俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
というわけで、早速次話を投稿します。
では、どうぞ。
一方、アルティメギルの方では大きな動きが見え始めていた。
「報告いたします! タイガギルディ殿がツインテイルズに敗れました!」
「くっ……! やはりそうなったか……!」
部下からの報告を受け、そう呟いて落胆したのは、雀のような外見の、軍服属性を持つスパロウギルディだった。
彼は長年、今は亡きドラグギルディの側近を務めており、参謀者として活躍していた。当然侵攻の裏にかくされた真実も知っていた。その事もあってか、ドラグギルディが倒された後の部隊の指揮権も任される事になったのだが……。
「恐らくツインテールに見とれ、実力を発揮出来なかったものかと……」
「それに、テイルレッドの纏う衣がスク水を連想させたのも敗因と思われます」
部下の報告を引き続き聞きながら、スパロウギルディはスクリーンに映し出された戦闘の様子を眺めていた。
「頼みのタイガギルディ様でさえもこの有様。ツインテイルズは、強すぎる……!」
スパロウギルディはそう呟いた。
真実を知らない部下達は、ドラグギルディの弔い合戦だ、敵討ちだと騒いでいるが、スパロウギルディは感心しなかった。今のままいけば確実に無駄死にだ。それは自分もそうであるし、誰もが望む結末ではない。
だが、スパロウギルディ自身、表立って戦闘に携わる事が無かった為、戦闘力に全く自信が無い。こんな状態で、強敵とも言えるツインテイルズに太刀打ち出来るわけが無い。
「(どうやら、今まで効率ばかり求めて、部下の育成をろくにしてこなかったツケが回って来たようだな……。このままでは、本当に撤退も考える事になってしまう……)」
スパロウギルディが頭を抱えながら今後の事を考えていると、別の部下が慌てて駆け込んで来た。
「スパロウギルディ様! リヴァイアギルディ様の部隊がこちらへ向かっているとの事です!」
「……ほう!」
思わずスパロウギルディが立ち上がるのも無理は無い。
今現在、ドラグギルディと肩を並べる実力を持つ部隊長は数少ない。そこに聞こえてきた、ドラグギルディと苦楽を共にして、同等の実力を兼ね備えているリヴァイアギルディの増援が来るという吉報。彼なら、本当にツインテイルズを倒してくれるに違いない。スパロウギルディの脳裏に、一筋の希望が見えて来た。
と、今度は別の部下がやって来た。
「スパロウギルディ様! さらにもう1部隊、クラーケギルディ様の部隊もここへ!」
「⁉︎ 何だと⁉︎」
それはスパロウギルディのみならず、全エレメリアンにとっても衝撃的な報告だった。
クラーケギルディは、リヴァイアギルディと同じく、ドラグギルディと共に活躍していた戦士。常に自らが前線に立ち、実力で結果を残し、勝利を収めて来て、その名を上げてきたエレメリアン。
しかし、彼らにとってそこは特別問題は無かった。本題は別の所にあったのだ。
「(どういう事だ……? あのお二人が互いに対抗心を持ち、ライバル視されている事はアルティメギルの兵ならば誰もが周知の事実。そんなお二人を何故同じ部隊に……?)」
「お待たせしました〜」
そう言ってトゥアールは注文されたコーヒーを客のテーブルに運んだ。
「こちらになります」
その近くでは、業務的な口調の愛香が別のテーブルにコーヒーを置いた。
今現在、2人は未春の経営する喫茶店のエプロンを着けて接客業をしている。カウンターの方では、総二と康太が同じくエプロンを着て皿を洗っている。
何故このような状況になっているかというと、理由は至極簡単である。彼らは総二の家に帰ってきた時に未春から店の手伝いを頼まれたからである。ここ最近では店の中が混んでおり、この日は未春1人ではさすがに捌ききれなかったようだ。というわけで、総二だけでなく、他の3人も店の手伝いをする事にしたのだ。
未春が手伝っている4人の様子を微笑ましく見つめながらカウンターでミルを挽いている中、総二は言いようの無い疑問を感じていた。どことなく店の雰囲気が妙な事になっているように思えたのだ。
と、そこへ1人の男性が店の中に入って来て、カウンターに座った。
「マスター、すまないが、水と……今日の新聞を見せてくれないか……!」
「あっ、はい。それじゃあ康太君、お願い出来る?」
「は、はい……」
康太は男性の様子に訝しみながらも、コップに水を注いで男性に渡すと、次に新聞を持ってきて、男性に渡した。
「ど、どうぞ……」
男性は手を震わせながら新聞を受け取った。そして日付の方を見て、小さく呟いた。
「……4月25日か。良かった……。やっと
「「「……?」」」
突然の事に、総二、康太、愛香は困惑していた。そこへ未春がコーヒーをそっと男性に差し出した。男性は軽く頭を下げてからコーヒーを一杯飲むと、天井を見上げながら、静かに微笑んだ。その目は虚空を見つめているように思えた。
「マスター、俺は……」
不意に男性が何かを話し始めようとしたが、未春がそれを遮ってこう語り始めた。
「……道に迷ったら、いつでもここに来てちょうだい。
「……ありがとう、マスター。じゃあ行ってくる。俺が
男性は何故か涙を流しながら手際よく勘定を済ませて店を後にした。その時間、わずか1分程。
「……なぁ、母さん。あの人、なんか訳ありっぽかったけど、知り合い?」
ふと気になって総二が未春に尋ねたが、本人はしれっとした表情でこう言った。
「ううん。全然知らない人だけど?」
「んじゃあ誰だったんだよあの人⁉︎」
「普通に知り合いと会話しているように見えましたけど……」
「何となくわかるものよ。相手がどういう答えを望んでいるのかなってね。父さんと毎日ああいう会話してたから、余計に分かっちゃうのよ」
それを聞いて、3人はハッとした。よく見ると、店の中のいる人達は、何かしらブツブツと呟いている。もっと酷い人は何らかのコスプレをしている。それを見て、総二達は悟った。
「(これって全員中二病に感染してるじゃねぇかぁぁぁぁっ⁉︎)」
総二は頭を抱えながら、頭の中で絶叫した。他の2人も唖然とした表情で突っ立っていた。そこへ一通り運び終えたトゥアールが3人に近づいて小声で説明し始めた。
「お
「やめてくれよ……! まず間違いないだろうけど気づかないふりをしていた母さんのエレメーラについて言及するのはやめてくれよ……!」
おそらくツインテイルズの登場が、未春の中二病魂に再び火がつけられたのだろう。
「よく分からないけど、母さん、とっても嬉しいわ……!」
「か、母さん……」
未春は恍惚とした表情で店の中を見回していた。そして、ポツリとこう呟いた。
「中二病って、割と悪い意味に捉えられちゃうけど、本当は何よりも優しくて、何よりも強いものだと思うの。好きなものに打ち込んで、思いっきり青春を楽しんでいるっていう事だものね。誰しもが熱く青春を駆け抜ける訳じゃないけど、大人になってふと懐かしい気持ちになる事は1度ぐらいあるわ。仕事や毎日にちょっと疲れた時にその気持ちを思い出す手助けになれれば、母さんはそれだけで本望よ」
それを聞いて、康太は何て素晴らしい人なんだろうと感嘆した。未春の意見は、どことなく的を得ているように思えたのだ。好きなものに打ち込んで人生を満喫する。それこそが、人間の本来あるべき特権なのだ。そしてそれは、自分達ツインテイルズが守るべきものでもある。不思議と、康太の心の中に勇気が湧いて来た。
すると、未春がカウンター越しに詰め寄って総二と康太に話しかけて来た。
「……今のセリフ、覚えた?」
「え? あ、うん」
「は、はい」
「じゃあ次にドラグギルディとの戦いみたいなピンチに陥った時は今のセリフを思い出してね! それが窮地を脱する逆転の糸口になるわ!」
「どうなったらそこに行き着くんだよ⁉︎」
そこに総二の的確なツッコミが入った。やはり中二病を極めた女は強すぎる。康太はそう思った。
「夢だったのよ。死ぬ寸前まで追い詰められた主人公がヒロインである母さんの言葉を咄嗟に思い浮かべてそこから逆転して勝利するシチュエーションがね……。まぁ、今は総ちゃんの物語のヒロインじゃなくて母親という設定だけどね」
「いやもう分かったよ! そのうちどうにかして思い出すから!」
「死にそうになったらよ?」
「何でそんな事を望んでいるんですか⁉︎ 怖い事言わないでくださいよ!」
すると、トゥアールがわざとらしく目を袖で拭いながら未春に寄ってきた。
「う、羨ましいです……! 私、家族の温もりというものをあまり知らないで育ったもので……。ですから、お二人のやりとりがとても優しく映って……」
「何言ってるのトゥアールちゃん。あなたはもう私の娘でしょ? うんと甘えていいのよ!」
「お、お義母様! その言葉で何度も蛮族から酷い仕打ちを受けてきた私がどれだけ救われるか……!」
そう言って2人は周りを気にせず抱きしめあった。一方で、総二と康太はどう反応すれば良いか分からず困惑していた。
ちなみに、やけに静かだった愛香は、店の状態に唖然としていて、表情が固まっていた。
2人の楽しそうな雰囲気を見て、総二は、いつかはこの店で店員全員がツインテールの喫茶店を、康太はアクション映画を上映して、来たお客と共に語り合えるような喫茶店を経営してみたいと、将来に思いを馳せながら再び業務に励み始めた。
という訳で、今回はこの辺で。
今回の未春のセリフは、私の中では、素晴らしい内容だと思っています。何か好きな事に対して一生懸命に投資していく。それこそが限りある人生において大切な事だと私は思っています。
次回からはいよいよ戦闘に入っていきます。
それでは、次回「とある休日の出来事」に、テイル・オン!