俺達、ツインテールになります。〜赤い勇気と白い絆〜   作:スターダストライダー

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今回はトゥアールからの説明回です。
では、どうぞ。


Tail7:テイルギアとトゥアールの事情と異世界の侵略者 アルティメギル

夕日が沈みかけた頃、総二達はようやく実家の喫茶店に戻る事が出来た。……のだが、ここからが問題だった。

 

「裏口から……そっとだぞ。母さん、帰って来てるみたいだからな」

 

普段と違って裏口から家の中に入ろうとする一行。

なぜこのような行為をするのか? それは総二の母である未春の性格にある。彼女は極度の中二病である為、トゥアールのような見知らぬ人を連れて来たと知ったら、確実に面倒事になるからである。加えて、総二や隣近所の康太が美少女になって怪人と戦ったなどと知ったら、心配する以前に首を突っ込むのは明白である。

そう考えて、裏口から家に侵入する事になったのだが……。

 

「おっしゃましま〜……おぐっ!」

 

完全に友達の家に遊びに来た感覚で声を出したトゥアール。加えて、愛香がそのトゥアールに手刀を叩き込む始末。なので、

 

「あら、総ちゃん?」

 

早速バレかけてしまった。慌てて総二達はごまかす事にした。

 

「あ、あぁ、ただいま!」

「おばさん! 愛香です! お邪魔します!」

「同じく、康太です」

「は〜い」

 

幸い、未春の大らかな性格が功を奏したのか、トゥアールの存在までは気付かれずに済んだようだ。総二達はトゥアールを連れて、どうにかして2階の総二の部屋までたどり着く事が出来た。

部屋に入ると、何故かトゥアールが「そわそわ、そわそわ」と口に出していた。気になった総二の視線に気づいて、トゥアールがハッとした。

 

「あぁ、すみません。私、男の部屋に入るの初めてで……えへへっ」

「そっか……。それじゃあ説明してくれ。俺が貰ったこの力、そしてあの変態達の事、それから何で俺や康太が女になっちまうのかを!」

 

総二は最後の部分を強調してトゥアールに質問した。

 

「どうしましょう……。胸のドキドキ、聞かれちゃいますぅ……」

「話が噛み合ってないし、さっさと黙って話さんかぁい!」

「ひぃぃぃぃぃ!」

 

一向に話そうとしないトゥアールに、愛香がキレて胸倉を掴んで揺さぶっている。

 

「お、落ち着け愛香!」

 

慌てて総二と康太が止めに入るが、愛香は笑みを浮かべながら総二に尋ねた。

 

「ねぇ総二。この部屋、ハンマーとかアックスとかって置いてなぁい?」

「可愛く言ってるけど、物騒な事言ってる事に変わりはねぇぞ⁉︎ あと、そんなもん置いてねぇし!」

 

総二が悲鳴に近いツッコミを入れる。ようやく落ち着いたところで、トゥアールが口を開いた。

 

「し、失礼しました……。いささか先走ってしまったようですね。それでは順を追って説明させていただきます。まずはテイルギアについてですが……」

 

トゥアールがポケットから紙片のようなものを広げると、その上の何もない空間に液晶画面が出現した。これには男である総二と康太もワクワクするように目を輝かせていた。

そして、テイルレッドの全身図が表示され、各パーツの説明文が書かれていたのだが……。

 

「……長えわぁぁぁぁぁっ!」

「ひぎい! そんな理不尽なぁ!」

 

あまりにも長すぎる説明文に、愛香は鉄拳をトゥアールにかました。それでもなお平気そうに復活するトゥアールを見て、なんてタフな人なんだ、と2人は感心した。それから2人は男心をくすぐるような説明文を眺めていたが、不意に総二が叫んだ。

 

「……はっ! 待て待て! テイルギアの仕組みもいいけど、俺の身体! 何で女の子になっちまうんだ⁉︎ そこを教えてくれ!」

「えっ? 女の身体の事を教えて欲しい……? うふふ。そうですね。それじゃあまずはこの部屋の電気を消して、それから……」

「早よ言え! そろそろ手加減出来なくなるわよ!」

「ひ、肘の可動範囲が広がるぅぅぅぅっ!」

「今まで手加減してたのかよ⁉︎」

 

康太が愛香のこれまでの暴力に近い行為が手加減しての事だった事を知って驚いた。トゥアールは愛香から離れて、仁王立ちをしながら理由を説明し始めた。

 

「総二様がテイルギアをまとうと幼女になるのは……。私の趣味ですよ! 悪いですか⁉︎」

「「「開き直ったぁぁぁぁっ⁉︎」」」

 

トゥアールからの、まさかの爆弾発言に唖然とする3人。さらにトゥアールは説明を続けた。

 

「それに幼女の姿なら、油断を誘える上に注意を引きつける事も出来ます。奴らと戦うにはベストなスタイルなのです」

「だったら何でそっちだけ説明しようとしなかったんだよ……。最初のやつ絶対に自分が損してるだろ……」

 

もっともな事を康太は呟いた。

 

「……ま、まぁ、俺の身体の事情は一応分かった。じゃあ次に、トゥアールの事を教えてくれ。トゥアールは一体、何者なんだ?」

「は、はい! 是非とも隅々まで見てください、この身体!」

 

と言って白衣を脱ぎ始めたトゥアールに、愛香が無言でボディーブローを当てた。トゥアールは「てんどんっっっっ!」という意味不明な呻き声を発しながら倒れこんだ。

 

「……あんたら、実は仲良しだろ?」

 

その光景を見ていた康太がそうツッコんだ。

そして、ある程度回復したトゥアールが今度こそ説明を始めた。

 

「……さ、最初に申し上げておきますと、私は、この世界の人間ではありません。異世界からやってきました」

「なるほどな。道理で全然コミュニケーションが取れないと思ったら、そういう事だったのか……」

「あぁ、勘違いなさらないでくださいね、康太様。異世界と言っても、正確には平行世界のようなものであって、この世界とさほど変わりはありません。ちなみに、名称こそ違えど、私もれっきとした日本人ですから」

「「「そうなの⁉︎」」」

 

珍しく3人の声がハモった。逆にさほど変わりはないという事が想像つかないほど、トゥアールは変人のような存在だったからだ。

 

「では、まずはあの怪物達が狙うもの……属性力(エレメーラ)と呼ばれる心の力について説明しましょう」

 

トゥアール曰く……。

 

・エレメーラとは、突出した科学力を持った世界で生まれた、心の力。心の拠り所でもあり、活力の根源でもある。

・テイルギアのコアであり、怪物達が狙う、未知のエネルギー結晶体。

・エレメーラは人の思考と嗜好、あらゆるものに介在し、その数は無限にあるらしい。

・好みに限らず、職業や身体的特徴、得意分野など、1人に1つ以上は必ず持っているものであり、稀にいくつものエレメーラを持つ者もいる。

・もしエレメーラを、例えばツインテールの属性力を失ってしまったら、生涯その人はツインテールを結べなくなるらしい。

 

それを聞いて、総二は寒気が走った。それは康太も同様だった。もしあの時リザドギルディに勝てていなかったら、ツインテールを奪われていた慧理那や他の子供達は、一生ツインテールに出来なくなっていたという事になるのだ。それは総二にとって地獄に等しい事だろう。

愛香も信じられないような顔つきで、自分のツインテールを弄りながら口を開いた。

 

「そ、そんな事って……」

「そんなバカなとお思いでしょうが、これは動かしようのない事実なのです」

「でも、ツインテール好きってだけで、あんな力になるの?」

「精神力は、どんな燃料や科学エネルギーにも勝る、莫大なエネルギーでもあるんです。例えば、運動をする際にだらけて走るのと、集中して走るのでは、格段に効率が違いますよね? それも精神力を推進力に変換しているからなんです」

「なるほどな。心の持ち用って事か。何となくそれって分かるかも」

 

空手で幾多の試合に出場している康太には、トゥアールの言っている事がよく理解出来た。

 

「エレメーラは物質化が可能になった時、とてつもないエネルギー精製源となり得ます。テイルギアが最強の武装と言われるのも、その所以があるからなのです」

「……あっ、そういえばさ。リザドギルディを倒した後に、宝石みたいな物を手に入れたんだけど……」

 

総二がそう呟くと同時に、総二のテイルブレスから薄緑色の宝石が飛び出して、総二の手のひらに落ちた。

 

「へぇ、結構綺麗だね」

「それは、エレメーラが結晶化したもの……属性玉(エレメーラオーブ)と呼ばれています」

「これを持った時、頭に「人形属性(ドール)」って浮かんだんだけど……」

「じゃあ、あのリザドギルディって怪物は、人形好きって事?」

「正確には、人形を持った幼女好きという事になりますね」

「それであの時……」

 

総二はリザドギルディから、やたらとしつこく人形を持たせるようにしていたのを思い出した。おそらくテイルレッドの容姿から判断して人形を渡そうとしたのだろう。

そこで、康太が初めて質問をした。

 

「なぁ、トゥアール。精神力が強いってのはよく分かったけどさ。何でツインテールなんだ? 普通、こういうのって家族愛だとか、それこそ友情とかが当てはまりそうじゃないか?」

 

確かに、康太が変身しようと思ったのは、目の前で総二こと、テイルレッドが危機にさらされていた為であり、まさに揺るがない友情が彼を変身へと導いた、と言われてもおかしくないだろう。だが、トゥアールは首を横に振って説明した。

 

「康太様のおっしゃたそれらは、ある程度の知的生命体なら持っていて当然のものです。それはあくまで精神の土壌。生命そのものなのです。肝心なのは、その上で何に打ち込み、何を欲したか。それこそが個としての精神の力ではないでしょうか」

「つまり、総二と康太はそれだけツインテールに人生をかけてたって事……?」

 

愛香はジト目で2人を見つめた。

 

「な、何で俺までそんな目で見られるのさ。俺は……」

 

康太が慌てて否定しようとしたが、心の隅で心当たりがあった。それは、亡くなる少し前までなびいていた、フィーリアのツインテールに見惚れていた時期があったからだ。もしかしたら、無意識に自分はツインテールを……。そう思っていたが、総二の叫び声で我に返った。

 

「んだよ、なんか悪りぃか? 実際強かったじゃねぇかよ!」

「そうです。ツインテール属性は元々、エレメーラの中でも最大級に力のある不思議な属性なんです。だからこそ、私はその力を活かして戦闘服を完成させたぐらいですからね」

「マジか⁉︎ ツインテールが最強……⁉︎」

「「えぇ〜っ……」」

 

総二がこれでもかと言わんばかりに歓喜していたが、愛香と康太はさほど理解出来ず、若干引き気味だった。

 

「テイルギアは、ツインテール属性をコアに製作したので武装です。それ故に装着出来るのは、当然強力なツインテール属性を持つ者に限られる。そして、そのツインテール属性を宿していたのが、総二様と康太様だったのです!」

「……って事は、俺と康太は選ばれし者だったっていうのか⁉︎」

「何で⁉︎ 何で俺までそうなるんだ⁉︎」

 

総二が驚くのを尻目に、康太は訳が分からず混乱していた。そんな中、トゥアールが総二の太ももに触れようとしながらこう言った。

 

「あの〜。そろそろ説明がだるくなってきたので、明かりを消してもらえませんかねぇ〜」

 

言うが早いか、愛香は近くに落ちていた分厚い月刊雑誌を投げて、その角をトゥアールに命中させた。

 

「……まぁ、あいつらがエレメーラってやつを狙ってるのは分かったけどさ。結局のところ、あいつらも異世界から来たって事?」

「そうです。負の遺産として名付けられた異界の生物。通称「エレメリアン」。奴らはエレメーラを糧として、数多の世界で属性力を略奪して、自らの生命力とした生命体。そして彼らが高度な知識を備えて、集結した組織。それが「アルティメギル」なのです……」

 

トゥアールは痛めた頬をさすりながら、敵の事を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

同時刻、アルティメギルの秘密基地の中にあるホールでは、ドラグギルディを筆頭に、幹部や部隊長クラスのエレメリアン達が集まり、先ほど閲覧した映像を再度見直しながら会議を行っていた。

だが、会議は決して順調に進んでいた訳ではないようだった。

 

「これほどの小さき体で、あのリザドギルディを倒した相手。よくよく見定めねば轍を踏むと心して、この映像を見始めたのですが……」

 

側から見れば、言い訳にも聞こえるこの報告。しかし、この中で地位の高いドラグギルディはそれを聞いてう〜む……、と唸った。

 

「このツインテールに全員がみとれたか……。確かにこやつらからは奥深く神秘的で、未知の凄みを感じさせる。容易に奪える相手ではなかろう」

 

すると、部隊長の1人が立ち上がってドラグギルディにアピールを始めた。

 

「しかし、それでこそ武人の血が騒ぐと言うものです! 次は私にお任せを!」

「何か考えがあるのか?」

 

ドラグギルディの質問に、怪人は意気揚々に答えた。

 

「はい! メイド服に包み込ませて、動きを封じさせるのです! ツインテールさながら、ペアで優雅にダンスを踊るが如き、メイド服になった、特に背丈がちょうどいい感じの、テイルホワイトのその姿を、私は見たい!」

 

明らかに自分の欲望丸出しの提案であったが、ドラグギルディは待ったをかけなかった。と、今度は別の怪人が異なる意見を述べた。

 

「いや! それよりも、夏に水を浴びて、体にぴったりと貼り付けるようにするのだ! 特にあの可愛らしさを備えたテイルレッドならば、濡れた髪と透けた肌色のコラボレーションを……」

「手ぬるい! それでは片方にしか特権がない! ここはやはり双方にメリットがあるように、縄できつく縛りあげて、揺れるものをツインテールのみという姿こそが……」

「おかしな事を。彼女らには、このリボンが似合うと先ほどからおっしゃっているでしょう」

「いいえ! いかに先輩といえど、これは譲れません! やはりナース姿に着替えさせる事で……」

 

ああだ、こうだと何とも頭が痛くなりそうな意見が飛び交い、なかなか結論が出ない事に痺れを切らしたドラグギルディが一喝した。

 

「静まれい!」

「!」

 

その凄みのある一言で、全員が動きを止めて、辺りを緊張感が包んだ。

 

「貴様達の思いの強さは甲乙つけ難い。よって次に出陣するものは、戦いで決めよ!」

 

その一言に、一同は賛成した。

 

 

 

 

 

 

「滅ぼされた⁉︎ トゥアールの世界が⁉︎」

 

同じ頃、トゥアールからアルティメギルの話を聞き終わった後、今度はトゥアールの元いた世界が滅んでいる事を説明して、3人は驚愕した。

 

「はい。私の世界の人間は、その全てがエレメーラをアルティメギルに奪われました。一見何一つ変わっていないように見えますが、そこは無機質で、覇気の無い人間だけの寂しい世界です。これほどに静かで残酷な侵略は無いでしょうね……」

「トゥアール……」

 

自嘲気味に淡々と話すトゥアールだが、3人にとっては心を痛めるような内容だった。自分が好きなものに干渉出来なくなった世界。命こそ奪われていないが、それでも、何事にも無関心になってしまう事など、死んだも同然である。そんな世界で暮らすなんて、康太には到底耐えられないだろう。総二なんて、もしもツインテールが消滅したら、自殺まで考えるかもしれない。

 

「エレメーラは被害のほどが第3者からは実感しにくいものです。それに、エレメーラの技術が確立していないこの世界では、奴らに太刀打ちする術はまず無いでしょう」

「……まぁ、あんなバカげた事を言ってる怪物なんて、誰も本気で対策なんてしないでしょうね」

「私の場合は早く被害に遭ったせいで、アルティメギルが本格的にエレメーラ奪取をする前から彼らの技術を研究していました。そのおかげで自身のエレメーラは奪われる事はありませんでしたが……」

「世界を守るところまでは及ばなかったって事か……」

 

康太がトゥアールの言葉の続きを代弁した。そこで、総二が1つの疑問を持った。

 

「で、でもよ。今日みたいに敵をぶっ倒せば、エレメーラは奪われた人達の元に戻ってくるんじゃねぇか?」

「あれは総二様と康太様が手早く対処してくれたからどうにかなったものです。私の調査では、エレメーラを奪われて24時間経過したら、もう二度と元には戻りません」

「……!」

「ですから、私のやろうとしている事は、生産性の無い復讐なんですよね、実は……。ですが、これ以上奴らの好きにはさせたく無いのです。何としてでも、奴らの侵略を止めたいという気持ちは本当ですから」

 

トゥアールの思いを聞いて、総二は黙り込んだが、やがて意を決してトゥアールに告げた。

 

「……分かった! 利害の一致というには、こっちの恩恵が多そうだけど、トゥアールの世界の敵を討つために。そして、この世界を守る為に。この力、ありがたく使わせてもらうぜ!」

 

それを聞いて、トゥアールは表情を明るくした。

 

「はい! 遠慮無くお使いください! この身体!」

 

ドヤ顔でそう言うトゥアールを、愛香は無言で組みついてからバックドロップを決めた。

 

「(……何とも色気の無いパンチラだな)」

 

2人の体制によってパンツが丸見えなのだが、全くといっていいほど色気を感じさせなかった。とりあえずその光景を無視して、康太もトゥアールに告げた。

 

「俺も協力するぜ。この力を手にしたのは本当に偶然だけど、放って置くわけにもいかない事情だもんな」

 

その言葉を聞いて、トゥアールは愛香を引き離してから康太に詰め寄った。

 

「そ、そうですよ! 私もあなたに聞きたい事があるんですよ! 何故あなたがそのテイルブレスを所持していたのかを!」

「お、おぅ……。分かったから、少し離れてくれ。近すぎる……」

「あっ、はい……」

 

トゥアールも落ち着いて一歩下がって座り込んだ。

そして、康太は語り始めた。今、自分が身につけている白いテイルブレスにまつわるエピソードを……。




今回はキリがいいのでこの辺で。
次回はトゥアールとフィーリアの関係が明らかになります。

それでは、次回「フィーリアの正体 託される想い」に、テイル・オン!
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