俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
「(予想以上のツインテール率だったぁぁぁぁっ!)」
春真っ只中の4月。桜の花びらが風に吹かれて幻想的に美しく舞う今日この頃。学生にとって節目の行事とも言える入学式の最中、ここ、私立陽月学園高等部に位置する体育館の中で、赤髪の少年、
現在、生徒会長の
「(あぁ……。また始まってる、総二の悪い癖ってやつが……)」
その様子を、ちょうど真後ろに座っている康太が若干呆れたように総二を見ていた。総二のツインテール好きは幼なじみでもある康太もかなり周知していたが、年々それがエスカレートしてきているのではないか……? と思いながらも、もう慣れたと言わんばかりに放っていた。彼自身も決してツインテールの少女が嫌いなわけではないが、一応常識の範囲内でその少女らを見ているつもりだ。そんな友人の考えなど露知らず、総二はツインテール少女の品評を勝手に始めていた。
「(先ずはあの先輩の……、シンプルだけど愛らしい……! いちごのヘアゴムを使っているから「ストロベリーツイン」と名付けよう……! それから……)」
総二はふと隣に座っている青髪の少女をチラッと見たが、
「(……こいつはいいとして)」
すぐに前に向き直った。総二が無視したのを見てベーッと舌を出した少女の名は
さて、それはともかく、総二は再び品評を始めた。
「(あっちの子は今時珍しい形だなぁ……! 「イノセントツイン」とでも言うべきか……!)」
それから総二は2つ前の席に座っている、ピンク色の髪のツインテール少女の方を見た。
「(おぉ……! 綺麗に整えられたそのツインテールからは、博識溢れるオーラがにじみ出ている……! 愛香に匹敵するほどのツインテールを持つこの子が同じクラスになるなんて、
そして、総二は今回のメインディッシュと言わんばかりに目を輝かせながら壇上に立つ慧理那を愛おしそうに眺めた。
「(そして……! 何と言ってもあの人! なんて高貴で麗しいツインテールなんだ……! 先端にカールがかかってフワッとまとまってるのも、育ちの良さを感じさせるし、身振り手振りに合わせて空を舞う動きは、さながら、ダンスパーティーで踊る姫君のようだ……! こんなに素敵なツインテールの人が生徒会長の学校だったなんて、素晴らしい3年間になりそうだ……!)」
そのツインテールの多さ、美しさに、総二は歓喜して嬉し涙を目尻に浮かべてガッツポーズをするほどだった。そんな幼なじみのツインテールバカっぷりに、康太と愛香はジト目で見つめるだけしか出来なかった。
入学式も終わり、康太達は自分達のクラスである「1年A組」に戻ってから簡単なオリエンテーションを済ませて、部活動の希望アンケート調査の紙に入りたい部活の名前を書く事になった。康太や愛香が真剣に悩んでいる間、総二は入学式で目にしたツインテールの美しさを思い返していた。
「……やっぱツインテールだよなぁ〜」
総二がそう小さく呟いたのが聞こえたのか、後ろの席に座っていた愛香はムッとした表情になり、持っていた消しゴムを総二の頭にクリーンヒットさせた。総二が痛そうに頭を抑えていると、すぐ後ろに座っている康太がツンツンと総二の背中を叩いて、小声で呼びかけた。
「……お前のツインテール好きは今に始まった事じゃないけどさ。とりあえずアンケートぐらいは書いとけよ」
「わ、分かってるって……! 今書くところだから……!」
「は〜い、それじゃあ後ろから集めてくださいね〜」
「……! やべっ!」
担任の先生の合図で後ろから一斉に紙が送られてきた。総二は慌てて、空欄箇所に何を書いたかも考えずに一言書き記した。
やれやれ……と思いながらその様子を見ていた康太は、回ってきたプリントを総二に渡し終えた時、隣から鋭い視線が飛んできた。恐る恐る隣を見ると、すぐ隣の、先ほど総二が「ヴィーナスツイン」と名付けた少女がジーッと康太の方を凝視していた。
「(えっと……。確かこの子、
気にはなったが、康太は視線をそらす事にした。それでもなお真矢は視線を外す事なく康太をジーッと見つめていた。
そんな時、先生の声が聞こえてきた。
「あら〜? 名前が未記入のものがありますね〜」
「……あっ! すいません、多分俺です。慌ててたから……」
どうやら慌てて書いていた事で、肝心の名前を記入し忘れていたらしい。
「あ〜、観束 総二君でしたか。……えっと、これは新設希望って事でいいのかな? 「ツインテール部」? 何をする部活なのかな?」
「! やべっ!」
「観束君はツインテールが好きなんですね」
「はい! もちろん……って、あっ……! 違、その……!」
あろうことか、総二は部活動の記入欄にツインテール部と書いていたのだ。当然周りの生徒は今の総二の発言に騒ついていた。総二は自分がやらかした失態を恥じる他無かった。ただ、康太と愛香は軽く頭を抱えながら、
「(……バ〜カ)」
「(……やったな、こいつ)」
と心の中で呆れながら呟いた。それからもう1人、真矢だけは他の生徒と違って微動だにせず総二を見ていた。
そんな人生最大の黒歴史(?)が刻まれる事になった高校生活初日を終えて、総二ら3人は昼食を食べるために帰宅していた。
「さすがにツインテール部は無いでしょう、はっずかしー」
帰宅途中、早速愛香に指摘された総二は顔を赤くしながら髪をクシャクシャにかきむしりながら苦し紛れの言い訳をした。
「だ、だから無意識だったんだよぉ〜」
「それ余計にヤバいだろ⁉︎ 無意識に出てくるなんてどんだけなんだよ、お前のツインテールバカっぷりは⁉︎」
「う、うるせーよ! 人間生きてりゃそういう失敗もするだろうよ!」
「お前の場合は度を超え過ぎてるんだよ!」
康太が律儀にツッコミを入れると、愛香は総二をからかうように自分のツインテールを持って総二の前でヒラヒラさせた。
「ほらほら、だいちゅきなツインテールでちゅよ〜」
「こ、この……!」
完全に小バカにされた総二は反撃と言わんばかりに手を出した。愛香はそれをヒラリと交わして総二に蹴りを入れたが、総二もそれを見切って左腕で抑えると再び接近し始めた。その姿はどこかじゃれあっているようにも見えた。
その様子を康太は何も言わずに観戦していた。
「(うんうん。総二もそれなりに動きが良くなってきてるな。でも、それ以上にさすがは師範の孫の愛香だな)」
この3人は小学校に上がったばかりの頃から、今は亡き愛香の祖父の教える水影流柔術を取得していたのだ。中でも康太は愛香同様、飛び抜けて柔術の才能があり、そこで得た柔術を活かして中学時代には空手部に所属。その強さは空手という正式な場面だけで見れば愛香以上で、事実、中学の時に県大会で準優勝という実績があるくらいだ。(ただし、水影流柔術を用いた試合に関しては愛香とは五分五分である。)
さて、総二の攻撃をかわしながら愛香は総二に接近して頭上を越えて振り向いた。その際になびいたツインテールに見惚れた総二を見て、愛香はチャンスと見て一気に詰め寄った。ハッと総二が気づいた時は右手が総二の顔面スレスレで止まっており、愛香はそのおでこにデコピンを一発くらわせた。それによって決着がついた。
「……ははっ、さすがだな」
「……ま、総二もだいぶ良くなってるみたいだけど、試合中でもツインテールに目がいっちまうようじゃ、まだまだだな。今度稽古でもすっか?」
「う〜ん、それもいいけど、さすがに県大会トップクラスのお前とやるのはな……」
「そんな肩書き、今じゃ意味ねぇよ。実際全国大会じゃ一回戦負けだったし……」
「全国大会に出るだけでも凄ぇ事だと思うけどな……」
余談だが、康太はあまり空手の実績に関しては言いふらすような事は好きではないのだ。というのも、空手をやるようになったのは家族で好きなアクション映画を鑑賞するようになってからというのが主な理由なのだ。なので決して空手一筋や、ましてや水影流柔術一筋というわけではない。
そこへ、愛香が2人の会話に割って入った。
「ま、とりあえずカレー大盛り4人前、おごりね」
「バ〜カ。うちの大盛りカレーは……」
「2人前で十分よ♪」
と、そこへ聞き覚えのある声が聞こえてきて、その方向を見てみると、総二の母親の
「「あっ、こんにちは」」
「あれ、母さん? 店は?」
「ちょっとセールに行ってくるの♪ お昼、あなた達の分もあるからね。……総ちゃんも、
最後の部分だけ、愛香の耳元で囁くと、愛香は思わず顔を赤くした。
「うふふ、これが若さかってね〜」
未春は満足そうに微笑むと、さっさと行ってしまった。
「ったく……。ん? どうした、愛香?」
「えっ⁉︎ な、何でもない……」
「顔が赤いぞ?」
「ば、バカ……。総二が変な事言うからでしょ?」
「おいおい、俺が何言ったんだよ……」
「(総二……。お前もそろそろツインテールばっかりじゃなくて愛香の気持ちも見てやれよ……)」
機嫌を悪くする愛香をどうにかしてなだめようとする総二を見て、康太はため息をついていた。ちなみに康太は愛香の総二に対する恋心に気づいているため、康太もそれなりにサポートするようにはしているのだが、いかんせん総二のツインテール好きの思考に阻まれており、なかなか実る気配を見せないのであった。(もっとも、康太もそういった事には鈍感なのだが……)
この時、背後にある茂みから何者かが覗いている事に、誰も気づかなかった。
「あぁぁぁ……。ほんとにどうしよう……」
学校での出来事を思い出しながら総二は店の中で項垂れていた。その左隣では康太がカレーを黙々と食べており、愛香に至ってはカレー2杯に加えてコーヒーを飲んでいた。よくそんなに食えるな……と康太は横目で見ながら思った。
「ま、少なくともあたしは単語すら知らない人も多い髪型の名前を咄嗟に出す事はないって胸を張って言えるわ」
「説得力がねぇよ! 張ったところで起伏なんてねぶぇぇぇ⁉︎」
総二の言葉が途中で途切れたのは、愛香が顔面をグーで殴ってきたからである。
説明すると、愛香は胸にコンプレックスを抱えており、それに関するワードを口喧嘩に出すとそれはもう……。(これ以上言うと愛香のプライドがズタズタになりそうなので、自主規制とさせていただきます。)
「でもさ、お前マジでどうすんだ? ツインテール部の事」
「いや、それ以上に俺の今の状況を気にかけてくれよ……」
「知らん。いつもの事だろ?」
「スルーかよ!」
「でも、康太の言う通りよ。もういっその事作っちゃえば良いんじゃない? あたし、入ってあげても良いわよ? あっ、カレーとデザート1年分おごりでね」
「お前なぁ……。もっとまともなフォローは無いのかよ? 友達だろ?」
「……ただの、腐れ縁でしょ?」
また顔を赤くしながら、愛香は食器を重ねた。
「そう言えば、康太はどうすんの? また中学の時みたいに空手部にいくの?」
愛香がふと思い出したように呟いた。康太はう〜ん……と悩むそぶりを見せながら言った。
「そーだな……。確かにこのまま空手部に入っても良いかもしれないけどさ……。なんかこう……、もっと色々とやってみたい気がするんだよな……」
そう言って康太は制服の内ポケットから白い巾着袋を取り出して眺めた。5年前、フィーリアから貰ったお守りである。
「それって確か、貰ったっていうやつか?」
「あぁ。「やりたい事を見つけたら、チャレンジあるのみ!」って、姉ちゃんよく言ってたからさ……」
「へぇ……」
ちなみに、総二と愛香も一度だけだがフィーリアと対面した事がある。(もちろん、総二がフィーリアの美しいツインテールに見惚れていたのは言うまでもない。)康太は一度巾着袋をしまってから、総二の方を向いた。
「ま、遅かれ早かれお前のツインテールバカっぷりはバレるのがオチだっただろうからな。早くて良かったんじゃねぇか?」
「康太の言う通りね。ポジティブに考えなさいよ」
「お前ら2人して俺が人生の岐路に立たされてるのに、呑気に飯食ってるんじゃねぇよ!」
「別に良いだろ? 腹減ってるんだし……」
康太がそう呟くと同時に、店の奥にある席から何やら視線を感じた。どうやら総二も何かの気配に気づいたようだ。
振り返ってみると、そこには新聞を広げている女性客がちらちらとこちらを見ていたのだった……。
そしてこの女性との出会いが、総二達の運命を大きく変える事になろうとは、この時誰も予想だにしなかったのであった。
キリがいいので、今回はこの辺で。こうして書くのって結構大変ですね……。次回はいよいよあの変態痴女(?)が登場!
次回「謎の変態(?) トゥアール登場! 」に、テイル・オン!
※感想の方でご指摘がありましたので、少し修正しました。