Another IS ―もう一つのIS―   作:colorless

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第十二話 二日目の朝

 ちなみに今は入学式翌日の朝八時。一年生寮の食堂。相変わらずどこを見ても、俺と一夏以外の男子の姿は見えない。職員まで全員女性なんだから恐れ入る。

 そしてその一夏は俺から少し離れたところに座って朝食を食べている。いや、表現が間違っているな。俺が、先に食堂に来ていた一夏から少し離れたところで朝食を食べている。一夏の隣ではあの篠ノ之箒が仏頂面で黙々と朝食を口に運んでいた。

 一夏が俺の存在に気がついて視線を向けてくる。俺はその視線と自分の視線がぶつからないようにすぐに視線を戻した。

 向きなおした視線の先にあるのは俺の朝食。メニューは和食セット。ご飯に納豆、鮭の切り身と味噌汁。ついでに浅漬け。かなりうまい。

 女子の視線にさらされないように食堂には来ないようにしていたところを、昨日の夜にのほほんさんに注意されて仕方なく来たが、来てよかったかもしれない。

 今後はご飯のときはここに来よう。どうせどこへ行っても視線にはさらされるんだ。だったら、うまいご飯を食べられるここに来るほうが得だ。

「ねえねえ、彼が噂の男子だって~」

「何でも千冬お姉さまの弟らしいわよ」

「えー、姉弟揃ってIS操縦者かぁ。やっぱり彼も強いのかな?」

「もう一人の男子よりも爽やかで明るそうよね」

「あっちの男子は何か暗そうだもんねぇ」

 そしてこれも昨日と変わらない。周りでは女子が一定の距離を保ちつつも『興味津々ですよ。でもがっつきませんよ』という気配の包囲網を一夏に向けている。

 俺にもたまに視線を向けてくるが、その全ては悪意が込められており、一夏と比較しては馬鹿にする気持ちが加わる。

 どうやら昨日のうちに噂は一通り学園中の女子に広まったみたいだな。

 女子の全員が噂を信じてはいないだろうが、おそらく八割以上の女子は噂に感化されているだろう。

 これからは学園中の全てが敵といっていいだろう。先生たちは噂を信じていないと思うが、立場上、よほどのことがなければ中立の立場を取らざるを得ない。噂に感化されていない女子たちも中立の立場だろうが、いつ敵に回るかわからない以上、安全だと決め付けることはできない。

 味方といえば、一夏とのほほんさんの二人くらいか。一夏は俺と極力関わらないように言っておいたから、実質的な味方はのほほんさんだけだ。

 そののほほんさんも、できれば俺と関わってほしくはない。味方をしてくれるのはとても嬉しいしありがたいが、俺と関わることで彼女まで孤立してしまうかと思うと、やはり俺と関わらないほうがいいだろう。

「あー。すーくん、いた~」

 今しがたやって来たばかりなのだろう、朝食をトレーに載せたのほほんさんが俺を見つけて、駆け寄ってくる。

 俺が今危惧していたことなど微塵も気にしない様子でのほほんさんは俺の隣に腰を下ろす。周りの女子がざわつくが、それも気にせず俺に挨拶してくる、

「おはよ~、すーくん」

「……ああ。おはよう」

「昨日約束したことできてるみたいだね~。いい子いい子~」

 のんびりとした動きで俺の頭をなでてきた。こんなことされたのは初めてだが、なんだか子ども扱いされているように感じる。

「俺は子供じゃない。あれくらいの約束守るに決まってるだろう」

「すーくん、律儀そうだもんねぇ。昨日のお菓子代も払うって言ってたよね~」

「自分で食べた分は払わないとな。それよりも、朝食それだけでいいのか? 小食の俺から見ても少ないと思うんだが」

 のほほんさんのトレーに乗っているのはトースト一枚とサラダ、牛乳だ。少なすぎるような気がする。

「大丈夫~。お菓子よく食べるし~」

「お菓子は栄養バランスが悪いからちゃんとした食事を食べろよ」

「む~。すーくんが言うなら、しょうがないからそうしてあげる~」

「そうか。いい子いい子」

 先ほどの仕返しとして、同じように頭をなでてやる。しかしのほほんさんは俺の予想に反して、気持ちよさそうな表情を浮かべる。

 てっきり子ども扱いされて嫌がると思ったのに……まあいいか。

「小食っていうけど、すーくんけっこう食べてない~?」

 一通り頭をなでられて、満足そうなのほほんさんが訊いてくる。

「昨日の夜は何も食べなかったからな。いつもならこれよりも少ない」

「えー、昨日の夜ご飯食べてないの~? 言ってくれればお菓子あげたのに~」

「さっきも言ったが、お菓子は栄養バランスが悪い。それなら一食抜いたほうがよっぽどいい。それに、のほほんさんと今日からは食堂でちゃんと食べるって約束したから、今日多めに食べればいいと思って」

 そんな会話をしながら食事をしていると、唐突に大きな声が食堂に轟いた。

「いつまで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ! 遅刻したらグラウンド十周させるぞ!」

 織斑先生の声がよく通る。途端に食堂にいた全員が慌てて食事に戻った。なにせこのIS学園のグラウンド、一周が五キロもある――って、冗談じゃない。さっさとしなければ。

「のほほんさん、とっとと食べるぞ」

「あい~」

 ちなみに織斑先生は一年の寮長も務めているらしい。ご苦労様です。

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