俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜 作:スターダストライダー
それから、「遊戯王」の映画を観ました。とっても良かったです。上映時間130分の価値は大いにありました。(特典カードの値段が高すぎなのは悩みました……)
では、どうぞ。
トゥアールが愛香の為に巨乳属性のテイルギアを開発していた頃、アルティメギル側でもちょっとした(アルティメギルにとっては重大な)揉め事が起こっていた。
現在、合流した分隊の母艦との連結も完了し、基地の規模もドラグギルディの時と比べて遥かに大きなものとなっており、いよいよ総二達の世界の侵略が本格化しつつあった頃に、大きな壁にぶち当たった。
それは……。
「ええい! お主らも良い加減に呆れ果てていよう!この世界の巨乳属性の少なさに! 大事な己の体に刃を入れて、手軽に大きくしようという浅ましさが蔓延しておる事はバッファローギルディ殿の件で周知の事実! その付け焼き刃の乳がある故に、巨乳属性が生まれぬのでは無いのか⁉︎」
「だが、貧乳属性は違う! 小さいからこそ逆に誇りが生まれる! 小さいからこそ、愛が芽生えるのだ!」
「なんとバカな事を……! 偽物が蔓延るからこそ、荒地に咲いた一輪の花の如く、純然たる巨乳属性が可憐に映えるのでは無いか!」
「それに貴様らはさっき、この世界には巨乳属性が少ないと言ったな? 稀少だからこそ、巨乳属性は美しく輝くのだ! 限られた一瞬に絶美を咲かせる、儚くも強き生き様! それはまさに、燃え尽きる瞬間にこそ最高の輝きを見せる流星の如く存在感が出るのだ!」
「その通り! 貧乳で永劫の時を生きたとしても、それは彫刻となんら変わらないのですよ!」
……といったように、何とも頭の痛くなりそうな痴話喧嘩……もとい頂上会議が基地内の大会議室で行われていた。その傍らにはスパロウギルディを始め、各部隊の要人達も参加している。
巨乳属性と貧乳属性。この2つの相反する属性同士が、かつてない程に論争を繰り広げており、内部分裂が起こりかけていた。互いに主張を譲らず、口調もヒートアップしている。そのせいで、ここ数日はろくに出撃も出来ずにいた。
見た目だけでも恐ろしいエレメリアン同士が、男子中学生が話そうな事を熱気をみなぎらせて論じているのだから、人間達から見ればある種の地獄絵図に匹敵する。
そんな中、リヴァイアギルディ側のプレゼンタイムが始まった。
「ならば、これを見よ!」
リヴァイアギルディの部下の1人が、2部隊の中心に置かれていたスクリーンに一枚の写真を投影した。その口許には、勝利を確信したような笑みが浮かんでいた。
その写真には、おそらく登校中であろう、明らかに巨乳の女学生が写っていた。
それを見て、クラーケギルディ部隊のメンバーは目を逸らした。
「ぬぅ……! 下品な乳の女を大写しにするとは! だが、その程度で……」
「ふん。バカの一つ覚えのようにただ大きさだけを糾弾するのは三流の証拠! もっと大局的な視点で物事を捉えてみよ!」
「何……⁉︎」
そう言われてしまっては彼らも黙っていられない。渋々モニターを見つめた。その画像では、たすき掛けをしたカバンのベルトが胸に沈み込み、より一層巨乳が強調されていた。
「この左右に分かれた乳の有り様……。これこそが、天と地を創造せし世界開闢の再現だ!」
「そして、この左右に分かれて強調された美しさこそが、ツインテールの根源に通ずると思わぬか⁉︎」
一気に畳み掛けようと声を荒げるリヴァイアギルディの部下達。だが、クラーケギルディの部下達とて、ここで引き下がるような事は無かった。
次にクラーケギルディの部下がスクリーンに映したのは、スク水を着用した、高校生ぐらいの少女だった。
「見よ! このスク水との調和を! 巨乳ではこうはなるまい! 貧乳だからこそ、数多の衣装が似合い、映えるのだ!」
これを聞いて、かつてスク水属性のタイガギルディの部下達だった者の目の色が変わった。もちろん彼らもスク水で結束したわけではないのだが、やはり亡き隊長の面影は早々消えるわけではない。心が揺らぎ始めた。
だが、彼らの様子を見ていち早く察知したリヴァイアギルディの部下達がクラーケギルディの部下達を睨みつけて怒鳴った。
「! 貴様ら! タイガギルディ殿の部下を取り込んで、有利な立場に持ってこようという目論見か! なんと姑息な!」
「否、それは違うぞ! どんな属性の持ち主でも、最後には貧乳属性に結実すると伝えたいだけよ! 世界の開闢が巨乳であるというのなら、大地の果ても、大空も、海の彼方も、その平面は貧乳を表すものではないか! 万物は皆、貧乳へと帰るのだ!」
「だからこそ、貧乳であるテイルレッドはあれほどの力を持っているのだ! 違うか⁉︎」
「認めるかそんな理論! だったらテイルホワイトはどうなのだ⁉︎ 力だけでなく、知性も兼ね備えたあの戦士の強さの秘訣は、巨乳である事も関係していると言えるだろう!」
「そうだ! 巨乳のテイルホワイトならともかく、貧乳のテイルレッドなら、我1人でも容易く対処出来るからな!」
「貴様ぁ! テイルレッドを甘く見くびるなど、この私が許さん!」
「なら、ここで証明してみるか、あぁん⁉︎」
ますます会議が白熱化し、果てには取っ組み合いまで始まりかけたその時、
「静まれぇ!」
会議室にクラーケギルディの、拳を机に叩きつけた音が鳴り響いた。その勢いは強く、机にヒビが入るほどだった。
「このままでは埒が明かぬ。一体何日こうして終わりなき言い争いを続けるのか。それに、昨日に至ってはゲームのキャラを持ち出して喧々囂々の罵り合いだった。あまつさえ、巨乳、貧乳どころか、男の娘キャラだった事にさえ気づかぬ未熟! 最早乳の問題ですら無かったではないか!」
その一言で会議室の中は静まり帰った。
クラーケギルディの無数の触手が張り詰めている所から見ても、相当苛立っているのは明白だった。あの厳粛な騎士道を持ち合わせた彼でさえも、感情を露わにするほどに。
まさに深刻な事態。このままでは侵略どころではなく、アルティメギルそのものが壊滅し兼ねない。
「……やむをえんな。部隊の統一は一度白紙に戻す。個々で制圧を開始する。これしかあるまい」
やがてそう呟いたのは、ここまで会議の様子を黙々と眺めていたリヴァイアギルディだった。その顔には、将としての苦渋の決断が伺える。
これを聞いた両部隊の部下達は慌てふためいた。さすがのクラーケギルディの部下達も、敵側のリヴァイアギルディに声をかけた。
「し、しかしリヴァイアギルディ様……! お言葉ですが、我々の総力を結集しなければ、ツインテイルズには絶対に勝てませぬ! 例え時間はかかろうとも、このまま話し合って……」
「皆まで言うな。お前達の気持ちもよく分かる」
部下の発言を遮ったのは、彼らの将でもあるクラーケギルディだった。
「確かにこのまま座していても、事態は何も変わらぬのもまた事実。私も賛成だ」
お互いの将が言葉を揃えてしまっては、部下達は何の反論も出来ない。
「何せ、俺の腹心たるバッファローギルディがああも容易く敗れ去ったのだ。ツインテイルズの実力はとうに承知しておる。……もっとも、あやつがあそこまで腑抜けだった事に失望もしているところだがな!」
あまりにも辛辣な死者への冒涜に聞こえるが、リヴァイアギルディの事をよく知る彼の部下達だけでなく、クラーケギルディやその部下達には分かっていた。
それが本心でない事に。事実、リヴァイアギルディの股間の触手は震えており、悲しみに暮れている事は容易に想像出来た。
クラーケギルディやその部下達もバッファローギルディの強さはよく知っていた。実際、バッファローギルディの戦闘の様子を見るに、テイルホワイトとは対等に渡り合えるほどに実力はあった。ただ、相手が悪かっただけなのだ。巨乳に飢えた、テイルブルーに目をつけられてしまったのが運の尽きだった。
その場にいる皆が目を伏せていたその時だった。
「た、大変です……!」
会議室に、今回の会議に召集されなかった一体のエレメリアンが駆け込んできた。その顔色からは焦りが見えている。
「何事だ? 今は会議中であるぞ」
「そ、それどころではございません!」
スパロウギルディの言葉に臆せず、血相を変えながらそのエレメリアンが放った一言は、両部隊を動揺させるものだった。
「ダークグラスパー様が、この部隊を視察に来られるとの事です!」
「何だと⁉︎」
真っ先にリヴァイアギルディが立ち上がり、周りのエレメリアン達は慌てふためいている。
そんな中でも座っているクラーケギルディが質問した。
「ご到着はいつになると?」
「そ、それは分かりません……。近々来られるとは聞いてますが、そもそもこの情報すら確かとは言えませんので……」
「……そうか」
クラーケギルディは冷静そうに答えたが、内心は焦っていた。
「ぬぅ……。やはり度重なる失態に目をつけられて、見咎められたか……」
「……そうなるな」
両部隊の将が苦渋の表情を浮かべるのも無理はない。
『闇の処刑人 ダークグラスパー』
それは、アルティメギルに属する者達なら、一度はその名を耳にした事があるほど、有名かつ耳に入ってくるだけでも恐ろしい通り名だった。
噂によれば、部隊を持たずして首領の勅命を直々に受け、単身世界を渡る謎多き戦士であり、その使命は、組織の反逆者の処罰。そして誰1人としてその本名は知らない。それ故に、その顔を見た者はほとんどおらず、いたとしてもその者は、既に消息を絶っている事が多いと聞く。
だが、クラーケギルディはそこまでダークグラスパーの事を物騒な存在とは考えていなかった。
アルティメギル内にそのような処刑人がいるとは思えない。いたとしても、それは恐怖によって縛り付けているだけの行為に過ぎない。恐怖による支配は長続きしないどころか、必ずどこかで不満が生まれ、その結果、裏切りなどの思わぬ事態を引き起こしかねない。おそらくは、馴れ合いや緩みがちな面々の気を引き締める、いわば監視役としての建前として、処刑人という異名がつけられているのだろう。クラーケギルディはそう考えていた。
とはいえ、ダークグラスパーがこちらに向かっているという事は、それだけ自分達が首領に好ましく思われていないのは明白な事実。あまりのんびりとはしていられない。
そう思ったクラーケギルディは思い切ってリヴァイアギルディにこんな提案をした。
「時にリヴァイアギルディよ。ここは私達のみで出向き、直接手の内を確かめてみるというのは?」
「……ふん。小手調べというわけか。まぁ、異論は無い」
遺恨はまだ残るが、ダークグラスパーという脅威が迫りつつある以上、いがみ合っている場合では無い。そう認識した彼らは、自ら出撃するという事でまとまり、今回の会議は幕を閉じた。
「(また実にならない論争だけで終わってしまったな……)」
先ほど終わった会議の資料を片手に、クラーケギルディは心の中でそう呟きながら、1人廊下を歩いていた。その眼差しには、騎士のような精悍さは何処へやら、まるで中間管理職特有の疲れが溜まっているように見える。
そろそろ解決しておきたいのも事実だが、これといった妙案が思いつくわけでも無い。
出撃は明日。それまでに疲れを取り除く為に、部屋に戻って貧乳の少女達が写った画像でも見て体を癒そうと考えていたその時、後方から声をかけられた。
「相当お疲れになられているようですね。気苦労が絶えませぬな」
何の遠慮もなくかけられた声色に、クラーケギルディは聞き覚えがあった。そして漫然と振り返り、嫌悪感を含ませた声で呟いた。
「……貴様に労われるつもりは無いぞ、フェンリルギルディ」
クラーケギルディに声をかけたのは、美しき銀の毛並みと、鋭く尖った耳と口からはみ出た白い牙が特徴的な狼のエレメリアン……フェンリルギルディだった。
クラーケギルディのみならず、ほとんどのエレメリアンはフェンリルギルディを忌み嫌っている。なぜなら、会議には全く参加せず、自由気ままに行動しており、今回の合流に命じられたわけでも無いのに、勝手に自分のいた部隊から外れてこの基地にやってきたのだ。だからこそ、彼を信頼している者は少ない。
その瞳に野心をたぎらせながら、フェンリルギルディは言った。
「あのドラグギルディ様を倒し、本来相反するあなた方2人が呼ばれるほどの相手です。興味が湧かないわけがありません。そこで、私めのお力添えが役に立てば考え、こうして罷り越した次第です」
人の心を逆なでするようなその口調を聞きながら、クラーケギルディは静かに論じた。
「貴様の助けなど必要ない。それから、あまり思い上がらない事だな」
「はて、何の事でしょうか……?」
「とぼけるのもそこまでだ。聞けば、幹部の座を欲するあまり、影でコソコソと根回ししているそうだな。戦士たるもの、日頃の鍛錬を重ねてこそ栄冠を勝ち取れるものだ。貴様のように功を焦ると、碌な事にはならんぞ」
「……誰にも理解されぬ属性に邁進すれば、誰からも焦っているように見えましょう」
「理解されぬ……だと?」
すると、フェンリルギルディはいずこからかある物を取り出した。
それは、彼の持つ
そして彼は下着を見つめ、その顔に悲壮感を漂わせながら呟いた。
「あなた方のように、争えるならまだ良いのです。信念をぶつけ合えるならば本望でしょう。しかし、我が下着属性に至っては、ハナから爪弾きに合い、外道であると罵られ、同じ土俵に立つ事さえ許されておりません。あなた方の愛する巨乳や貧乳も、同じように下着に包まれているものだと言うのに、ね」
彼の言う通り、全ての属性が仲間内で認められているわけでは無い。時には眉を顰められる事もある。アルティメギル内を広い目で見れば、そのような目で見られている者も少なくは無いのだ。
「ブルマやスク水が正で、下着が邪であるという風潮があるのは明白。旧態依然とした考えは、私にとっては実に嘆かわしいのですよ。……だからこそ、私はそんな今のアルティメギルに新しい風を吹き込もうと思っているのです。私という、次世代のエレメリアンの存在を以ってして、ね」
「それが、貴様がこの部隊に合流しようとした理由か」
クラーケギルディはそう呟きながら、フェンリルギルディの言っていた事を思い返していた。
「(……なるほど、まだ若い。確かに若いが、それでも一理ある。いつの時代も、若い者達が歴史を変えてきたのも事実だ)」
鼻持ちならない相手ではあるが、異質な存在故、己の誇示に焦るのを認められないほど、自分も器は小さくない。そう思ったクラーケギルディは再び背中を向けた。
「……ならば、好きにすれば良い。我々の邪魔をしない限りはな」
「……ただですね」
すると、フェンリルギルディはとんでもない事を口にした。
「私としては、ツインテール属性もそろそろ不要ではないかと思っているのですよ」
「! 貴様! 今すぐ撤回しろ!」
それは、アルティメギルの理念を根本から覆すような物言いだった。さすがのクラーケギルディも黙っていられず、思わず腰の剣に手をかけた。
対するフェンリルギルディは動じる事なく、クラーケギルディを落ち着かせるように手を突き出した。
「まぁまぁ、ここは一つ私の意見をお聞きになってください。まず、ツインテール属性があり、その上で個々の求める属性を探す。これが今までのアルティメギルのやり方です。しかしこれでは、効率が悪くなるのも当たり前です。いかにツインテール属性が最強とはいえ、もっとのびのびと戦える状況の方が、結果的に集めるエレメーラも増えるとは思いませんか?」
フェンリルギルディの説明を聞き、クラーケギルディは押し黙った。
確かに兵の士気を高める事を考えれば、その方が良いかもしれない。だが、各々の持つ属性と同等に、ツインテール属性を皆は愛しているのだ。クラーケギルディもその1人だ。
今のフェンリルギルディには、そんな原初の本能さえ、己の野心に飲み込まれて消えてしまったのかもしれない。
「……それが、貴様の言う新しい風とやらか。存外小さい野心であったな。まるでそよ風だ」
「それは褒め言葉として、受け取っておきましょう」
フェンリルギルディが頭を下げる中、クラーケギルディは少しでも彼の考えに期待した自分がバカだったと思いながら、力強くマントを翻し、踵を返した。
「フェンリルギルディよ。これは忠告だ。ツインテール属性を軽んじる事だけは慎め」
それは先達としての警告のようにも聞こえるが、フェンリルギルディの心には全く響かなかったようで、不敵な笑みを浮かべながら、クラーケギルディの隣を横切った。
「ご忠告通り、私は決してあなた方の邪魔だけは致しませんよ。それでは、失敬」
警告など何するものぞと言わんばかりに悠々と立ち去るフェンリルギルディの背中を見て、クラーケギルディはため息をついていたが、不意に自分の右手に何かが握られている事に気づいた。
「む……?」
クラーケギルディの手に握られていたのは、先ほどフェンリルギルディが見せていた、Aカップサイズのブラジャー、つまり下着だった。
貧乳と相性が良く、尚且つ滑らかな手触りのそれは、お近づきの印か、それとも決闘の手袋代わりのつもりなのか……。
「……切磋琢磨する仲間すらいない、というわけか」
クラーケギルディはそう呟きながらフェンリルギルディの背中を見た。野心に歪んだ戦士の足音はより一層孤独さを際立たせいる。そんな彼の背中を遠くから見つめながら、クラーケギルディは内心、不安な感情を抱いていた。
「(早まるなよ、フェンリルギルディ……! 私とてお前には、これまで散っていった同胞達の後を追って欲しくないのだからな……!)」
だがこの時、クラーケギルディは疲労のせいで気がつかなかったのかもしれない。彼らの後ろ姿を、陰からジッと見つめているエレメリアンがいる事に……。
こうしてみると、クラーケギルディはかなり優しい性格なのかもしれませんね。
そして最後の方で謎のエレメリアンがいましたが、これはオリジナルのエレメリアンです。本格的な登場はまだ先になると思います。
次回はいよいよツインテイルズに急展開が……!
それでは、次回「二幹部襲来! そしてバレた正体」に、テイル・オン!