Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第九話 変わった視線

 三時間目の授業が終わり、今までの休み時間と同じように俺と一夏は女子の視線にさらされる。

 だが、俺に注がれる視線――ほとんどがクラスメイトの女子のもの――はさっきまでと何かが違っていた。

「やっぱりな」

「ん? 何がだ?」

 俺につぶやきに一夏が問いかけてくる。

「クラスの女子の視線だ。さっきまでと違うとは思わないか」

「え、そういえば違うような気がするけど……気のせいじゃないのか?」

「気のせいではないな。さっきまでの興味を含んだものから、非難めいたものに変わっている。大方、さっきの授業での俺の言動が気に入らなかったんだろうな」

 三時間目の授業のとき、俺はオルコットに、そしてクラスの女子にいろいろ言った。彼女たちからすれば気分を害するであろうことを。

 自分が間違ったことを言ったとは思わない。それでも、彼女たちが気分を害したことに変わりはない。

 おそらく、クラスの女子からそれ以外の女子に俺の風評は伝わっていくだっろう。確実に、悪い風評が。

 まあ、それはどうでもいい。俺がどう思われていようが、どうでもいいことだ。だが、一夏を巻き込むわけにはいかない。

「一夏。少しの間、俺と関わらないほうがいい。お前までいらない被害を受けるかもしれない」

「いきなり何言ってるんだよ?」

「クラスの女子は俺に良い印象を抱いていない。嫌悪してるやつらもいるだろうな。たぶん、今日明日中には学校中に俺の噂が流れる。噂特有の、あることないことが混ざったものがな」

「そんな! 明弘は何も悪いことやってないだろ! 確かに言い方は少し悪かったかもしれないけど、だからって――」

「良いか悪いかは関係ない。あいつらにとっては自分たちよりも下の存在である男に好き勝手言われたんだ。それであいつらは気分を害す。噂が流れる理由には十分すぎる」

 噂が学園中に広がれば、学園の女子からの俺の評価は低いものになるだろう。そんな俺と一緒にいては、一夏の評価まで下げかねない。

「それに、男だけで固まっていたら女子がお前に話しかけづらいだろ。お前から話しかけろとは言わないが、少しは女子とも交流しろ」

「……お前はどうするんだよ」

 一夏が険しい表情で訊いてくる。

「俺は一人でも別に平気だからな。適当に一人で過ごすさ」

「そんなの……いいわけない」

「俺がいいんだから、何も問題はない」

「問題あるだろ! 俺が皆に――」

「なんて言うんだ? あいつらは俺が気に入らないだけだ。お前が何を言っても意味はない。どうせ飽きれば自然となくなっていくから放っておけばいい」

 気に留める必要もない、ということを含ませて一夏に言うが、一夏は険しい表情のままだ。気にすることなんてないというのに。

「……どれだけ時間がかかると思ってるんだよ」

「長くて三年ですむ。三年もすれば、卒業だからな」

「三年って、お前はそれでいいのかよ!」

「良くなかろうが、俺には我慢することしかできない」

「でも――」

「何も気にする必要はない。お前は俺とあまり関わらなければ、それで何事もなく過ごせるんだから」

 一夏は納得いかない表情を浮かべていたが、反論する前に授業開始のチャイムが鳴る。

「話はそれだけだ。授業始まるから戻るぞ」

「お、おい、待てよ明弘」

 一夏の制止には答えず、自分の席に戻る。

 チャイムが鳴ったため他のクラスの女子はいなくなっていたが、クラスの女子たちはそんな俺の様子を見て、小声で話し合う。

「どうしたのあれ、喧嘩?」

「かもねー。それか須藤君が一方的に織斑君を拒否したのかも」

「勝手よねぇ」

 会話が耳に入ってくる。その会話は終わることなく続き、どんどん話が膨らんでいく。

 やはり俺に良い印象を持っていないのは確か見たいだな。

 その確証が得られただけで、それ以外には悪意しか感じられない会話。俺が気に入らないというだけで、よくもまあここまで話を膨らませるなと感心すら覚える。

「全員着席しているな。授業を始める」

 そんな言葉とともに織斑先生が山田先生と一緒に教室に入ってきたときには、今まであちこちから聞こえていた会話は止んでいた。

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