俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜   作:スターダストライダー

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お久しぶりです!
今回は久々にあのキャラを登場させます。
では、どうぞ。


Tail25:トゥアールの初陣 恐怖の婚姻届

「さぁ! 今日はいよいよ私の編入初日です! 気合い入れていきましょう!」

「悲哀しか出てこないわよ」

 

といったように正反対なテンションで朝の通学路を歩いているのは、愛香とトゥアール。なぜかトゥアールの全身にはコルセットやギブスなど、普段は見慣れないものがついているのだが、見慣れてるという事もあって、理由は聞かないでおこうと、総二と康太は思った。

とはいえ、今日から本格的にトゥアールは学園生活を始める事になる。それにあたって、3人は警戒色を強めていた。

 

「トゥアール。頼むから3人で決めた設定以外に変な事は言わないでくれよ。俺達アドリブはそれほど効かないからな」

「はい、重々承知しています! フフフフ……」

 

このセリフから、もうすでに不安という2文字しか浮かんでこなかったのは、3人とも共通して感じ取った事だろう。とはいえ、陽月学園は基本的にノリのいい学校である事はこの1ヶ月で理解したので、よほどの事がなければ問題無いだろう。

 

「……となると、不安要素はこっちになるか」

 

そう呟いた康太は、手首につけられたテイルブレスに目を向けた。

 

「結局、イマジンチャフに不備は見つからなかったんだよな?」

「えぇ。あくまで慧理那さんのツインテール属性の強さを想定したシュミレートをしただけですが、それでもツインテール属性との相互干渉は、まず無いとの結果でした」

「……じゃあ、何で会長はそーじのテイルブレスが見えたんだろう?」

「う〜ん……」

 

謎は深まるばかりだが、この日はトゥアールが無事にクラスに馴染めるように努力する事に専念する事にした。

その様子を、後方から3人のクラスメイトの二ノ宮 真矢がジッと見つめていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世の中は不思議なもので、トゥアールが編入してくるクラスは、総二達と同じクラスだった。一体どのような裏技があったのか、康太は少しばかり気になった。

 

「今日は、転入生を紹介しま〜す」

 

朝のホームルームで、担任が間延びした声で気怠そうに告げると、トゥアールが教室のドアを開けて、煌めく銀髪をなびかせながら堂々と入ってきた。

周りからは男女問わず、感嘆の溜息が漏れた。確かにトゥアールは、性格は兎も角として、外見は絶世の美女に匹敵する。これでツインテールだったら、興奮を抑えきれなかっただろうなと総二は思ったが、彼女の並々ならぬ決意故、その姿を崇める事は2度と無い。

トゥアールは早速黒板に『観束 トゥアール』と書いて向き直った。途端にクラス中がざわめいた。

 

「(まぁ、そうなるだろうな……)」

 

事情を知っている康太はクラスの反応を見てそう思った。ただ、早くもよだれが口から垂れているのが垣間見えているトゥアールを見て、康太は危機感を抱いた。

 

「トゥアールさんは〜、観束君の親戚で〜、海外から引っ越してきて今は一緒に住んでいるそうで〜す」

「そうなのか⁉︎」

「って事は康太! 幼なじみのお前も彼女の事知ってるのか⁉︎」

「ま、まぁな……」

「本当? 愛香ちゃん?」

「……不本意ながら、そういう事になるわね」

 

2人がどうにかして誤魔化していると、普段はボケ役(?)のトゥアールが珍しくツッコミを担任に入れた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 総二様との関係性を問われた所で「一緒に住んでいます」とあえてぼかしてもうひと盛り上がりさせた後にさらに誤解を振りまいてやっと種明かしをする算段だったのに、何なんですかそのわびさびのない説明は⁉︎」

「そこまで考えていたのかよ……?」

 

康太は小声でそう呟いた。

しかし、担任は悪びれた様子もなく、理由を説明した。

 

「実は〜、もうお一方紹介する人がいるので、時間をあまり割けないんですよ〜」

「えっ⁉︎」

 

これにはトゥアールだけでなく、クラス中が訝しんだ。同時期の同じ日に編入してくるなんてパターンは滅多にない。一体誰が来るのか。

すると、その疑問に応えるかのように、教室のドアがまた開いた。堂々とした足取りで入ってきたのは、この学園の生徒なら誰もが一度は見たことのある人物だった。

 

「本日から陽月学園の体育教師でもあり、このクラスの副担任として赴任された、桜川 尊先生です〜」

「うむ、よろしく!」

「「「「……」」」」

 

それは、慧理那のメイド長でもあり、先日クラブギルディに果敢に立ち向かった、桜川 尊だった。なぜかスーツ姿やジャージ姿ではなく、メイド服に包まれている為、クラス中が静まり返った。

 

「あの、先生……」

「私は知りません〜。何も知りません〜」

 

ようやく女子の1人がおずおずと手を挙げて声をかけたが、担任は知らんぷりしていた。空気を読まない上に事なかれ主義なその性格に、これまた曲者ぞろいのクラスになってしまったな……と、改めて総二や康太、愛香は実感した。一方で、総二は尊のツインテールの美しさを、慧理那を思い浮かべながら見惚れていた。

 

「え、ちょ、何なんですかこれ⁉︎ 何でこんな事に⁉︎ こんなはずでは……⁉︎」

 

トゥアールは激しく狼狽していたが、誰も声をかけない。否、声をかける余裕すら無かったと言うのが正しいだろう。

 

「皆もよく目にしていると思うが、私は神堂 慧理那様の警護を一任されたメイドだ。しかし、ただ単に校内でジッとしている事にお嬢様が気を遣われるのでな。理事長と学園長に相談した結果、非常勤ではあるが、体育教師を務める事になった。あぁ、ちゃんと教員免許は持っているから、その辺は安心してくれ」

 

大人の余裕を醸し出しながら赴任した理由を語ってはいるが、クラスメイトは全然安心出来なかった。

 

「(マジでこの学園はどこに向かおうとしてるんだ……? まぁ、先生の運動神経の良さはこないだで実証済みだけどさ)」

「……しかし、君達は割と大人しいな。普通美女の先生が赴任してきたら、スリーサイズや彼氏の有無など、これでもかと質問攻めにすると思っていた。言っておくが、慧理那様のメイドだからといって遠慮はしなくてもいいのだぞ?」

 

あまりにも無茶苦茶な発言に、愛香ですらポカーンとしていた。この状況で異彩を放つメイドに質問をする根性は、さすがの康太にも無かった。

と、ここでトゥアールが噛み付いてきた。

 

「待ってくださいよ! 後から来て何を仕切っているのですか⁉︎ ここは私の戦場(ステージ)なんですよ!」

「そう言わずとも、君はまだ若い。私と違ってまだ質問される機会がこの人生でいくらでもあるのだから」

「いいえ、ありません! 私にとっては今日が唯一無二の戦いなんですよ!」

 

主張を曲げずに頑張っているトゥアールを見て、尊は感心した。

 

「ほう! その意気やよし! 君のような女の子、嫌いではないぞ! では公平に、2人同時に質問を受けようではないか! さぁ、質問はないか⁉︎」

「そういう問題じゃ……!」

 

トゥアールの言葉を無視して、尊はクラスメイトに向き直った。が、ますます質問しづらくなってしまい、危険な雰囲気である事が皆は肌で感じ取った。

すると、尊がある人物にターゲットを絞りこんだ。

 

「む? 熱い視線を感じると思ったら、観束君ではないか!」

「げっ⁉︎」

 

急に名指しされて、翻弄されているのは、言わずと知れた、ツインテールバカこと総二だった。おそらく尊のツインテールに見惚れすぎていたのが原因だろう。

 

「そういえば、君はツインテール部の部長であり、無類のツインテール好きだったな。では、そんな君には私からのささやかな贈り物を贈呈しよう!」

 

そう言って総二の席まで近づいて渡したのは、A6サイズぐらいの封筒だった。中を開けてみると、まず目に飛び込んできたのは、尊が正面から写っている写真だった。てっきりメッセージカードの類かと思ったが、よく見ると、それは折り畳まれた紙につけられたものだった。康太も気になって後ろから覗いてみた。開いてみると、そこには15歳である総二や康太には縁のないはずの言葉が書かれていた。

 

「あの……、先生……」

「どうした? よほど嬉しかったのか?」

「いや……。『婚姻届』って書いてあるんですけど、気のせいですか?」

「気のせいって、その程度の漢字を読むのに自信がないのか、君は?」

「そういうわけじゃないんですが……。それじゃあもう一つ質問なんですが、妻の欄に先生の名前が入っているのはなぜですか……?」

「当たり前ではないか。夫と妻の、双方の名前を記して初めて婚姻届は意味を成すのだぞ。白紙のまま渡すなど、相手に失礼ではないか」

「……相手って?」

 

嫌な予感はしたが、場の流れに沿って、総二が質問すると、尊はビシッ! と中指を総二に向けて指した。

 

「もちろん君だ! 君はツインテールが好きなのだろう? ならば私と婚約しても問題はないはずだろう?」

「問題ありありですよこの年増がぁぁぁぁぁぁっ!」

 

そう叫んだのは、必死に理性を保っている総二ではなく、トゥアールだった。こちらは完全に場の流れに呑まれているようだ。

 

「総二様はすでに売約済みです! 誰の許可を得て総二様に求婚しているのですか! 私こそ総二様の前世からの婚約者なんですからね!」

 

そう言ってトゥアールは得意げに周りを見渡すが、全員まさかのスルー。あの愛香でさえ、手を出すような事はしなかった。それを見て、トゥアールは教室の片隅にうずくまって、ワナワナと肩を震わせていた。

 

「うぅ……。何でざわめいたり黄色い声ではやし立てたり、愛香さんは暴力をふるってこないんですか……。私の夢見てた学園ラブコメと全然違う……」

「そういえば、君はあの時一緒に部室にいたな。編入試験を満点でパスした天才だそうだが、色々と問題があるという事で注意を受けていた」

 

お前が言うな、と誰もがそうツッコミたかったが、そればかりは口が裂けても言えない。それをいい事に、尊はさらに主張を押し付けた。

 

「だが、まだ若いな小娘よ! 羨ましいが考えも若い! 前世がどうであろうと、今恋人がいようと、それは求婚するにあたって何のアドバンテージにも、障害にもならん! あらゆるしがらみを超えて、求婚は平等なのだ!」

「な、なんと……! これが婚期を逃した大人のロジックだというのですか……⁉︎」

 

尊の発言に、トゥアールだけでなく、クラス中の女子(一部を除く)が

ざわめきだした。

 

「滑稽に見えるか? だがこの歳で独身でいるとな。中途半端に焦るのはもはや時間の無駄なのだ。努めて冷静に、そして全力で焦る。独身という十字架を背負い、渾身の力で毎日を生きる! それが三十路射程内までに結婚出来なかった女の苦しき業なのだ!」

 

これを聞いて、女子は騒ぎだした。何故朝の、しかもホームルームでまだ未成年な子供達が結婚話を考える必要があるのか?

 

「うむ。とにかく私から言える事は、よく学び、経験する事だ。反面とはいえ教師は教師だからな。……というわけで観束君。そろそろその紙に名前を書いてくれ。何も今すぐに契りを結べとは言わない。君が結婚出来る年齢になるまで後2年半、しっかりと保管しておこう!」

「また戻ってきた⁉︎」

 

せっかく話がそれかけていたのに、また戻ってきた総二はたじろいだ。

すると、愛香が助け船を出すように、尊に猛抗議した。

 

「ちょっと先生! いくら冗談でもやっていい事と悪い事がありますよ!」

 

勇気あるその言動に、女子達も応援したり、声援を送ったりしていた。

 

「何で愛香さんだけ⁉︎」

 

トゥアールはもう半泣き状態であるが、全員無視した。

 

「何が冗談か! これまで婚姻届を526枚配ったが、全て本気だ! ただ、相手の都合がちょっと悪かっただけだ!」

「(余計にダメだろ⁉︎)」

 

康太はなるべく気配を消すために、心の中でツッコンだ。

 

「無論、私も教師である以上、分別は弁えるぞ。教師と生徒の男女交際は御法度だからな。ならば、結婚を前提に付き合うなどという回りくどい真似は取らずに、即座に結婚するだけだ!」

「んな事させるかぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

遂に堪忍袋の緒が切れた愛香は、拳で黙らせるという強行手段に入った。さすがにまずいと思った総二と康太は止めようと思ったが、それよりも先に、尊が対処した。

 

「な……⁉︎」

 

なんと、尊は両腕をクロスして受け止める事でガードしていたのだ。メイド服の袖が破れて、破片が宙を舞うが、本人は無傷だった。

 

「ほほう。噂には聞いていたが、中々のクンフーだな」

「つ、強い……!」

 

愛香は動揺しているのか、一歩退いた。すると、尊が腕を下ろした。

 

「このまま語り合いたいところだが、まだやり残した事がある」

 

そう言って尊は、また婚姻届が入っているであろう封筒を手に持った。愛香が警戒していると、それをスルーして横を通った。尊がやってきたのは、あろう事か、康太の席だった。康太の全身から嫌な汗が吹き出る中、尊は康太の前に立って悪びれた様子もなく告げた。

 

「君もまたツインテール部の部員だからな。候補を増やしておいて損はない。というわけで、君にも是非署名してもらいたい」

「ひぃ……⁉︎」

 

康太が狼狽する中、尊はスッと封筒を差し出した。

と、その時、前に突き出す尊の腕が止まった。よく見ると、封筒が康太の横から突き出されている手によって抑えつけられているのだ。康太や尊を含む全員がその手の主に視線を向けると、それはメガネをかけて、無表情な顔のまま座っている、真矢だった。

真矢と尊、2人の手は震えており、どちらも拮抗している様子が伺える。クラス中がその異様な雰囲気を、固唾を飲んで見守っていた。

 

「……中々やるではないか」

 

尊がそう言うと、真矢は呟いた。

 

「……先生。ホームルームは終わりです」

 

と同時に、チャイムが鳴り響き、本当にホームルームは終わりを告げた。

 

「……そのようだな」

「いやあんたら! どうしてくれるんですか! もうキーンコーンカーンコーンしてるじゃないですか!」

 

この世の終わりのような表情をして絶叫するトゥアール。そこに、真矢が淡々と言った。

 

「ならば、休み時間にみんなから質問されるのを待てばいい。さっきも先生が言ったように、あなたにはそれだけのチャンスがある」

「そ、それは……」

 

正論を言われ、トゥアールは何も言い返せなかった。

 

「では、今日はここまでにしよう」

 

尊は少し名残惜しそうに康太から離れた。康太がホッとしていると、真矢がいつものように康太をジ〜ッと見つめていた。

 

「(ま、またかよ……)」

 

康太がまた訳も分からず困惑していると、尊が思い出したように言った。

 

「ところで男子諸君。今回は観束君と風宮君にスポットを当てていたが、彼らのように婚姻届が欲しいものはいないか? 念のためにこの学園の男子生徒全員分の枚数は持ち合わせている。遠慮はいらないぞ」

 

これを聞いて、今までどちらかというと蚊帳の外だった総二と康太以外の男子生徒は軽く発狂した。まさか矛先が向けられるとは思ってもいなかったのだろう。

 

「い、嫌だぁ! 俺はテイルレッドたんと結婚するって決めてんだ……! 今婚姻届なんてものを目にしたら、絶対にテイルレッドたんが悲しむ……!」

「あぁ、神よ……。これは罰なのか……。俺がまだテイルレッドに相応しい男ではないと提示するものなのか……」

「……こうなったらいっその事帰りに婚姻届もらいに寄ってくか……。妻の欄はテイルレッドにしといて……」

「なんとしてでもテイルホワイトを我が嫁にしたいのに、その矢先にこのような試練が立ちはだかるとは……!」

「何言ってんのよ! ホワイトお姉様は私のものなんだから! 勝手に横取りなんてさせないんだから!」

「あ、すみません……」

 

……若干一部分だけ少しずれた会話が繰り広げられていたが、尊は男子の反応が芳しくない事に落胆しながら教室を後にした。

まさに、嵐のようにやってきて、嵐のように去る。

このホームルームだけで、総二、康太、愛香の今日1日の気力は半分以下に低下していた。実際、教室の片隅で未だに生気を失っているように見えるトゥアールを気にかける余裕がないぐらいだ。

アルティメギルとの戦いが始まってから、ツインテール属性以外の何かを拡散させてしまっているような気がして、3人は、本当に自分達が世界を守れているのかが、不安になってしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、総二と康太に渡された婚姻届は、愛香と真矢が、その後ちゃんと処分したとの事である。

 




久々に真矢登場。

526枚もの婚姻届って、市役所の方は、どのような気持ちでそれを尊に渡したのかが気になりますね……。

次回はアルティメギルにスポットを当てていきます。

それでは、次回「対峙する勢力 スワンギルディの挑戦」に、テイル・オン!
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