Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第十話 昼時のお菓子パーティー

「ふぅ……」

 屋上に一人上がってきた俺は、小さく息を吐く。

 時間は昼休み。昼食を食べに屋上に誰か来ているかと思ったが、嬉しいことにそんなことはなく、ここにいるのは俺一人。

 おそらく、一夏の方に行っているのだろう。あいつは学食に行ったはずだから、学食は今、生徒でごった返しているだろう。

 俺も本当なら学食で昼食をとるつもりだったが、こんな状況では行くに行けない。あまり食事を抜きたくはないが、まあいい。一食くらい食わなくても死ぬわけではない。

「……昔は、毎日ちゃんとしたものが食べられること自体、ありえないことだったのにな」

 かつては普通だったことが、今はそうは感じられない。我ながら堕落したものだな、と自分の弱さを再認識したところで、背後を振り返る。

「誰だ?」

 振り返った先にいたのは、袖の余りすぎている制服を着た、唯一俺がこの学園でまともに会話をした女子――布仏本音、のほほんさんだった。

「やほ~、すーくん」

「残念だが、一夏はここにいないぞ。学食にでもいるんじゃないか?」

「違うよ~。私はすーくんを探しにきたの~」

「俺を? 物好きだな。俺はクラスの女子に嫌われているんだぞ」

 クラスの女子が俺を嫌っていることなら、彼女だって知っているはずだ。それなのにわざわざ俺を探すなんて、相当の物好きだ。

「みんなが嫌っていても関係ないよ~。私はすーくんがいい人だってこと知ってるもん」

「いい人? 俺のどこかいい人だって言うんだ」

「だって、おりむーと一緒にいないのはおりむーを巻き込みたくなかったんでしょ?」

 おりむーというのは、一夏のことだろう。あいつの苗字が織斑だからな。

 いや、それよりも――

「聞いてたのか」

「うん。みんなは距離置いてたけど、私は近くで聞いてたからねぇ」

「……確かに、聞かれててもおかしくはないか」

 女子が俺と距離を置いているから聞かれていないと勝手に思っていたが、聞こうと思えば聞けたのだ。そのことを失念していた。

「それに~、すーくんは何も間違ったこと言ってないもん。だから、私はすーくんと一緒にいる~」

「……クラスメイトから距離を置かれるぞ」

「そんなの気にしませーん」

「気にしないって……。クラスで孤立してもいいのかよ」

「あ、お菓子食べる~? いろいろあるよ~」

「人の話を聞けよ」

 のほほんさんは俺の隣に座り込み、いくつかお菓子を取り出す。というか、どこから取り出しているんだ? ポケットに入る量を超えているし、お菓子を入れるような袋とかも見当たらない。

「すーくん、お昼食べてないんでしょ~? 一緒に食べよ~」

「腹減ってるなら学食に行けばいいだろう。お菓子よりも栄養バランスもいい」

「すーくんを放っておけないよ~。お腹減ってすーくんが倒れたら大変でしょ~?」

「一食くらい抜いても、別に倒れはしない」

「むー」

 不機嫌そうに頬を膨らませるのほほんさん。何だかすごく悪いことをしたような気になってくる。

「じゃあいいもん。私一人でこれ全部たべちゃうから。私が太ったら、すーくんのせいだからね」

 そう言って、のほほんさんはお菓子の袋を開けてパクパクと食べ始める。

 ざっと見ても、一人で食べきるには少し多すぎる量だ。普通の食事だったらまだいいかもしれないが、カロリーなどが高いお菓子では体の栄養バランスが崩れてしまうだろう。

 ……はぁ。心の中でため息をつき、俺はのほほんさんの向かいに座り込む。

「俺と話してくれるやつを太らせて不機嫌になられても困るからな。しかたないから俺も食べるのを手伝ってやるよ」

「えへへー。じゃあね、これがおすすめだよ~」

 俺の言葉を聞いて、のほほんさんは不機嫌な表情から一転、満面の笑顔を浮かべて俺にお勧めのお菓子を手渡してくる。

 それを受け取り、封を開けて一口食べる。

「うまいな」

「ね~、おいしいでしょ~。あ、これもおいしいよ~」

 そう言ってどんどんお菓子を渡してくるのほほんさんの姿に、思わず笑みがこぼれる。

 こんなに主導権を取られっぱなしなのは、束さんを相手にしているとき以外なかったな。……まあ、これはこれでいいかもしれない。

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