俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
今回はアルティメギル側の話になります。
とある異空間に佇む、アルティメギルの基地。その内部にある、移動艇の着艦した搬入口で、元ドラグギルディの側近であるスパロウギルディと、若き新鋭、スワンギルディが目の前に広がる光景に恐れ慄いていた。それもそのはず、今回は首領からの命令で送り込まれた2軍団を迎え入れる事になっているのだが、その勢力は相反する属性を持っているのだ。スパロウギルディもその話を聞いて、大きな不安を抱えていたのだが、それがいよいよ現実のものとなってしまったのだ。
彼らの前には、2つの勢力が向かい合い、火花を散らしていた。右側にいるのは、細身で精悍な顔つき、何よりも特徴的な、全身に細い触手を無数に備えている、
彼と向かい合っているのは、人魚の尻尾のように、股間部分から一際目立つ巨大な一本の触手が伸びており、それを胴体に螺旋状に絡めて、鎧と化している、
それぞれの勢力の長を筆頭に、背後にいた各々の部下達も、今にも戦闘を始めようと言わんばかりに威嚇しあっていた。
「く、クラーケギルディ様、リヴァイアギルディ様……! お、お二人がこの度はこの世界に来てくださるとは、このスパロウギルディ、誠に光栄でございます」
このままでは最悪の事態になりかねない。そう思ったスパロウギルディはいち早く労いの言葉をかけた。が、当の2人の反応は薄かった。リヴァイアギルディは軽く手振りで応えた後、不機嫌そうな顔をして言った。
「首領様の命令は絶対だからな。どうも強敵打倒の増援にかこつけて、どこぞの能無し部隊の引き受けまで任されてしまったようだが……。まぁ、このリヴァイアギルディ、やり遂げてみせようさ」
誰がどう見ても分かるような挑発。対するクラーケギルディは静かに憮然とした表情で言い返した。
「随分とまた勝手に言ってくれる。それはこちらのセリフではないか? 聞くところによれば、侵攻する世界で何度も情けをかけ、エレメーラの完全奪取を遂行せず見逃したと聞いてるぞ? まるで半端者のようで、聞いて呆れる」
皮肉たっぷりといった表情で語るクラーケギルディに対し、リヴァイアギルディはクラーケギルディの後方にいる部下達の方を向いて言った。
「お前こそ時代錯誤な騎士かぶれが一段と増したようだが、揃いも揃って部下にマントを羽織らせるとは、かわいそうな奴よ」
「お、お言葉ですがリヴァイアギルディ様……! このマントはそもそも我々が……」
部下が反論しようとするのを、クラーケギルディが片手で制した。そしてリヴァイアギルディを一睨みしてから、リヴァイアギルディに忠告した。
「ともかく、だ。私の部下が悪影響を受けないように、出しゃばる事だけは慎んでもらおうか。巨乳属性などと、下品な属性を吹聴する貴様にはな!」
「何を!」
「今のは聞き捨てなりませんぞ、クラーケギルディ様!」
今度はリヴァイアギルディの部下達が躍起になる番だが、リヴァイアギルディが触手を地面に叩きつけて音を鳴らす事で静めた。
「時代を読めぬ骨董品如きが。ツインテールに貧乳が似合うなどと、原始時代のような思い込みに縛られる貴様こそ、憐れな奴よ!」
「……言ってくれるではないか」
「(あわわわ……⁉︎ こ、これはどうすれば良いのでしょうか、スパロウギルディ殿⁉︎)」
「(わ、私に言われても、立場上どうする事も出来ぬ……!)」
スパロウギルディとスワンギルディが小声で話し合っていた時だった。
「貧っ!」
「巨ぉ!」
2人の咆哮が聞こえてきたかと思うと、辺りに耳をつんざくような破裂音が響き渡った。周りの壁は軋み、電球の幾つかは割れた。
あまりの速さに、あの一瞬で何が行われたのか分からない者がほとんどだったが、リヴァイアギルディが股間の触手を、クラーケギルディが背中から生えた触手を元の位置に戻したところから見て、おそらくそれが激突したと思われる。
「……ふむ。どうやら腕は衰えてないと見た」
「お前もな」
2人は久しぶりに対峙して実力を確認しあったのだろう。しばらくの沈黙の後、クラーケギルディが先に口を開いた。
「……まぁ良い。今回はこのくらいにしてやろう。時に、スパロウギルディ」
「はっ!」
「部隊も大きくなれば、今の基地では足りなかろう。私達の母艦も合わせておいた方が良い。その作業が済み次第、早速噂のツインテイルズとやらの記録を見せてもらおう」
「はっ! 承知いたしました……!」
スパロウギルディが頭を下げて応えると、リヴァイアギルディも部下達の方を向いて言った。
「よし、お前達も基地に戻れ。俺は少し野暮用を済ませてくる」
そう言って今度はリヴァイアギルディがスパロウギルディに近づき、かつての盟友、ドラグギルディの部屋の場所を確認した。その事に訝しんだスワンギルディは恐る恐る尋ねてみた。
「り、リヴァイアギルディ様、ドラグギルディ様のお部屋に何かご用でも……?」
対するリヴァイアギルディは大声をあげて言った。
「はははっ! 戦の前に負け犬の面影でも見て、大笑いてもしておこうかと思ったまでよ」
それを聞いて黙っていなかったのは、ドラグギルディの部下でもあり、期待されていた新鋭。言わずと知れた、スワンギルディだった。
「……そのお言葉、どうかお取り消しを」
「よ、よさんか、スワンギルディ!」
スパロウギルディが慌てて彼を止めようとしたが、すでにスワンギルディはリヴァイアギルディの肩をがっしりと掴んでいた。クラーケギルディは興味深げにその様子を眺めていた。リヴァイアギルディもスワンギルディを見据えた。
「ほぉ、なぜそうする必要が?」
リヴァイアギルディにそう言われて、スワンギルディは憤怒を晒して上官でもあるリヴァイアギルディを睨んだ。
「仮にもドラグギルディ様はツインテイルズと立派に戦われ、昇天なされました。確かに敗れたとはいえ、誠に見事な戦いをなされておりました。それを侮辱する事は、例えリヴァイアギルディ様とて、見過ごす事は……!」
スワンギルディの言葉が途中で途切れたのは、スワンギルディ自身が目にも止まらぬ速さでその場から少し後方に下がったからである。と同時に、スワンギルディの背後にあった壁が砕けた。周りの者達も何事かと困惑していた。よく見ると、リヴァイアギルディの股間から伸びた触手が、壁に突きつけられていた。どうやらリヴァイアギルディはその触手でスワンギルディを壁に叩きつけようとしていたようだが、いち早くスワンギルディが見切って回避した事でこのような状態になったのだろう。
「……ほう。さすがはあのドラグギルディが一目置いていただけの事はある。だが……」
リヴァイアギルディがそう呟くと同時に、スワンギルディの艶やかな肩にほんの少しだけ傷が入った。やはりリヴァイアギルディの最強の武器でもある触手攻撃は、さすがのスワンギルディも完全にはかわしきれなかったようだ。
「まだ青いな、若造よ」
「くっ……!」
スワンギルディが肩を押さえながら膝をつくと、リヴァイアギルディはそれを鼻で笑った。
「少しは慎む心を持て。貴様も戦士と呼ばれる者ならば、いつまでも敗将にこだわらず、剣の一本でも降っておれ」
もっとも、負け犬の後を継ぎ、同じ負け犬になりたいと思っているなら、話は別だがな、と告げたリヴァイアギルディはそのままドラグギルディの部屋に向かった。
クラーケギルディもリヴァイアギルディの後ろ姿を見つめながら、ある一点に着目して呟いた。
「……ふん。ああいった所も相変わらずだな」
それからスワンギルディのそばを通り過ぎる時に、クラーケギルディは口を開いた。
「スワンギルディよ。お前の気持ちはよく分かる。だが、いつまでも過去に縛られているようでは、お前は何も変わらぬ。何事にも、覚悟と呼ばれるものが必要だ」
それだけ告げると、クラーケギルディも基地に戻っていった。
残されたスパロウギルディはスワンギルディに手を差し伸べた。
「大丈夫か、スワンギルディよ」
「はい……。ですが、私が弱いばかりに、亡きドラグギルディ様にあのような辱めを……。これではドラグギルディになんと申せば良いか……」
が、そんなスワンギルディの言葉に対し、スパロウギルディは首を横に振ってこう呟いた。
「……そうか。お前はまだ、リヴァイアギルディ殿の姿を何度も見てきたわけでは無かったな。それなら知る由もあるまい」
「……? それは、どういう」
「スワンギルディよ。リヴァイアギルディ殿をよく見ると良い」
スパロウギルディに言われてスワンギルディがリヴァイアギルディを見た時、ある事に気付いた。
「あ、あれは……」
「そうだ。あれがリヴァイアギルディ殿の本心だ」
よく見ると、リヴァイアギルディの股間の触手は張り詰めており、震えていた。目を凝らして見ると、湿っているようにも見える。
彼は、泣いているのだ。股間の触手によって。
顔ではあれだけ怒っていたはずのリヴァイアギルディがあれほどにまで股間の触手で悲しみを表している姿に、スワンギルディは言葉を失う。
「リヴァイアギルディ様は、ドラグギルディ様の旧知の友。お前以上に失った悲しみは大きいはずだ。元々彼はああいうお方なのだ。力が強いだけでは1部隊を率いる事は出来ぬ。あのお方はただ、自分に厳しいだけよ」
「そう、でしたか……」
「おそらく、リヴァイアギルディ様も、お前には大層期待されてるはずだ。ゆえに、あれだけの厳しい言葉をかけて、己の道を踏み間違える事なく進ませようとしていたのが真意だろうな」
それを聞いて、スワンギルディは改めて自分の未熟さを痛感した。
「(剣の一本でも振れ……ですか。なるほど、確かにその通りです)」
だが、ここで終わるスワンギルディでは無かった。彼とて皆からの期待を背負った戦士なのだ。ここで立ち止まっていては、これまで散っていた同胞や上司に合わせる顔がない。
そう思ったスワンギルディは、意を決して、スパロウギルディに頭を下げながら言った。
「スパロウギルディ殿。あなたならご存知でしょう。かつてドラグギルディ様が見事に成し遂げられたという、伝説の試練への挑み方を。お忙しい中ではありますが、どうか、ご教授いただきたい」
「な、何……⁉︎」
それを聞いて、スパロウギルディは狼狽した。これからスワンギルディがやろうとしている事に気付いたのだろう。
「一年続けなければ修了になりませぬが……。それでも、時が来るまで続けてみせましょう」
「スワンギルディ、お前……!」
スパロウギルディは声を震わせながら呟いた。
「ほ、本気であのスケテイル・アマ・ゾーンをやるというのか……! スワンギルディ、まさか死ぬ気か……⁉︎」
長年アルティメギルの繁栄に努めてきたスパロウギルディが驚くのも無理はない。
スケテイル・アマ・ゾーン。それはアルティメギル五大究極試練の一つ。通販で買った商品が一年間、透明な箱で梱包され配達される、荒行に等しい試練。肉体的にはもちろん、精神的にも苦痛を伴うその試練にこれまで何万ものエレメリアンが挑んでいたが、そのほとんどが途中で諦め、酷い時は途中で絶命する者も少なからずいた。ゆえに、ドラグギルディがその苦行に成功してからは誰もクリアした者はおらず、ここしばらくはアルティメギルの歴史の中でも、挑んだ者すらいないほどだった。
当然スパロウギルディは反対した。期待の新人とも言えるスワンギルディがこの試練で生き絶えたら、本当にアルティメギルの未来に関わるかもしれない。だが、スワンギルディの意志は固かった。
「ドラグギルディ様の遺志、必ずや、私が継いでみせましょう!」
それはスワンギルディにとって、初めて覚悟を決めた瞬間でもあり、己の道を確固たるものにしようとする、己自身との戦いの開戦でもあった。
キリが良いので今回はこの辺で。
最近、「DOG DAYS」を見始めて、その面白さを知りました。思ってたよりぼのぼの系で、第2期が気になります。
次回はあの蛮族がとうとうとんでもない事をやらかします。また更新は遅れますが、よろしくお願いいたします。
それでは、次回「巨乳に目がいくのは男の性」に、テイル・オン!