払われて現れたのは、竜を彷彿とさせる姿をしたドラグギルディだった。
それを見て、ホワイトは目の前に現れた敵が、宣戦布告の映像が流れた時に映ったエレメリアンである事に気づいた。
「! お前は、あの時の……!」
「すまぬ。不意打ちになるとは思わなんだ。お主ならばこの程度軽々と受け切れると思ってな……」
「うっ……!」
その一言一言から放たれる威圧は凄まじいものだった。2人は同時に息を呑んで、同時にこう思った。
「「(こいつは、とてつもなく強い……!)」」
そしてドラグギルディは声高々に名乗り出た。
「我が名はドラグギルディ!」
『ど、ドラグギルディ⁉︎』
通信機からトゥアールの驚きに満ちた声が聞こえてきた。どうやら彼女はドラグギルディの事を知っているようだ。
「全宇宙全世界において、ツインテールを愛するにかけて我の右に出る者はいないと自負している!」
「結構強そうなのに、口上はいつものノリなのかよ……!」
そしてドラグギルディは、先ほどまでラビットギルディがいたであろう地点を悼むように見つめた。
「馬鹿者め……! 我が行くと言ったものを……!」
後一歩間に合わなかった事を悔やみ、拳を震わせるドラグギルディ。それから2人の方に振り返って叫んだ。
「不甲斐ない部下達が退屈をさせた。だが、大事な同胞である事に変わりは無い。仇は討たせてもらおう! お主達のエレメーラを頂く事でな!」
「勝手に攻めてきて何が仇だ!」
「全くだ……! 幹部自らが出向いたんなら話が早い。ここでやっつけてやるぜ!」
そう言って2人は各々の武器を構えた。
「気合いだけは十分のようだな。では、……参る!」
「なっ……⁉︎」
刹那、その巨体からは想像がつかないような高速でゼロ距離まで詰め寄ったドラグギルディ。
「ふん!」
「はぁっ!」
「この……!」
慌てて2人は守りの体勢に入ったが、今までと違い、ダメージがもろに痛みとなって全身を襲った。
『総二様、康太様! 敵の衝撃波がフォトンアブソーバーの閾値を超えています!』
「あぁ……! こいつはちとヤバいぞ!」
「そんな力任せの受けで刃こぼれ1つせんとは……。中々に頑丈だな。とても人間の作ったものとは思えん。かつて生涯に2人だけ認めた好敵手を思い出すな……」
そう呟くドラグギルディの視線は、何故かホワイトに向けられていた。
「この野郎!」
「うぉぉぉぉっ!」
2人は果敢に攻めたが、ドラグギルディは悠々と刃の腹で、剣と拳を受け止めていた。
「(こいつ、ケタ違いだ……!)」
「今更驚く事もあるまい! そうら、もっと速くしてやろう!」
そう言ってさらに攻撃の勢いが増した。
「うわっ!」
「くっ……!」
あまりの速さに翻弄されて、ただひたすら撃ちつけていくしかなかった。
そうやってしばらく攻撃を受け止めていると、レッドが不意にある事に気づいた。
「(この太刀筋……! まさか……!)」
剣筋の軌跡をたどるうちに何かを確信したレッドは、次第に手際よく対処出来るほどになった。
その様子を見て、ドラグギルディは撃ち合いを止めて後ろへ距離を取ってレッドに感心の意を示した。
「ほぉう! まさかこの数合の結び合いで見切ったか!」
「? どういう事だ?」
未だに理解出来ていないホワイトに、レッドはこう言った。
「ドラグギルディ。お前のその剣は……!」
「察しの通り、我が振るうは……!」
そして2人同時に叫んだ。
「「ツインテールの
それを聞いて、ホワイトだけでなく、後から到着したブルーもズッコケた。
「なんじゃそりゃ……」
「なるほど……、今日はそーじ系なのね。ちょっとやばそうかも……」
緊張感の張り詰める中、2人はボソリとそう呟いた。
キリがいいので、今回はこの辺で。
スワンギルディは、アニメでは声はカッコよかったんですけど、結局あれから出ず仕舞いでしたね……。後、ドラグギルディの声はむちゃくちゃカッコよかったです! あれは文句なしじゃないでしょうか。
次回は、アルティメギルの真の狙いが明らかに……!
それでは、次回「語られる真実(前編) 〜アルティメギルの狙い〜」に、テイル・オン!