俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回は第2巻の第2章が終わるところまで話を進めますがそれほど大きくは動きません。


Tail28:服従

「アルティメギルが戦力を増強してきたのは間違いないな」

 

バッファローギルディとの死闘(という名のブルーによる一方的なリンチ)を終え、基地に戻った総二達は、早速作戦会議を始めた。映像を確認しながら、康太はトゥアールに尋ねた。

 

「主の為に巨乳属性を、って事は、あのタイガギルディとは別に幹部クラスが来たって事になるんだろ?」

「そうですね。私とフィーリアで仕入れてきたこれまでの情報を総合すると、多くの分隊が別行動で異世界を侵略していて、今回のようなイレギュラーな事態により、援軍の投入を想定した組織枠になっていると考えて、まず間違いないかと」

 

それを聞いて、総二は表情を強張らせた。

 

「それじゃあ、倒しても倒しても、補充はいくらでも効くって事じゃないか⁉︎ このまま俺達だけで本当に対処出来るのか……?」

 

さすがの総二も敵の規模の大きさに不安を隠せなかった。実際、冷静に判断している康太も予想以上なアルティメギルの執拗さに舌を巻いていた。

が、そんな2人を労うようにトゥアールが声をかけた。

 

「大丈夫ですよ、総二様、康太様。2人のツインテールを愛する心に限界なんて無いのですから!」

「あ、ありがとう、トゥアール」

「そこまでツインテールに固執してるわけじゃ無いけど……。まぁ、気持ちはありがたく受け取っておくか」

 

ここまで来たら、やるしか無い。2人は改めてトゥアールの励ましによるバックアップに感謝した。

さて、目の前の脅威を再確認したところで、もう一つの問題を解決する必要が出来た。それは……。

 

「……で、だ。そろそろ諦めたらどうなんだ? 愛香」

 

康太の呆れた視線の先には、未だに変身を解除しないテイルブルーこと愛香が、手に入れた巨乳属性のエレメーラオーブをエレメリーションにセットし、発動させようとしたが、結果は見ての通り、何のビフォーアフターもされていなかった。

本人は怒りさえ消え失せ、憔悴しきっている。まるで、この世の終わりといった表情を浮かべながら、愛香は呟いた。

 

「……使えない。何でよ……」

「けどお前、仮に使えたとしても、今まで名目通りの効果になった事があったか? ほら、ラビット属性だって、ウサ耳が生えたわけじゃなかったし」

「でも……! それでも、それでもあたしにとっては最後の希望でもあったのよぉ!」

 

遂にはおいおいと泣きだす始末。総二と康太がどうやって慰めようか悩んでいると、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「あらあら、どうかしたの?」

「あぁ、母さんか……って何だよその格好⁉︎」

 

総二が驚いたように叫んだ。やって来たのは総二の母の未春。もはや日課と言わんばかりに店を放っぽり出して基地にやってくるわけだが、この日はいつもと違い、明らかに悪役の女幹部のような格好のコスチューム(自作)を身に纏っていたのだ。

 

「何でそこは司令官みたいな格好じゃ無いんですか、未春さん?」

「こっちの方が似合ってるでしょ?」

「そういう問題じゃ無いだろ……⁉︎ つーか何でいつも当たり前のように入って来るんだよ⁉︎ 店はどーした⁉︎」

「まぁまぁ、総二様。戦う者だけでは視野が狭くなりがちです。こうして平和な日常の象徴であるお義母様に意見を賜ってみれば、思いがけないアイデアが浮かぶ事だってあるかもしれませんよ」

「これのどこが日常の象徴何だよ⁉︎ 思いっきりこっちサイドにドップリ浸かってるぞ⁉︎」

 

ツッコミに疲れた総二は深くため息をつきながら席についた。

 

「……本当は、これ以上関係ない母さんを巻き込みたくないのに……」

「関係あるわよ。お腹を痛めて産んだ我が子が、世界を守るヒーローなんですもの」

「その格好じゃ説得力の欠片も無いような……。まぁいいか」

 

これ以上止めても無駄だろうと思った総二は、とりあえずお茶を飲んで休憩する事にした。その様子を微笑ましく見つめていた未春は視線をトゥアールに向けた。

 

「……で、さっきの事だけど、何かあったの?」

「はい。実はですね……」

 

トゥアールは壁にもたれている愛香を横目で見ながら、愛香が巨乳属性のエレメーラオーブを使えない事、そしてその理由を説明した。

 

「これはつい最近私が立てた仮説なんですが、おそらく純度の違いが関係しているものかと」

「純度?」

 

康太が首を傾げながら頭に? を浮かべた。

 

「以前戦ったフォクスギルディの事を覚えてますか? 彼はリボン属性の他にドール属性を兼ね備えていました。ですが、後から得たエレメーラが大きくなればなるほどコアである本来のエレメーラの純度が下がる事になるんです」

「なるほど。だからフォクスギルディも元からあったリボン属性の力が強くても、ドール属性が弱くて、リボンで形成した人形をリアルに動かせなかったのか」

「その通りです。エレメリアンにとって、エレメーラ同士の干渉がある事によってコアの純度を下げてしまう。だから、何らかの属性を強く持つ愛香さんに、巨乳属性のエレメーラオーブが反応しないのかもしれません」

「そういや、今までの戦いで結構エレメーラを手に入れてきたけど、使えたのって、割と限られてんだよな」

 

総二がこれまでの事を思い出すように口を開いた。

現在3人が使えるエレメーラは、ドール、ブルマ、リボン、ラビット、そしてスク水。この5つぐらいだ。

 

「そうだ、トゥアールちゃん。ドラグギルディを倒して手に入れたツインテール属性のエレメーラオーブで、テイルギアのパワーアップとかは出来ないの?」

「お義母様。残念ですが、ツインテール属性をエレメリーションで使用するのは、暴走の危険性があるのです。これに関しては使えないようにセーフティをかけているもので」

「あら、そうなの。二倍に掛け合わせれるってお約束通りになると思ったけど色々と難しいのね〜」

「いや、発動出来たとしても、髪の房が4つになったらどうすんだよ。ツインテールじゃなくなっちまうぞ……」

「でも、やっぱりもったいないわよね。あんなに強敵だったなら、必ず何かの役に立つとは思うんだけど。だって総ちゃんや康太君が大苦戦した、初めての敵なんですもの。最後の逆転の必殺技には、感動きて泣いちゃった。みんな、成長したんだなぁって」

「おいぃぃぃぃぃ! 息子とその幼なじみが死力を尽くした戦いを幼稚園の運動会で撮影したビデオみたいなノリでぼのぼの見るなよ⁉︎」

 

総二がツッコミを入れる中、康太は先ほど未春の口から出た、ドラグギルディのツインテール属性の事を考えていた。確かにエレメリーションで使えないとはいえ、このまま宝の持ち腐れにしておくのももったいない気がして仕方がないのだ。

未春も同じ事を考えていたらしく、悩む仕草を見せながら呟いた。

 

「それじゃあ、そのエレメーラをコアにして、もう一つテイルギアを作ったりとかは出来ないの?」

「え? まさか母さん、自分がテイルギアを装着するとか言い出すの……」

「心配しなくても、母さんにはツインテール属性がないじゃない」

 

未春はそう言うものの、実際は日に日に別の属性力が高まっているのだが、今は黙っておく事にした。

 

「それに母さん。昔こそヒーローに憧れてたけど、今はヒーローの母、観束 未春なのよ。そんな差し出がましい真似はしないわ。母さんは総ちゃんの息子だって言えるだけで十分幸せよ」

「さ、さすがです、お義母様……!」

 

トゥアールは涙を流しながら、康太はほぉ、と感心した顔つきになりながら未春を見た。

総二も、未春の意見を聞いて、新テイルギアの事を考えてみた。

 

「でも、そうだな……。仲間が増えてくれるのは心強いかもしれないな……」

 

と、ここで反対意見を出す者達が現れた。トゥアールと、先ほどまで肩を落としていた愛香だった。

 

「い、いけません総二様! これ以上誰かを戦いに巻き込むなど……!」

「そ、そうよそーじ!あんな変態共とどこぞの女の子を戦わせるって言うの⁉︎」

「そ、それはそうだけど……。でも、この先の事を考えると、もう1人ぐらい仲間がいてもいい気がしないか? まぁ、本人のやる気次第だけど……」

「「絶対ダメ(です)!」」

「は、はい……」

 

珍しく声を揃えて気圧された総二は黙り込んでしまった。が、なぜか2人の必死な眼差しには、戦いに巻き込む事以上の猛烈な拒否反応を起こしているようにも見えた。

康太もたじろぎながら、口を開いた。

 

「で、でも、万が一の事も考えて、予備のテイルギアを作るってのはアリかもしれないな」

「……それもそうかもしれませんね。特に愛香さんのテイルギアは年季が入ってますし、新調するのもいいかもしれません」

「べ、別にこのままでもいい気がするけど……」

「いえ、というのもですね。実は今、エレメーラオーブのハイブリッド技術を研究してるんです」

「ハイブリッド?」

 

トゥアールはコンソールパネルに設計図を表示してから説明した。

 

「テイルレッドを見ていて思ったのですが、総二様のテイルギアは、装着すると幼女化しますよね。でも、私の幼女属性が中に組み込まれているとかそういうわけじゃないんです。未だに原理は不明ですが、この偶然を必然に変えてしまう事も可能なのかもしれないんです」

「つまり、エレメーラの掛け合わせを、人工的に再現するって事なのか?」

 

康太の質問に、トゥアールは頷いた。と、ここでバネのように飛び跳ねて、目を輝かせながら強く反応を示したのは、言わずと知れた愛香である。

 

「じ、じゃあさっきの使えなかった巨乳属性も、上手く新しいテイルギアに組み込めれば、エレメリーションなんか使わなくたって、根本的な身体変化が起きて、巨乳になれるって事⁉︎」

「ま、まぁ、まだ研究段階なので、どうなるかは分かりませんが……」

 

トゥアールが曖昧そうに答えるが、愛香の耳には届いてなかったらしく、愛香はトゥアールの前で両手を組んで祈るように見つめた。

 

「お願いトゥアール! 完成したらそのテイルギア、あたしに頂戴!」

「いや待てよ⁉︎ さっきこのままでも良いって言ってただろ⁉︎」

「新しいのが出来るなら話は別よ! だってこのテイルギア、起動するときガリガリ音が鳴るし、温度がやたら上がるし、いきなりフリーズしたりもするし……。いざという時に早めに交換しときたいの!」

「なんだよその末期のパソコンみたいな症状……」

 

総二と康太は見え見えの嘘に呆れ果てていたが、意外にもトゥアールはそれをすんなりと受け入れた。ただ……。

 

「なるほど〜。欲しいのですか〜」

「(……! ま、マズい! この展開は今まで散々見てきたのと同じパターン! 愛香もだけど、なんでトゥアールも学習しねぇんだよ⁉︎ さすがに止めた方が良いか……?)」

 

康太が冷や汗をかき始めたが、トゥアールはそれに気づくことなく挑発するように愛香に言った。

 

「ふっふっふ……。それじゃあ先ずは今までの非礼を詫びて、土下座でもしてもらいましょうか……。そして私を様付けで敬うように……」

「(やめろぉぉぉぉぉっ! それ以上はフラグにしかならねぇ!)」

 

もう見てられないと思った康太は咄嗟にトゥアールの口を塞ごうとしたが、その前に、愛香の方に動きが見られた。

 

「トゥアール様! 今まで数々の無礼を働き、誠に申し訳ありませんでした!」

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ⁉︎ 何でここで蛮族が平身低頭⁉︎」

 

総二と康太だけでなく、張本人のトゥアールも愛香の行動に悲鳴をあげた。それもそのはず。わずかコンマ1秒の間に、愛香は頭突きするように頭を下げて、土下座をしたのだから、驚かない方がおかしい。

 

「や、やめてください愛香さん! そんな事言ってどうせ後で仕返しするつもりなんでしょう⁉︎ 今なら引き返せます! 頭を上げてください!」

 

トゥアールが狼狽するも、愛香は頭を上げなかった。それどころか、

 

「お願い、します……!」

「うぅっ……! け、血涙まで流すとは……!」

 

さすがのトゥアールもこの行動は想定外だったのだろう。

フラグが初めてへし折られる様子を見た康太は口をあんぐりと開けていた。

総二も慌てて愛香に駆け寄った。

 

「お、お前そこまでして巨乳になりたかったのかよ⁉︎」

「そ、そーじやこーたには分からないでしょうね……。だってあたしの唯一絶対の欠点である、胸がない事がどれだけ辛い事なのか! 母性の証があたしには備わってないのよ!」

「いや、母性の証の前に、母性そのものを備えた方が良いと思うんだが……」

「な、なぁトゥアール、母さん。2人からも何とか言ってやってくれよ……」

 

困り果てた総二は2人に助け舟を求めたが、2人の反応は総二の期待を裏切るものだった。

 

「良いじゃないの。女の子は誰だって本音じゃ胸がそれなりに欲しいものよ」

「お義母様のおっしゃる通りです。私だって基本的には愛香さんの言う事は全否定して生きていたいがモットーですが、これに関しては同感です。胸がどうでもいい女なんていませんよ。毎日一喜一憂。人生の命題なのですから」

「……女の願望って、結構深いもんなんだな」

 

康太がポツリとそう呟いた事に、総二も同意せざるを得なかった。

 

「そうよ。もし巨乳になれるのなら、相手が神々だろうと屠り去る覚悟があるのに……」

「いや、そんな理由で人間に謀反起こされたら、神様もたまったもんじゃねぇよな……」

「あぁ、胸が欲しい……。胸が、あぁ……」

 

なんて悲痛な願いなのだろう。まるで全てを引き換えにしても叶えたい願い。その姿は、かつて康太が幼少期にトラウマになった、ヒーロー同士が戦い、殺し合い、生き残った1人が願いを叶えるという特撮の事を彷彿とさせる、と康太は思った。

その様子を見ていたトゥアールも観念したのか、愛香の肩にそっと手を置いた。

 

「……あなたの覚悟には参りました。その願い、出来る限り叶うように、私も努力しましょう」

「と、トゥアール様!」

 

愛香も感極まって、トゥアールに抱きついた。しかも、トゥアールの胸ではなく腰に抱きついている。その異様な光景に、総二と康太はかける言葉が思いつかなかった。

 

「まさか、敵に塩を送る事になるとは……。引退してから、私も甘くなってしまいましたね……」

「ありがとう……! この恩は、一生忘れないからね……!」

「良いじゃないですか、愛香さん。私達、友達じゃないですか。困った時はお互い様です」

 

なんだかんだでこの2人はちゃんとした親友、もとい戦友なのだろうな、と総二と康太は思ったが、最後の最後で気づいてしまった。

愛香を見下ろすトゥアールの笑顔が、かつてないほど邪悪に満ちていた事に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から、トゥアールは早速新しいテイルギアの製作に取り掛かったわけだが、愛香の豹変ぶりは凄まじいものだった。

トゥアールがかなり真剣に設計図を見ながら、両手を器用に動かしている一方で、愛香はメイドの如く、お茶を用意したり、休憩しているトゥアールの肩を揉んだりと、まるで服従されているようだった。

さすがに見るに堪えない状況だったので、心配になった総二と康太は一度愛香に声をかけたが、

 

「別に辛気臭い顔しなくても良いって。冷静に考えたら、あたしもトゥアールに色々としちゃってたし、その罪滅ぼしよ。それに、これで胸が大きくなれば、こんな事何とも思わないわ」

 

と、2人の不安を払うように告げた。

これでもし愛香が新しいテイルギアをもってしても、巨乳になれない事を考えたら……。

2人は、おそらくゴールデンウィーク明けに完成するであろう、新しいテイルギアの完成までのカウントダウンを数えながら、しばらくの間、ガタガタ震えていた。

 

 




「WIXOSS」のアニメを観てても思ったのですが、女ってやっぱり怖いですね……。(腹の底で何を考えてるのか本当に分からないものですからね……)

話は変わりますが、いよいよ明日は「遊戯王」の映画が始まります! どんな感じになっているのか楽しみです!

それでは、次回「フェンリルギルディの思惑」に、テイル・オン!
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